この素晴らしい二度目の世界を生き抜く 作:ちゅんちゅん
あと圧倒的ピンはねを受けていたので修正しました。
あれから数日。アルダープは今までの悪事がすべて明るみに出て投獄された。おそらくだが、近いうちにマクスウェルが代価をもらうため、アルダープを地獄へとさらっていくことだろう。
それに伴い、ついにベルディアの討伐報酬が支払われることになり、俺たちはギルドに呼ばれていた。
「それでは、改めまして、サトウカズマさん。魔王軍幹部、ベルディア討伐の報酬、三億エリスをお受け取りください」
「「「うぉおおおおおおおおおおお! カ・ズ・マ! カ・ズ・マ!」」」
「今度は領主までやっちまうとかマジかよ!」
「たしかに不自然だったしな! 悪魔がいたとかほんとクソ領主だったな!」
誰が言いふらしたのかわからないが、アルダープが悪魔の力を利用して真実を捻じ曲げていたということは知れ渡っていた。同じ時期に悪魔を討伐したという報告をギルドにしていたため、すぐに俺たちの仕業だとばれてしまった。
「よぉーーし! みんな、この前はうれしかった! 今日は俺のおごりだ!」
「「「カ・ズ・マ! カ・ズ・マ! カ・ズ・マ!」」」
今の俺、最高に冒険者をしてるって気がする!
「……なんでずっとこっちを見てるんだい、ダクネス?」
「今日は一段と凛々しいなとカズマを見ていただけだ」
「さぁ、カズマ! ダクネスがおかしくなった理由を聞こうじゃないか!」
あの一件から、ダクネスがよりおかしくなった。具体的に言うと、ずっと俺を見ている。そんなダクネスをみつつめぐみんが俺を問い詰める。
「……マクスウェルの好みの感情が絶望だったんだよ。で、アルダープを絶望させてその感情を食わせてやるかわりに倒させてもらった」
「ほぅ? 具体的には何をしたのです?」
「……アルダープはダクネスに執着してたからな、お前には手の届かない存在だって、目の前で見せつけてやっただけだよ」
「ほう? 教えてやった、ではなく見せつけた、ですか」
「カズマはな、悪魔を倒すためだけに私の気持ちなど何も考えず、アルダープの目の前で私の唇を奪い、抵抗しようとする私に対し、今は俺だけを見ていろとつやっぽい声で押し黙らせ、さらに深く――」
「うわぁあああああああ! いきなりなにを言い出すんだお前は! 間違ってないけど、間違ってないけどホントに待て!」
「ああ、あれはたまらなく興奮した! 目の前に人がいるのに初めてを奪われ、当の本人はその相手の私のことを全く見ていないのだ! あぁ、カズマ! お前は本当に素晴らしいな! ぜひ私と結婚を前提に付き合ってくれないか!?」
ダクネスは息を荒げ、俺の右手を自身の両手で包つみながらそんなことを言ってきた。ドMもここまでくると恐ろしい。なんでその物言いで好感度が上がってるんだ? あとダクネスが自分を見ていないと感じたのは俺が相手をアクアだと思ってたからであって、気にはしまくってたよ。
「で、実際のところはどうなのですか、ダクネス」
「な、なに? どうもなにも……」
「さすがに嘘だってわかります。同じ女なんですよ?」
「……うぅ、最近いいなと思ってた男性に、いきなりキスされて戸惑いとかよりも嬉しさのほうが勝ってた。今はこっちを見ていなくてもいずれは見させてやろうと……」
めぐみんの言葉に急にしおらしく言い出すダクネスの言葉を遮る。
「まてまてまて! 理解が追い付いてねぇよ!? え? お前俺のこと気になってたの!? なおのこと、あんなの千年の恋も冷めるだろ!」
「正直、アクアとカズマの間には付け入る隙は無いと思っていたのだ。だが、今回のことで欲がでた。私は、カズマ、お前が欲しい」
聖騎士モードで真剣にこちらを見つめるダクネス。お、おい、やめろよドキドキするだろ。
「ダクネスが告げたのならば、私も告げなければいけないでしょう。カズマ、私もあなたが好きです」
「……俺は、お前に何もした覚えはないぞ」
ダクネスに続き、めぐみんまでもが俺に告白してくる。なに? 俺って明日死ぬの?
「そんなカズマだからです。どこへ行っても厄介者扱いを受ける毎日、自分の信じた道すら信じられなくなりそうになった時、あの募集を見たのです。ただ、ありのままの私を受け入れ、合わせてくれて、最大限に力を引き出してくれる。いつも頼りになって、時々、容赦なくて、すこしやらしくて……そんな、貴方が大好きなのです。ちょろいと思いますか? ええそうですよちょろいですよ、でも仕方ないじゃないですか、大好きなのですからっ!」
「お、おう……その、時間、くれ」
「「ヘタレだな(ですね)」」
俺の返答にダクネスとめぐみんの声が重なる。そんな目で見るな、簡単な問題じゃないんだよ。前回、ずっと今の関係でいたくて、どっちも選べなかったらみんなバラバラになったんだ。同じ失敗はしたくない。いや、それならすぐに選ぶべきなのか?
