彼女が遠い未来から過去にやって来る前までを描きます。
私は、セーラーコスモス。
私が過去に来た理由―それは『あの時の戦いをやり直すため』。
あの時…、あの時、コルドロンを完全に消滅させていたら…。
―50世紀の地球―
黒いセーラー戦士が舞い降りた。
彼女は、次々と破壊していく。
私は、地球を守るために戦いを挑んだ。
「侵略者よ!
お前は、何者だ!」
堕天使が答える。
「私は、暗黒の星・カオスを守護に持つ、闇の戦士・セーラーカオス!」
「カオス…」
その名前に聞き覚えがあった。
―コルドロンに巣食っていた暗黒星・カオス。
カオスは、セーラーギャラクシアを使って、宇宙中のセーラー戦士を襲った。
しかし、純白に輝くセーラー戦士により消滅した。―
「お前…、あの時に消滅したはずじゃ…」
「光あるところ、闇もまたある。
コルドロンが光なら、私は闇。
だからこそ、何度も生まれることができるのさ!」
セーラーカオスの手に闇のオーラが現れた。
「ブラックホール・バースト!」
手から放たれたオーラは、球体を生み出した。
球体が完成した瞬間、まるでブラックホールのように吸い込みだした。
ゴォォ…
「これでこの星も終わりよ!」
私の目の前でさまざまなものが暗黒の檻に消えていく。
「私がこの星を守ってみせる!」
コスモス・ティアルを掲げた。
「ラムダ・ヒーリング!」
白く輝く光が放たれる!
しかし…
「ホッホッホーッ!
もっとパワーをよこすのよ!」
「!?」
セーラーカオスの体が巨大化していく!
「コスモス・ラプソディー!」
「カオス・トラジディー!」
光と闇のメロディがぶつかり合う!
「キャッ!」
「もう終わり?」
セーラーカオスが薄笑いで近寄ってくる。
体が動かない。
「確か、お前が全宇宙を統べるセーラーコスモスだったわよね」
不意にカオスの手に刀身が黒に染まった大剣が現れた。
「宇宙一のセーラー戦士を倒したら、私が最強のセーラー戦士になることを意味するのよね?」
セーラーカオスの足が止まった。
「さようなら、セーラーコスモス」
大剣を振りかざしてくる。
(お願い…動いて…)
カツーン!
コスモス・ティアルで刀身を押さえた。
「まだ楽しませてくれるのね!
宇宙一のセーラー戦士は、こうでなくっちゃ!」
セーラーカオスは、間合いを取った。
私は、コスモス・ティアルにすがりつつ、立ち上がった。
「ダーク・ジェイル!」
黒い稲妻が私に向かって落ちてきた。
「アアッ!」
「痺れるでしょう?」
「ウッ…」
「そうそう、動くだけでお前のエナジーを奪うから」
その言葉通り、私の体力が奪われていくのを感じた。
「お前の…好きなようにはさせない…!」
「その体で何ができるというの?」
私の体がピンク色に輝きだした。
「全宇宙に散らばる
私に
「パワーをいくら私にぶつけても、吸収するまでよ!
ズキン!
「ウッ!」
胸が焼けるように痛い…。
それは、セーラー・クリスタルのパワーが奪われていく証。
しかし、
「全てを静寂的なコスモスに変える『ラムダ・パワー』よ!
今、ここに花開け!
コスモス・ラムダ・フラワー・フュージョン!」
コスモス・ティアルから神聖なメロディとともに虹色の光が放たれた。
光は、次第に大きな翼となり、地球を包み込んだ。
ひらりひらりと羽根が舞い降りてくる。
セーラーカオスからピンク色の彗星が現れ、私の元に降ってきた。
闇の巨人の姿は消え、翼をもがれた堕天使の姿に戻っていた。
いつの間にか胸の痛みが消えていた。
「苦しい…。助けて…」
堕天使は、もがき苦しんでいる。
「もう…もう…攻撃しない!
地球から去るから…、お願い…!」
「本当にそう?」
「誓う!だから、命だけは…」
その言葉を信じた私は、愚かだった。
闇の星が約束など守ることなど、決してなかったのだ…。
「……いいでしょう。
セーラー戦士は、守護星の平和を守るために戦うものよ。
セーラーカオス、あなたも母星に帰りなさい」
私は、コスモス・ティアルを軽く振った。
「助かった…」
「さぁ、守るべき星へ…」
そう言いかけた時だった。
体に黒い蔓がまとわりついてきた。
「カオス!」
「私が本当に心を入れ替えたとでも?
甘い、甘い!
やはり宇宙で最強のセーラー戦士は、この私だわ!」
パワーを回復した堕天使の姿があった。
「…騙したの!?」
「ええ、そうよ。
闇の星が偽らないとでも?」
「邪悪な…、ウッ!」
蔓は、私の体を締め付ける。
「最期に教えてあげる。
私がセーラー戦士になれた訳。
覚えているでしょう?
