足が落ち着いてきたのでまたかけるかもしれない。どちみち原作あと何話もないしね
「こらー!待ちなさぁい!」
「ごめんなさーい!」
ある日の午前。
格納庫で曹長から欧州戦線で使われる武器に関する講義を受けていたところ、騒がしく追いかけっこをする二人がそばを駆け抜けていった。
こちらを盾にするかのように、グルグルと周囲を回っているのはニパ。それを、腕を振り上げながら追いかけているのはポクルイーシキン大尉。
ニパはしばらく格納庫中を使って逃げ回っていたが、転がっていた箱を飛び越えた先にあったオイル缶を踏んづけてひっくり返り、頭から地面に落ちた。
「いてて…。どうしてこんなとこにオイル缶が転がっているんだよ…」
整備も行う格納庫である以上オイル缶はあるだろうが、ピンポイントでそれが横倒しになった状態で足元に転がってくるのはさすがとしか言いようがない。
頭には見事なたんこぶができ、見るからに痛そうだ。
「ニ~パ~さ~ん」
「サ、サーシャさん…、アハハ…」
「そこに正座ぁ!」
追いついた大尉に見下ろされ、逃げられないと悟ったのか笑ってごまかしにかかったがあえなく罰を言いつけられてしまう。
素直に従ったニパはすぐに体をゆすり始め、辛そうだ。
「またユニットをこんなにして・・・」
ニパが追いかけられていたのは、例によって例のごとくストライカーユニットの破損が原因らしい。
天性の不運故にありとあらゆる災難に見舞われるニパは、特に出撃中に災難が降りかかると、ほぼ確実にストライカーユニットをダメにするので、502での物資をやりくりしている大尉はそりゃキレる。
ニパもわざとやってるわけではない以上理不尽と思わなくもないが、決して安くない装備がポンポン破壊されるともなれば言いたくなる気持ちもわかる。
なお、502にはニパに加え、空戦で突っ込みがちな上にその場のテンションで装備を投げ捨てる管野と、固有魔法を発動するとユニットに負担がかかるうえ飛び方的にも被弾が多いクルピンスキー中尉の二人がおり、三人合わせて"ブレイクウィッチーズ"などと不名誉な呼ばれ方をしている。改善の余地があるのに直さない二人のほうがたちが悪い気もするし、そっちもそっちでやっぱり叱られている。
「ニパさんたんこぶ大丈夫ですか?なかなか立派な奴が…」
「あぁ…、平気平気」
声をかけてみれば、何とも意気消沈しているという雰囲気で答える。
魔法力を発現し使い魔であるフェレットの耳と尾を出すと、ニパのたんこぶはみるみる縮み、消えてなくなった。
「私の固有魔法は超回復でね。他人は治せないけどほら、自分の怪我ならこの通り」
「ひかりさん。こっちに集中なさい、いつ必要になるかわからないんだから」
ニパと話しすぎたようで、曹長に注意されてしまう。
こちらがそちらに向きなおれば、ポクルイーシキン大尉の方はストライカーをいじりだす。どうやら今回の機体は致命的な破損ではなかったようで、整備班に回さずに自分で直すつもりらしい。
ポクルイーシキン大尉の固有魔法は"見たものを忘れない"というもので、加えてどうやら透視かなにか、分解せずとも機械の中を見る力があるらしい。魔法力を込めて見る必要があるらしいが応用の利く能力だ。
「さっすがサーシャさん!これならまた墜ちても...」
「また?」
「あ、いや...。あ、安全第一で…」
迂闊な発言をしたニパが語気を強めた大尉に詰め寄られているのを横目に、曹長の方を向く。すると曹長は大尉の方を眉をひそめて見ていた。
「サーシャさん?戦闘隊長であるあなたの力は、できれば修理以外で活用してほしいものね」
「...すみません」
