この素晴らしい二度目の世界を生き抜く   作:ちゅんちゅん

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FF7リメイクが発売されましたね。
分割はどうなのかと思っていましたが、納得の出来です。


このファンはバニーセシリーお姉さんがイベボスには刺さりますね。
バインドで動き封じて、回復で安定感あって、弱点だから火力もそこまで低くない。

普段使いは……どうなんでしょうね……


この青年に現実を!

「なぁ、カズマ。そろそろクエストに行かないか?」

 

 屋敷に越してきてから1週間。ダクネスがそんなことを言い出した。

 

 正直、クエストなんか行かなくても全然生きていけるだけの貯蓄があるので問題はない。この若返った身体にも完全とまではいわないが、慣れてきている。同時に精神があの頃に引っ張られてきているのか、必要がないのであれば、わざわざ危険なことなどしたくないという思いが強くなってきている。

 

「んー……貯蓄もだいぶあるし、当分はクエストに行かなくても問題ないぞ?」

 

 そういいながら、今の生活を思い出す。

 

 年取ってからの習慣で早朝には目が覚め、軽く運動を行い、目を覚ます。朝方、ダクネスと特訓を行い、遅めの朝食の時間まで汗を流す。風呂に入った後、朝食を食べる。食後は自室でストレッチを行い、ゆったりとし、昼前にめぐみんとゆんゆんと一緒に爆裂散歩と外でランチ。昼はゆんゆんが作ってくれている。これもうまい。めぐみんをおぶって帰宅し、広間でくつろぐ。最近はアクアと暖炉の前でボーっとしつつ、ダラダラとしている。会話はあんまりないが落ち着いて心地がいい。夕食を食べたらみんなでくつろぎ、場合によってはギルドで飲む。

 

 意外と充実してるな。適度な運動、適度な休養、適度な娯楽。毎日充実しているといっても過言ではない。

 

「それはそうなのだが……私たちが充実した毎日を送る裏で、クエストを出さなければならないほど困っている領民がいると考えると、少し複雑でな……」

 

「そうですね。そろそろ私もモンスター相手に爆裂魔法を撃ちたいと思っていたところです」

 

 真面目なダクネスらしい考えに、自分の生来の性格を恥じた。そういうことならクエストに行くのもやぶさかではない。めぐみんも乗り気だ。

 

「うっし、じゃあ久々にクエストに行くか」

 

「それなら、景色がいいところか、落ち着けるような場所が近くにあるクエストが良いわね。今日はお天気が良くて、ピクニック日和だもの!」

 

「あ、一応、今日のお昼、多めに作ってあるので持っていきますね!」

 

 こいつらは少し、ダクネスを見習ってほしい。

 

 

 

このすば!

 

 

 

 ギルドにやってきた俺たちは掲示板の前でどのクエストを受けるか悩んでいる。

 

 『──マンティコアとグリフォンの討伐──マンティコアとグリフォンが縄張り争いをしている場所があります。放っておくと大変危険なので、二匹まとめて討伐してください。報酬は五十万エリス』

 

 『──湖の浄化──街の水源の一つの、タルラン湖の水質が悪くなり、ブルータルアリゲーターが住みつき始めたので水の浄化を依頼したい。湖の浄化ができればモンスターは生息地を他に移すため、モンスター討伐はしなくてもいい。※要浄化魔法習得済みのプリースト。報酬は三十万エリス』

 

 『――ゴブリンの群れの全滅――タルラン湖の水質が悪くなった影響か、タルラン湖の周囲にゴブリンの群れが出現した。速やかに討伐を依頼したい。報酬は十万エリス』

 

 『――ジャイアントトードの一体の討伐――町周辺に出現したジャイアントトードの討伐を依頼したい。家畜が食われて迷惑している。報酬は三万エリス』

 

 ベルディアがいなくなり、初心者向けのクエストも出てきているな。この中で俺たちが受けるとすると……

 

「これよ、カズマ! これにしましょう!」

 

「まぁ、アクアならそれ選ぶよな。でも前回のこと忘れたのか?」

 