セーラーギャラクシアが一度コルドロンにセーラー・クリスタルを溶かしたことを」
「しかし、エターナル・セーラームーンの
「『
実は、セーラー・クリスタルの欠片がほんの少しだけコルドロンに残ったのよ。
私は、その欠片を
だからこそ、闇のセーラー戦士として、ここにいる!」
言い終わると同時に、セーラーカオスの姿が消えていた。
「!?」
それと同時に蔓が動いた。
「ねぇ、コスモス」
耳元でカオスが囁く。
目の前にはブラックホール。
「この蔓を切ったら、どうなるかしらね?」
「………」
カオスは、私をブラックホールの中へ永遠に葬り去ろうとしている。
けれど、私の死では終わらない。
けれど、セーラーコスモスの欠落は、他のセーラー戦士と違い、大きな影響を与えることとなる。
セーラーコスモスの死は、
しかし、セーラーコスモスには他の戦士にはない特別な能力があった。
自身の死が近づいていることを悟ったセーラーコスモスは、次のセーラーコスモスに相応しいセーラー戦士にコスモス・クリスタルを託すのだ。
こうして
今、セーラーカオスがセーラーコスモスの死を望んでいるのなら、それは…。
「お前…、この世界を終わらせるつもり!?」
返ってきた答えは、予想外だった。
「私の目的は、宇宙最強のセーラー戦士になること。
この世界を終わらせたら、意味がないわ」
―私からコスモス・クリスタルを奪う―、それが
「さあ、私の分身よ!
宇宙最強の戦士の肉体を滅ぼせ!
そして、コスモス・クリスタルを奪い取れ!」
次の瞬間、辺りが真っ暗になった。
「!?」
四方八方から体が押しつけられる。
(私、終わるの?)
肉体が悲鳴をあげている。
(戦いが終わる…、でも…)
私の背に白い翼が生えた。
(このままじゃ、
それだけは、絶対に嫌!)
「この宇宙よ、あるべき姿を取り戻せ!
コスモス・アテリアル・リムーバル!」
ブン!と羽ばたいたかと思うと、光速をも超える速さでブラックホールの中を駆け抜けた。
「フンフフフ、もう宇宙の塵になったかしら…」
堕天使は、優雅に舞いながら、事象の地平面に近づいた。
とたんに、白く輝きだした。
「!?
何が起きてるの!?」
驚きを隠せないセーラーカオスの目の前でブラックホールが消滅した。
キラキラと破片が舞い散る中、白天使が現れた。
「このブラックホールは、闇の意志で生まれたもの…。
ゆえに、この宇宙は、存在を認めない。
セーラーカオス、もうあなたを消滅させるしかない!
コスモス…!」
「無駄よ!
カオス…!」
「コスモス・スターバースト・インフィニティ!」
「カオス・ダークパワー・エクスプロージョン!」
二人は、命懸けの必殺技を放った。
二人の体が光の粉となって、薄れていく。
カオスのセーラークリスタルにヒビが入るのが見えた。
(負けない!)
(カオス・クリスタルが砕け散る前に、コスモス・クリスタルを!)
パリン…………………!
カオス・クリスタルの
「アアア…!」
セーラーカオスの顔が急にひび割れた。
「ヤット クリスタル ヲ テ ニ イレタノニ…
オノレ…コスモス!
ミチヅレ ニ シテヤル!」
腕を伸ばした。
その手は、大きく開かれた。
コスモス・ティアルでその手を払う。
「アアア………」
セーラーカオスの姿は消え、黒い砂だけが残った。
その砂も
やっと倒すことのできたセーラーカオス。
けれど、その代償は計り知れなかった。
ブラックホールを消滅させることは出来ても、中に吸い込まれた物は二度と戻らない。
失ってはならない人たちが消えてしまった。
通りすぎることのできない苦しみ…。
「………過去に戻って、やり直そう。
そうしなければ、この悲劇を避けられない…」
私は、ゆっくりと立ち上がった。
カツン…カツン…
「プルート」
時空の扉の守人の名を呼んだ。
「セーラーコスモス…。
今日は何のためにこの場所へ?」
「…過去へ…行くわ」
「過去に行くことは、歴史を変えることになるのですよ!
あなたは、それを分かって…」
「分かっているわ!
でも、やり直したい…」
「……分かりました」
セーラープルートは、腰に付けていた『時空の鍵』を手に取った。
「本当にあの時間に行かれるのですね…」
鍵を差し出すプルート。
わずかに頷いて、手に取った。
それを確認すると、ガーネット・ロッドを鳴らした。
「時空の扉を開きます。
行きなさい、セーラーコスモス」
虹色の光が私を包んだ。
次第に小さくなっていくのを感じた。