「このカーシャおいしー!」
ある日の朝、食堂には全員が集まって朝食をとっていた。
「このスープもうめーな」「オラーシャではシチーというの。シチーとカーシャ、日々の糧ってね」
今日の朝食はオラーシャの伝統料理らしく、大尉もスプーンの進みが早い。
「下原さん、オラーシャ料理ってどこで覚えたんですか?」
「こっちに来てから覚えたの。実は大尉もお上手なのよ」
料理が好きというだけあって下原さんのレパートリーは多く、限られた食材から各国の料理を再現してだしてくれたりもする。
「下原ちゃんの料理の腕はいつ食べても最高だよぉ」
「オラーシャ料理もいいけれど、昔出してくれた扶桑料理も繊細でおいしかったわよねぇ。ひかりさんは何か作れるの?」
「料理ですか…お米を炊くとか漬物とかは料理かと言われるとちょっとなぁ」
家の手伝いぐらいしかしたことないので自分で包丁を握った事はほとんどない。
「お漬物だって立派な料理ですよ」
「そうよ、それだってできない人もいるんだし」
曹長が見回せば、自覚のある者がそれぞれの反応を返す。気にしていないのが管野とクルピンスキーさん。苦笑いがニパ、ジョゼは目を彷徨わせ、意外なところで少佐が思いっきり顔をそらしていた。
「戦争って残酷ですねぇ」
「お前も勝ち誇れるほどじゃねぇだろ」
食事が終わって後、朝練をしてから部屋へと戻る。実は、初めての一人部屋であり、ど真ん中にこたつを置き刀掛けや今年の書初めなんかを飾ってある。
「おぉ、また掃除されてる」
割と服を脱ぎ散らかしたり、こたつの上に持ち込んだ缶詰を放置したまま忘れてたりするのだが、次の日の日中には綺麗になっている。ジョゼさんが掃除して回ってくれているらしい。
バタン
という戸を閉める音が聞こえたのでそちらへ向かう。近くの部屋をのぞいてみればジョゼさんがいた。割と神出鬼没な感があり、お礼を言う機会がなかなかないのだ。
「ジョゼさん!」
「ひゃい!」
「あ、すいません。いつも部屋の掃除してくれているみたいなんでお礼を言いたくて」
「いえ、そんな。私がやりたくてやってるので…」
「それでも助かってるんだから言わせてください」
ジョゼさんは目を合わせようとせずに、お礼を言わないでくれと言ってくる。
「おい!俺の部屋で何してやがる!」
話していたら管野が声をかけてきた。それでここが管野の部屋だと気づいた。
「いや、違うんですよ」
「何が違うんだ!」
「あ、あの。私はこれで」
管野に絡まれている間にジョゼさんはバケツをまとめて出て行ってしまった。
「あぁー、結局お礼できたのかなぁ…」
「てめーも出ていくんだよ!」
蹴りだされてしまった。
午後、会議室には502の全員が集まっていた。
「現在ネウロイはラドガ湖北方でその動きを停止しています。しかし、湖の凍結が始まると活動を再開し、一気にこちらへ南進してくると予想されます」
「湖の凍結って12月の頭だよね?」
「あと一か月足らずですね…」
ネウロイの侵攻について情報共有を行っていた。
「ですので、次の補給を待って防衛線を再構築しなおす必要があります。今日の定時偵察の当番は誰ですか?」
曹長の問いかけにジョゼさん、下原さんが手を上げる。
「偵察範囲をラドガ湖北方ペトロザヴォーツク周辺まで広げます。気が付いたことはすべて報告してください」
「「了解」」
「…連絡が途絶えて4時間」
「僕のかわいい子猫ちゃん達、大丈夫かなぁ…」
偵察班からは定時連絡すらも途絶え、基地に残った隊員たちはあわただしく出撃準備を整えていた。
なんかおかしいなと思って久しぶりに記憶メモを確認してみたところ"下原ジョゼと出撃""冷気を発生させるネウロイ"の記述があり、原作にあった戦いだということが分かった。
原作に描写されていない戦いも多く、記憶メモもとぎれとぎれの文章しか記述されていない戦いも多く参考にならない。どちらかと言えば501の方のネウロイのほうが記述されているくらいだ。
「みなさん!三人の捜索中止です!」
「「「なっ!」」」
