念能力者(?)なひかりちゃん(?)   作:シチシチ

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前回までのあらすじ
 "俺"は新米ウィッチの雁淵ひかり!
 エースウィッチで姉妹の姉に代わって502に所属していたら、念の修行を目撃されてしまった。
 石を割るのに夢中だった"俺"は背後から近づいてくるロスマン先生に気が付かなかった。
 逃げ出そうとした俺は気絶させられ、目が覚めたら縛られていた。

 念の詳細がばれたら追われることになり(自分に)危害が及ぶ。
 少佐の(言いくるめ)助言で、この場の人間にだけは話すことにした"俺"は少佐に詳しく聞かれ、とっさに、壁に紙を投げて突き刺さらせた。
 少佐たちに念についてさらに説明するべく普段使われていない会議室に転がり込んだ。


 名探偵でもなければ頭脳も大人って程でもないです


原作第4話後編 ~統合戦闘航空団って天才の集まりなわけで~

 「"念"とは魔力を自在に操る能力」

 

 「魔力が誰の体にもあるかはわかりませんが少なくともウィッチにはある」

 

 「しかし、ウィッチの魔力の操作は意識して訓練したものでないと垂れ流し状態です」

 「これを体に留めることを"纏"と呼び、これをすることでただ使い魔を介して魔力を発露させる以上に体は頑強になります」

 

 ペテルブルグ502基地、 

 

 基地内の少し外れた場所にある会議室は、普段は使われない会議室であり、その場にはラル少佐、ポクルイーシキン大尉、ロスマン曹長。そして"俺"がいた。

 

 「"絶"とは魔力を絶つ技術。気配を消したり、魔力の消耗を少しでも抑えることで極度の疲労を回復したりすることもできます」

 

 そこで、"俺"は3人に自分の使う技術"念"の解説をしていた。

 

 「"練"は通常以上の魔力を生み出す技術」

 

 "練"を実演してみせると3人共反応を返す。

 

 「感じましたか?」

 「あぁ」「圧迫感…とでもいうのかしら」「これが他人の魔力…」

 

 3人に"念"の存在がばれた時、少佐から"一人で隠しても限界がある""502の人間が信じられないか?"と言われ、結果信じることにした。

 

 「魔力は邪念を持って攻撃すれば魔力のみで、動くことなく相手を殺しえます。まぁ、少佐方には今更でしょうが」

 

 ひとまず、その場にいた3人にだけ"念"の詳細を告げ、どう扱うかを決めることにした。

 

 

 

 「そうだな。普段から魔力を扱っている我々だ。魔力が強大な力であることも、そんな強大な力を持っているウィッチがたやすく死ぬことも知っているさ」

 「とはいえせっかくですからちょっとした実演でもさせてください」

 

 そういって腰を落とし、腰の前でこぶしを握った腕を交差させる。

 

 「今からもう一度"練"をします。ただし、さっきのものと同じとは思わないでください」

 

 3人が何となく身構える。大尉は立ち上がり腕を少し上げる。曹長も立って腕を持ち上げているし、少佐も組んでいた腕を解いた。

 

 「では少佐。今からあなたを"殺したい"、と思います」

 

 「ほぉ」「ちょっと雁淵さん!?」

 

 大尉が声を上げたが構わず始める。

 

 「あなたを...殺す」

 

 とたん、曹長は身を隠し、少佐と大尉はシールドを張る。

 

 「今のが邪念をもって魔力で攻撃するということなのですが」

 「…なるほど。魔力自体での直接攻撃。ネウロイ相手にはわからないが人間なら殺しうるだろう」

 

 ちょっとしたデモンストレーションのつもりだったが少佐と曹長は居住まいを正し、大尉には睨まれた。やりすぎたかもしれない。

 

 「では、本題だ。どうやってそれだけの魔力制御…"念"?だったかを身に着ける」

 「ウィッチである以上使い魔を出せば自ずと魔力に包まれます。まずはそこから」

 

 3人に使い魔を出してもらい、目を閉じてもらう。実は移動してくる前に部屋でウイング編を読み返させてもらってから来た。

 

 「イメージを。そして体感してください。貴方たちの体からは湯気のように魔力が立ち上っています。それは体表全体から立ち上り、空気中に霧散しています」

 

 「……あぁ、これだな。穏やかにだが噴き出すように出ている」

 「あ、なるほど。激しく噴出しているわけではないんですね。魔力の放出ってこういう感じなんですか」

  

