この素晴らしい二度目の世界を生き抜く   作:ちゅんちゅん

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このファン、新イベント始まりましたね。
ハードがワンパンできなくてつらいです。


この右手にガラクタを!

「おはよう。カズマ!」

 

「なにしてんだ、アクア」

 

 あの後、延々と思考の波に飲まれ結局寝付けたのは朝日が昇ってきてからだった。目が覚めた時、寝不足特有の頭に靄がかかったようなけだるい感覚が俺を襲う。視線を横にやるとなぜかでかでかとアクアの顔がそこにあった。数秒見つめ合った後、急速に脳に血液が巡る。いろいろと言いたいことはあるが、俺が絞り出せたのはそんな言葉だった。

 

「なにしてんだ、じゃなくておはようって返してほしんですけどー」

 

「……おはよう、アクア。それで?」

 

「それでもなにも、カズマの寝顔を見てたのよ」

 

「人の寝顔なんか見て楽しいか?」

 

 なんてことないようにアクアが言う。寝顔を見られるなんてあんまりいい気もしないが、こうもストレートに言われると、怒る気も起きないな。

 

「当然よ! 一日中だって見てられるわ! 今度一日中寝てみない?」

 

「見られながら眠れるか! てか、今何時だ?」

 

「今は、お昼ちょっと前くらいね。あっ、露店で朝ご飯買ってきたから食べて食べて! この串焼きがたまらないのよね~」

 

「おう。サンキュー。もう昼か……昼……何かあったような?」

 

 アクアが俺に串焼きと水を手渡してくる。いい匂いがすると思っていたが、これか。アクアにお礼を言い、包み紙から串焼き取り出してかじりつくと肉汁とタレの絶妙なハーモニーが口の中に広がる。寝起きに食べるには少し重い気もするが、とてもうまい。しかし、朝ご飯というからには、朝に買ったのだろう。すっかり冷えているので、そこは少しばかりもったいない。

 

「ふふん。お気に召したようね。当然よね。私が選んだんだもの! それじゃあ、私も……ん~おいしいわね、カズマ!」

 

 俺の反応に満足したのか、アクアも同じように串焼きにかじりつく。頬に手を当て、にへらと笑顔になる。なんで、アクアまで今食べてるんだ?

 

「ひょっとして、朝に買った串焼き、俺が起きるまで食べなかったのか?」

 

「何言ってるの? カズマと一緒に食べるために買ってきたのだから、カズマが起きてないのに食べるわけないじゃない」

 

「お、おう。なんか、悪いな」

 

 何でもないようにそういうアクアに思わず照れる。調子が狂う。なんか、もっと残念だったろ、お前!

 

「んー? あっ、なになに? ひょっとしてカズマってば照れてるの?」

 

「て、照れてねぇし!? そういうお前こそ俺が起きるまでわざわざ待ってるとか、どんだけ俺のこと好きなんだよ! 逆に引くわ! 逆に!」

 

「はぁ!? 好きな人と一緒に食事したいって思って何が悪いっての!?」

 

「すまん。勘弁してくれ」

 

 俺の根っこがひねくれているというのもあるとは思うが、どうにもストレートに来られると弱い。自分で顔が赤くなっていることがわかる。見た目は完璧でおまけに残念じゃないアクアに真っ向から好意を向けられてのらりくらりとできるほど俺の人生の経験値は高くないらしい。

 

「とりあえず。串焼きのエリスを払うよ。いくらだ?」

 

「いいわよそんなの。私が好きで買ってきたんだし」

 

 手をひらひらさせて支払いは不要だというアクア。あのアクアがおごりだと!? 毎回、毎回クエストで報酬が入るたびに限界まで飲み食いして、しまいにはツケで遊び歩き、俺に金を無心してきていた、あのアクアがおごりだと!?

 

「すまん。アクア。俺ちょっと耳が遠いままらしい。もう一回言ってくれるか?」

 

「だから、串焼きのエリスはいらないわよ」

 

「どうしちゃったんだ、お前。熱でもあるのか……?」

 

「ちょっ、どういうことよ!? 言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ、カズマ!」

 

「お前が、おごりなんて、そんなことが……」

 

「くっ……今までの自分の行いが憎いわ……!」

 

 俺の反応にアクアは悔し気に拳を握りしめる。あの時と何から何まで違っていて、同一人物かどうかすら怪しむレベルだ。

 

「前までは、自分が一番ラクで、楽しむことを優先してやってきたけど、今は、違うんだから……」

 

 涙目になりながら俺に訴えかけるアクア。そうか、こいつも成長しているんだな。俺と会うまでは女神として、お菓子を食いながら天界から眺めたり、人を小馬鹿にしながら日本人をこっちに転送してるだけだったわけで、いうなれば社会経験は何にもない子どもみたいなものだったのが、こっちで60年生活して、人並みに常識というか、思いやりみたいなものを学んだんだな。そういえば前回、こっちに初めて来たとき、女神なのよ? そんな下々のこといちいち知るわけないでしょ? とか言ってたしな。そう考えると、すごい進歩だな。

