念能力者(?)なひかりちゃん(?)   作:シチシチ

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つかれた


原作第13話 ~正直間空きすぎて設定覚えてない~

 サトゥルヌス祭の翌日。

 

 祭りが終わって解散した後も飲んでいた一部を除いて、多くのウィッチは部屋へと戻った。スオムス空軍からの出向扱いである501の2人も基地内に部屋を用意されしばらくこの基地にとどまるらしい。

 なんでもスオムスへほど近いペテルブルグまで来たのには補給任務以外にも個人的な目的があってのことらしい。

 

 朝食をもとめて食堂へ来てみれば少佐や曹長と一緒にお客さんの二人も入っていくところだった。食堂に入ってみればジョゼさんを除いた隊員たちが席についていた。話しかけてきた下原曰く、ジョゼは朝一で基地内の掃除に向かったらしい。掃除好きな彼女にとって年末のこの時期は何としてでも基地内全てを綺麗にしたいらしく、一分一秒を惜しんで動き回っているそうだ。とはいえ彼女のことなので食事が出される頃には一度戻ってくるだろう。

 

 

 お客様の2人も含めて全員が集まったところで食事を始める。

 下原さんの作る食事は万人受けするらしく、ユーティライネン少尉もリトビャク中尉も舌鼓を打つ様子だった。

 食事中の会話の中で"ここでも扶桑のウィッチが厨房に立つのか"という言葉があった。原作一期主人公である宮藤芳香のことだろう。彼女もよく食事を作っている描写があったはずだ。下原としても気になるらしく話題に食いついたので"俺"もそれに乗る。

 

 「501にいた時も宮藤ってのが厨房でいつも作ってくれててなー」 

 

 話を聞くに原作との目立った違いがあるようには感じられなかったが、いちウィッチとして話を聞いていると驚かされる逸話ばかりで、訓練なしで初めてストライカーを履くと同時に実戦に参加した、だとかその後も実戦で強くなったり実績を残したといった話が聞けた。人材マニアの気がある少佐は案の定引き抜きを考え出し、最初は興味なさそうにしていた管野も耳を傾けているようだった。

 

 

 

 食事が終わり、午前のミーティングが始まる。その場で少佐からユーティライネン少尉に教練をお願いしたいという"要望"があった。最初、少尉は渋る様子だったが少佐が耳打ちすると顔を渋くしてうなったかと思えばしぶしぶ了承した。またぞろ少佐お得意の後ろ暗い取引があったのだろうが、歴戦のウィッチに教えを乞えるともすればその動きを"視れる"となれば願ってもない。なお、訓練は大尉からの強いプッシュがあったらしい。

 

 お客さんの2人は午前のうちにやっておくことがあるらしく教練は午後からということになりその場は解散した。

 

 

 

 午前の"俺"のシフトは哨戒任務で、ニパと一緒に飛んだ。見てわかるくらいに機嫌がよく、昨晩はかなり話し込んだらしい。

 

 「ユーティライネン少尉って具体的にどう凄いエースとかあるんですか?」

 

 ニパにそう聞いてみる。

 最初のエース集団501に国の代表として送り出される以上スーパーエースであるのは当然と言える。が、薄れ切った原作知識ではもはや細かいことは思い出せないため教練の前に何が学べそうかを聞いておきたかった。

 

 「イッルは飛ぶのがうまいんだ」

 「戦い方は言っちゃえば固有魔法だよりだけど、その固有魔法を活かすのがうまいっていうのかな…」

 「たとえ同じ固有魔法を持ってたってイッルと同じ動きができるかって言われたら無理だね」

 

 まぁ、これ以上は教練を楽しみにしなよ、そう言われてしまうとそれ以上の追求はできない。素直に諦めて哨戒を続けた。

 

 帰投中に向こうの哨戒機とかち合うも難なく撃破して帰投する。

 今日のニパの不運は機銃の弾詰まりだったため、大尉から小言を言われることもなくすんだ。

 

 「そろそろ昼食の時間ですが大尉はどうされるんですか?」

 「一緒に行かせてもらおうかしら。もうやることは済んだもの」

 

