この素晴らしい二度目の世界を生き抜く 作:ちゅんちゅん
「そこっ!」
「甘いぞ、フェイントにつられるな。本命はこっちの蹴りだっ!」
「うぐっ……ほ、本当に、容赦ないな……は、はぁ、はぁ……カズマは……!」
「おい、やめろ。息を荒げるな」
「いや、これは激しく動いたから息切れしただけだ」
「なにを平然とした顔で言ってるんだ。息切れ一つしてないだろ」
腹に全力で蹴りを入れるが息を荒げるだけで効いている気がしない。無敵かよ。日課となっているダクネスとの特訓も2週間が経過した。はっきり言って、ダクネスの成長は目を見張るものがある。俺のほとんど使わない『両手剣』スキルが3まで強化されていることからもそれはうかがえる。
「休憩だ、休憩。ダクネスの相手をしてると、肉体的よりも精神的に疲れるわ」
「さらに言葉攻めだと!?」
「それだよ、それ! もう俺が何を言っても興奮するだろ、お前! あとお前、たまにわざと攻撃受けてるだろ!? 気が付いてないと思ったか、この脳みそまで筋肉の腹筋バキバキ女がっ!」
「はぁん!? あ、相変わらずの口撃だな……んんっ……あと、腹筋バキバキではないっ!」
「ほぉ? それならその鎧をスティールして、白日の下にさらしてやろう……」
「こんな、いつ誰が来るかもわからない場所で私を裸に!? なんてきもち……ひどいことを! や、やめろぉ~………………おい、カズマ、まだか?」
「ほんっとぶれないな、お前……」
まともに相手するだけ無駄かもしれんな、これ。前回よりもパワーアップすらしている気がする。
「それで、そろそろアルダープについて教えてもらおうか。ギルドでは何か知っている風だっただろ。簡単に調べたが、領民への重税、敵対者の唐突な失踪、魔王軍幹部出現による領民への説明、責任の放棄とめちゃくちゃだぞ。にもかかわらず、何も証拠は出ない、不満も出ない。明らかに不自然だろ」
「ん……その通りだな。私も気をもんでいるのだ。奴の行いすべてが領民をないがしろにする自分勝手なモノだ。到底容認できるものではない、ないのだが、証拠が出ないので立件のしようがない。そろそろ告げるべきだろう。カズマは私のためにここまでしてくれている。これ以上、貴方に不誠実な態度はとりたくない」
「ダクネス……」
珍しく聖騎士モードのダクネスの佇まいに息をのむ。
「私の本当の名はダスティネス・フォード・ララティーナという。王家の懐刀と言われている貴族に名を連ねるものだ」
知ってた。なんかようやく言うことができたみたいな顔しているララティーナには悪いが全部知ってた。
「それで、ララティーナお嬢様はあの時何をしようとしてたんだ?」
「ララティーナと呼ぶな! あの時は、報酬を払うようにと直談判をしようかと思っていた。奴は私がまだ子どものころから私に偏執的な執着を見せる男だ。奴の妻が亡くなってからは何度も婚姻を申し込まれたものだ。まぁ、私の父が歳の差を理由に断り続けていたが……そんな私からの頼みだ。無下にはしないだろう、とな」
「馬鹿なのか? そんなの鴨が葱を背負って来るようなものじゃないか」
「鴨が葱……カモネギか? あの経験値がおいしいモンスターがどうかしたのか?」
ああ、こっちの世界にはそんなモンスターいたな。何はともあれ、自分を犠牲にしてまですることじゃない。そんなことをされるほうが苦しいってことも分からないのか、こいつは。
「……とにかく、そんな奴のところに行ったら、そりゃもうすごい事されるにきまってるだろ。俺は仲間の傷つく姿は見たく――」
「す、すごい事……!? あの不潔で豚みたいなやつに……すごい事!?」
「……お前、興奮しただろ」
「し、してない!」
苦しむどころか喜びそうだなとすごい微妙な気分になった。
このすば!
