この素晴らしい二度目の世界を生き抜く 作:ちゅんちゅん
これでも3回書き直してるんだぜ……
「はい、確かに。ジャイアントトードを三日以内に五匹討伐。クエストの完了を確認致しました。ご苦労様でした」
めぐみんを大衆浴場へと送り届けた後、冒険者ギルドの受付に報告を終え、規定の報酬をルナさんから貰う。仕留めたカエルの内五体は爆裂魔法で消滅したため、買取にはならない。若干もったいない気もするが……
俺が自分とめぐみんから預かった冒険者カードを渡すと、ルナさんはカウンターに置いてある魔道具を操作して、手早くチェックを終えた。
「ではジャイアントトード二匹の買い取りとクエストの達成報酬を合わせまして、十一万エリスとなります。ご確認くださいね」
十一万エリス。あのカエルが移送費込みで一匹五千エリス。そして、クエスト達成報酬が十万エリス。クエストは四人から六人でパーティーを組んで行うのが一般的なので、普通の冒険者の相場だと、一日から二日をかけて命懸けで戦い、普通はカエルが消滅することはないので、八匹の取引と報酬、合わせて十四万エリス。五人パーティーだったとして、一人当たりの取り分が二万八千エリス。いやぁ、相変わらず……
「割に合わねぇー……まぁ、それよりも……」
俺は改めて自分の冒険者カードを見ると、そこには冒険者レベル8と記されている。ジャイアントトードは駆け出し冒険者にとってレベルを上げやすい部類のモンスターではあれど、三匹狩った程度でレベルが8。低レベルな人間ほど成長が速いとはいってもこの成長速度はいささかおかしい。レベルアップに伴い、冒険者カードに記されているステータスの数値が多少は上がっている。だが、あまり強くなったという実感は無い。前の世界ではレベルも90を超えていたし、あの時とは比べると見る影もない。とはいえ、一番気になるのはレベルアップの速度ではない。スキルポイントだ。
「あれ? カズマさん。冒険者カードとにらめっこしてどうしたんですか?」
「おお、相変わらず時間ぴったりだな。ゆんゆん」
「べべべ、別に隠れて待ってたりしてないですよ!?」
「何も言ってないよ?」
「はぅあ!?」
「まぁ、座りなよ。俺もシュワシュワ頼むかな。すみませーん! こっちにもシュワシュワ一つくださーい!」
「しつれいします!」
冒険者カードを見ていると、ゆんゆんが声をかけてくる。手にはシュワシュワとから揚げを持っている。いつもの俺たちの鉄板メニューだ。席に座るように促すと、ゆんゆんは断ってから俺の隣に座った。……なんで隣?
「あ、あの……ゆんゆん?」
「はい? なんですか? カズマさん」
すごく純粋な目でこちらを見るゆんゆん。自分がおかしいことをしているという認識は全くないらしい。4人掛けのテーブルに二人で横並びに座るって明らかにおかしいだろう。この子は人との距離がおかしい節がある。そこら辺のクズ男の手にかからないか不安で仕方がない。俺が守らなければ……
「いや、何でもないよ。俺が冒険者カードを見ていた理由だけど……直接見てもらったほうが早いかな」
そういって俺は冒険者カードをゆんゆんに手渡す。ゆんゆんは両手で俺の冒険者カードを受け取るとふんふんと内容を検める。
「えっ、もうレベル8なんですか? それにこのスキルポイント……潜在能力が高いって言っていた通りですね!」
「それが、俺はまだカエルを三匹しか倒していないうえに、最初はスキルポイントも0だったんだよ」
「ええっ!? ということはカズマさんはレベルがすごい上がりやすい体質の上にレベルアップの度にスキルポイントを2ポイントももらえるってことですか!?」
「そういうことになるな。自分の才能が、怖いぜ……」
「す、すごいです! すごいです、カズマさん!」
俺のキメ声にゆんゆんが目を輝かせ俺を褒めたたえる。そう、ゆんゆんの言う通り、俺はレベルアップの度になぜか、ほかの人とは違ってその倍の2ポイントのスキルポイントが手に入る。なので現在の俺のスキルポイントは16ポイントになる。
