念能力者(?)なひかりちゃん(?)   作:シチシチ

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投稿ペースだだ下がりってレベルじゃなくなります。

なんならエタらせてガンダム00でネーナ憑依もの書きたい。短編にするから。


原作第8話  ~冬の北極海って血の池地獄とかと同義だよね~

 「おーい、下原君たち終わったってさ」

 

 1月のある日。

 談話室で過ごしていると、入ってきたクルピンスキー中尉が声をかけてきた。

 

 現在下原・ジョゼ組はラドガ湖の東、ペトロザヴォーツク周辺の確保のために出撃している。今までの502部隊への補給はオラーシャのノヴォホルノゴルイ、もしくはアルハンゲリスクと呼ばれる街にて揚げられ、陸路で送られてきていた。だが、そのすぐそばに最新のネウロイの巣"グレゴーリ"ができてしまい、街の人間は避難を強いられることとなったため、502への補給も途絶えてしまっていた。その後はスオムス軍からの補給を新たに受けていたが、もともといらん子中隊を抱えているうえそもそもが小国なのでそこまでの余裕はなく、502への補給は従来の半分以下となってしまいその活動を大幅に縮小せざるをえなくなっていた。

 そのために今回、補給線強化のため、コラ半島の上部、ムルマンスクから直接補給を受け取るべくペテルブルグとの間の敵兵力の排除を行ったというわけだ。

 もともと北方戦線における補給はムルマンスクとアルハンゲリスクで5:5ずつだったのをアルハンゲリスク使用不可になったことからムルマンスクに集中することになったのだが、いきなり2倍の物資を揚陸されても処理するのは不可能であるため、港湾機能の強化から始めることになった。結果、グレゴーリ発生から今日までたってようやく使えるようになったというわけだ。

 

 「これでよーやく前の生活に戻れるってわけか」

 「いやー、どうだろうね。ノヴォホルノゴルイとムルマンスクじゃぁ2倍近い距離の差があるっていうよ?」

 「安定して食料が来るだけでもありがたいですよ」

 

 今、この談話室には管野と"俺"、今入ってきた中尉の三人しかいない。上官3人はいざという時に備えて執務室兼作戦指令室だ。

 ニパはというと、

 

 ≪ジリリリリ≫

 「んあ?はい、談話室」

 ≪あっ、管野?格納庫までこいよ!イッルたちの持ってきた補給物資に開けてないのがあったんだ!≫

 

 どうやら格納庫にいたらしい。

 

 「まじか!おい!」

 「もちろんいくとも。あの時の補給品ならまだ見ぬぶどうジュースちゃんが僕を待っているかもしれない!」

 「いきますいきます。嗜好品の類は私も欲しいですし。あっ、少佐たちには黙ってましょうよ」

 「お前もここに染まってきたじゃねぇか。おうニパ、2人釣れたしすぐに行く!」

 

 

 

 

 「これだよ!」

 「とりあえず邪魔って押し込まれてた感じだねぇ。結構大きい木箱じゃないか」

 

 格納庫についたところで、ニパに隅の方へと引っ張り込まれる。そこにあったのは胸元くらいの高さで縦横2m近くある木箱だった。

 

 「早く開けてみようぜ…ふん!」

 「ぶどうジュース入ってるかなー♪」

 

 管野がバールで板を引きはがしていく。半分もはがしたところで見えたのは、おがくずのようなものに包まれた鈍色に光る銃器の数々。

 

 「なんだ武器かぁ…」

 「しかもstg-44、うちで使ってるの中尉だけですよね」

 「うわ、リベレーターまでありやがる…。しかも弾無しって」

 

 そういって管野が持ち上げたのは手のひらと同じか少し大きいくらいの銃。それには見覚えがあった。

 

 「うわぁこれが噂の"自殺用拳銃"ですか」

 「なんだそりゃ」

 「扶桑にいたころに欧州で使われる武器について教わったんですけどね?その中にあったんですよ」

 

 そういってリベレーターを手に取る。

 

 「一発撃ったらおしまいな上にその一発すら距離をとったら当たらない。だから自殺以外に使いようのない拳銃って」

 

 マガジンが内蔵されない以上一発撃つたびに再装填が必要、銃身にライフリングがないため狙ったところに飛ばない、おまけに薬莢は銃口から棒を突っ込んで押し出すしかないという最凶の省力拳銃。それがこいつなのだ。佐世保にいたころの放課後特別授業で教えてくれた教官もドン引きだった一品。

 

 

 「あぁ…なるほどそりゃ言えてる」

 「ひどい言われようだけど擁護のしようもないっていうのが凄いね」

 

 現場の人間からも評価は低いらしい。元の世界ではレジスタンス用に作られた物のはずだがネウロイ相手のこの世界。戦うのは軍人のみである中で何に使うんだこれは。

 

 「つまんないなぁ、もっとほかになにか話のネタになるようなものはないのかい?」

 「といわれても、ん?これなんだ?」

 「クルピンスキー宛って書いてあるぜこいつ」

 