 大尉を含む3人で食堂へ向かう。格納庫にはストライカーが普段よりも増えていることから、大尉はそちらの整備の手伝いも申し出たらしい。Bf-109もMig-60も大尉からすればなれた機体であり大した手間ではなかったと言った。502のパッチワークともいえる機体群と違い純正パーツの割合が多いことを羨ましがっていたが、ニパ曰くスオムスでも部品の現地調達などは頻繁に行われているらしく、つまりはそれほど502の機体がひどい有様ということを理解してしまい"もしや自分の機体のパーツも"などと考えてしまい思わず体が震える。

 

 

 昼食はつつがなく終わり、そのまま講堂に移動した。

 

 

 

 「だ・か・ら!」

 

 「グイッと飛んでスッと避けてスパッとまくればネウロイの攻撃なんか当たんないってぇ!なんでわかんないかな…」

 

 「わかんないっての!」

 

 講堂に集まったのは"俺"とブレイクウィッチーズの3人、それと監督役の大尉と主役のユーティライネン少尉。

 あと窓の外でストライカーを履いたジョゼさんが窓を拭いている。

 

 天才肌というべきか、ユーティライネン少尉の説明は感覚的なものを無理に口で説明しているような様子で、一応の身振り手振りこそあるものの、そこから読み取れというのも無理な話だ。同じく受講している管野は不満をあらわにしている。ニパは最初からあきらめていた様子で頬杖をついてだらけた姿勢だ。そんな中で隣に座っていたクルピンスキー中尉だけがしきりに頷いていた。

 

 「うんうん。なるほど」

 「クルピンスキー中尉わかるんですか?」

 「いやぁー教鞭をとるエイラ君も可愛いなぁーって思ってさ!」

 

 真面目に聞いていないという点ではニパと変わらなかった。頷いていたのを見て解説が期待できるかとみていた大尉が崩れ落ち大きなため息をついた。"俺"は"俺"で擬音が出てきたあたりから理解するのをやめていたので結局この講義をものにできた者は一人もいなかった。

 

 その場は結局得るものなしということで講義は終了した。管野は機嫌悪そうに鼻を鳴らしながら出ていった。請われてやった自分の講義が途中で取りやめになってしまった少尉が教卓で何をするでもなくただ膨れていたので声をかけに行く。

 

 「ユーティライネン少尉、お話聞かせてもらえませんか?」

 「ああ?理解できないってんで今おわっちまっただろ」

 「個人授業ってことで、少尉の戦歴に興味があるんですよ」

 

 そう言えば少尉は眉を顰め、

 

 「話してやってもいいが…サーニャを迎えに行ってからでもいいか?私の戦いが聞きたいってんなら一緒に飛んでたサーニャがいてもいいだろ」

 

 と言った。

 こちらとしてもより多くの話が聞けるわけで好都合であり、加えてリトビャク中尉なら擬音ばかりで理解しがたい解説などしないだろう。

 二人が宿泊している部屋へと向かい、中尉に事情を話す。快く快諾してくれたので今度はどこで話すかという話になる。二人のお部屋にお邪魔するのもあれなので、自分の部屋へとくるように促す。茶と菓子があることも併せて伝えれば乗り気になった。

 

 自室へと案内し、そのまま炬燵へ誘導する。2人が足を入れている間にお湯を沸かし菓子を用意する。ペテルブルグ向け補給物資の中からちょろまかした軍用チョコレートを下原さん協力のもと味を再調整したもので、甘く舌触りも改善されたがその分保存に難があり、早くに消費してしまいたかったものだ。

 

 「それで?どんな話が聞きたいんだ?」

 

 お茶とチョコレートで一息ついたところで向こうから切り出される。

 

 「んーと、そうですね。いままで出くわしたネウロイとどう立ち会ったか…?」

 「んだよそれ。そんなの回数が多すぎてなに言ったらいいかわかんねーぞ」

 

 いざ聞くときになって自分が何を聞きたいのかいまいちまとめられず口ごもる。ネウロイに立ち向かうときの動きについてなわけだが何からきけばいいのだろうか。

 

