この素晴らしい二度目の世界を生き抜く   作:ちゅんちゅん

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この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説が届きました。
とても面白かったです。


この宿敵に挑戦を!

「ぷはーっ! 労働もひとまず最後だと思うとシュワシュワも一味違うな。明日はいよいよクエストを受けるか」

 

「そうねぇ、目的のエリスも貯まったし、明日は装備を新調していよいよ憎きカエルに復讐の時よ!」

 

「クエストに行くんですか? よかったらついていきますよ?」

 

 日々の労働に精を出し、一日の締めに二杯のシュワシュワを友人とあおる。この生活もひとまず今日で最後だ。明日はクエストを受けるという話をゆんゆんに話すと同行しようかと提案してくれる。

 

「それは助かるが……そういえばゆんゆんってレベルいくつなんだ?」

 

「あ、冒険者カード見ますか?」

 

「え、見ていいのか?」

 

 おずおずと冒険者カードを差し出してくゆんゆんからカードを受け取り確認する。

 

「レベル11のアークウィザードか。俺の11倍か…やるな、ゆんゆん」

 

「レベル1のカズマさんと比較したら誰でもレベル倍数になるでしょ。ボケにしても反応に困るつまらないボケね。ゆんゆんは中級魔法と上級魔法、バランスよく取得しているわね。これなら一人でもある程度は何とかなりそう」

 

 それでしばらくぼっちだったのねとつぶやくアクア。討伐モンスターも結構いるし、本当に一人でクエストを受けてたんだな。しかしアクアは時折前回以上に尖ったツッコミをしてくるな……

 

「え、えへへ……パーティー組めなくても一人でどうにかなっちゃうのでずっと一人で……そしたら周りから人付き合いが嫌いな人とでも思われているのか、誰も話しかけてくれなくて……ならこっちからかかわりを持とうとも考えて、積極的に危機に陥っている人がいたら助けてたんですけど、なぜかより孤立して……何がいけなかったんだろう。やっぱり紅魔の里から出てこなきゃよかったのかなとかも考えちゃって……」

 

「もういいゆんゆん! 忘れかけていた何かがよみがえりそうだ! つらかったなぁ!」

 

「大丈夫よ、ゆんゆん! 私たちがいるわ!」

 

「カズマさん、アクアさん……!」

 

 だんだんと目のハイライトが消え、ネガティブのループに陥りそうになるゆんゆんをアクアと二人で止める。なんだろう。胸が痛い。

 

「しかし、ジャイアントトードとは言えレベル1の冒険者だと不安は残るよな。せめて『狙撃』か『ウインドブレス』と『クリエイト・アース』あたりがあればなぁ」

 

「あの目つぶし? 生物相手には有効なこと多いのよね」

 

「おう。肉体労働のついでに主婦の人とか、温泉のおっちゃんから初級魔法は教えてもらってるからあとはスキルポイントさえあれば習得はできるんだけど、『狙撃』はアーチャーの人から教えてもらわなきゃならないから、しばらくは無理なんだよな」

 

「あ、あの、初級魔法って戦闘で使えるんですか?」

 

「意外に思うかもしれないけどな。『クリエイト・アース』を『ウインドブレス』で飛ばして目つぶしとして使うんだ」

 

「カズマは魔法を組み合わせていやらしいことするのよね」

 

「人聞きが悪いわ!」

 

 アクアの言葉に思わず声を荒らげる。まだ何もしていないのに悪名が広がってはたまったものじゃないしな。

 

「す、すごいです、カズマさん! そんな使い方、思いつきもしませんでした!」

 

「そ、そうか?」

 

「あの、よかったらこれ、使ってください!」

 

 紅魔族特有の赤い目をギラギラ光らせながら何かを差し出してくる。紅魔族は感情が高まると目が赤く光るのだが中々に圧がある。ゆんゆんがパーティの誘いを受けてもきっと目が光るから相手が逃げちゃうんだろうな。ってまて、ゆんゆんが渡してきたこれって……

