「めでたいのぅ」「やっぱりひかりちゃんもかぁ」
最初に聞こえたのはそんな声で、その次は、舗装もされていないあぜ道や田んぼ、"今どき見ないような”木でできた電柱が視界に入った。
(……?)
どうやら自分は田んぼの中でしりもちをついているらしく、尻の下にはなにかを押しつぶしたような違和感があった。
聞いたものや見たものが頭に入ってこない。
真っ白な思考のまま、こっちの顔を、より正確には頭の上を見たまま会話する周囲の人たちをボゥとみあげていると、
「ひかり?大丈夫?」
横合いからそんな声を掛けられ、自然と
「あ、うん。大丈夫だよ"お姉ちゃん"」
そんな声が出た。
そのあと、家に着くまでのことはよく覚えていない。
何となく覚えているのは、自分が"姉"と呼んだ人物に手を引かれて道を歩いたこと。最初、なぜか思うように歩けず、フラつく自分の足にイラッときたがすぐに慣れたこと。
家は見知らぬ古いつくりであり、入ってから、中にいた夫婦と言葉を交わした。 夫婦は泥だらけの自分を見て驚いていたようだったが、"姉"と一言二言交わした後は途端に笑顔になった。
泥を落としてくるように言われ、"姉"に連れられて風呂に入った。出ると用意されていた服は肌触りのいいとは言えない和風のもので、なぜか上だけで"ズボン"が見当たらなかった。
ぼんやりした頭のまま、居間へと連れられると食事が用意されていた。 夫婦の夫のほうが言ったイタダキマスの声に続いて自分も頂きますを唱え、食事を始める。 一緒に卓を囲んでいる三人は食事の中に会話を挟んでいて、そのなかで、
「ついにひかりも"まりょく"を発現したかぁ」
「たしか、孝美も6歳くらいの時だったと思うし、やっぱり姉妹なのねぇ」
「そうだっけ?」
そんな会話を聞いたのは覚えている。
食事を終え、「もう寝なさい」と母親らしき人にいわれた"姉"の後ろについて少し離れた部屋に入る。部屋は物があたりに散らかっていて生活感があり、子供部屋といった印象だった。
"姉"と協力して布団を押し入れから引き出し、床に並べて、明かりを消して中に入る。
"姉"の気配を隣に感じながら、ふと思った。
(ここ、おれんちじゃなくね…?)
眠気は消し飛び、思わず目をかっぴらいてしまった。
(えっなにこの家。今どきおばあちゃん家でもここまでのナチュナルテイストはそうそうないぞ)
(しかもまりょくってなんだよ…、え?"魔力"か?)
(いや、"まりょく"はまだいい。いやよくないが)
(田んぼからここまで電化製品の類をろくにみてねぇ!電線と電球くらいか!?さがせばラジオくらいはあってもおかしくない雰囲気ではある、っていうか今どきおばあちゃん家でももっと見えるとこに電化製品あるわ!)
(あと服だよ服。なにでできてんだこれ。しかも上だけって、家の規模的に貧乏って感じじゃなさそうじゃん?)
(タ、タイムスリップ的な…?でもだとしたら家族がいるのはおかし、てかその家族との会話もスラスラ…支障なくできてたし???)
「んー、ひかり…?まだ寝ないのぉ?」
「あ、うん もう寝るよっ」
(だめだわかんね、ねよ)
目が覚めて、よくないと知りながらも目をこすりながら、朝食の席に座る。父親であろう男がなにやら後ろをむきながら何かをいじっているのに目が行ったが、それがラジオであると気づく。と、同時に、ラジオのガワが木でできていることに驚愕する。昨日のタイムスリップ説がいよいよ真実味を帯びてきたな…、などと考えつつ、運ばれてきた朝食に手を付ける。
ラジオからはノイズ交じりの音声が聞こえだし、それに満足した男は手を合わせて食事を始めた。
ザーッ≪先日より、カールスラントはベルリンにおいて11回目となるオリンピックが開催され…≫
ザーッ≪昨日の陸上競技男子マラソンでは、扶桑国南洋島出身の…≫
ザーッ≪ヒスパニアにて発生している内乱では、戦場で"ネウロイ"の姿が確認…≫
ザーッ≪このことから各国より"ウィッチ"を含む大規模な連合部隊が…≫
"戦場でネウロイの姿が確認" "各国よりウィッチを含む…"
"…でネウロイの姿が…" "…よりウィッチを…"
"ネウロイ" "ウィッチ"
(ス、ストライクウィッチーズゥゥゥ!)