 「なにか、エイラだから聞きたい事とかってあるかしら。例えば避けるときに気をつけることとか」

 

 リトビャク中尉が助け船を出してくれる。少尉にだから聞きたい事、と考えたところで思い当たることがあった。

 

 「そうだ、少尉って戦う時にほとんどシールドを使わない避ける事を主体にした戦い方をするらしいじゃないですか」

 「ん?おお、私にいわせりゃシールドに頼るような奴は二流だな。それと"ほとんど使わない"じゃない、"全く使わない"だ」

 

 固有魔法の未来予知によって死角からの攻撃もすべて事前に回避する戦い方。それは、魔眼の動体視力で攻撃を見切る、相手の動きから数瞬先の動きを予知する写輪眼の完成系ともいえる。

 

 「私の固有魔法は優れた動体視力でもって相手の動きを見切ることで」

 「ああ、なるほど。似てるっちゃ似てるか」

 

途中まで言ったところで察したらしくさえぎられてしまった。腕を組んで頷いた後口を開き、

 

 「なら、明日直接飛んで鍛えてやる」

 

 そう言った。

 

 「いいんですか!」

 

 そう聞けば少尉は笑って肯定する。 

 

 「許可してくれるかしら?」

 「講義してくれって言ってくるんだ、訓練つけてやるって言ったらことわりゃしないだろ」

 

 中尉の懸念も問題ないだろうということで、明日は訓練をつけてくれることになった。

 

 

 夕食の席で少尉から少佐たちにその話をすると、許可してくれたが注文も付けられた。夜間戦闘の訓練も付けてほしいとのことで曰く、夜戦のエキスパートであるリトビャク中尉がいるならば余裕をもって教導ができるだろうということらしい。現在の502における夜戦要員が下原さんしかいない上、僚機も固有魔法を持たないロスマン先生がやらざるを得ない状況を打破したいということらしい。

 

 リトビャク中尉はそれを快く引き受けた。中尉としても自分にできる仕事があるのはうれしいらしい。

 

 

 

 「んじゃ、軽く模擬戦といくか」

 

 許可が下りた次の日、朝食を食べてすぐに空へ上がった。今飛んでいるのは少尉と"俺"の二人だけで中尉や観戦にきたニパなんかは下から見上げている。模擬戦はペテルブルグ市の上空で行われ、一発でも被弾したらその時点で終了ということになった。

 

 少尉は模擬戦の開始を宣言したあと、手に持った銃の銃口を上げようとはしなかった。

 

 「先手はくれてやるよ。どーせあてらんないから」

 

未来予知を覆す方法なんて思いつきはしないがカチンときた。

 

 「じゃぁ、お言葉に甘えまして!」

 

 言いながら弾をばらまく。こちらが銃口を上げきる前に向こうが動き出し、まさに紙一重で弾丸を避ける。

 わかり切っていたことなのでこちらもばらまきながら動きはじめる。

 この模擬戦で大切なのはこちらが相手に当てることではなくこちらがいかに相手の弾を避け続けるかだろう。

 

 弾丸は相手の鼻先にあえて当たらないようばらまくことで相手の出足をつぶし、その隙にこちらは上昇する。向こうもこちらを見て上昇してくる。ばらまいた弾とはいえすべてすり抜けた上で一発も撃たずに上昇してくる様は不気味の一言だ。

 

 未来が予知できると言うことは相手の弾に当たらないだけでなく自分の弾が当たるかどうかもわかるということだ。故に当たるとわかっているたましか撃たないということ。

 こちらがそれを避け続けるにはただ飛ぶだけではすぐにでも限界が来るだろう。よけ続けるには"写輪眼"で相手の動きを見切り続けるしかないだろう。互いが互いの動きを見て予知しあい、それに合わせて動きを変える、つまりは千日手の形に持ち込むしかない。

 

 ある程度上昇し高度を稼いだところであえて単純な軌道をとり相手の動きを誘う。向こうも誘われているのは気づいているだろうがそれでも銃口を上げる。向こうの銃口が定まったところで一気に切り返し、大きく動く。こちらは最初に弾をばらまいたのでしばらくは節約を意識して撃たない。