大尉が申し訳なさそうな顔をすると、ニパの表情も曇る。ニパからすれば自分のせいで叱られてしまっているようなものだし、かといって自分でどうこうできる問題でもないことがくやしいのだろう。
「はぁ。ひかりさん講義を再開しましょうか」
「はい。MG42についてからでしたね」
今日の講義、欧州戦線で使われる武装は、主にウィッチが使用するものについてであり、今使っている扶桑製の兵器が補給の問題で使えなくなるようなことがあった際に最低限の訓練で使えるよう事前に学んでおこうというものだ。
「そうよ。MG42はカールスラント製の武器で、カールスラントウィッチが多い西側の戦線で多く見られるわ。特徴は速い連射速度と比較的小型で取り回しがいいことよ」
「確かに扶桑の九九式よりも大分小さいですね」
扶桑の九九式は航空機用の機銃をウィッチが取り回しやすいようにレイアウトを変更したもので、全長が180㎝を超える。初期のものなら130㎝ほどだが性能に難があり、比較的初期に置き換えられ予備的に保管されているに過ぎない。
対するMG42は歩兵が運用する物がベースであるため小型で、120㎝ほどだ。
加えて、九九式が40㎏前後なのに対し、およそ11㎏程度だ。
「ええ、取り回しの良さと発射速度の速さは初心者から熟練のものまで広く使われる要因となったわ。空戦において銃口と敵機が交差するのなんてほんの一瞬、その一瞬でより多くの銃弾を叩き込めるMG42はより確実に敵機を撃墜できると言えるわ」
他の機関銃が毎分500~800発程度のものが多い中で毎分1200発もの弾丸を吐き出すのはこの銃くらいだろう。
「ただ、正直装弾数の少なさと威力の低さがあまり…」
「ええ。7.92㎜は正直な話、装甲の固いネウロイ相手では頼りないともいえるわね。特に大型のネウロイともなると装甲が抜けない上に、どこにコアがあるか探ることから始めなきゃいけない以上消費はより多くなるわね。…あなたの場合は別だけど」
毎分1200発発射する割に装弾数は75発しかなく、一瞬で吐き出してしまう。頻繁な弾倉交換が必要になるが、空戦の最中に交換するのは大きな隙になる。カバーしてくれる僚機が常にいるとは限らない。
「やっぱり私は使うのなら九九式がいいなぁ」
「ひかりさんの九九式は20㎜の方でしたね。あの大火力に慣れてしまうと確かに使いづらいかも」
九九式は航空機用なだけあって口径が大きく、それに比例して威力も大きい。20㎜の装弾数も100発と60発で選択でき、発射速度も平均程度にある。MG42が異常なだけだ。
欧州派遣艦隊所属のウィッチは補給の問題で、リベリオン規格の12.7×99㎜、通称"フィフティーンキャリバー"を使う"改"モデルを使用してることがほとんどだ。が、扶桑からの学徒動員兵に持たせる余裕はないらしく本国仕様の20㎜を持ち込んでいる。そのため、管野の12.7㎜と"俺"の20㎜で補給が二重になってしまっていたりする。
「大型のネウロイを相手取るのには、最近ではもうフリーガーハマーがあって当然みたいなとこはあるわね」
「あれの威力は別格ですよね」
"フリーガーハマー"
カールスラント製の多連装ロケット弾発射機。弾頭の大きさ、ひいては炸薬と魔力を含む量が多いことから多大な威力を誇り、弾丸で装甲を貫くのではなく、爆発の衝撃波で叩き壊すといった攻撃となる。
欠点は装弾数の少なさで、ロケット弾を9発しか装填しておけない。
502においては曹長のみが使用する。ちなみにMG42は少佐とニパ、曹長、たまにクルピンスキー。九九式は本国仕様は"俺"のみ、"改"を下原、管野。あとの二人はそれぞれの国の銃を使うし、クルピンスキーはStg44を好んで使う。