「それで、どういったスキルを習得するか悩ましいんだよなぁー……」
「なるほどー」
「それならば、カズマもスキルポイントをためて爆裂魔法を習得するほかないのでは?」
「め、めぐみん!?」
いつの間にやら公衆浴場から戻ってきためぐみんがゆんゆんの後ろから俺の冒険者カードをひったくる。
「まったく、カズマがすでに誰かと飲んでいるのでどこの馬の骨かと思いましたが、ゆんゆん、貴方でしたか」
「めぐみん! なんという偶然! なんという運命のいたずら! さぁ、勝負よ!」
「しませんよ。というかそこをどいてください。カズマの隣は私の席です」
「な、なななななな!? めぐみん、貴方、カズマさんとどういう関係なの!?」
「パーティーメンバーですが? そういうあなたはカズマのストーカーですか?」
大げさな身振り手振りでめぐみんを指さすゆんゆんにとにかく平坦な声で返すめぐみん。何あの子、怖い。しかもさらっとストーカー認定してるし。
「す、ストーカーじゃないわよ! 私もカズマさんのパーティーメンバーなんだから!」
「……本当ですか? カズマ?」
「で、ですよね! カズマさん!?」
明らかに疑っているめぐみんが俺に真偽を問いかける。その横で嘘をバラさないでということを目で訴えてくるゆんゆん。子犬みたいな目でこっちを見ないでくれ。俺はゆんゆんのその眼には弱いんだよ。危なっかしくて心配だから、ゆんゆんはなるべく俺の目の届く範囲に置いておきたいとは思っていたから、これを機にパーティーメンバーになってもらおう。
「おう。とはいえ俺もアクアも2回しかクエストに行っていないうえに、初回は俺とアクアのわがままで二人で行ったし、ゆんゆんは今日は都合で一緒に行けなくてな。パーティーメンバーには違いないんだが、まだ一度も一緒にクエストにはいったことないんだよ」
「か、カズマさぁん……!」
俺の言葉にゆんゆんは感動したように俺の名前を呼ぶ。この子も、変な見栄なんか張らなきゃいいのに。
「ふっ……私はカズマたちと一緒にクエストに行きましたけどね」
「なっ!? なによ、私のほうが先にパーティーに入ったんだからね!」
「はっ、一度も一緒にクエストに行っていないのでは、もはやそれはパーティーメンバーではありません!」
「あーっ! なんてこというのめぐみん! 勝負よ! 今日こそは決着をつけようじゃないの!」
「返り討ちにしてやりますよ!」
一触即発の雰囲気のめぐみんとゆんゆん。前の世界では見慣れた光景ではあるが、今日はめぐみんが乗り気だな。とはいえここはギルド。みんなで食事をしたりシュワシュワを楽しんだり、クエストを受けたりする場所だ。けして喧嘩をする場所ではない。いや、してるやつもいるけど……
「おちつけ、お前ら。仲がいいのはわかったから、まずは飯を食おうぜ」
「それもそうですね。あっ、私もシュワシュワ飲みたいです!」
「それなら、めぐみん。私のわけてあげよっか?」
「カズマの方がいいです」
「なんでぇ!?」
ゆんゆんの気遣いを軽くあしらい、さらっと俺のシュワシュワを物理的にスティールするめぐみん。頼んだばかりのシュワシュワをとられてしまった。
「むっ……」
「? めぐみん? 飲まないの?」
「な、なんですか!? 飲みます。飲みますよ!」
手に取ったシュワシュワをじっと見つつ、意を決したようにシュワシュワを一気にあおるめぐみん。心なしか顔が赤い。そういえばめぐみん、あんまり強くなかったもんな。にしても一口で軽く酔ってるのか?
「これが、大人の味……ですか……」
「あれ? めぐみんってシュワシュワを飲んだことなかったの?」
「あるに決まってるじゃないですか! 同い年なのに子ども扱いしないでください!」
「してないよ!?」
三人でワイワイと飲んでいたら、後ろから何者かがこちらのテーブルに歩いてくる。さすがに騒ぎすぎたか?
