念能力者(?)なひかりちゃん(?)   作:シチシチ

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徹夜しちゃった


閑話1

 「今日は一段と冷えやがるな」

 「いよいよ冬本番って気がしてきたね…」

 

 ついに12月に突入したサンクトペテルブルグ基地。

 石造りの要塞はそのほとんどを白く染め上げられ、積雪で開かない扉、凍った地面、死ぬほど寒い廊下といった問題との戦いの始まりを予感させた。

 朝に布団から出るのが一日で一番億劫とまで言う人もいる。

 

 「おまえ、ここ初めてのくせに平気そうだな…北の生まれだったか?」

 「私はお姉ちゃんと一緒で佐世保の生まれですってば」

 

 自室を出たとこでいつもの三人が一緒にいるのを見つけたので、ご一緒させてもらった。3人も特に示し合わせていたわけではないらしい。

 食堂へと向かうが、廊下は石造りで窓にもガラスがはまっているが風が吹き込まないだけであり、室内だというのに気温は外とあまり変わらない。部屋にはセントラルヒーターがあり、一応の暖房がされているが、少しでも熱を逃がさない用にと誰もが部屋を閉め切る。それでもまだ寒く、布団の中で縮こまり朝を待つ。

 

 「"纏"してるとそこまでじゃないですよ」

 「は?」

 「うわっほんとだ。廊下移動するくらいなら十分持つよこれ」

 

 ただし、例外もある。

 

 502の隊員の"念"は概ね"練"を始めたくらいだ。誰もがさした苦労もなく"纏"を覚えたという直視したくない現実から目をそらしたくなる。

 加えて一部の、具体的には某撃墜数世界三位が既に"絶"に手を出しているが、今年中は全員"絶"の修行に入れたら御の字だろう。

 

 「慣れれば寝ながらでもできますよ。"練"と違って消費するわけでもないので」

 「何年もやってるってだけはあるねぇ。やっぱり教えてはくれないのかい?"念"の出処ってやつは」

 「勘弁してくださいってば」

 

 "念"については変わらずその技のみでどこから教わったのかなどは言っていない。修行内容が具体的である以上自分で考えたなどは言えるはずもなく、かといって現在ありもしない漫画を参考にしていますなどとほざいたら正気を疑われる。

 なので、誰にも言えない、そこまで大事なことでもない、他に知ってる人もいないではぐらかし続けている。

 

 「隊長にもあまり問い詰めるなって言われてるだろ。それよりおなかすいたよ」

 「だな。ちょっと急ぐか」

 「今日の朝食は何かなー」

 

 そういって少し足を速めた二人についていく。面倒からは逃げるに限る。

 

 「僕が悪かったから露骨においていこうとするのはやめてくれないかい?」

 

 

 

 

 

 食堂と厨房はヒーターが効いているため快適に過ごせる。が、食事時以外は節約のため食堂の方の暖房を切っている。そのため、朝食後に部隊員が集まるのは搭乗員待機室か談話室となる。搭乗員待機室は出撃待機のウィッチ2人程度が待機することを目的としているため狭く、集まるには向かない。

 

 逆に、談話室はある程度広く暖かい。隣にお湯を沸かせる程度のキッチンがあり、お茶を飲みながら他愛のない話をしたり、本を読むなどの時間をつぶすのに使われる。

 

 

 全員が朝食を終えるといつも通り、少佐からの通達があった。

 

 「…朝食も終わったところで、今日の伝達事項についてだが、先日からの懸念が現実となった」

 「まさか…」

 

 「談話室の暖房が故障した」

 

 この事態により隊員は3つの反応に分かれた。

 もともと執務室にこもる組、食堂(厨房)を多用するため影響の少ない者、そして普段談話室にこもっているため行き場のない者達だ。

 

 談話室の暖房はここのところ効きが悪く、不安に思われていた。原因は不明だが談話室での修行なのではないかと勝手に思っている。

 

 「どこにいりゃいいんだよ!」

 「隊長!修理までの間だけでも食堂を開放できないかな!?」

 「駄目だ。節約は上からの命令でもある」

 

 少佐はそんなに規則とかを厳格に守る質ではなかったとは思うのだが、軍人である以上命令には逆らいづらくしぶしぶ皆従うことにした。

 

 