「あれは、引退が見えたウィッチの寿命を延ばすのにも一役買ったのも普及した要因ね。距離をとっても威力が変わらないからシールドが弱って接近戦ができない以上はね、私もこっちに来てからは使いだしたもの」
「…この前MG42使ってませんでした?」
「久しぶりに使いたくなっただけよ?スコアを稼ぐならやっぱり機銃だし。最近は調子がいいの」
≪ウゥ~≫
「あぁ!」「っ!」 「警報!?」「敵襲ですか!」
≪北方監視所がネウロイの襲撃を受けた。出られるものは全機出撃せよ≫
突然、格納庫内にはサイレンが響き渡り、次いで少佐が出撃命令を出す。
北方監視所はペテルブルグの中に位置し、ある程度の部隊が駐留していた。
「行かなきゃ!」
「ニパさんは留守番です。まだ修理が終わってないですから」
「えぇ~!そんなぁ…」
大尉の語気はまだ強かった。心なしか目つきも少しきついような気がする。
≪状況は≫
「目撃した兵によれば砲撃は一発のみ。ペテルブルグ外周部から撃ち込まれたものだと推測します」
現場となった監視所に到着してみると、4階建ての建物の一部がその上の尖塔部分ごと根こそぎ吹き飛ばされ、その周囲も崩れていた。
「クソッ、とうとう町の近くにまで来やがったか!」
「今まではラドガ湖が陸上型ネウロイの侵攻を阻んでくれていたけど…」「この前凍っちゃったから…」
管野が憤りを露わにすれば、ジョゼと下原が反応する。先日の気象に影響を与えるネウロイの影響でラドガ湖が凍って以降、連合軍は陸上型ネウロイの侵攻を警戒し監視体制を強めていた。
この監視所もそれを受けて兵員の増強を行っており、ゆくゆくは監視所を増やすそのための事前準備をしていた。その矢先の攻撃だった。
「隊長、指示を」
≪サーシャに任せる≫
「えぇ!?」
少佐は判断をポクルイーシキン大尉に一任した。戦闘隊長なのだし、現場での判断に任せるとなればおかしなことでもないだろう。
「それでは戦闘隊長、ご命令を♪」
「こ、これより手分けして周辺空域の探索を始めます。ラドガ湖方面を重点的に探ってください」
「了解!」
クルピンスキー中尉が茶化すが、それを流して大尉は指示を出す。その場の隊員は少佐とニパ以外がおり、班を作って捜索に当たることになった。
≪こちら、下原班。ポイントAには異常ありません≫
≪ポイントBも同じくだぜ≫
「了解しました。帰投してください」
"俺"の班は大尉と曹長で他は下原ジョゼ組と管野クルピンスキー組だ。
すでに時刻は夕刻に入っており、太陽が半分近く沈んでしまっている。
「これよりネウロイの捜索は陸上ウィッチに引き継ぎます。ロスマンさん、雁淵さんと先に戻っていてください。私は最後にもう一回り」
「了解。行きますよ雁淵さん」「了解」
大尉の指示に従い帰投する。
「もうすぐペテルブルグ市内に入るわ、少し高度を下げましょう」
「了解」
曹長の指示に従い、高度を下げる。同時に監視哨にも連絡を入れる、ネウロイに間違われて警報を出されたり砲撃されても困る。
「こちら…
≪ヒュウゥゥゥ…≫
まって、砲撃音!?」
こちらが連絡を入れようとしたちょうどその時、頭上を飛翔する黒い影が恐ろしい速度で過ぎ去る。
次の瞬間、大気が轟音とともに震え、土煙が高くまで上がる。
「ひかりさん、行くわよ!」
「えっ!?被害確認ですか!?下手人始末ですか!?」
「被害確認の方!」
「監視所の次は貯蔵庫か…!」
「物資が不足がちな今、貯蔵庫をやられたのは痛いな」
502基地のブリーフィングルーム。
全ウィッチ隊員が集まり、現状把握と情報共有を行う。ちなみに他の隊員が2人並ぶように座っている中で一人だけぼっちだったりする。人数が9人で奇数なのが悪い。統合戦闘航空団の定員は10だか11人だったはずなのに。