 アクアが我先にと掲示板から剥がしたのは湖の浄化のクエスト。前回、アクアにトラウマを植え付けたクエストだ。

 

「前回みたいにはいかないわよ。だってカズマがいるもの!」

 

「前回も俺はいたけどな。手放しで信頼されても困るんだが……ま、全力は尽くすよ」

 

「ということで、今回はオリはナシね! その代わり絶対に守ってね!?」

 

「前回? 今回? たまにカズマとアクアが言っているそれは何なのだ?」

 

 俺たちの会話を聞いてたダクネスが聞いてくる。紅魔族の二人も気になっているのかこちらを見る。

 

「前にもアクアと二人でこんな感じのクエストを受けたことがあってな。その時はアクアを特製の檻に入れて、湖を浄化してもらったんだよ。檻の中ならモンスターに襲われても浄化ができるからな」

 

「中の居心地は最悪よ! 檻は回るし、ギシギシ嫌な音はするし……生きた心地がしなかったもの」

 

「そういうことですか、ならば今回は問題ありませんね!」

 

「そうだな。今回は私たちもいるからな」

 

「え、えっと、頑張ります!」

 

 俺とアクアの返答にみんなは納得したのか、クエストへのやる気を高める。なんか、騙してるみたいで罪悪感が……

 

「こんな場所にゴブリン……?」

 

 そんな俺たちの隣で、青い鎧に身を包み大剣を腰に挿している明らかに初心者ではない男がゴブリンのクエストを掲示板から剥がす。

 

「ちょっと、貴方! 初心者じゃないでしょ? そういう簡単なクエストは初心者に譲ってあげなさいよ!」

 

「ん? いや……って女神様? 女神様じゃないですか!? 何をしているのですか、こんなところで!?」

 

「はぁ? 誰よアンタ?」

 

 アクアの言葉にこちらを振り返った男は、アクアを見るなりそういった。あれ、そういや、コイツ、どこかで見た気が……そうだ、確かアクアに転生させられた日本人の……カツラギ?

 

「僕です! 御剣響夜ですよ! あなたにこの、魔剣グラムを頂いた!」

 

 あ、ミツルギだった。

 

「……ごめん。覚えてない」

 

「なっ……そうですか……覚えていませんか……えっと、僕の名前は御剣響夜です。貴女は覚えていないようですが、貴女と魔王を倒すと約束して、魔剣グラムを授かりました。クラスはソードマスター。レベルは37。今度は、覚えておいていただけると、うれしいです」

 

 アクアの呼び方が女神様から貴女になった。自分は特別な人間ではなかったって知って、好感度下がったな、これ。目に見えて落ち込んでるし。60年以上経ってるし、アクアも普通に忘れたんだな。哀れミツルギ。

 

「それなら、なおさらそのクエストは初心者に譲りなさいな!」

 

「……あの、このクエスト、おかしいんですよ」

 

「はぁ? おかしいのは貴方のあたむぐっ」

 

 流石にいたたまれなくてアクアの口をふさぐ。せめて会話してやれよ。上級職でレベル37っていうところしか聞いてなかったろ、お前……というか容赦のなさが前回以上なんだが。こいつはこいつでなんか溜まってるのか?

 

「悪いな、ウチの連れが絡んじゃって」

 

「君は……」

 

「俺は佐藤和真。冒険者だよ」

 

「佐藤和真……佐藤和真!? 君があの魔王軍幹部のベルディアや悪徳領主が操っていたという悪魔を倒したサトウカズマかい!?」

 

「お、おう。あとわざわざフルネームで呼ぶ必要ないぞ」

 

「では、カズマくんと呼ばせてもらおうかな。一度君とは話をしてみたかったんだ。君も日本人だろう? どんな力をもらっていたとしても、ここまで成果をあげられるのは並大抵のことじゃないと思っていたんだ! 君はどんな力を女神様から頂いたんだい?」

 

「あー……俺の特典は、コイツだ」

 

 そういって俺に口を押さえられて顔を赤らめてるアクアを空いている手で指さす。

 