 その場は解散し、隊長たちは執務室へ行った。

 外が吹雪いていることからネウロイの侵攻もないだろうという判断で、今日の待機は無しとなった。そのため、残った面々は自室へと戻るだろう。

 今日は自室で修行でもするかと考えて食堂を出る。

 

 「ねぇひかり、ひかりの部屋に行ってもいい?」

 

 出たところでニパに声をかけられた。

 

 「ひかりちゃんの部屋に行くのかい!?だったら僕も行きたいなぁ!」

 「中尉を部屋に招くのはやめとけ。ろくなことにならねぇぞ」

 

 すかさず中尉が反応し、管野が止めに入ってくれる。

 とはいえ、クルピンスキー中尉だけを部屋に入れるのなら流石に警戒するが、ニパとついでに管野もいれば大丈夫だろう。

 

 「だったら、三人とも来ますか?私は構いませんよ」

 「中尉はやめとk「いいのかいひかりちゃん!」ぜってぇ碌なことにならねぇぞ!」

 

 

 

 「こたつなんて持ち込んでたのか!」

 

 下原さんと同じ反応をした管野がこたつへと滑り込む。ニパも同じように入ったことから中尉も足を入れる。

 

 「暖かいねぇ、良いじゃないかこれ」

 

 お客様に出す用にお茶を用意し自分も座る。あいにく自室の菓子の類は切れていて無いし、そもそも朝食を食べた後なので用意しない。お茶は茶葉なのでかさばらず、2度使うようにしているため結構余裕があるのだが、菓子などの気軽につまめる物は割かしはやくに食べきってしまった。

 

 「お!お茶まであるとは気が利いてるな」

 「これなんだい?扶桑のお茶?」

 「そうですよ。緑茶です」

 「これがほろ苦いってやつなのかな。結構おいしい」

 「へー」

 

 三人とも落ち着き、それぞれがそれぞれのことを始める。

 管野は自室から持ってきた本を読み、中尉は何やら手紙を書き始めた。共通語で、あて名が女性名ばかりなので察した。

 ニパは談話室から持ち込んだレコードとプレイヤーをいじっている。

 

 手持無沙汰なので扶桑から持ち込んだ模型を作る。この時代なので当然プラスチックではなく木製で、意外と作りがいい。塗料があったら塗ってみたい。

 

 「あっそうだ。ニパ君直ちゃん、それにひかり君もだけど」

 「んえ?」「あぁ?」「はい?」

 「いつもの来てたよ。ちょっととってくる」

 

 そういって出ていったクルピンスキー中尉が戻ってくると分厚い紙束をいいくつも抱えていた。

 

 「手紙ですか?」

 「そうそう」

 

 見れば、家族をはじめ、クラスメイトや校長と教官の連名などもあった。変わり種では行きに乗った艦隊からも来ていた。っていうか一番多かった、乗っていた艦の名前が一緒に書いてあるので知らない差出人でもわかりやすい。それ以外にも知らない差出人がある。読めない字とか明らかに個人じゃなさそうなのもある。

 

 「おぉ、まだ半年もたってないのになんか懐かしい人たちが」

 「私もいろんな人から来てるよー。でもイッルは無いなハッセはあるのに」

 

 「あー、艦隊と原隊と、うげ、まーたこいつらか」

 

 家族からの手紙から見ていると管野がおかしな声を上げる。見ればいくつかの手紙をまとめて人の部屋のごみ箱に突っ込もうとしていた。

 

 「えー。変なもん人の部屋に捨てないでくださいよ」

 「あーうっせぇうっせぇ俺だって見たくもないんだこんなもん」

 「あー、"国債"かぁ。見てごらんひかりちゃんあてもある」

 

 そう言ってクルピンスキー中尉が指し示すのは字の読めなかった手紙。何かと聞いてみればカールスラント政府からの国債購入の勧誘らしい。

 

 「えー、カールスラント、オラーシャ、スオムス、ガリアあたりはまだ隊員でかかわりがあるからいいがヒスパニアとか一切かかわりあいないんだが」

 「なぁカンノ、ビルマ連邦ってどこ」

 「アジア」

 

 他の三人も受け取っているらしく、全員のをこたつの中央に集めたら山ができてしまった。

 管野は国債勧誘の比率が多く、除けたら手紙がだいぶ減ってしまった。

 