「すみません…私が油断したばかりにネウロイを取り逃がしました」
ラドガ湖上空で別れた後、大尉はネウロイが砲撃した瞬間に立ち会ったらしく交戦もしたらしい。しかし取り逃がしてしまい、今なおネウロイはどこかに潜伏しているらしい。
「失敗は誰にもありますよ、あはは」
ニパはフォローを入れたつもりなのだろうが、傍から見てると関係を悪化させてるようにしか見えない。
「今回も撃たれたのは一発だけ。ペテルブルグから88㎞の地点の雪原地中に潜んでの超長距離ピンポイント砲撃」
人類側に88㎞以上も遠くを狙えるような砲はない。80㎝列車砲で50㎞届かないぐらいだ。この世界に存在するかはわからないがパリ砲ならばとどく、が、第一次大戦のころだし、そもそもピンポイント射撃ができない。パリ市内に落ちればいいか…程度のものだ。
「驚いたねぇ、こいつは一流の狙撃手だね」
「いくらネウロイと言えども、これだけの長距離からピンポイントに狙うのは不可能です。ですが…」
クルピンスキー中尉が言ったことを曹長が肯定する。戦争初期の頃、ネウロイの色がまだ銀色で、実弾で攻撃していたころは長距離を曲射してくることがあったらしいがそんな超精度の砲撃はしてこなかったそうだ。現在は光線が主流になり、曲射は減っている。
「観測班から、攻撃の標的となった施設からは微弱な電波が発信されていたとの報告が上がっている」
「えぇ!?」「どういうことですか!?」
発言を引き継いだ少佐の言葉に動揺が走る。
「砲撃を誘導するマーカー役のネウロイがいるということよ」
「じゃぁ!町の中に、その、ネウロイが…」
ジョゼさんが不安がちに言い、下原さんと目を合わせる。町中にネウロイが潜んでいるということは、いつでも攻撃を受ける可能性があるということであり、仮にも人類の勢力圏にひそめるとなれば暗殺じみたことが起きるかもしれない。
「そこで、部隊を二つに分ける。エディータ、クルピンスキー、管野、下原、ジョゼは、砲撃ネウロイを捜索し、発見次第撃破」
「へっ、よっしゃあ!」
「サーシャ、ニパ、雁淵は町に侵入したマーカー役を捜索しこちらも撃破する。二人はオラーシャとスオムス出身だ。多少は土地勘もあるだろう」
「でも、私は南部の生まれで、この街には…」
大尉が不安そうな顔でそう告げると、
「まぁ、お前なら何とかなるだろう」
少佐は腕を組み、なぜかキメ顔でそういった。
「そんな人事みたいに…」
「私がついてますよサーシャさん!一緒に頑張りましょ!」
「、えぇ...」
翌日になって、朝からそれぞれ出撃し、こちらの班はペテルブルグ市内を捜す。市内のほかの軍関係施設を中心に巡回していく。また次目標になるであろう施設の周辺を捜索しようということだ。
「隊長にはああ言ったけど、実はこの街に来たのは小さいときに買い物に来た一回きりだけなんだよね」
「実質土地勘ないようなものですねぇ、おっと」
「おお、見ないで避けた」
ペテルブルグ市内は高い建造物が多く、ネウロイを捜索しながら飛んでいると時折進路にかぶる。
「はぁ…」
「あー…、大尉はこの街詳しいんですか?」
気難しい顔をしていた大尉に空気を紛らわすべく話しかける。
「昨日も言ったとおり私は南部の生まれで、この街には疎開するまで祖母が住んでいたらしいということしか」
「じゃあ大事な街ですね!絶対守らなきゃ!」
「…どうせ無人なのだから街を防衛することに意味はありません」
「うぇ!?でもおばあちゃんの家が…」
「私自身は何の思い入れもありません。祖母を訪ねたこともありませんから」
(軍人として今のセリフはセーフなんだろうか…?)