「と、言うわけで、ララティーナお嬢様です」
「ララティーナお嬢様と呼ぶなっ! 今まで通り、パーティーの前衛、仲間のダクネスでいい。みんなの前では、そうでありたい」
「ダクネス……!」
「ダクネスさん……!」
ギルドで集合し、ダクネスが己の素性を告白した。俺のおちょくりに対し、ダクネスは聖騎士モードでそういった。めぐみんとゆんゆんが感動している。俺も、今のは少しグッときた。
「まぁ、それが本題ではないんだ。この前の件についてだ」
俺の言葉にみんなの視線が集まる。
「ここ数日、アクアと領主アルダープの調査をしたが、これがひどいの一言に尽きる。その中で、アクアがあることに気が付いた」
「悪魔よ! 悪魔! あの屋敷からは、悪魔の臭いがしたわっ!」
俺の言葉にアクアが続く。実際、屋敷まで行ったところ、近づかなければ気が付かないレベルではあるが、悪魔の臭いがしたらしい。前回は、だいぶ歳くってからバニルに事の真相をすべて聞かされたからな。正体も判明している。知的財産権の値段の話も一緒にされて悪感情を食われたけどな!
「アルダープの裏に悪魔がいるとなれば、あの時の不自然な主張が通ったのも、支持者がどんどん消えたのも納得できる。さらにはかなり前から行われているであろう悪行の数々が明るみに出ない理由にもなる。そこで、みんなにまた、力を貸してほしい。あの時はああいったが、俺も悔しい。みんなで勝ち取った結果を国家反逆罪なんて言われたんだ。我慢できるわけがない」
「ふっ……それでこそカズマです! 我が盟友のためにも、一肌脱ごうではありませんか!」
「わ、私も協力します! このままじゃ、嫌だもん!」
「私はもとよりそのつもりだ。それに、悪魔との繋がりを証明できれば、奴を裁くことができる」
「当然よ、カズマ!」
みんなが俺の言葉にうなずく。ああ、そうだ。悔しいわけがない。3億エリスだぞ、3億! それだけあれば、また屋敷を買うことができる。この機会を逃すわけにはいかない。アクアにさまよえる魂たちの成仏をさぼらせて屋敷を手に入れるのも考えはしたが流石にクズすぎる。
「しかし、肝心の方法はどうするのだ?」
「ああ、もちろん考えてる。先生!」
「ふっ、ふっ、ふっ……呼んだかな!」
「クリス!?」
俺の掛け声にクリスが潜伏を解いてテーブルの下から現れる。
「悪魔がいると聞いてね。エリス教徒の身としては、ほっとくわけにいかないよね。神敵には罰を下さないと! 悪魔やアンデッドは滅べばいいさ……!」
「く、クリス……?」
「素晴らしい! 素晴らしいわ! その心意気よ!」
「あ、え、えーと、ありがとうございます」
クリスの悪魔やアンデッドへの容赦のない表情にダクネスがたじろぎ、アクアは称賛した。アクアに褒められたせいでエリスに戻りかけているのかクリスは敬語で返している。ほんとこいつら悪魔とアンデッド嫌いだよな。
「アクシズ教徒とエリス教徒は案外仲良くなれるものですね!」
「あれ、仲いいというか、同じ敵がいるだけじゃない……?」