「なんでだよ!」
「見ればわかります。ゲートを開放してください」
そう言って開放されたゲートからは吹きすさぶ吹雪で真っ白になった外が見えた。
「この視界で出撃は危険ね…」
「全員別命あるまで待機です」
「クソッ!」
その後、別命が出ることなく待機が続き、夕食の時間にまでなってしまった。
席についた時、目に入ったのは紫色の液体。中には謎の粒が浮いていてひどい見た目だ。
「なんだこれ…」「見た目はスープですね…」
誰も手を付けようとしない中、曹長が先陣を切る。
飲んだ瞬間に顔から血の気が引き、真っ青だ。
「おいしいだろう?先生秘蔵の食材で愛情込めて作ったんだよ!」
厨房から出てきたのはクルピンスキー中尉。手にはおたまを持ち、軍服の上からエプロンをしてこっちに向けて親指を立てている。
「なんですってぇえ!?」
すると曹長が立ち上がり、厨房へと駆け込むと同時に甲高い悲鳴が聞こえてきた。
「わ、私が一年以上かけて溜めたオラーシャ産のキャビアが…」
何とも悲壮感溢れる悲鳴が聞こえてくる中、残った全員でスープ?に口をつける。と、同時に顔を青ざめさせ、口を押える。
ゲロまず。
「う、うおえぇ…」「ふぐっ、うえぇ」「飯はやっぱり下原じゃなきゃダメだ…」
唯一、少佐だけが顔色一つ変えずにスプーンを動かし続けていた。
「さすが隊長…こんな時にも冷静ですね…!」
「まずい」
やっぱり隊長でもまずいんだ…。
夜も更け、ストライカーを使った今日の捜索は完全に終了した。
「陸上捜索班からの連絡は」
「まだありません。…お二人は本当にこの吹雪がネウロイと関係があると?」
「空気が、妙に気になるの」
「あの、ところでなんで私ここに呼び出されてるんですかね」
ここは隊長室。隊長と戦闘隊長、教育担当の曹長の三人しか立ち入らない。ほかの隊員はせいぜい書類の提出か、隊長に用があるときくらいだ。
「確認したいことがある、雁淵。お前ならこの吹雪の中でも飛べるか?」
つまり、探しに行けということだろう。
「飛ぶことはできます。"周"でストライカーを覆って、お二人は"写輪眼"で。魔力なら近づかなくても見えますから。でも吹雪の中でペトロザボーツクまで行く自信は…」
そういうと少佐はニッと笑って、
「よし、ならば明日の夜明け前に飛んでもらう。案内に管野とニパをつける。お前もあいつも海軍だし、天測航法も推測航法もできるだろう。雲の上まではお前が2人を先導しろ、その後は2人に方角を確認させながらペトロザボーツクまで行け」
天測航法は星や月、太陽を見て自分の居場所を把握する飛び方で、推測航法は速度と角度から判断する。こっちでの経験が長い管野とニパの組み合わせならがいれば地図上の町まで飛ぶのはわけないだろう。
「了解!」
「夜明け前になっても変わらねぇ、というかむしろ強くなってねぇか?」
「スオムスでもこんな吹雪の中飛んだのは2、3回だなぁ」
「えっあるんですか」
「帰投中に吹雪いたことが何度か」
夜明け前、格納庫扉の外は1m先も見えない真っ暗闇。この状況で航空機が飛び立つのは自殺行為でしかないがウィッチならば強引に雲の上へ出るくらいはできる。雲の上にさえ出てしまえばその影響は少ない。
「っしゃあ!行くぜ!」「早く見つけてあげないとね!」「お二人のこともですけどこの中を飛ぶ自分たちのことも心配しましょうよ」
雲の上まで2人を押し上げたあと、水平飛行へ移る。夜空は普段と変わらないはずだが、飛行しながら見るのは初めてだった。
「えーっと北極星があっちで…多分あいつらの飛行ルートはこっちだな」
「大丈夫かよ…不安になるなぁ」
町も山も見えないとどの方向も同じに見える。
「二人は大丈夫かなぁ」
「アイツらだって歴戦のエースだ。大丈夫だろ」
ふと気になったので聞いてみる。
「あの二人は502で長いんですか?」
「ん?そろそろ1年になるか?43年の12月。サトゥルヌス祭の前だったはずだ」
「ジョゼさんはそうだね。下原さんはそのあと」
そうだったか?と管野は首をひねる。ニパにとっては思い入れのある事だったらしくよく覚えているようだ。