「無人の町を守るのではなくネウロイを倒すことがウィッチの責務です」
「そんなぁ…」
「くれぐれも余計なことに気をとられてまたユニットを壊すようなことの無いように」
大尉はそう言って会話を打ち切り、それと同時に通信が入る。
≪第二貯蔵庫付近から未確認の電波が発信されていることを観測班がとらえた。至急向かってくれ≫
「「「了解」」」
到着した時点で第二貯蔵庫は跡形もなく吹き飛ばされており、黒煙が上がっていた。第二貯蔵庫は高射砲部隊などで使われる砲弾等を含む可燃性の高いものが貯蓄されており、それに引火したのだろう。監視哨よりも被害が大きく、一面焼け野原といった感じだ。
電波が確認された時点で配備部隊を避難させるよう少佐が事前に通達していたことが功を奏し、人命は守られた。
「間に合わなかった…」
「散開して!まだ近くにネウロイがいるかもしれない!」
「「はい!」」
「うーん…どこだぁ...、痛ぁ!くっそぉツイてない、っていたぁ!」
散会した直後、持ち前の不運を発揮したニパが銅像に激突したかと思えば、その銅像がうねり、次の瞬間には足が長い、角ばったタコのような姿のネウロイとなって逃走した。
「擬態能力を持ったネウロイ!?」
「追いますよ!続いて!」
「「はい!」」
ペテルブルグ市内を使った鬼ごっこが始まる。こちらは三機がかりだが、相手は地表を滑るようにして逃げ回り、慣性の法則を無視するかのようなターンを見せてこちらを巻こうとする。
なお、大尉はかなり容赦が無く、機銃をあたりかまわずばらまく。それを追う形になっているこちらの二人は大尉が射線に入ってしまうこともあってほとんど撃てていない。加えて、ニパは不運が足を引っ張り、看板に頭をぶつけたり木箱に突っ込んだりで無茶苦茶だ。
「もう!なにをやっているの!」
実はこちらもついていけてなかったりする。町中をすごいスピードで追いかけっこする大尉を一瞬見逃した時にはもう影も形もなかった。短い間隔でカーブを繰り返すものだから死角に入られると次どっちに行ったか分からない。
「ひかり!ネウロイは、サーシャさんは!?」
「私も見失っちゃって、一回上に上がりましょう!」
「わかった!」
上に上がるとしばらくして大尉自身も上がってきた。下を見まわしているようだが、どこか上の空だ。
「ごめんサーシャさん遅れた!ネウロイは!?」
「私…この街を知っている...?」
結局この日は砲台、マーカーどちらも発見破壊が出来ないままに日が暮れてしまい、全機帰投することとなった。ネウロイは自分の身を削って砲弾を生成しているらしく、日に3発が限界らしい。解析班がそう結論付けたとか。
「そっちもダメでしたか」
「あぁ、出てから引っ込むまでが早すぎる。砲撃音がしてから撃ったんじゃ間に合わねぇ」
夕食の席で砲台攻撃班と会話する。今日だけで三度の砲撃があったがネウロイは撃つたびに大きく移動するらしく、かといって散開して索敵範囲を広くとれば、火力が分散し撃破できない。
「そっちは?出くわしたって聞いたぜ?」
「相手の能力と場所が悪すぎます。ペテルブルグの街中は入り組んでて一度見失ったらおしまいな上、擬態能力を持ってるとかもう…」
「なんだそりゃ」
「奴さん、大胆不敵に第二貯蔵庫近くで銅像に化けてこっちをやり過ごそうとしてたんですよ。ニパさんが不運にも衝突しなかったら絶対わからなかったです」
「なんとまぁそれはニパ君が不運なのかネウロイが不運なのか」
「どっちもじゃねぇか?」
「バッサリですね管野さん…、あっはいこれジョゼ。おかわり」
「ありがとう定ちゃん」
「こっちはあまり打つ手がなさそうな気がしてねぇ。これ以上の被害を抑えられるかどうかはそっちの撃破にかかってるよ?」
「いらないプレッシャーを…」
翌日。
今日も午前から全機出撃し捜索に当たる。マーカー側に増員する案もあったが、同じように振り回されるだけだろうとのことで、それならば砲台側で発射を妨害するほうが目があるとの判断だ。
「大尉が別行動な理由って何か聞いてますか?」
「え?あぁ、うん。サーシャさんね。一人で街の地形を覚えるのに集中したいんだってさ」
ニパはどうも今朝からボーっとしており、ちらちら大尉の方をみていた。
正直気になることが多く、被害が大きいことから"記憶メモ"を頼ったりもしたがあのメモ、憑依からしばらくたってから書いたこともあって参考になることは書いていない。いらない雑学がほとんどという有様だ。