 少佐と大尉はすぐにつかんだ。自分も最初に使い魔を出した時点で魔力自体は感じ取っていたのでイメージさえ伝われば簡単なのだろう。あるいは、それほどまでにウィッチの放出する魔力自体が多いのか。もしそうだとすると、

 

 「ん…、んぅ…?」

 

 ロスマン曹長が苦戦しているのもあがりが近く、魔力が減退しているのが原因かもしれない。

 現に、"凝"で見てみれば曹長の噴き出す魔力は他の二人に比べて弱弱しく感じられる。

 

 「曹長、ちょっといいですか」

 「な、なにかしら」

 「無理やり精孔開けていいですか?」

 

 ようは精孔が閉じかけているのではないだろうか。使い魔との契約で精孔が開き、以降徐々に閉じていき、二十歳になる頃におおよそ閉じ切ってしまう。使い魔の出し入れで魔力のおおよそのコントロールをしていたんだとしたら普段、魔力の消費しすぎで倒れるということがないのも納得できる。

 

 「お願いできるかしら、ここで一人だけできませんでしたはごめんだしね」

 「じゃぁ、上脱いで背中見せてください」

 

 顔を真っ赤にして下着をさらけ出す曹長。

 

 「シャツ一枚で大丈夫ですよ」

 「え!?そういうことはきちんと言葉に出しなさいよ!」

 

 見てて悲しくなる肉付きとか口に出さないようにする。姉の体はすごかったんだ…。

 シャツだけを着た曹長の背中に手を当て、集中する。

 

 「ぶっちゃけ成功するかわからないんで頑張って感じてください」

 「えっ」

 

 "練"で出したオーラを手に集め、曹長の背中に押し当てる。

 

 「これ、雁淵さんの!?ぐぅ、ちょっと強すぎ…っ」

 

 一度うめき声をあげるが、すぐに

 

 「あの、大尉」「はい、なんです?」「穏やかにとか言ってましたっけ」

 

 「えぇ、穏やかに噴き出している。そんな印象ですよ」

 

 「すごい勢いよく噴き出してるようにしか思えないのですが」

 

 曹長の魔力はいっそ異常なほどに噴き出し、近くにいた少佐はその圧を感じているようだった。

 

 「あ、曹長それまずいです。早く落ち着けないと倒れます」

 「ちょ、どうすればいいの」

 「頭の先からぐるっと、血流のように魔力が体の内側を流れているのをイメージしてください」

 

 曹長は苦悶の表情を浮かべつつ、強く目をつむり集中している。

  

 「その流れがゆっくりと減速し、最後には凪いだ水面のように体の表面を揺蕩うように」

 

 曹長の顔からはしだいと険がとれ、ゆっくりと自然体の姿勢へと動いていく。

 

 「なるほど。自然体が一番楽みたいね」

 「じゃぁ、もう目を開けても大丈夫ですよ。お二人も今言ったイメージで"纏"を…」

 

 そういって振り返るとすでに二人とも目をつぶって、すでに魔力を"纏"っていた。

 

 「魔力を意識的に操るというだけでこうも違うのか」

 「暖かい膜につつまれている…、いえ、膜というよりも土?雪?」

 「既に強い力を感じる…というかまるで昔に戻ったよう」

 

 「わぁ…いつの間に」

 「まぁ、隣で聞いていたのに何もしないというのもな」

 

 

 

 

 

 落ち着いたところで、話を続ける。

 

 「慣れれば寝ながらでもできますし、そのほうが修行にもなります」

 「なんというか...基礎!て感じの修行をするのはいつ以来かしら」

 

 「しかし、ただの魔力操作といった印象だな。使い魔なしでも使えるようになるということにはあまり結びつかない」

 「意識的に魔力を操作しているのは確かですが、そこまで精密な魔力操作という感じでもありません」

 「外部に漏れると危険だというのはもっと後の内容ということか」

 

 各々魔力を纏った体を動かしたり感想を言い合っていると、

 

 ≪隊長!サーシャさんに先生、ひかりも!もうとっくに夕飯だけどどこにいるのさ!≫

 

 放送の声はニパだった。窓の外を見ればとっくに日が落ちていた。

 

 「そういえば私たち、お昼も食べてませんね」

 「あぁ、いかんな。それはいかん」

 

 その場はひとまず切り上げ、続きは食後ということになった。

 

 

 

 

 

 「おせーぞ!先食ってっかんな」

 