 

「ってこれスキルアップポーションじゃない? 一つ100万エリスはする品物よ! ゆんゆん、こんな貴重なものを気軽にわたしちゃだめよ!」

 

「そうだぞゆんゆん! 冒険者からしたら貴重も貴重なものだ。自分で使うか、売ってエリスに変えたほうがいいぞ?」

 

「でも、その……カズマさんの力になりたいですし、初クエストで役に立てば今後会ってもらえなくなっても、記憶の中には居続けることはできるかなって……」

 

 恥ずかしそうに超ド級に重い発言をぶつけてくるゆんゆん。これ、かなりこじらせてないか? 想いが重すぎる。

 

「ちょっと、ちょっと、カズマさん。ゆんゆんの気持ちが重いんですけど。すごい純粋な目ですごい重い発言をしてるんですけど」

 

「……言ってやるな。ずっと一人だったから距離感がつかめてないんだ」

 

「き、聞こえてるんですけど! そんなに私って重いですか!?」

 

「「重い」」

 

「なんで!?」

 

 

 

このすば!

 

 

 

ジャイアントトード……見た目はカエルそのままだが、座っている状態の高さが3mを超えるほどの巨体を持ち、カエル型とはいえ、体色は緑だけでなく、赤・黄・青・白と多種にわたる。山羊や牛を一頭丸飲みにすることができ、春頃になると卵を産むために家畜の牛を襲い、農家の人や子どもが毎年行方不明になるという。

 

「再び、奴と戦う時が来たか……」

 

「ふっ、任せなさい。カズマ。私も40年間、ただ遊んでいただけじゃないってこと教えてあげる」

 

「ん? 最初の20年は遊んで暮らしてたってことか?」

 

「うぉおおおおおお! ゴッドブローっ!」

 

「やってることはなんも成長してねえ!?」

 

 俺の疑問を無視してカエルへと一直線に向かっていき、効果の薄いと身をもって知っているはずの打撃技を繰り出した。しかし、その結果は前回とははるかに違った。アクアのパンチを受けたカエルは車に引かれた人のごとくふっ飛んでいった。

 

「はぁああああああ!?」

 

「これが、筋力を上げて物理で殴る! よ!」

 

「いや、ねぇわ。ねぇええええわ! お前までダクネスみたいになってどうするんだよ!?」

 

「なっ!? 失礼ね! ちゃんと当たってるじゃない!」

 

「ダクネスが聞いたら泣くぞ……いや、興奮するか……? しかし、どうやってステータス上げたんだ? レベルどれだけ上げても上昇しなかったろ?」

 

「筋トレよ」

 

「は?」

 

「だから筋トレしたのよ」

 

「えぇ……」

 

 まさかの筋トレだった。というかレベルだけじゃなくて反復運動でもステータスって変動するのか。じゃあ、勉強させればアクアの知力も上がるということか?

 

「ふふん。これで分かったかしらカズマさん。私はもう足を引っ張るだけの駄女神じゃないの。正真正銘の女神なの。パーティーに欠かせないアークプリーストなのよ!」

 

「まぁ、確かに前よりは……しかし、なんだろうか、この不安は」

 

 こちらに向き直り、胸を張るアクア。たしかにこの戦闘能力なら前よりも戦術の幅は広がる。しかし、高いステータスを打ち消して余りあるほどの運の悪さと本人のトラブル体質も合わさっていつも何か問題が起きるんだよな。今回もそんな臭いがする。

 

「見直したかしら? それならアクシズ教に入信……は、しなくても週に一度は私と出かけなさい! それとたまにでいいから私にもいたわりの言葉をよこしなさい! えーっとあとは……」

 