「…この街全部ですか?」
「さすがにそれはないよ。次に狙われそうな施設の周辺を記憶してあぶりだすんだって」
「なるほど…厄介な擬態能力を封じるわけですか…って、ニパさん前!」
「ぐえっ!ってこんなところに銅像が…?」
「あたりですよニパさん!この銅像ネウロイです!」
塔の屋根から突き出すように銅像が生えているという珍妙な光景に写輪眼を向けてみれば、ネウロイは擬態を解いて逃走する。
擬態中のネウロイは銅像と何も変わらず、"円"にも反応しなかった。写輪眼で見てみれば力の流れともいうべきものが見える。加えて、擬態していた銅像は昨日ニパが激突した銅像と同じものだ。
「大尉!ネウロイ発見です!ポイントH-14!あー、またニパさんが事故って、こっちで後を追います!」
単騎で後を追っているとすぐに大尉が追い付いてくる。追い付かれたかと思えば、角を曲がるたびに徐々に追い抜かれ、大尉の後を追う形になる。
ネウロイが曲がった直後に大尉が後を追うと、光に目がくらんだのかそのまま街路樹に突っ込んでしまいバランスを失ってしまった。
「きゃぁ!」
「大尉!」
ストライカーも脱げ、倒れ伏す大尉に近づいてみれば、大したケガもしなかったようでよろよろと立ち上がる。
「大尉大丈夫ですか。大尉?」
声をかけても反応せず、あたりを見回している。
ニパも後から追いついてきたが困惑している。
途端、走り出したかと思えば民家へと入って行ってしまい慌てて後を追う。追い付いてみれば何やら写真立てを抱きしめてほほ笑んでいた。
(正直さっぱり状況が分からん…)
まぁ、おそらくアニメの演出的な奴なんだろうが登場人物からだとなんもわからん。
「サーシャさん…?」
「…ごめんなさい。任務に戻ります」
ニパがためらいがちに聞けば、大尉は写真立てを戻し、こちらに向きなおった。
やっぱりわからん。
「さっき、カンノから連絡があったよ。砲台型を見つけて交戦中だって」
「そう、早く私たちもマーカーネウロイを見つけたいところだけど…」
民家から出て、ストライカーを履く。管野達の方は、砲台型の装甲が固いうえに本体の火力もなかなからしく、ビームの乱射に攻めあぐねているらしい。
「くっそー…。あの辺に通信所があるってことはこのあたりが次の目標なのかも」
そう言ってニパが見上げた先にはこのあたりでも随一の高さを誇る建物があり、おそらくはそれをアンテナ塔として使っているのだろう。
「…ちがう」
「「え?」」
「あの塔に尖塔は無い!」
そう言って飛び出した大尉は寺院の屋根にあった串のように伸びた部分を攻撃した。どうやら"俺"がアンテナ塔に使っているのだと思っていた部分はネウロイの擬態だったらしい。
「しまった!」
大尉の攻撃でネウロイは消滅したが、消滅直前にネウロイの一部が奇妙な点滅を繰り返し、それはネウロイがマーカーとしての役割を果たしたと実感させるものだった。
≪すみません!撃たれました!≫
≪あと50秒でそちらに着弾します!≫
「了解!至急退避します。このまま巻き込まれれば私たちも無事ではすみません」
「で、でもここにはサーシャさんの、」
「言ったはずです。無人の町を防衛する必要はないとこれは命令です」
指示通りに退避する。途中、大きな鉄塔が併設された近代的な建物があったがおそらくそちらが通信施設なのだろう。
"俺"が通信施設が破壊された場合被害は他よりも大きいだろうしどうするのだろうと考えていると、
「な、ニパさん!?」
「はい?えっ」
大尉の驚く声に目を向けてみればニパが隊列を離れ、ネウロイの砲弾に突っ込んでいくところだった。
「うおぉぉぉぉぉ」
ニパが気合と共にそれをシールドで受け止めたかと思えば数瞬の拮抗のうちに大爆発。吹き飛ばされていくニパを慌てて大尉が受け止め、地上へ下していった。
しばらく呆然としてしまい、ハッとして合流してみると大尉がニパさんに抱き着いて泣きじゃくっていた。
「うわー!ひかりぃー、見てないで助けてよォ!」
(蚊帳の外感凄いな今回…)
とりあえず思ったのは、今回の主人公はおそらく大尉とニパなんだろうなってことである。
前回の話はひかりちゃんが本来かかわる話を改編したので短くなりましたが今回はがっつりかかわったので文字数が増えてしまっています
どうでもいいけどオリジナルで間に話書こうとして全然書けなくてスランプ気味だったのも更新遅れた理由だったりする。
かけた場合ここいら編に挿入されます。