 

 "俺"の履いている零式二二型は機動性が売りだが向こうは頑丈な機体に大馬力のDB605エンジンを積んだbf109G、急降下、急上昇では勝ち目がないので緩降下と水平機動で勝負する。

 

 ≪新米って聞いてたんだがよく動くじゃないか≫

 「そう簡単にはやらせませんよ…!」

 

 通信を打ち切り、また少し高度を上げる。少尉が後ろについたのを見計らって進路を太陽に向けて一気に切り返す。目がくらむのを期待したが案の定平気などころかこちらの陰に入り続けることで無効化してきた。

 

 機体の性能差により徐々に差が詰められてきたところでつばめ返しを仕掛ける。一瞬で機体を沈ませ、またその次の瞬間には機体を浮き上がらせる。相手の射線を切ると同時に、上下に大きく銃を動かすことを相手に強要することで隙を作る。

 

 機体が浮かび上がる位置を相手の後ろになるように調整し、一気に仕掛ける。予定位置についたのを認識する前に引き金を引く。

 

 「はいおつかれ」

 

 こちらが引き金を絞り切る前に後ろから通信越しではない肉声が聞こえ、それと同時に背中に激痛。

 

 「いいぃ痛っっ!」

 

 

 「じゃ、反省会すっぞー」

 

 地上へと降り、着替える間もなく反省会が開かれる。ニパや中尉から声をかけられるが激痛に意識を持っていかれて聞こえていなかった。いかにペイント弾と言えども火薬で打ち出す約8mmの高速の物体は当たれば激痛が走りその場でのたうち回りたくなる。

 

 見かねたニパがジョゼさんを連れてきてくれたので治療を受けながら反省会を聞く。

 

 「まぁ、ぶっちゃけ今回は相手が悪かったな」

 「そんなぶっちゃけられても…」

 「あの最後の機動、腕のいい奴ならあれで仕留めきれないってことはあるだろうがあそこで真後ろから背中撃てんのは私くらいだろ」

 

 「で、しいて言うならあの機動を使ったことが間違い」

 「そんなにダメでしたか」

 「相手を目で見て先読みしてんのに機動戦で逃げに回ってたら隙が増えるにきまってんだろ」

 「相手が悪かった、のその2、私に誘われてたんだよ」

 「単純に後ろについて徐々に距離を詰める。これ繰り返されたらいずれは対処しきれないと悟って反撃に転じる。で、これが最大の隙となるわけだ。普段は時間もかかるしあんまりやんないんだが今回は持久戦になるって分ってたし」

 「しいて言うならこんなに早く反撃に転じてくるとは私も思ってなかった。よほど自信あったんだなお前」

 「ぐぅ…」

 「ま!私を墜とす気になるにはまだ早いってこった」

 

 いいように飛ばされ、隙を作るつもりの動き自体が隙そのものにされていたことを実感させられうなることしかできなかった。

 

 「前に言ったろ飛ぶのがうまいって。当てられるように相手を追い込む飛び方もうまいんだよ」

 

 ニパがそう言った。言われた側の少尉は鼻高々といった感じでドヤ顔していた。

 

 「それで、訓練はどうするの?」

 

 やれやれといった顔をしたリトビャク中尉が少尉に問う。問われた少尉は悩むそぶりを見せる。

 

 「今何が足りてないかっていうと状況ごとの判断くらいでなぁ」

 「なら、そこを中心に鍛えるのはだめなの?」

 

 中尉が続けて問えば少尉は悩むそぶりを強めついにはうなりだす。

 

 「ぐうぅ、確かに教えるとは言ったがこれ以上はサーニャとの時間が…、だがここで切り上げたりしたらそれこそサーニャにどんな目で見られるか、でも…」

 

 質問にも答えずにうなる少尉に見かねたのかリトビャク中尉が声をかける。 

 

 「エイラ?」

 「うー…、あー、もうわかったよ!鍛えてやる!マンツーマンでみっちりとな!貴重な時間を使ってやるんだから感謝しろよ!」

 