「何はともあれ、これで手札はそろった。作戦を説明するぞ。まず、めぐみんが屋敷近くで爆裂魔法をぶっ放して注意を引く。ゆんゆんは動けなくなっためぐみんを回収、撤退。なぜこんなことをされるのか、心当たりがありすぎるアルダープは屋敷の護衛を爆裂魔法の爆心地へある程度向かわすだろう。そこでクリスが姿を現し、貴方のお宝をいただくよと宣戦布告。すぐさま潜伏&敵感知を使って逃げ回りつつ、屋敷を荒らす。この際にアルダープを可能な限り、足止めしてくれ。だが、あくまでもこれは誘導だ。その隙に俺とアクアで屋敷内の悪魔を探す。見つけたら悪魔を地上へ引きずり出す、倒せるようなら倒す。どちらの戦法も取れるように一時的にダクネスは外で隠れて待機。一時間程度時間が経過しても地上に引きずりだせてなかったら突入して援護してくれ」
「おお! またしても一番槍……ふふっ、腕が鳴ります」
「私はめぐみんの護衛ね」
「任せてよ。時には危ない橋も渡らないとね。悪魔滅ぼすべし……ふふっ」
「ところで、こっそりと侵入するほうが効率はいいのではないか?」
「あれだけのことをやられたんだ。こちらも派手にやり返したい。それに、こっそりとバレないように侵入しても、いつものパターンで結局バレて総力戦になりかねない。それなら、最初から戦うことを前提に動いて、敵を分散させたほうがいいだろ」
ダクネスの意見はもっともだ。だがそうなるとめぐみんはお留守番になるし、大人数での移動は足が付きやすい。全員を生かしての作戦が一番成功率が高い。気がする。
「……しかし、探すといっても当てはあるのか?」
「ふっ……俺が今まで無策で行動することがあったか? 新スキル! 『魔眼』ッ!」
ベルディアが使用していた『魔眼』を発動する。俺の背後に巨大な目のエフェクトが現れ、途端に世界がゆっくりとなり、魔力の流れを知覚できるようになる。それと同時に魔力がゴリゴリ減っている感覚がある。今の俺だと持続できて10分というところか。あと、どうやら、この後ろの目と視覚がリンクしているらしく、視点が3人称になる。騒ぎになっては困るので一瞬で解く。
「か、カズマ……今のは、デュラハンの……ですか?」
「おう、あの戦いの中で使えるようになった」
「冒険者は確かにすべてのスキルを覚えることができますが、それは、そのスキルを理解して初めて習得できるんですよね? ということはカズマさんはあの戦いで、『魔眼』がどういうスキルなのか一度見ただけで理解したということ、ですか……?」
「……自分の才能が、怖いぜ」
「「お、おぉおおおおおおお!!」」
「なんですか、なんですかカズマ! かっこよすぎます!」
「すごいですよ! 普通じゃ考えられない!」
紅魔族の二人が目を輝かせて俺に詰め寄る。確かに二人には刺さるよな、これ。
「アンデッドのスキルを使われると、すごい複雑なんですけど」
「あたしも気になるなー」
女神二人には不評のようだった。
「本当に、底が知れない男だな、カズマは」
「とにかく、こいつを使って魔力の流れを追って、悪魔を見つけ出す。今日はもうめぐみんが爆裂魔法を撃てないから、決行は明日な」
「「「「「おーーーーーーーっ!」」」」」
待ってろよ、アルダープ……最高の絶望を味わわせてやる……
このすば!
