この素晴らしい二度目の世界を生き抜く 作:ちゅんちゅん
今後もちょくちょく更新は続けていくのでよろしくお願いします。
「準備はいいな。カズマ」
「ああ。いつでもいいぞ」
日課となっているダクネスとの訓練。今日は模擬戦闘だ。しかし最近、両手剣スキルでの技術のみではダクネスを完封できなくなってきた。前の世界での戦闘経験からなんとか勝っているが……
「今日こそは勝たせてもらうぞ、カズマっ!」
「いつも通り地面とキスさせてやるよォ!」
「くぅっ!」
顔を赤らめながらダクネスが勢いよく突っ込んできて剣を振り上げる。
が、これはフェイント。握りが緩い。となればくるのは蹴り!
「そぉいっ!」
「なにっ!? ふんっ!」
「力押しはやめろ! マジで!」
体を捻って蹴りを避け、ダクネスの脚を抑え込む。しかしダクネスはその抑え込まれた脚を起点にもう片方の足で回し蹴りをかましてくる。素早く手を放しガードする。蹴りを受けた手が悲鳴を上げるかのように痺れる。出だしから剣を使っていないどころか俺に至っては抑え込むのに剣を手放している。だれだ、このゴリラにこんな戦い方教えたやつ。あ、俺か。
「流石カズマ。普段からこういう攻め方をしているだけあって反応が早いな!」
「剣を使え! 剣を! 何のための模擬戦だよ!?」
「うむ。準備運動はこんなものでいいな。剣を拾うといい」
「その準備運動で俺の右手は悲鳴を上げているんだがなっ!」
「むっ!」
「おらっァ!」
俺は剣を拾うと見せかけ素早く投擲し、ダクネスが剣をはじく。一気に距離を詰め、そのはじいた剣を掴み連撃を入れる。
真向斬りからの、一歩下がって中段突き、そのまま足払いからの体をひねって切上げを行う。
「あぁっ! この容赦のない連撃……たまりゃん!」
「あぁ、もう全部捌きやがるこのフィジカルお化けが! 性癖がそのまま挑発になってるのも腹立つわっ!」
真向斬りを軽く受け止められ、体をひねって突きを躱され、ジャンプして足払いをよけられ、そのまま後ろに下がって切上げを躱された。
ならばと斬り、突き、払い、剣の腹で叩きつける。
打ち合ってはじかれ、突きをよけられ、払いを受け流され、叩きつけに合わせてカウンターを叩き込まれる。
「勝てる! 今日こそはカズマにっ!」
「油断大敵だぞっと!」
「なにっ!?」
隙のできたダクネスに切りかかり、剣を巻き上げ、真上に打ち上げる。手元から剣が飛び去り、ダクネスが驚嘆の声をあげる。
俺とダクネスとでは、基礎能力値が違いすぎる。ついでに才能も。そのため、小手先で翻弄はできても決め手に欠ける。また、一発が軽いのでパワーゴリラのダクネスと真っ向から戦う場合、どうあがいても力負けする。なればこその秘策、巻き上げだ。正直、この重さ、この太さの剣で成功するかは賭けだったが何とか成功した。
間髪入れずにこのまま一気に……
「ふんっ!」
「ごはっ!?」
なぜかそのままタックルを決められ、地面に組み伏せられる。そのままマウントをとられたところ、先ほど打ち上げたダクネスの剣が自由落下で俺の顔のすぐ隣に突き刺さった。
「私の勝ちだ、カズマ」
「……マジか」
……剣の訓練、だよな? 今回、毛色違いすぎないか?
そんなことを思いながらも、馬乗りになりこちらを見下ろすダクネスを俺はただ見上げるしかなかった。
このすば!
「「「「お見合い!?」」」」
「う、うむ……」
朝食前にダクネスがそんなことを言い出した。忘れがちだが、ダクネスは貴族だ。そういった話もあるんだろう。そのことを前の世界で俺は嫌というほど知っている。
「よし、どうやって潰す?」
「開口一番にそれですか……いえ、潰すのは同意ですが」
「私もダクネスさんと離れたくないです!」
「サポートは任せなさい!」
「あ、いや、そのだな……」
口々にどうやってお見合いを潰すかを話し合う。貴重な戦力であり仲間をとられるわけにはいかない。そんな俺たちを見て、ダクネスがあたふたしている。
「安心しろって、穏便にぶっ潰すからさ」
「そうですよ、ダクネス。私たちは仲間じゃないですか」
「乱暴なことはあまり好きじゃないですけど、ダクネスさんのために、頑張ります!」
「安心なさい、ダクネス。この女神アクア、禁術である記憶を消す魔法を今回に限り解禁するわ!」
笑顔でサムズアップしてダクネスに笑いかける。俺に続くようにみんなもダクネスを励ます。さらっとアクアがすごい事を言っている。なにその技。
「そ、その、相手は、カズマなんだ!」
「はっ?」
ダクネスのとんでもない爆発発言に場が一気に静まり、俺の気の抜けた声が部屋に響いた。
「さぁ、命が惜しければ白状してください。詠唱しますよ? いいんですか?」
「どどどどどど、どういうことですか、カズマさん!?」
「やるじゃない、カズマさん! 正直ヘタレとか思っててごめんなさい」
「待て待て待て待て! ほんとに知らん! 初耳だ!」
すぐさまみんなに詰め寄られ、めぐみんに縄で捕縛されて尋問される。ゆんゆんはわたわたとうろたえ、アクアは俺を褒めつつ頭を撫でてくる。ほんと根っこは変わってねぇな、コイツ。ヘタレで悪かったな!