 つぶやくような中尉の声に反応してか跳ね上がるようにして顔を上げた少尉からは改めて訓練をつけてやることを告げられた。次いで、訓練はとにかく実際に戦う中でしか培えない判断力を鍛えると言われ、そのためにはただひたすらに飛び続けるしかないそうだ。

 つまり、これからしばらく毎日日がな一日今のような互いに読みあいながらの空戦を延々続けるのだ。

 

 「そうと決まったらとっとと飛ぶぞ!お前が早くものになればその分私たちの時間も増えるんだ!」

 「りょ、了解!」

 

 

 

 「ここんとこ毎日そんなんだな、お前」

 「ぐへぇ…」

 

 どこかあきれたような視線をこちらに向けてくるのは管野。

 マンツーマンでの訓練を始めてしばらくたった頃。今日の訓練の終了後、夕食前にサウナで汗を流しているところだ。

 管野は偶然居合わせただけだが、この場にはニパとユーティライネン少尉もいる。二段になっている座席部分の下側に"俺"ニパ管野が座り、上の段で少尉が寝っ転がって肘をついている。

 

 「お前も体力には自信あった口だろ。毎日どんだけ振り回されたんだ」

 「あー…、燃料切れるまで空戦?」

 「うわぁ」

 

 ストライカーは往復数時間飛んだうえで空戦ができるだけの燃料が積むことができる。今回は訓練ということで燃料を満載していたわけではなかったが、それでも燃料が尽きるまでの数時間の間、互いに相手の思考を読みあい射線を交わしあう飛行を続けたのだ。

 ただし、その相手役だったユーティライネン少尉はといえば、

 

 「んー、小!」「ぎゃあ!」

 「大!」「うぎゃぁぁ」

 「ふんぬぅ!」「おお、そこまでして避けるか。まぁ小だろうし別にいいか」

 

 こちらが会話している間にこっそりと起き上がった少尉は管野から順に胸を揉んでその反応で遊びだした。揉まれた二人が絶叫を上げる。前二人が犠牲になってくれたおかげで事前に気づけたので無理やり倒れこむことで回避する。揉まれるのは嫌なので避けたがあからさまに興味ない発言は釈然としないものがある。

 

 「はぁ…、つまんないなぁ…」

 「テメェ人の乳揉んどいて何言ってやがるっ!」

 

 管野が噛みつくが歯牙にもかけない様子。

 

 「んねぇイッル?まさかサーニャさんにもこんなことしてんの!?」

 「ハァ!?何言ってんだお前!そんな気持ちでサーニャを触っていいわけないだろ!?」

 

 「俺達ならいいのかよ…」

 

 何とも失礼極まりない発言をした少尉はニパの冷たい視線も気にせず再び横になる。

 

 「あぁ…、サーニャ…。うぅ、サーニャとの時間が足りない…」

 

 「こいつ本当にスオムスのスーパーエースでガリア開放の英雄なのかよ?」

 「イッルはサーニャさんが絡むとちょっと面倒なんだ…」

 「ちょっとどころじゃねぇだろ!?」

 

 ぎゃあのぎゃあのと騒ぎ立てる2人と自由な一人を眺めていると、サウナの入り口が開かれ1人が入ってきた。

 

 「ずいぶんにぎやかですね」

 

 入ってきたのはポクルイーシキン大尉だった。毎日格納庫で機械をいじる事の多い大尉はサウナを利用することが多いので鉢合わせることも多い。本人もサウナには慣れているので長く入り浸りがちだ。

 

 「あー、静かなほうがお好きですか?」

 「いいえ。サウナには親しい者と複数人で入ることもある物です。騒がしいのも自然な在り方と言えるでしょう」

 

 そう言うと大尉は部屋の隅に積まれていた焼石に水をかけ、少し離れたところに座る。腰を落ち着けたところでこちらへと顔を向け、口を開いた。

 

 「ああ、そうだ雁淵さん」

 「もうすぐ年越しですが何か、扶桑流の過ごし方と言いますかしたいことなどはありますか?」

 