「『エクスプロージョン』ッッッ!」
派手な爆音とともに爆裂魔法がアルダープの屋敷の裏山を爆発させる。屋敷から警報が鳴り響き、警備員たちがそちらへと走っていくのを高台から確認する。
「よし、行くぞ!」
「「……!」」
俺の掛け声にクリスとアクアがコクンと頷く。そのままクリスは一番目立つ屋敷の天辺へと移動し、なのりを上げた。
「あたしの名前は銀髪仮面! 悪行三昧のアルダープ! キミのお宝、あたしが戴くよっ!」
残った警備員がクリスを追っかけていくのを確認してから潜伏を使ってアクアと一緒に屋敷に潜入する。
「おい、アクア。変装の準備はできてるか?」
「でも、ダクネスに変装してどうするの?」
「ずるい言い方なのはわかってるが、今は信じてくれ。成功するかもわからないからな」
「もう、カズマに信じてくれなんて言われたら、信じるしかないじゃないの。わかったわ。いつでも変装できるように準備しといてあげる。見た目も中身も完璧に演じてあげるんだから」
「信頼してるぜ、相棒。よし、『魔眼』ッ!」
アクアの信頼できる言葉をきき、『魔眼』を発動させる。屋敷全体に重苦しくも禍々しい魔力がまとわりついている。これが、悪魔の魔力なのか? 敵感知と潜伏も同時に発動させているため、常時使えば、多く見積もって3分程度で魔力が尽きる。適度に『魔眼』をオンオフして屋敷を探る。
「んん……? アルダープの……寝室、か? やけに魔力が濃いな」
「よし、すぐに行ってシバきましょう!」
潜伏を使い寝室に入ると、中には誰もいない。クリスがうまい事、誘導しているらしい。
「ちょっと、カズマ、カズマ! ここの本棚、下が階段になっているわ!」
「おぉ、でかした、アクア!」
「宴会芸スキルで、隠したり、消したりはお手の物だもの。怪しいところなんてすぐにわかるわ!」
そう言って階段を下りていくアクア。だが、こんな事態だ、悪魔がいればすぐにでもそちらに逃げるのが常ではないか? なのにここを手薄にするということは……
「まて、アクアっ!」
「え? なっあぁあああああああああああ!?」
「アクア!? くそっやられたっ!」
階段の途中で急に穴が開き、アクアが下に落ちた。急いで駆け寄り下を確認する。
「低級の魔物風情が何するのよ! 『ゴッドブロー』ッ!」
「えぇー……」
落ちた先の空間でアクアは無数の魔物を素手で蹂躙していた。よく見ると初心者殺しの姿まである。たしかにこんな罠あるならわざわざ、盗賊一人の為だけに、こっち来ないわな。運が良ければ勝手に落ちて死ぬわけだし。問題は相手がアクアだってことか。
「カズマ! 私はすぐに行けそうにないわ! こいつら片付けたら、ダクネスに変装していくから! 先に行って!」
「悪魔と戦うかもしれないんだぞ? 俺一人だと不安なんだが!」
「このまま黙ってるほうが機会を失うわよ! さっきから警報が強くなってる……たぶんあの豚がこっちに来るわ!」
アクアの言うことも一理ある。アルダープが合流したら、すぐに俺たちの排除を悪魔に願うだろう。そうなれば、話し合うどころではなくなる。
仕方ない。アクアが落ちた穴を飛び越え、先へと降りる。さらに階段を下りていくとだだっ広い部屋に人影が。
「よお、アンタがマクスウェルか?」
「ヒュー、ヒュー……誰だい? 初めて会うよね?」
敵意は見せずに世間話でもするかのように、その悪魔に声をかける。悪魔の正体は、辻褄合わせのマクスウェル。地獄の公爵の一人にして、真理を捻じ曲げる悪魔だ。好きな感情は絶望。だったら、そこにつけこむ。
「ああ、お前と話がしたい」
「ヒュー……ヒュー……話?」
こちらを不思議そうに見つめるマスクウェル。こいつは知能は赤子なみらしい。悪魔の尺度での赤子なので不安だったが、話ができるならあとは丸め込むだけだ。
「ああ、お前の大好きアルダープの特上の絶望の感情を味わいたくないか?」
「ヒュー、ヒュー……どういうことだい?」
「俺が、アルダープを絶望させてやる。その感情を気に入ったのなら、お前の魔力をすべて胸の一点に集めて俺に切られてほしい」
「ヒュー、ヒュー……そんなことしたら、僕は死んじゃうよ?」
「あのアルダープだ。お前が消えると、今までの悪行がすべてバレるという絶望の感情を味わえるぞ。それに、お前が死んで消えれば、契約は終了。アルダープから今までの契約の代価を受け取れる」
「ヒュー、ヒュー……代価……本当に?」
「もちろんだ。悪魔の契約っていうのは絶対だ。お前は、残機を一つ減らすだけで、特上の絶望の感情を2回も味わい、代価を得ることができる。どうだ?」
「ヒュー……ヒュー……素晴らしい! 素晴らしいよ! いいよ、満足出来たら倒されてあげる」
乗ってきた! よし、これで準備は完了した。あとはアクアを待つだけだな。
このすば!