「アウロラねーちゃんが来たのもそのあたりだったからよく覚えてる」
「あー、そうか。酒のねーちゃんな、覚えてる」
「そういえば今年のサトゥルヌスももうすぐだね」
そういうニパの顔は、年以上に幼く見える笑顔だ。
「今年もモミの木は陸戦の連中に任せよう。ありゃ空戦の仕事じゃねぇ」
「モミの木もだけど他の飾りつけも用意しなくちゃ。ますますジョゼさんと下原さんを見つけないと」
「あー!そうか今年は下原がいるってことはもっとうまいもん食えるのか!去年と一緒なら物資使いたい放題だろ」
「ところでサトゥルヌス祭ってなんですか」
聞き覚えがあるようなないような。
「あれ、扶桑の人ってもしかしてなじみない?でも管野は知ってたよね?」
「俺はこっちもそこそこ長いからな。そういう行事とかはどっかの国の部隊の人間が騒ぐと部隊全体に伝播するもんだ」
「で、結局なんなんです?」
「大正天皇祭って言ったほうがわかりやすいか?12月の終わり、大晦日の前くらいにやる祭りだ」
それで思い出した、要はクリスマスだ。ただしこの世界はウィッチの存在もあってか宗教の色が薄く、北方由来の祭りとして楽しまれる。
「なんか聞いたことあるかもしれないです」
「なら、当日を楽しみにしていなよ!準備から参加するともっと楽しいよ!」
「基地要員みんな集まるからな、普段会えないようなのと知り合えたりもするぜ。さっき言った陸戦の奴らも紹介してやる」
雑談を交えながら飛んでいると雲が途切れだしたことに気づく。
「あ?なんだこりゃ」
「この雲、そこまで広い範囲ってわけじゃないんだ」
眼下にはペトロザヴォーツクが見えてきた。
「町が丸々凍っちゃってる!」
「うわぁ、人が住んでなくてよかったですね」
完全に凍り付いた町は人が住めるような環境ではなくなっており、うず高く積もった雪が戸を埋めている。
「ここはどうだろう…二人はいるかな」
「わっかんねぇ。おいひかり、見えるか?」
そう言われて"写輪眼"をつかう。特にこれと言って見えるものはなく、手掛かりになりそうなものもない。
「駄目です。お二人の魔力は見えません」
「これはひかりがだめなのか二人がいないのかどっちなんだろうな」
「さすがにその言い草はひどくないです?」
その後もしばらく飛び回ってみるが明かりなどは見えない。分かれて探していたが、ニパが無線で集合をかけたので聖堂を目印に集まる。
「仮に二人がここに居たのなら、寒波がどっか行ってから探しても無事だと思うんだ。だから、ここに居ないと考えてもう少し遠くを探してみないか?」
ということらしい。管野も"俺"もそれに賛成し、町を出る。空の向こうからは日が顔を出しており、すぐに空が明るく青くなる。
「ここまで明るくなれば俺達でも十分探せるぜ」
「もう一回手分けして探そうか」
二機とも即座に身をひるがえし、離れていく。自分も再び"写輪眼"で地面を眺めながら飛ぶ。無線はつなぎっぱなしで情報を共有する
≪ラドガ湖もカチカチだ≫
「これまずくないですか?ここ凍ったらネウロイが来るんでしょう?」
≪そうだよ!?まずい!一刻も早く基地に戻って伝えなきゃ!≫
≪そのためには早く二人を見つけねぇと!≫
≪うひゃあ!≫
≪おいどうした!≫
突如無線からは悲鳴が聞こえ、心配する声もそれに続く。悲鳴を上げたのはニパですぐに返事が返ってくる。
≪あ!二人を見つけた!砲弾かなにかを炸裂させて合図にしたんだ!破片がすぐ横を通り過ぎて行ったけど!≫
「安定の不運ですねぇ」
「驚かせやがって」
ニパが伝えてきたのはさして離れていない地点ですぐに全員が合流した。
「二人とも無事か!無事だな!」
「ええ。…ごめんなさい、私のせいで3人にまで迷惑を」
「そんな!定ちゃんだけの責任じゃ!」
二人は言い合いを始めてしまいこちらが置いてけぼりになってしまう。
「そもそも二人は何で遭難したの?吹雪いてくる前に戻ることだって」
「ネウロイの仕業です。あの吹雪はネウロイの仕業なんです」