「最初、カズマさんって私にダクネスの変装させて、ことに及ぼうとしたのよね?」
「言い方が気になるが、まぁ、そうだ」
今まで黙っていたアクアがポツリと言葉を発する。
「事前に知らされることもなく、いきなり私に口づけしてダクネスへの愛を語る予定だったわけよね?」
「愛は語ってないぞ!?」
「……こんなことくらいじゃ、カズマさんを嫌いになんてならないし、今も大好きですけど……私も女の子だし、初めてがそんな感じだったらって、そうされたらって考えると、すごい複雑っていうか……ごめんなさい、カズマ。少し、一人にさせて……」
「お、おい、アクア!」
アクアは俺の制止も聞かずに、心ここにあらずといった感じで、席を立ち、ギルドを出ていく。
「あ、あの! カズマさん、アクアさん、泣いてました……」
「……俺は」
「カズマ……」
今まで入ってこれずに一言も発することができていなかったゆんゆんが俺に言う。返す言葉が思い浮かばない。追いかけたとして、なんて言葉をかければいい? そう葛藤する俺にめぐみんが声をかけてくる。後押しでもしてくれるのだろうか、どうしようもない、こんな俺を。
「アクアがいないうちに二人で出かけましょう。夜空にきれいな爆裂魔法を披露しましょう」
「めぐみん!? 今はなにか、こう、カズマを後押しするようなセリフを言うところじゃないのか!? ここぞとばかりに二人きりになろうとする場面ではないぞ!」
「離してください、ダクネス! 恋とは機を逃さなかったものが勝利するのです! 先のことばかり考えて何もしないよりも、今を考えて行動したものこそが! 未来を手にするのです! 肝心なのはあきらめないという意地と、自分がどうしたいかという思いだけ! 相手の気持ちなんか知ったことですか! さぁ、カズマ! 今すぐ爆裂散歩に行きましょう!」
ダクネスに肩を掴まれ、抵抗するめぐみんの言葉を聞き、ガツンと殴られたような気がした。自分がどうしたいのか、今を考えて行動する。それは過去の俺がとれなかった行動だ。どうすれば、今の関係を維持できるのかを考え、どちらも選ばず行動しなかった。めぐみんが紅魔の里に帰ると言ったとき、ダクネスが実家に戻ると言ったとき、相手の想いを考え、しかたないかとあきらめた。俺はただ、離れたくないと、その手を掴むべきだったんだ。
「めぐみん、ダクネス、ゆんゆん……俺は、お前たちが大好きだ」
「な、なんですか、いきなり! というか三股ですか!? 私は認めませんよ!」
「英雄色を好むとも言うし、私は気にしないぞ。他の嫁の前で見せつけるのも見せつけられるのもそれはそれで興奮する!」
「えっ、ちょっとまって、私も!?」
「ああ、もう遠慮はしない。俺は、死ぬまでお前たちと離れたくない。こうやってバカやって、面白おかしく過ごしていたいんだ。そのためにも、全員満足させてやる。俺なしじゃ生きれなくしてやるよ。覚悟しとけ」
これは過去の俺との決別であり、宣戦布告。もう、同じ未来は歩まない。絶対にこの手につかんだものをとりこぼしたりしない。
「うっ、最低最悪なことを言っているのにドキドキしてしまう自分が憎いです……」
「ああ、いいぞ、カズマ、その表情、すごくゾクゾクすりゅ!」
「と、友達からでおねがいします!」
俺の言葉に三者三様の言葉が返ってくる。ダクネスはすっかり平常運転だな。
「そんなわけで、もう一人もつれてくる」
「「「いってらっしゃい」」」
俺は大好きな三人に送り出され、大好きな人を迎えにいくために席を立つのだった。
このすば!
「一人になりたいって言って、馬小屋に戻ってくるなよ。色々さがしちゃっただろ」
「カズマさん……」
「あー……俺はな、ダクネスが好きだ。めぐみんが好きだ。ゆんゆんが好きだ。アクア、お前が好きだ。ずっとみんなで面白おかしく過ごして、今度は笑って死にたい」
「突然何を言い出すのかと思えば……前回はそんな根性なかったじゃない」
「ああ。あの時は、ただ見送るしかできなかった。最後まで隣にいたのは、アクアだけだったもんな。今度は、アクアの最後まで、俺を隣に居させてくれないか?」
「……えっ、そ、それって」
俺の言葉にアクアが信じられないという顔をする。この流れでそんなこと言い出すとは思わないよな。
「みんな俺の大好きな人で、大切な人なんだ。だから、全員幸せにしたい、最後は笑顔で逝ってほしい。みんなが隣にいてくれるだけで俺は世界一、幸福な男だ。だが、俺は魔王すら討伐したカズマさんだぞ。世界一程度では満足できない。アクア、俺を、天界一、幸福な男にしてくれないか?」
「なにそれ、クサすぎるんですけど! カズマったら精神年齢は80歳なのによくそんな青臭いセリフが吐けるわね! みてよこれ、寒くて鳥肌たっちゃったんですけど! ほんと……馬鹿なんだから……ばかぁあああ!」
アクアは俺に抱き着き、さめざめと泣きだす。そんなアクアをみて、ただ自然に口をついて出たのは、
「アクア、お前の初めて、もらってもいいか」
自分でもどうかと思うそんなセリフだった。
「はいっ!? ちょっ、ちょっといきなり何言ってんのよ、しかも馬小屋だし、だれがいるかんむっ」
アクアの言葉を止めるように、ただ触れるだけのキスをする。
「「…………」」
まるで時間が止まったかのような感覚。アクアの目から視線を外せない。そのまま、どちらからともなく、再び、相手の唇に触れる。ただ、多幸感に満たされる。
「アクア、お前が好きだ」 「カズマ、貴方が好きよ」
示し合わせたかのように声が重なる。それがひどくおかしくて、同時に、アクアをとても愛おしく思った。
カズマが全員笑顔にすればいいじゃん