「カズマッ!」
勢いよく地下に来たのはダクネスだった。1時間が経過したのだろうか? あ、いや、こいつ、アクアか!
「遅かったな」
「む、そいつが悪魔か! 離れろ、カズマ!」
「ヒュー……ヒュー……来る、来るよ。アルダープの気配だ」
「なんだって? やはりアルダープは悪魔とつながりがあったのだな!」
マクスウェルがそういうとほぼ同時に、アルダープが地下へと降りてくる。
「あぁ、くそっ! くそっ! マクス! 今すぐに……なんだ、貴様らは! ら、ララティーナ!?」
「アルダープ殿、これはどういうことか。貴方は悪魔とかかわりがあったらしいな。ことと場合によっては私もしかるべき対処をしなければならない」
「くっ……マクス! こいつらの記憶を捻じ曲げろ!」
「ヒュー、ヒュー……無理だよ。辻褄が、あわないよ……」
「えぇい、この役立たずが!」
アルダープはマクスウェルの言葉を聞き、癇癪を起したかのように怒り狂う。
「おい、アルダープ。俺はお前に言うことがあるんだが、聞いてくれないか?」
「あぁあ!? 下民ごときがこんなことをして――」
俺の言葉にアルダープがこちらに目線をよこしたのを見て、俺はアクアが変装しているダクネスを抱き寄せ、口付けした。
「んんっ!?」
ダクネスが短く声を上げ、何が起こっているのだという表情でこちらを見る。割と素の反応な気がするのだが、流石のアクアも驚くか。俺も正直、心臓がバクバク言ってる。
「そのまま……今だけは、俺だけを見てろ」
「くぅん!?」
軽く意思だけを伝え、再び口づけをする、今度はアルダープに見えるように深い口づけを。アクアが変装しているダクネスの瞳から力が抜けるのを感じる。これ以上はやばい。俺もやばい。
「というわけだ。悪い虫には一言言っておきたくてな。こいつは俺の女だ!」
「ふ、ふぁ……」
これでもかと見せつけた後にアルダープへと告げる。同時にアクアが変装しているダクネスが腰から崩れへたり込む。
「ヒュー、ヒュー! 最高だ、最高だよアルダープ! 君の絶望は最高だよアルダープ!」
「くっ、ふざけるな! マクス! そこの男を殺せ! 代価でも何でも払ってやる!」
「ヒュー、ヒュー……代価を払ってくれるんだね!? わかったよ、アルダープ!」
「『魔眼』ッ!」
アルダープの指示に従い、こちらに襲い掛かってくるマクスウェル。俺は即座に『魔眼』を発動させ、マクスウェルを視る。胸に魔力が集中している。どうやら、お気に召してくれたらしい。カウンター気味に剣を構えると、マクスウェルの大振りな攻撃をかわし、魔力が集中している胸を刺す。こいつ、本気で俺を殺しに来てたな……『魔眼』を使ってなければ死んでたぞ。
「ヒュー、ヒュー……ああ、消えちゃう……アルダープ、代価を、忘れないでね……」
「ま、マクス! ふざけるな! お前が消えたらワシはどうやってこの身分を維持すればいいのだ! 消えるな! 消えるな、マクス!」
「ヒュー……ヒュー……焦りと、絶望……ああ、最後まで最高だよ、アルダープ!」
その言葉を最後に、マクスウェルは消滅した。後に残ったのは魔力切れで倒れる俺と、放心しているアクアが変装しているダクネス、そして絶望のままに立ち尽くすアルダープだけだった。
「待たせたな! カズマ! ……ん? あれ? ちょっと、カズマ。どういう状況なのよ、これ?」
「…………あれ?」
薄れゆく視界で俺が最後に見たのは、アクアみたいにしゃべるダクネスの姿だった。