「なに!?」「な!?」
多分"記憶メモ"に書いてあった奴だろうなと思いつつ驚くふりをしておく。二人の説明によればかなりの大型で、加えて近づきすぎるとこちらのストライカーをも凍り付かせるほどの冷気をぶつけてくるという。
「ラドガ湖が凍っていたのもそいつの仕業か!」
「しかも、あいつは徐々に基地に向かって近づいているんです」
「だから、定ちゃんはここでネウロイを撃破しようとして…」
また二人の顔が暗くなるが、落ち込んでいる時間はないとすぐに取り繕う。
「だが、問題は冷気か…」
「近づきようがないし、銃の射程の外じゃ倒せないよ」
すると、下原さんが足元にあった薬莢を持ち上げてこちらに差し出してくる。
「だからこれを作ったんです。放棄された戦車の燃料にアルミの粉末を混ぜた特製の焼夷材を」
「これをぶつけて着火すれば、ガラスの熱割れで装甲を砕いてコアをむき出しにできるんじゃないかって」
「ガラスの熱割れ?なんだそりゃ」
「冷えたガラスのコップに熱湯を注ぐと温度差で割れやすくなるんです」
「着火はどうするんですか?13㎜の曳光弾で着きますか?」
「これを使います」
そう言って下原が指さした先には手作りの弓と矢。
「…まじ?」
「扶桑人やっぱり変だよ。拳、刀ときて弓とかいつに生きてるのさ」
「全員が全員ってわけじゃないですからね?」
「少なくともこの場の三人に言われても説得力ないよ」
ニパの厳しい言葉に思うところのあった3人は何も言えない。下原さんも口を引きつらせてる。一緒にされたのが嫌だったのだろうか。もしそうだったらこのまま弓矢を使わせ続けさせてやる、色物の仲間入りだ。
「まぁ、とにかく準備を手伝ってください。急ぎましょう」
全員のストライカーに申し訳程度の耐寒装備をほどこして飛び立つ。応急処置用のテープを巻いたに過ぎないが発動機の熱を逃がさないようにということらしい。
焼夷材は"俺"とジョゼが持ち、管野とニパがおとり役を務める。
「いっくよー!」「事故んなよ!」
おとり役は正面からネウロイに対峙し、その隙に攻撃組が別方向から上をとる。着火役の下原さんは後ろで弓を構え、焼夷材の投下役二人が突っ込む。
「「いけぇ!」」
「やぁ!」
ぶちまけられた焼夷材の入った薬莢に下原さんの矢が激突する。砲弾の信管をつかったという矢じりが炸裂し、誘爆を引き起こす。
結果ネウロイは全身に亀裂が入り、やがて砕けた。中心にはコアが怪しく光る。
「下原さんこれ」
そう言ってから下原さんに機銃を渡す。ここまでの段取りはすべて彼女が決めたのだからとどめも彼女がいいだろう。
「え!わざわざ私がやらないでもひかりちゃんが…」
「いいから!ここまでやったんだから公式記録にも自分の功績だって残してくればいいんですよ」
そういって押し付ければ、目を合わせて頷いてから受け取る。そのまま上昇し、コアに向かって真っすぐに飛び、やがて射撃で破壊する。ふりかえってこちらへ戻ってきた彼女はどこか自分に自信がついた、そんな感じだった。
「やったね定ちゃん!」
「うん。二人もありがとう」
「おわりましたねぇ」
「そうだね…おなかすいたなぁ」
「なら、早く帰ってご飯にしましょうか」
≪ニパが落ちた!あの程度じゃやっぱり寒さに耐えられなかったらしい!≫
「その前に回収しないといけない人が増えたみたいです」
「あはははは…」
基地へと戻ると出迎えに来てくれた大尉からねぎらいの言葉を受けつつ、下原さん、ジョゼさん、ニパの三人は医務室へ行くように言われた。吹雪の中で一晩過ごしたことから念のためにということらしい。結果、夕食を下原さんが作ることはかなわず、大尉がうでを振るった。クルピンスキー中尉は曹長によって拘束されていた。
「食べ逃しちゃったね…」
「今から温めなおしても時間がかかりそう。そもそも残っているかどうか」
「おなか…減った…」
食後の散歩にと要塞を散歩していれば、医務室組を見かけた。思ったよりも検査に時間がかかったらしく、今になって解放されたらしい。