思わず箸を取り落としたまま固まってしまい、"姉"に声をかけられたところで気づく。
「…おねーちゃんの名前って"たかみ"だっけ?」
「えっ、うそでしょひかり、お姉ちゃんの名前覚えてなかったの…?」
「いや、ちがっ、おねーちゃんは自分の名前、字で書ける?」
「なんだぁ、!お姉ちゃんはもう10歳だものちゃんと書けます!」
そういって"姉"がよく磨かれた木のちゃぶ台に、指の油で書いた字は、
"雁淵孝美"
それを見ると同時に自分が何と呼ばれていたかを思い出し、
(んんんんんンンンン、ァァァァァァ!)
決して表情には出さず、静かに思考がオーバーフローした。
箸を床に落としたまま固まっているところを母親であろう女性、いや、母親が見とがめ、言われるままに箸を拾い、食事を終える。どうやら"姉"は学校に行くらしく、あわただしく家を出ていくのを見送った。 すでに父親は仕事に出たらしく朝食の後片付けを聞きながら自室に戻る。
(ストパンの世界に紛れ込んだどころか外伝(?)主人公になっとるやんけ!)
片づけられる前の布団にもぐりながら思考を続ける。
(雁淵姉妹の孝美とひかり、カールスラント、扶桑、南洋島、決まりつけはウィッチ!、数え役満どころの話じゃないじゃん…)
(てことは今何年だ? えーと原作1944年で十代前半のひかりちゃんが今くらいの年齢ってことは1930年代後半、かな? どーりで電化製品がほとんど見当たらないわけだよ。三種の神器だって戦後の話だもんな…)
(そしてなによりやばいのは)
「"俺が"、"ひかり"ちゃんってことだよ…」
(それつまり、=で戦場行確定ってことじゃんさぁ…)
(ウィッチってべつに強制徴兵ってわけではなかったし、行かないこともできるけどさぁ…)
(それはつまり、ブレイブウィッチーズのお話から"ひかり"の要素が抜かれるわけでぇ、)
(幾つもまずいことがあるが特にやばいのはえーっと)
1、最序盤の扶桑艦隊襲撃で502が到着するまでの被害
2、めっちゃ寒くするネウロイ戦
3、船団護衛
4、巣の破壊
(どれもやばいッッッ、特に3!ピンポイントでクルピンスキーの生死にかかわってる!
いや、そういう意味なら残りのどれもそうだけど)
布団の中で頭を抱えながら、顔から血が引けていくのを感じる。
(い、行きたくねぇ、死にたくねぇもん…。 けどウィッチが死ぬのも嫌、ってかつらい! 極論顔も知らん兵士や将校はまだ無視できるけど顔知ってるウィッチが死ぬのを見て見ぬふりするのはつらすぎる!)
(そんなことしたら後悔の苦しみで残りの人生地獄確定じゃん…)
(つまり行くしかないわけでぇ…、そのうえで生き残るには…)
「戦って生き残れる力…ですかねぇ…」
(この世界の戦場において最強はウィッチ!つまりは魔力の有無)
(魔力だけあったって戦えるわけじゃないだろうけども、魔力のあるのとないのとではまるで違う)
(原作宮藤は魔力の多さで序盤乗り切っていたようなものだし…)
("ひかり"ちゃんの魔力が少なさは原作序盤のウィークポイント、しかし克服する描写はあった…)
(つまり欧州行く前から鍛えておくことは可能!ロスマン先生の助言…助言?も何となく覚えてる! 少なくとも1番…欧州行の前から戦闘力を原作より幾分底上げしておけば、中身"おれ"のひかりちゃんでも原作をなぞっていけるかもしれない)
(いや、魔力周りが原作よりも早くましになればその分原作より強くなることも…、腕のいい人がいっぱいいるわけだし、教えを乞うこともできるだろう。それこそロスマン先生を頼ればいいわけで)
(そうと決まれば…)
「やるべきは魔力の…制御? …何すればいいんだ?」
初手からけっ躓いた感じがした。第一の関門である。
年齢について
劇場版の小説のほうで服部軍曹の魔力発現シーンあったけど、逆にそれ以外に魔力が発現する年齢の参考になる資料が見つかんなかったん あとは西沢飛曹長のエピソードくらいか?
挿絵的に6~8歳くらいかなって判断したので6歳ってことにしたけど幼女の年齢なんて絵からわかりゃしねえよ…
年表とかそのあたり
参考になるものがあんまりない気がする。特に月単位になると一気に大変なのでフワッとした感じにすることに決定
文章を徹底的に切り詰めて書いてしまう癖のせいで描写不足が多い気がする。どうしよ