「すまない。ちょっといいだろうか……」
「あっ、うるさくてすいませ――」
そして、俺は声の主を見て思わず絶句した。頑丈そうな金属鎧に身を包んだ、金髪碧眼の美女だった。俺よりも一つ二つ年上だろうか。鎧のせいでその体型は分からないが、その美女は、何だかとても色気があった。クールな顔立ちなのに、何だろう、嗜虐心を煽ると言うか……とどのつまり、俺たちの三人目の、いや、ゆんゆんがいるから、四人目の仲間、ダクネスがそこにいた。
「募集の張り紙。見させてもらった。まだパーティーメンバーの募集はしているだろうか」
そういってダクネスはアクアが張り出したバーティーメンバー募集の張り紙を差し出してくる。
「まだ募集してるよ。といってもあと一人くらいの予定だったけど。希望者か?」
「そうか。よかった。貴方のような者を私は待ち望んでいたのだ。私の名前はダクネス。クルセイダーを生業としているものだ。……ぜひ私を! ぜひ、この私を、パ、パパパパ、パーティーに!」
「おい、興奮が駄々洩れだぞ。場所をわきまえろよ」
「はぁあん!? 初対面の相手にこの物言い! わ、私の目に、狂いはなかった!」
はぁはぁ言いながらパーティーに参加したいという旨を伝えてくるダクネス。久しぶりすぎて自然と口が悪くなってしまった。
「クルセイダーですか! このパーティーには前衛がいませんし、丁度よいのではないですか、カズマ! まぁ、性格には難がありそうな気がしなくもないですが……」
「私はカズマさんの決定に従います!」
「そちらの二人は、パーティーメンバーの方か。よろしく頼む」
凛々しい表情でめぐみんとゆんゆんに挨拶をするダクネス。お前の表情筋どうなってるんだ。なんで一瞬で興奮したり冷静になったりできるんだ。
「と、ところで……そこの彼女がパーティーメンバーということは、先ほど通りを歩いていた粘液まみれの二人は、貴方のパーティーメンバーだな? な、なにを、何をしたらそうなるんだ!?」
「あ、あぁあああ!? カエルが……カエルがぁああああ!?」
「めぐみん!? どうしたの、めぐみん、大丈夫!?」
「俺の不手際で、地中から湧き出たジャイアントトードに頭から捕食されかけ――」
捕食されかけたことによるトラウマで頭を抱えるめぐみんとそれに戸惑うゆんゆんを横目に何があったかを説明すると、興奮からか話の途中でダクネスがはぁはぁと息を荒くして口を開く。
「と、年端もいかない女の子になんという仕打ち! なんて奴だ許せない! ぜひ私を――」
「勘違いしないでください。カズマのせいではありません。実際、最後に至近距離でカエルが湧かなければカズマの作戦は完璧でしたし、私は、この結果には納得しています。カズマが批難されるのは聞き捨てなりません」
「……すまない。興奮で我を忘れていた。「興奮したっていった?」貴方たちは、互いを想いあっているのだな。「ねぇ、興奮したって言った?」何も知らないのに、ひどいことを言ってしまった。申し訳ない」
興奮したダクネスの言葉にめぐみんが怒気を含ませ割り込む。驚いた表情のあとに、深々と頭を下げて俺に謝罪した。めぐみんがここまで言ってくれるとは思っていなかったので面食らってしまう。
「……だそうですよ。カズマ」
「えっ? あ、あぁ。俺はそんなに気にしてないし、そっちも気にしなくていいぞ」
「君は度量の大きい男だな。ありがとう。この流れで言うのも憚られるのだが。どうか私を、貴方たちのパーティーに入れてもらえないだろうか」
「私とゆんゆんはカズマの意思に従います。どうしますか?」
そういってめぐみんは俺を見る。ゆんゆんも頷いている。ダクネスの誠意ある対応にめぐみんは納得したのか言葉に敵意はない。ダクネスのパーティー加入の可否は俺にゆだねられるらしい。
「歓迎するぜ、ダクネス。明日、もう一人のパーティーメンバーを紹介するから……そうだな、昼ぐらいにギルドに来てくれないか?」
「わかった。それと、重ねてになるが、本当に失礼なことを言った。すまない」
「気にするなよ。それにこれからは同じパーティーの仲間になるんだ。あんまり堅苦しいとうまくいくものもいかなくなるぞ、ドMクルセイダー?」
「んなぁっ!? い、今は真面目な場面だろう!? と、時を、考えろ……」
俺のドM認定に、興奮したのか、歯切れが悪くなるダクネス。ここは追撃しとくか。
「お前、今、興奮したろ」
「しましたね」
「え、えっと……」
「し、してにゃい! 興奮なんてしてないからな!?」
このすば!