3人には普段からお世話になっているし、少し恩返しをしてもいいかもしれない。
「3人共」
「わっ」「ひかりさん」「おな...へ...」
「よかったら部屋に来ませんか?ちょっとした缶詰くらいならありますよ」
「えっ、いいn「行くッッッ!」じゃ、じゃあお世話になりますね?」
食い気味に来たジョゼに若干引きつつ3人を部屋へと案内する。電気をつけて部屋を明るくすると、下原さんがこたつに反応する。
「えっ、こたつ!こたつなんて持ち込んでたの?」
「そうなんですよー。北欧に行くのはわかってましたからいろいろお願いして用立ててもらったんです」
入るように促すといそいそと足をいれる。疲れもあったのか顎を天板に乗せ、垂れてしまう。すぐに気をもちなおし、背を伸ばしたが繕えてない。
「わぁ、そんなになった定ちゃんは初めて見た」
「言わないで...気が抜けちゃったの…」
「わあ、あったかい。これいいね」
ニパとジョゼさんも続いて腰を落ち着けたのを見て、お茶と秘蔵の缶詰を出す。
「牛缶なんてどこから…」
「扶桑から持ち込んだのをとってあるんですよ。お赤飯もどうです?お米久しぶりなんじゃありません?」
出したのはそれぞれ、牛缶、お赤飯、ミカンのシロップ漬け。どれもお気に入りだが、大事にとっておきすぎて食べる機会を逃し続けていたものである。自分一人ならとっておくが、人にふるまうのなら出すのもいい。
「おいしいッッ!」
「ジョゼさんテンション高いね…。おいしいのは確かだけど」
「お米…、小豆も久しぶり…」
「私が来た時の補給ってなんでお米なかったんですか?」
疑問に思っていたことを聞く。ペテルブルグに来た時、扶桑艦隊からの物資も一緒に来たはずだが、502で扶桑食は食べたことがない。
「あの時のは軍需物資がほとんどで、艦隊も北欧駐留要員の交代が主な任務だったの。だから食材とかは次の船団だったのだけど…」
「グリゴーリの航路封鎖もあって届かなくなっちゃって…。大西洋側はそっちの部隊で消費しちゃうし…、また扶桑食がたべたい…」
ジョゼさんがそういうと下原さんが思案顔になる。やがて頷いたかと思えば、
「なら、明日の朝食は扶桑食にしてみましょう!こっちの食材でも作れるものを!」
といったのでこちらも。
「そんな下原さんに相談があるんですよ」
「なんですか?」
「ここに、さして料理ができるわけでもないのに海外行だからと調味料を買い込んだアホがいまして」
そういって荷物入れからは醤油の瓶と味噌の入った小壺をだす。欧州派遣経験のある教官から持っていくよう強く言われたものだ。
「いいんですか!」
「大事に使ってね?」
「2人とも無事で本当によかったわ」
朝食の席。全員が席に着いた後、曹長が切り出す。
「それにしても吹雪がネウロイの仕業だっただなんて」
「下原さん達、今回は大手柄だったわよ」
「いえ、任務ですから」
軍服の上から給仕服姿の下原さんはそう言って配膳をする。ジョゼさんもそれを手伝っている。
「あら、おいしそう!」
「今日は扶桑料理にしてみました」
焼き鮭におひたしと卵焼き、きんぴら、茶わん蒸しに味噌汁。白米がないことを除けば典型的な和食である。
「おおおおおお!」
管野が大興奮で食べる。
「あら、これ…」
「缶詰の底にキャビアが残っていたので使ってみました」
茶碗蒸しに入ったキャビアに気づいた曹長がうれしそうに笑う。
「キャビアの使い方よくわかってるわねぇ。どこかの偽伯爵とは大違いだわ」
「キャビアなんて塩辛いだけで何がいいんだか」
「だからあなたは偽伯爵なの!」
そんなやり取りを横目に下原さんに食事の感想を言う。
「おいしいですよこのお味噌汁!白米がないのが本当に惜しい!」
「ありがとう!やっぱり私はお料理が好きみたい」
「はぐっ、もぐ…」
「ジョゼさんはせめて言葉にしましょうよ」
声を発する時間も惜しいと言わんばかりに視線で意思を伝えながら食事を続けるジョゼ。
「やっぱり食事は大切ですね」
「うまい」
なんかすごい勢いで誤字修正されててありがてえ