「……なるほど。持っていける『者』か。大胆なことをするんだね、君は。ということは今までの成果もすべて女神さまが?」

 

「いや、パーティーみんなの力だよ。誰か一人でもかけてたら、この結果はない」

 

「「カズマ……」」 「カズマさん……」

 

 意外と話ができているミツルギの問いに俺が答えると、後ろの三人が感動したように俺の名前を呼ぶ。

 

「うん。いいパーティーみたいだね、君のところは。僕も、もっと仲間のことを知るべきだって思い知らされたよ。正直、今までの僕は女神様との約束の為だけに、魔王を倒す勇者にならなければならないと思っていた。それが僕の使命だと……ダメだな。こんな僕を支えてくれていた仲間のことを何も見ちゃいなかったんだ。ありがとう、カズマくん。目が覚めた思いだよ」

 

 そういって感謝を述べるミツルギ。送り出すときにアクアに女神ムーブを決められて、自分は特別な人間だと信じて突き進んできたところのあんた誰発言は相当に堪えたのか、憑き物がとれたような顔をしている。

 

 前回、あんなにめんどくさかったの、アクアのせいだったのか。てっきりチート装備でイキってただけかと思ってたわ。いいやつだな、コイツ。

 

「んで、そのクエスト、何がおかしいんだ?」

 

「ああ、タルラン湖といえば近くに山があるから、そこからゴブリンが来たのだろうという推測は正しいと思う。ただ、湖の水質が悪くなったからといって、ゴブリンが出てくるとは考えにくいんだ。餌も少ないしね。となると、山から何らかの理由で目立つ湖の方に出てきたということになるんだが……」

 

「つまり、初心者殺しがいるのではないか、ということですね?」

 

 ミツルギの話を聞き、めぐみんが結論を導きだす。本当に頭の回転が早いな。でも人のセリフを取っちゃいけないよ?

 

「……正解だよ、優秀なアークウィザードさん。僕は、このゴブリン出現の裏に、初心者殺しがかかわっていると考えてる。そんなクエストに初心者冒険者を行かせるわけにはいかないと思ってね」

 

「たしかに、初心者殺しがかかわっていると考えると、このクエストは初心者冒険者さんたちには危険ね」

 

「盲目的に使命だと魔王を倒すつもりはもうない。だけど、人が困っているのを仕方ないと見て見ぬふりをできるほど達観した人間でもなくてね。これからは、世界の勇者ではなく、人々の味方を目指すつもりだ。これはその第一歩かな。まぁ、今回は困るかもしれない、だけどね」

 

 そういってほほ笑む好青年ミツルギ。いや、お前、前回よりずっと勇者だよ。前回のアクアはほんとにロクな事してないな。それに比べ今回はミツルギの洗脳解除といい、普段のサポートといい、素晴らしい活躍だ。

 

「お前のような人のために行動できる人間は嫌いではない。なにかあったら言うがいい。力になれるかもしれない」

 

「ありがとう。クルセイダーさん。ところでカズマくん。君たちもクエストをうけるんだよね?」

 

 そういってミツルギはアクアの持っているクエストの紙をみる。

 

「おう、湖の浄化だ」

 

「ちょうどいい! 目的地も一緒みたいだし、良ければお互いのクエストを協力してクリアしないかい? もちろん、報酬はそれぞれのクエストの分だけでいいからさ!」

 

「いや、仮のパーティーを組んでパーティーごとで報酬は分割しよう。俺たちにもミツルギの人々の味方への第一歩、手伝わせてくれよ。みんなも異論はないだろ?」

 

 俺の言葉にみんなが頷く。金に困ってないってのはあるが、俺もみんなもミツルギに対しては好感がもてる。損得は問題じゃないだろう。

 

「カズマくん……ありがとう」

 

「まぁ、上級職の護衛が増えるのはいい事ね! しっかり私を守りなさいよ、ミツルギ!」

 

「ふふっ、全力を尽くします。アクアさん」

 

 ミツルギはアクアの尊大な言葉に苦笑して、そういった。


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