 大尉がそういうと他の三人も反応する。管野に曰く、欧州での基本的な年越しはサトゥルヌス祭の時と大差ないらしく、親しい者同士で集まり夜通し酌み交わすのだそうだ。とはいえ未成年ゆえ酒を苦手とするものも多いためウィッチ部隊では酒盛りの前段階、豪勢な夕食こそが本番らしい。502でも既に下原さんが用意を始めているらしく大尉も先ほどまで手伝っていたらしい。

 

 「正直今年はできないだろうと思っていたのですが」

 「補給持ってきてくれたイッルたちのおかげだね」

 

 お礼を言われた本人は腕を上げるだけの返事だったがこちらに顔を向けないのは照れからだろうか。

 

 ふと、ニパが顔を上げてこちらへ振り返る。何かと思えばサトゥルヌス祭とも違う点があるという。

 

 「スオムスでは年越しの瞬間に花火を上げるんだ!」

 「花火ですか?」

 「それに、年越しの花火を二人で見ながら過ごすことができるとその二人は幸せになれるって言い伝えがあってさ!」

 「ロマンチックって言うんですかねぇこういうの」

 「そうそうその通り!」

 

 「…二人で年越しできるんならその二人はもう幸せなんじゃねぇか?」

 

 思わず、と言った口調で管野が話に入ってくる。

 

 「わかってないなぁカンノはさぁ!ロマンチックなのが大切なんじゃないか、シチュエーションだよシチュエーション!」

 

 「それだぁ!」

 

 「「は?」」「「?」」

 

 突然跳ね起きたユーティライネン少尉が大声を上げたかと思えば、ぶつぶつ独り言をつぶやいた後ニパに抱き着きその頭をなでる。

 

 「うえぇぇ!?」

 「よくやったぞニパ。お手柄だ!」

 

 そうして一通り名で繰り回した後、こうしちゃいられない!とだけ言い残し、走ってサウナを出ていった。

 

 「なんだったんだろ…」

 「知るかよ」「急にテンション上がりましたね」

 

 「よくわかんないけど…イッルに褒められた。えへへ」

 

 ユーティライネン少尉が出ていったことにより、残った面々も大尉を除いてサウナを出ることにした。大尉は入ったばかりということでもう少しあったまりたいらしい。とはいえ夕食も近いので今日はすぐに出てくるだろう。

 三人で連れ立って歩いているとユーティライネン少尉に撫でられたニパがニヤケ面のままふらふらと歩くものだから案の定不運に見舞われたりもしたが、閑話休題。

 身なりを整えて食堂へ行く。厨房ではまだ用意の途中であったが調理は終わったものがさらに盛り付けられ置かれている。

 

 「何か手伝うことはありますか?」

 「ああ、ひかりさん!お二人もいるんですか?」

 「おう、いるぜ」

 

 厨房には下原さんのほかにリトビャク中尉と曹長、ジョゼさんがいた。4人いてもなお慌ただしく走り回るのを見かねて声をかける。声に反応した下原さんの指示に従い食堂側の机に並べていく。

 

 そうしてるうちに食堂に少佐やクルピンスキー中尉も現れ、最後に大尉が来た。少佐と一緒に来たユーティライネン少尉はどこか不機嫌そうだった。

 全員がそろったところで少佐がしゃべりだす。

 

 「諸君らの活躍によって今年もネウロイの侵攻を阻止、ペテルブルグを守ることができた」

 「そして来年こそ奴らへの反攻の年とする。いいな!」

 

 「「「はい!」」」「ハイッ、モグモグ…」

 

 全員の返答が終わったか終わらないかのタイミングで真っ先に食事に飛びついた者もいるが、おおよそ全員少佐の言葉で士気を上げ食事に手を付け始める。

 

 「おいしー!」

 「懐かしいオラーシャの味です」

 

 料理はオラーシャのものが中心で、舌鼓を打つ。個人的にはパンをボルシチにつけて食べるのが気に入った。

 

 「今日の味付けはほとんどサーニャさんがやってくれたんですよ?」

 「さすがサーニy「すごすぎですサーニャさん!」ちょっ」

 