 得意げに俺に次々と控えめな要求をするアクア。なんだ、このつつましい要求は。ちょっと照れてるあたりもなんか……良いな。いやいや、あのアクアだぞ? 何かと問題ばかり起こしては、その火消しで奔走させられていたあの日々を思い出せ。労働してる時も男に交じって汗を流しては、休憩時には冷たい水を配って歩き、仕事終わりにはマッサージをしてくれて、俺の体調を気にかけてくれる……あれ、今回は何も問題起こしてないな。むしろ助けてもらってばかりじゃ……

 

「あ、あとは、その、たまには褒めてくれたりとか、感謝の言葉をくれたりとか!? あとはあとは……」

 

 なんだこのかわいい女神は。いやいやいや、こいつはアクア。あのアクアだぞ!? 今回も絶対に何か残念な……ん? あれ? さっきアクアがふっ飛ばしたカエル、こっちに来てないか?

 

「お、おい、アクア?」

 

「屋敷を手に入れたら、料理も食べてもらいたいわね! 料理も練習したのよ! そしたら感想とか……」

 

「おい、アクア! アクアさん!? アクア様!」

 

 どんどん近づいてくるカエルに気が付かないアクア。俺の必死の呼びかけむなしくついにカエルがアクアの真後ろに到着する。

 

「これは、いやじゃなかったらなんだけど、この人生を全うしたら、私と……あれ? なんか急に暗くなったんだけど、もう夜に……あっ」

 

 アクアはなにかすごく重要そうなことを言いかけたあたりでとんちんかんなことを言って振り向き、ようやくカエルに気が付いた。ゆっくりと上を向き、震える声でこう続けた。

 

「か、カエルってよく見たら可愛いと思うのよ……また、なのね……? へぶっ」

 

 そしてそのまま捕食された。それは見事な捕食されっぷりだった。

 

「く、食われてるんじゃねぇーーーーっ!」

 

 

 

このすば!

 

 

 

「うぅっ……ぐずっ……あ、ありがどぉ……かじゅまぁっ、……ありがぁとぉ……! ありがぁとねー……っ! 」

 

「すごい勢いでふっ飛んでたから、打撃……効かないってこと忘れてたな……」

 

「うえっ……うえぇー……また、また汚された……女神なのに……私、女神なのにぃい……」

 

 もう何度目になるかもわからない粘液まみれになりながら俺に抱きかかってくる。生臭っ! あぁ、服に粘液が、あと柔らかいものがいろいろと。いやいやいや、今までそんなこと意識したことなかったろ!

 

「もう、帰ろう。3日以内で5匹倒せばいいんだからさ。おとなしくゆんゆんに頼るなり、めぐみんを仲間にするなりしよう」

 

「……めぐみん」

 

「そうそう。前回もそうだったろ。今日は帰ろう。風呂入って、シュワシュワ飲んでさ」

 

 さめざめと俺の胸で泣いていたアクアがめぐみんの名前を聞いた途端にピタッと止まった。仲間と聞いて思うところがあったのだろう。そうだ、いつも俺たちは協力して困難を乗り越えてきたじゃないか。

 

「――って」

 

「ん?」

 

「おぶって」

 

「はぁああああああ!? 何言ってんだ!?」

 

「いっつもめぐみんはおぶってたじゃない! なんで私は駄目なの!? カエルに食べられたから!? そうなんでしょ! 私に失望したんでしょ!? どうせ私は駄女神よぉー……」

 

 ふたたびさめざめと泣きだすアクア。こいつはこいつでいろいろと気負っていたのかもしれない。しっかりしようとしてたのも俺のためってのは痛いくらいわかる。

 

「仕方ねぇなぁ……ほら」

 

「えっ……いいの?」

 

「お前が言ったんだろ。ほら、帰るぞ」

 

「う、うん!」

 

 思えば、こうしてストレートに甘えられたのは初めてかもしれない。いっつもいっつも自分は悪くないってツラしながらあれやってこれやってと傍若無人に……まぁ、こんな感じなら悪くはないかな。

 

「あれ、カズマさん、なんか前かがみに――」

 

「思っても口に出すなよ!?」

 

 

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