「おい、アクア」
俺が馬小屋に戻ると、アクアはすでに寝ていた。しかし俺にはわかる。こいつは今、寝たふりをしている。
「おいってば。起きてるんだろ?」
「……すぅすぅ」
「いいのか? 口には出せないすっごいことするぞ?」
「……っ!?」
アクアの寝息が不自然に止まる。明らかに反応したな、今。どういうつもりだ、こいつ。
「これは同意の上ってことでいいんだな? ふふふ……」
思わせぶりなセリフを言い、近くの藁を押したり、近くによっては離れたりと物音を立てつつ、アクアを観察する。
「……あっ」
「おはよう。アクア?」
「だましたわね! 私をだましたわね、カズマ! 面白かった!? 私が内心アワアワしてるの想像して楽しんでいたんでしょ!? ひどいわ、カズマぁ! う、うわぁあああああん!」
何をされるのかと薄目を開けてこちらを見ようとしたところ、ばっちり俺と目が合う。途端に俺のジャージを掴んでゆすってくる。
「目に見えて避けられると、そういう気分にもなるっての。で、なんで急に逃げた上に寝たふりなんてしたんだ?」
「ぅぁ……えと……」
俺の言葉に急に力を緩め、消え入りそうな声で言いよどむアクア。こいつの調子がおかしいとこっちまでおかしくなる。アクアに似合うのは、あの無邪気な笑顔だからな。
「まぁ、言いたくないならいいけどさ。これでも俺は、アクアのことを相棒だって思ってるんだぜ? なんていうか、少し寂しいなって思ってさ」
「う、うぅ……ごべんねぇ! ごべんねぇ、かじゅまぁ!」
「うおっ!? ガチ泣き!? まじか!」
俺に抱き着いて泣き出すアクア。これ嘘なきとか、一時的な感情の高まりによる涙じゃなくてガチの泣き方だ。とりあえずそのまま落ち着くまでアクアの頭をなでて宥める。
「カズマさんは私のこと真剣に考えてくれてたのに、私ってばダメね……私、あんなこと言っちゃったから、どんな顔してカズマさんと話せばいいのか、不安で……」
「あんなことって、甘い感じがどうのってやつか?」
「言葉にしないで! 思い出すだけで色々な感情が沸き上がっちゃうんだから!」
「で、あの言葉でどうしてそうなるんだよ?」
「前に、カズマさんに屋敷を追い出されたことあったでしょ?」
「ああ、あのときか。あれは本気でイラついたな」
「その時の、カズマさんの顔が忘れられなくて……嫌われたって思ったら、足元が崩れるような感覚で……カズマさんって執念深いじゃない? 言葉では許してくれても、本心はわからないし……」
「おい。なんで急にディスりだしたんだ、お前」
すごい深刻そうな顔で急に俺をディスりだすアクア。なんだこいつ、喧嘩売ってんのか。
「わ、悪気はないの! 本当よ!? そ、それでね? 私って、よく調子にのっちゃうっていうか、暴走することよくあるじゃない? それで、自分がしてきたことを思い返したんだけど……だけど……」
「おう」
すごい気まずそうに、そして口に出してしまえば何かが終わってしまうような、そんな表情をするアクア。今、こいつは色々と葛藤しているのだろう。そして同時に、俺も、その言葉を聞けば、この関係が何か変わってしまう。そんな予感がしていた。だがそれ以上に、この迷子になった子供のような顔をするアクアをみて、思ってしまった。そんな顔はお前には似合わない、と。
「ほら、話してみ。どんな話でも受け止めてやるからさ。何年の付き合いだと思ってるんだ? 俺の言葉が嘘じゃないことぐらい、俺についてる女神さまならわかるだろ?」
「カズマ……かじゅまさんに嫌われたくないのぉおおお……あんなこと言って、拒否ざれ゛だら゛ぁ、わたし、わだじぃいいいいい」