 

「それなら、ありがたくおごってもらうとするか。今度二人で夕食行くときは俺がおごるよ」

 

「う、うん! 約束よ、カズマ!」

 

 俺の言葉に、アクアは花が咲いたように笑顔になる。こういうところは、前と変わってないんだよな。どんなに迷惑かけられても、この顔を見るとどうにも憎めなくてな。

 

「ねぇねぇ、カズマ! いつ行く? いつ行くの!?」

 

「今日はもうすぐ昼だし……昼……? あ、あぁあああああ!?」

 

「なに? どうしたの?」

 

「昨日、ゆんゆんとダクネスがパーティーメンバーになったんだが、その顔合わせが昼からだったんだよ」

 

「大変! まだ間に合うはずよ! すぐにギルドに――えっ? ゆんゆんも?」

 

「うん。ゆんゆんも」

 

「毎日会って、飲んでいたからすっかり誘うの忘れてたわね……毎回別れ際に何か言いたそうだったのって、そういうことだったのね」

 

 アクアに言われ、思い返せば思い当たる節がありすぎる。最初にジャイアントトード討伐クエストについてきてくれると言っていたが、なんやかんやでうやむやになってそのままだったから、再び自分から言い出しにくかったんだろうな……こじらせてるなぁ……

 

「とにかく、急いでギルドに行こう!」

 

「そうね!」

 

ドカァン!

 

「うるせぇぞ! いつまでいるんだ! しばかれたいのか!?」

 

「「ご、ごめんなさい!」」

 

 

 

このすば!

 

 

 

「結局、カズマはスキルの習得はどうするのですか?」

 

 ギルドについた俺たちは、ダクネスがいないことを確認すると、ゆんゆんとめぐみんが座っている席へと座り、昼食を食べている。さすがに串焼き一本じゃ足りない。俺の前ではめぐみんが、一心不乱に定食を食べながらスキルについて俺に聞いてくる。普段からあまりご飯を食べれていないらしく、その食べっぷりには鬼気迫るものがある。

 

「まだ、悩んでるところだよ。スキルポイントは潤沢にあるからな」

 

「それならやはり、爆裂魔法でしょう! 冒険者は、アークウィザード以外で唯一爆裂魔法が使える職業です。爆裂魔法を覚えたいなら幾らでも教えてあげましょう。というか、それ以外に覚える価値のあるスキルなんてありますか? いいえ、ありませんとも! さあ、私と一緒に爆裂道を歩もうじゃないですか!」

 

 めぐみんが興奮して鼻と鼻がくっ付く近さで爆裂魔法の勧誘をしてくる。顔が近い。しかし、近くで見るとめぐみんもほんと整った顔をしてるよな。まさに美少女だ。

 

「え、えっと……その、あんまりまじまじと見つめられると照れるのですが……」

 

「いや、近くで見るとめぐみんって美少女だなって思って」

 

「んなっ!?」

 

「ええっ!?」

 

 俺の発言にめぐみんとゆんゆんが顔を赤くして驚きの声を上げる。ちょっとまて、俺は今何を口走った!? 寝不足で調子がおかしい。そういうことにしておこう。

 

「というか二人とも距離が近いんですけど。そんなに近づく必要ないと思うんですけど」

 

「そうよ、めぐみん! カズマさんと近すぎ! そんな、き、きききキスするみたいな距離で話をする必要なんてないわよね!?」

 

「私は気にしないのですが……」

 

 アクアは不満げにゆんゆんが目をぐるぐるさせながら俺とめぐみんを離れさせる。心なしかめぐみんは不満げだ。

 

「それはさておき爆裂魔法についてだがこれが意外と取得できそうなんだよな」

 

「「「はぁ!?」」」

 

 冒険者カードの獲得可能スキルの項目に記載されている爆裂魔法をみんなに見せる。

 

「習得ポイント25ポイント!? レベルの上がりにくい上級職のアークウィザードで20ポイントですよ!?」

 

「あ、あの、冒険者の場合は50ポイントは必要なはずなんですけど……」

 

 めぐみんが驚きの声をあげ、ゆんゆんがその異常さを指摘する。

 

「しかし、カズマの爆裂魔法への理解は目を見張るものがあります。スキルは、その理解によって習得がしやすくなりますので納得ではあります」

 

「えぇっ!? カズマさんってあのネタ魔法と言われている爆裂魔法について詳しいんですか!?」

 

「おい、爆裂魔法について言いたいことがあるのならば聞こうじゃないか!」

 

「考えられるとしたら、前回習得したスキルに関しては、覚えやすいのかしら?」

 

「なるほど……初級魔法しか習得可能になってないから気が付かなかったな……しかし、有能なスキルはないものか……」

 