 下原の発言を聞いたジョゼが駆け寄り、そのまま頭をこすりつけるような距離で話し出す。下原さんに聞くと食糧庫を荒らしていたネズミを捕まえたことと食事の腕で一気に懐いたらしい。

 

 「…ちなみに何か思うところは?」

 「いいえなにも?ジョゼが彼女のオラーシャ料理をおいしいと思ったのも事実ですが、ジョゼの好きな味はそれだけじゃありませんから…」

 

 

 「やるじゃねぇかお前」

 「もうずっとここに居てください!」

 

 「うぐぐぐぐ…お前らサーニャにっ≪ウウゥゥーー!!≫」

 

 「警報?!」「ネウロイ!」「んもー…空気読んでよ」

 

 警報を聞いた隊員達は即座に意識を切り替え、少佐の指示を待つ。

 

 「食事は中断、出撃準備!」

 「誰を上げますか?」

 

 時刻は既に1900を回っており、辺りは暗くなってしまっている。502内で夜間戦闘ができるのは夜間視の力がある下原さんだけで他は精々飛ぶのが限度だ。

 

 「相変わらず弾薬と燃料も心もとないままです」

 「さて…」

 

 

 

 

 少佐の決断は502から夜間視の下原さん、ベテランで飛行時間の長いロスマン曹長、経験はないが魔眼があるため他の面子よりはマシな"俺"、そして501での夜戦担当だったリトビャク中尉と、中尉と共に飛ぶこともあったユーティライネン少尉の5人を出すというものだった。

 

 「夜空は自機の位置を見失いやすいの。だから、常に自分だけでなく仲間の位置も把握するように」

 「了解」

 「夜間戦闘の経験を積むために来てるのだから教えたことはすべて体に叩き込みなさい!」

 「了解!」

 

 「前方三千!ネウロイを視認!」

 

 最初に敵機を補足したのは下原さん。続いて反応し行動に移ったのは501の二人。エンジンを吹かし一気に先行した。

 

 「よく見ておきなさい。彼女が無傷のエースと言われる訳、演習じゃない実戦でね」

 「…はい!」

 

 「いっくぞー!」

 

 そういって飛び出したのはユーティライネン少尉。MG42をばらまきながら突っ込む、が即座に切り返し高度をとる。

 発射された7.92mm弾は全てがはじかれてしまい、反撃に光線が幾条も飛んでくる。

 

 それを見た下原さんが突っ込むのにあわせてこちらも飛び出す。今度は12.7mmと20㎜を浴びせるがこれもはじかれる。

 

 「装甲が固い!」

 「けど、"射程"には入った!」

 

 「下がって!」

 

 次いで放たれたのはリトビャク中尉のフリーガーハマーでこれは唯一敵の装甲に目に見える損害を与えた。

 しかし、大きな罅こそ入ったものの欠損を与えるには至らず、コアも見えない。

 

 「攻撃が効かないわけじゃない、防御特化型のネウロイよ!」

 

 曹長の分析は装甲を固めて防御に特化した代わりにその他の性能は突出したものはないという。現に飛行型でありながら速度は大したことなく、動きも緩慢だ。

 

 「それで雁淵さん?」

 「はい、相手のコアは機体上面、パネル部分の中央です!」

 

 「なら、そうと決まれば!」

 「コアが出るまで攻撃し続けるだけ!」

 「ようするにいつもと同じってことだ」

 

 

 ネウロイは攻撃対象をこちらに定めたらしく、距離をとって反転し攻撃を仕掛けてくる。

 火力のあるリトビャク中尉とロスマン曹長が正面に、"俺"とユーティライネン少尉が上昇、下原さんが下降しそれぞれ狙う。

 

 「全体!こっちで相手の攻撃は引き付ける!おいひかり」

 

 そういって少尉はこちらに顔を向ける。

 

 「実弾じゃないネウロイの攻撃の避け方を見せてやる、よく見て覚えろ!」

 

 少尉はそのまま緩降下で加速し、ネウロイの真上からは急降下する。当然迎撃に数えるのもおっくうになるだけの光線が浴びせられる。少尉はその中を機首を上げずに横にスライドするような動きのみで、シールドを一切使わずにすり抜けていく。