「お、おいおい。落ち着けって。大丈夫だから。むしろ、今更お前のことを嫌いになるとかありえないから。そりゃ、たまにはイラっとしたり、転生特典でちゃんとしたものもらえばよかったとか思ったり言ったかもしれないが、それ以上に俺はお前に救われてるんだ。たとえ死んだってアクアは俺の隣にいてくれる。そう思うだけで俺は、寿命で真夜中に一人で死ぬって時ですら乗り越えられたんだ。本当は、孫とか息子に看取られて力尽きるって決めてたのにさ。ほんと、人生ってままならないよな。最後まで思い通りにならないんだからな」
あの心臓が動かなくなっていく感覚は今でも忘れられない。何度か死んだことはあったがどれも即死だったしな。じわじわと死に向かうあの感覚は人生で一度だけ、それも一番最後だけでいいわ。
「か、カズマさん……」
うるんだ目でこちらを見てくるアクア。ということはあれか、超簡単にするとアクアは俺に気のあるような発言をして、その気はないですって返答されるのが怖くてこんな態度をとったってことか? なんだそれ、可愛すぎだろ。
「ま、まぁ、そういうこった。だから、安心しろよ」
「うん!」
俺の言葉にアクアは満面の笑みで頷く。ああ、やっぱり、アクアには笑顔が似合う。
「あとあれだ、お前、俺のこと好きなの?」
「もちろん大好きですけど?」
「即答かよ……」
俺の問いかけにアクアが顔を真っ赤にしながら即答する。しかも大好きとか、照れるだろ。まぁ、ここで好きじゃないとか言われても信じられないけど。
「あー、それなら俺も真剣に答える必要があるな……アクア、俺んむっ」
「その先は、言わなくていいの。カズマさん。私は、貴方の隣にいられるだけで、この上なく幸福なの」
「いや、そういうわけにはいかないだろ」
俺の唇に指を押し当ててアクアが言葉を遮る。真剣に答える必要があるだろうと思ったのだが、どういうことだ?
「私は、恋人とか家族とかじゃ、満足できないの」
「はぁ!?」
そしてとんでもないことを言い出すアクアに俺は思わず目が点になる。
「カズマさん、貴方、女神を本気にさせたのよ? 天寿を全うしたくらいで私から逃げれると思わないことね! この人生を全うしたら、貴方を私の使徒として迎え入れます。嫌だって言ってももう遅いから。うんって言うまで土下座でも何でもして拝み倒してやるんだからね!」
「お前……」
多分これは、アクアの告白なんだろう。平均寿命60歳といわれるこの世界で、前回は80歳まで生きられたが、今回はどうなるかわからないし、数千年だって生きてるかもしれないアクアにとって100年にも満たない時はあっという間なのかもしれない。
「……だめ、かしら?」
なかなか答えない俺に、またあの表情になりかけているアクア。やめてくれよ、その顔。というか弱気になるの早すぎるだろう。
「まぁ、保留で……」
「うわっ、ありえないんですけど。ここは快く受け入れてくれるところでしょ!?」
「こんな重要なことおいそれと決めれるか! お前のことは嫌いじゃないし? どちらかといえば好きなほうだが、それとこれとは話は別だ。時間が欲しい!」
「んー……まぁ、いいわ! 最後には、私を選ばせてあげるんだからね、カズマさん!」
「……お手柔らかに頼むよ」
すっかり元通りのアクアにため息交じりに返す。ひょっとして、俺は判断間違ったのではないかと思わなくもないが、あの笑顔のアクアを見ると、どうでもよくなっている自分がいることに思わず苦笑する。まぁ、未来の俺が何とかするさ。がんばれ、俺。
「ところでカズマさん」
「なんだい、アクア。いろいろあって考えもまとめたいから、俺はそろそろ寝たいんだ」
「口には出せないすごいこと、私にしてくれないの?」
「できるか!」