 ゆんゆんとめぐみんが喧嘩しているのを横目に見つつ、冒険者カードをしまう。やっぱり最初はあの魔法だよな……

 

「すまない……遅れてしまったようだな」

 

「君たちがダクネスが入ったっていうパーティーのメンバーなんだね」

 

 話している間に良い時間になったのか、ダクネスがやってくる。その隣には頰に小さな刀傷があり、ちょっとスレた感じだがサバサバとした明るい雰囲気の銀髪の美少女もといクリスが立っている。

 

「青髪の彼女とは初対面だな。私の名はダクネス。クルセイダーを生業とするものだ。今後とも、よろしく頼む。そしてこちらは私の友人のクリスだ」

 

「よろしくね!」

 

「ええ、よろしくね、ダクネス! 私はアクア。アークプリーストよ!」

 

 仲良さげに話すアクアとダクネスとクリスの三人。しかし、ダクネスの聖騎士モードは違和感があるな。そんな様子を眺めてると、クリスがこちらにやってくる。

 

「ねぇ、キミ! 有用なスキルが欲しいんでしょ? 盗賊スキルなんてどうかな? 盗賊スキルは使えるよー。罠の解除に敵感知、潜伏に窃盗。持ってるだけでお得なスキルが盛りだくさんだよ。キミ、初期職業の冒険者なんでしょ? 盗賊のスキルは習得にかかるポイントも少ないしお得だよ? どうだい? 今なら、シュワシュワ一杯でいいよ?」

 

「乗った! すみませーん! ここの人にシュワシュワ一つくださーい!」

 

 

 

このすば!

 

 

 

「とまぁ、敵感知と潜伏はこんな感じ」

 

「うん。覚えられるようになってるな」

 

 実際にスキルを見せてもらうことにより、冒険者カードの習得可能スキルに項目があることを確認する。

 

「最初は爆裂魔法にしてもらいたかったのですが……これもカズマの選択。心苦しいですが私はカズマの一歩を祝福しましょう!」

 

「私としては、中級魔法とかおすすめですけど……後で覚えてみませんか!?」

 

「カズマが初めてスキルを覚える瞬間……見ないわけにはいかないわ!」

 

「カズマは皆から好かれているのだな」

 

 クリスにスキルを教えてもらっている後ろでみんなが見ている。前回は俺とクリスとダクネスだけだったので新鮮だな。

 

「こうもギャラリーが多いとやりにくいけど、特にあたしの一押しはこれ! いいかい? よく見ていて!」

 

「うっす! お願いします!」

 

「『スティール』!」

 

 俺に向けて突き出した手をクリスが掛け声とともに握りこむ。次の瞬間、手が輝き、俺の所有物から何かがクリスの手に握りこまれる。ふふふ、甘く見るなよ。前回の反省を生かし、財布はアクアに預けてある。何を取られても俺に痛手はない!

 

「……ん?」

 

「あ、あれ?」

 

 クリスの手の光が収まると同時に、俺は下半身の違和感を感じた。ジャージをなでる風がダイレクトに伝わるような感覚。直接ジャージの生地に肌が触れているような……おい、もしかして、これって……

 

「あの、すみません。パンツ返してください」

 

「あ、あわわわわ……」

 

 俺の言葉にクリスも自分が何をスティールしたのかを理解したのか、顔を真っ赤にして目を回す。人の往来で男からパンツをスティールする痴女がそこにいた。

 

「……撃っていいですか? あの痴女に爆裂魔法を撃っていいですか?」

 

「やめろ! 事故みたいなものだから! つか、それをやられたら俺も死ぬ!」

 

 何を血迷ったのか、クリスに爆裂魔法を撃ちこもうとするめぐみんを止める。

 

「あ、あれって、か、カズマさんのぱ、パパパ……!」

 

 ゆんゆんは両手で顔を覆い、指の隙間から目を赤く輝かせながら俺のパンツをガン見し、

 

「ふ、ふふふ……どうしてやりましょうか……あのパッド女神……」

 

 アクアは不吉に笑い、

 

「ななななな、く、クリス! お前はこんな人の往来で何をしているのだ!?」

 

 ダクネスは割と真面目にクリスをしかりつけていた。俺のパンツ一枚でまさかこんなことになるとはだれが想像できようか。だって野郎のパンツだよ? しかし、まさか世界を超えてクリスにやり返されるとは思わなかった。

 

「あ、あの、えっと……ご、ごめんなさーーーーーーいっ!」

 

「んなぁっ!? お、おい、待つんだクリス!」

 

 キャパシティーを超えたのか、クリスは大声で謝ると、逃走スキルでも使っているのか、目にもとまらぬ速さで俺のパンツを握りしめたまま、その場を逃げ出した。まさか、そこまでやり返すとは……

 

「……えぇー……どうするんだ、この状況」

 

 追伸、スキルはちゃんと習得できました。

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