 ある程度接近したところから射撃を開始し、そのまま相手の横を通り過ぎる。その後は相手に付きまとうように相手の周りを飛び回る。その動きは素早く、また相手の攻撃が発生するより早く切り返すため当たる気配がない。

 

 しばらく飛び回ったところで相手の機首を誘導し、火力役の二人の前へとおびき出す。

 計6発のフリーガーハマーの弾頭が相手の上面で炸裂する。

 

 「コアが見えた!けど…」

 「再生が早い…」

 

 曹長の見込みは外れたらしく、相手は硬い装甲に加え高い再生能力も兼ね備えているらしい。

 

 即座に再生を終えたネウロイはこちらを無視し、まっすぐに飛び去る。

 

 「な、逃げた!?」

 「いえ…違います!向こうには基地が!」

 

 「まずいわ!基地に今夜間に戦えるウィッチは…!」

 「追います!」

 

 こちらが慌てて飛び出そうとすると、リトビャク中尉がそれを呼び止める。

 

 「大丈夫です」

 「えっ…」

 「どうしてですか!」

 

 そう問いかけると、中尉は笑って視線で示す。

 

 その先にはユーティライネン少尉が空中で停止しており、ネウロイを待ち構えていた。少尉はネウロイがすれ違う瞬間に一斉射だけ引き金を絞り、射撃する。ネウロイはしばらくとんだ先で砕け、光になって降り注ぐ。

 

 「さすがだわユーティライネン少尉…」

 「どうやって7.92㎜であの装甲抜いたんでしょう」

 「さぁ…?」

 

 

 

 

 夜間の戦いから数日。年越しを502で迎えた501の二人がスオムスへと戻る日が来た。ペテルブルグまで二人には迎えが来ている。

 

 「ユーティライネン少尉、リトビャク中尉。改めて二人の行動に感謝を」

 「あぁーいいっていいって」

 

 少佐は最後まで引き抜きに努めたらしいが二人は断り続けたようだ。

 

 「サーニャさん…!」

 「あの、ジョゼさん。その、ごめんなさい」

 

 引き抜きを考えていたのはもう一人いたらしい。

 

 隊員のそれぞれと一言二言ずつ交し合い最後にこっちにも来た。

 

 「私の教えたこと忘れんなよ?」

 「教えたといっても座学じゃなくて実機でしたし忘れませんとも」

 

 「雁淵さんも気を付けてね」

 「ええ、まだまだ新米の意識でやらせてもらいますよ。リトビャク中尉もユーティライネン少尉もお気をつけて。戦いだけじゃなく健康にも」

 

 そう言うとユーティライネン少尉は渋い顔をしてこちらを鋭い目で見る。

 

 「なーんか堅苦しいんだよなお前。イッル…は言いにくいんだっけ、じゃあエイラでいいよ」

 「私もリトビャク中尉よりはサーニャって呼んで?」

 

 「…じゃぁ、サーニャさんも私のこと"ひかり"って呼んでください。エイラさんはもとからひかり呼びなので」

 「なら、ひかりちゃん、でいいかしら」

 

 サーニャさんと改めて名前の交換をしたところで迎えの人から急ぐように言われる。

 

 雪上車に二人が乗り込むと瞬く間に加速し、二人の姿が小さくなる。

 

 「じゃーなー!」

 「お元気で!」

 

 「またなイッル!サーニャさんも!元気なままでいろよー!」

 

 

 

 「騒がしい奴ら…騒がしいとは違うか?」

 「いたのは一週間程度だったのにもう違和感あるのも凄いですね」

 「まぁ、存在感はありましたものね」

 「うぅ...サーニャさん...」

 

 「貴重な夜戦ウィッチのあてだったのだがな」

 「結局ユーティライネン少尉の教えを理解できた人は、実機で飛んだ雁淵さんだけですか…」

 「ブレイクウィッチーズ解決にはなりませんでしたね」

 「睨まないでおくれよ先生」




最近短編で簡単にまとめればよかったなって後悔し始めてる
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