 

 食堂につくと、さっそく管野に遅れたことをとがめられる。

 

 「すまない。雁淵の処遇について話していてな」

 「ええ、本来の配属先へ送る書類とかね」

 

 少佐がはぐらかしにかかり、曹長もそれに乗っかる。うまく話に乗れるかわからない"俺"と大尉は口をつぐみ、食事を始める。

 

 夕食はいつもと変わらず進み、また解散した。ただ食事中、ニパが口を開かずずっと顔を背けていたことだけが気になった。

 

 

 食後、解散となり再度会議室へ向かう。残りの4大行に関する説明や念についても話すためだ。

 人気のない離れた区画へ連れだって入る。少佐が会議室のカギを開け、全員が入ったところで、

 

 

 「御用改めである!」「ここで何をしているんだぁー!」「怪しいなぁ!4人だけでこそこそとさぁ!」

 

 ブレイクウィッチーズが乱入してきた。

 

 

 

 「ロスマン先生がひかりのこと気絶させたのを見ちゃったような気がして」

 「こいつが俺たちにそのことを相談して」

 「で、昼食の席で問いただせばいいと言っていたら出てこなかったもんだから」

 

 ということらしい。昼食後も探したが見つけられず、夕食前になってダメもとで館内放送をしたら、気絶させられたはずの"俺"まで連れ立ってきたうえにそれらしい言い訳をされたから最初はそれを信じていたらしい。ニパ以外。

 

 で、夕食後連れだって何もないはずの区画へ歩いていくのを見たことからあとをつけ、部屋に入った段階で管野が飛び出し、他の二人も後に続いたらしい。

 

 

 「どうする雁淵?この状況」「少佐、言いくるめられません?」「無理だな」

 

 「こいつらもお前が信じるといった502だぞ?どうする?」

 「うぐぅ卑怯な…実は気づいてたとか言いませんか?」

 「まさか」

 

 もうごまかしがきく状態じゃないし、下手にごまかせば部隊の連携に亀裂が入りかねない。少佐もそれがわかってて言っている気がする。

 

 「もう、いっそ全員ばらしてしまえ。信じるのだろう?」

 「じゃあその代わり、何があっても少佐だけは道連れにしますからね」

 「いいだろう。私も信じているからな、君含めて」

 

 

 

 

 

 「と、いうわけでして」

 

 下原さんとジョゼさんも急遽呼び出し、"念"についての説明をする。魔力の制御技術であること、その過程で使い魔無しで魔力が使えるようになってしまうことからもしかするとウィッチでないものにも魔力が使えるようになってしまうかもしれない事とそこから予想される問題など。

 

 「思ったよりずっと大きな問題だったねぇ…」

 「よくわかんねぇけどやばそうだってことはわかった」

 「理解が追い付かない…」

 とはブレイクウィッチーズのお言葉。

 

 「とにかく今日のことは機密事項とする。同時に、再現性の検証のために全員に"念"を覚えてもらう。以上だ」

 

 「大変そう…」「でもすごそうだよ」

 

 「おい、ひかりこれやったら強くなれんのか?」

 「んー、そうですね。"念"の応用に"硬"っていうのがあるんですけど」

 

 そう言って"硬"をする。あまりやってこなかったので"絶"が甘かったりするがそれらしくはなる。

 

 「管野さんの固有魔法に似てません?」

 「まぁ、確かに…。つええのかこれ?」

 

 反応がいまいちだったので、証明代わりに近くにあった机を小突く。すごい音と共に砕け、欠片がはじける。

 

 「これと固有魔法かけ合わせたらすごいと思うんですよ」

 「おお!」

 

 表情を一転させて目を輝かせる。原作主人公の必殺技でもあるし威力はある。ネウロイ相手に"硬"で殴りかかれるのは管野くらいだしちょうどいいだろう。

 

 「早く教えろ!」「応用を応用してやってるようなものなのでだいぶ後ですよ?」

 

 そういうと管野は顔をゆがませ、今度は催促してきた。

 

 「じゃあ、早く次を教えろ!」

 「"纏"にもっと習熟してからです」

 「もう完璧だ!」

 

 最後は隊長の「やかましい」の一言で互いに黙って終わった。

 




連鎖的にばらしちゃえ


 呼び方は上位三名は階級呼びジョゼ下原組はさんづけ
  ブレイクウィチーズは苗字と愛称(ニパ)とするよう意識しています

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