「その、私はこんなだからな。父親からも身分は気にしないから早く相手を見つけろと言われていてな……しかし、誰でもいいというわけではない。婿養子に来てもらうことになるわけだから、ダスティネス家を運営していく商才のある者、かつ領民のために力を尽くしてくれる人格者でなければならない」
「商才があって……」
「人のために頑張れる人……」
「あら、カズマがピッタリじゃない」
「う、うむ……」
「いや、うむじゃないが?」
めぐみんとゆんゆんが言いながら俺の方を振り返り、アクアがポンっと手をたたく。しかし、考えてみると悪い話ではないんじゃないのか?
結局は全員幸せにするわけだし。バニルからの助言の件もある。
「父親からも真っ先に候補として挙がったのがカズマだった。だが私はひとまず保留にしていた。自力でカズマに勝つまでは伝えないでいようと決めた。そうでなければ、対等ではないと思ったからな。だが、ついに今朝、念願かなってカズマに勝つことができた! カズマッ!」
「は、はい!」
「こんな私を仲間として迎えてくれたカズマが好きだ! 見捨てずに、改善しようと一緒に悩み、毎日欠かさずに訓練に付き合ってくれるカズマが好きだ! 肝心なときに鼓舞し、背中をたたいてくれるカズマが好きだ! いやらしい視線を隠し切れないカズマが好きだ! 容赦なく責めてくるカズマが大好きだ!」
「おい、最後」
ダクネスの熱い告白にみんなも押し黙る。勢いで押されていたが、最後に向かうにつれて残念になっていく。ダクネスはダクネスだった。
「カズマを死の最後の刻まで、傍で支えさせてほしい。結婚してくれ、カズマッ!」
それは、とても情熱的な求婚だった。男前すぎないか、この聖騎士。
「ななななな、いきなりぶっ飛びすぎではないですか!? カズマが乙女の顔になっているのですが!?」
「あわわわわ……」
「わ、私でいいの……?(裏声)」
「どこから出してるのよ、その声……」
いかんいかん。あまりにダクネスが男前すぎて思考回路が乙女になりかけた。
ここまで正面から向かい合ってくれたんだ、俺も、誠実に答えなければならない。
「あー……気持ちはすごいうれしい。だが、俺にもなけなしの男としての意地がある。……結婚してくれ、ダクネス。お前も、みんなも、幸せにして見せる。絶対に後悔はさせない」
「……カズマらしいな。そのプロポーズ、喜んで受けさせてもらう」
「いやいやいや、ダクネス、落ち着いてください! この男、堂々と私たち全員を囲うと言っているのですよ!? 一世一代のプロポーズに対して堂々と4股すると言っているのですよ!?」
ほほ笑むダクネスにめぐみんがすごい勢いで食いつく。普通の反応はそうだよな。いつも頭がおかしいと言われている紅魔族が今一番まともなのかもしれない。
「なに、貴族であれば第二夫人、第三夫人など珍しい事でもない」
「あぁああああああああ! なんでそんなに寛容なのですか!? 不誠実だとは思わないのですか!?」
「カズマが、本気で言っているということがわかるからな。ちゃんと向き合ってくれて、出してくれた答えだ。それがどんなものでも受け入れるさ。惚れた弱みというやつだな。それに、めぐみんはカズマをあきらめることができるのか?」
「それは……無理ですけど」
めぐみんの言葉がどんどん弱く、声が小さくなっていく。
痛烈に批判されると思っていたが、最低な返答をした相手にフォローされてる。なんだこの状況。
「私も、めぐみんも、難儀な男に惚れてしまったな」
「……まったくですね。カズマ! 第二夫人は私ですからね!」
「正妻とか第二夫人とか関係なくみんなを平等に愛して、全員を幸せにするよ。こんなことしちまってるから信用できないかもしれないけど、行動で示してくよ」
「……もう十分わかってるから、受け入れるんですけどね」
めぐみんが聞こえるか聞こえないかの声でそう呟く。ばっちり聞こえてしまった。
「ありがとな、めぐみん」
「そ、そこは聞こえないふりをするところですよ、カズマ!」
俺は、改めてみんなを幸せにしようと誓ったのだった。
「カズマもようやく大人になったのね……身体じゃなくて、心がね……」
「……別に嫌ではないんですけど、私は友達からのほうが……」
うんうんと頷いているアクアと自分の両指を合わせてもじもじしているゆんゆんの言葉を俺は聞こえないふりをすることにした。