 「うーんやっぱり孝美はまだ起きてねぇのかな…」

 「あ、こっちの家族からの手紙に書いてありましたよ。舞鶴の海軍病院で治療を受けることになったとか」

 

 なに、貸せ!と言われて取られてしまった手紙には安否を問うものや海外での生活の違いに戸惑ってはいないかといった内容でクラスメイトからもそんな内容だった。

 逆に校長たちからのものはそのあたりの心配は控えめで、戦果を挙げたかどうかや部隊員について尋ねる内容が多かった。最近酒をたしなみだしたらしい校長が鮭を送ってこいとか書いてあったので酒を送ってきたら鮭をくれてやると返すことにする。ちょっとしたお茶目だ。

 

 

 「なんて返信したもんかな…」

 「おっ、閃いた」

 

 この人数に返信するのは大変だなと書く内容を考えていると、中尉がこっちをみてにやりと笑う。

 

 「ひかりちゃんせっかくだからちょっと変わった近況報告なんてどうだい?」

 「はいぃ?」

 「ちょうど戻ってきてたみたいなんだよねぇ。リベリオンから」

 「あぁ、あいつ戻ってたのか」「あー、なるほどね。面白いこと考えるじゃんか」

 「手紙もらってきたときに執務室に案内されてくのを見たんだよね。今から行けばちょうどいいかも」

 

 話についていけないうちにこたつから引き出され、廊下を連れられて歩く。どこに行くのかと聞くと格納庫だという。目的の人物はよく格納庫に出没するらしい。

 

 「あぁ、いたいた」

 「おや、こんどこそ新顔かな?」

 

 格納庫にいたのは見慣れない、記者風の女性。首には大ぶりなカメラを提げている。男装の麗人、そんな感じだ

 

 「はぁ…、雁淵ひかりです。階級は軍曹」

 「私はデビー・シーモア。リベリオンのグラフ誌と契約している...まぁ記者みたいなもんかな」

 

 握手を求められたので答える。記者というあたりで中尉のたくらみを理解してしまい、柄にもなく緊張する。

 

 「まぁまぁ、そう固くならないで」

 「はい、えとシーモアさんは何を聞かれるのでしょう」

 「あぁ、デビーでいいとも。そうだね、軍曹ってことは新任かい?着任までの経緯なんか聞いても?」

 「それは勘弁を。軍機に触れますので」

 

 さっそく取材が始まったかというところで、声がかかる。見ると発進促進装置の陰から大尉が顔を出した。どうやらまた、自分で整備していたらしい。

 

 「お、いいね」

 

 何か琴線に触れたのかデビーは素早く写真を撮る。

 

 「いいのか大尉撮られちまって」

 「検閲で弾きますから大丈夫です」

 「軍機でもないのに弾きやしないさ」

 

 今度は少佐が出てきた。何をしに来たのか問えば、気になったかららしい。最近気づいてきたが、この人結構お茶目なところがある気がする。

 

 「で?雁淵に何を聞くんだ?」

 「そうですね…本人に聞くのもいいですが同僚に聞いてみるのもいいですね」

 

 そう言って周りにいた隊員たちに話を聞きだしたデビーを慌てて止めようとしたが隊長に静止されて阻止できなかった。ひどい羞恥プレイだと訴えれば中尉が興奮しだし、大尉に助けを求めれば黙ったまま視線でお前も道連れだと訴えてくる。

 最終的には、インタビューだけで無くユニットを装着した状態や武器を持った状態での写真なんてものまで撮られてしまった。止めなくて良いのかと何度も少佐に確認したが面白そうだから何とかするなどと言って後押しする側だった。

 その日の夕食の席でも話の種にされてしまい、早々に食事を終えふて寝した。

 なお、談話室のヒーターは結局ペテルブルグまで来ていた工兵の中から手を出せる人間を大尉が見つけてきて何とか動くまで持って行ったが、それまでの間、部屋をブレイクウィッチーズ共に溜まり場にされてしまった。

 

 

 「あぁ、あと悪いがその記事の掲載は来年を迎えてしばらくしてからにしてくれないか」

 「?、どのみち送る手間も考えれば出回るのは二月になるかならないかごろだと思いますが、分かりました」




寝る
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