 そういってニパが箱から持ち上げてきたのは、他とは雰囲気の違う紙製の箱。表面に張られた紙には手書きで文字が書かれているが、中尉宛ということはカールスラント語か。

 

 「おぉ!てことはスペシャルなぶどうジュースかな!開けてみて」

 「どれどれ、わぁ、お菓子だ!」

 

 中に入っていたのは色とりどりのお砂糖菓子。マカロンという奴だろう、なかなかの量が入っている。

 

 「ちぇ、違ったガッ!なんだこれ!?」

 

 つまんだマカロンを中尉が口に含んだ瞬間、悲鳴を上げる。吐き出されたマカロンの中からは写真を入れるロケットのようなものがのぞいている。

 

 「は?どういうこった」

 「お菓子の中になんでそんなものを」

 「わぁ…中尉そこまで嫌われるようなことした相手がいるんですか」

 「ひかり君さすがにそれはひどくないかな?」

 

 流石にそんな言われようは不服だったのか鋭い目でこちらを見た中尉がロケットをいじりだす。

 

 「ん、ああこれは...」

 「どうした、なんか入ってたのか」

 「これは隊長案件かな、ちょっと行ってくるよ」

 

 まるで隠すかのように拳のうちへとロケットを隠し、中尉は歩き去る。どこか早歩きのようにも感じる。

 

 「菓子の中から隊長案件だぁ?」

 「厄ネタのにおいがしますよこれは」

 「うわ、かかわらないでおこ」

 

 

 

 

 そのまま格納庫で、出てきた銃器を整備班に引き渡したり、伯爵宛の菓子を三人で勝手にむさぼっていると出撃していた二人が帰ってきた。マカロンのにおいを嗅ぎつけてきたジョゼさんに残りを渡すと大喜びで去っていった。下原がそのまま、昼食づくりを始めるというので手伝いを申し出る。渋る管野とニパも巻き込み、厨房へと向かう道すがら今日のメニューを聞くとトナカイ肉のシチューであるらしい。

 

 「しっもはらちゃーん♪今日のお昼は何かなー!」

 

 配膳を終え、席に着こうというタイミングで中尉が食堂に入ってくる。メニューを聞いた中尉はぶどうジュースがないと物足りないとか言い出した。年末からこっち、中尉のアル中化が進んでいる気がしてならない。

 

 会話を交えつつシチューを食べていると、この場にいなかった少佐たちが紙束を抱えて入ってきた。

 

 「全員、食べながらでいいから耳だけ傾けろ。502の新たな任務が決まった」

 

 少佐が喋る後ろで、大尉と曹長が協力して北欧や北海の書かれた地図を吊るしている。解説を担当するのは曹長らしい。

 

 「現在、ブリタニアを出航した大規模な船団がムルマンを目指して北海を航行中。我々の任務はこれの護衛です」

 

 そう言って曹長が指し示した地図には輸送艦を示すマークを軍艦のマークが囲って作られる大きな円が描かれていた。

 

 「安全な航路ではありますが気を抜かないように」

 「今回の作戦に502からは4名を派遣する。現場指揮はクルピンスキーお前がとれ」

 「うぇえ!?ちょっとまってよボクがいくのぉ~?」

 

 少佐に名指しされたクルピンスキー中尉は不満を隠そうともせずにいる。

 

 「…今回の船団には万が一に備えてブリタニア海軍からウィッチが一名派遣されています」

 

 そういって曹長は中尉へ写真を差し出した。

 

 「か、かわいい…!行きます」

 

 声色まで変わる変わり身を見せた中尉を見て曹長は頭が痛そうにしている。なんとなく少佐の仕込みなんだろうなぁと思った。

 

 「残りの三名は中尉の権限で選出せよ。また、船団には502の一部隊員向けの新型ユニットが積まれている。出撃する4名うち該当するものはムルマンにて船団の到着から出航までの間に一度慣熟訓練を済ませておけ」

 

 「新型!行く行く俺が行く!行かせろ!」

 

 新型の一言に食いついた管野が椅子を倒す勢いで立ち上がり、そのまま中尉に詰め寄る。

 

 「じゃあ、残りの三人は直ちゃん、ニパ君、ひかりちゃんで」

 

 「え、私ですか」

 「ムルマンか...遠いなー…」

 「扶桑の新型ってことは紫電の新しい奴だろ?楽しみだぜ」

 

 

 

 「お前またエンジンが変なせき込みしてるじゃねぇか…」

 「うぅ…大丈夫かなぁ。保ってくれよ1,000キロ…」

 

 翌日、格納庫では出撃に備えた準備を行っていた。既にストライカーユニットを装着し背中にはそれぞれの背嚢を背負っている。ムルマンでの滞在中に使う日用品などが入っている。とはいえ戦闘中には邪魔になるためいざという時に投棄しやすいようにあまりきつくは固定していない。

 

 「むぅ…」

 

 「指揮官に選ばれたともなれば流石にクルピンスキー中尉も真剣になるんですねぇ」

 「お前、なんか最近中尉に対してあたり強いな…」

 

 唯一一人だけストライカーユニットをつけず、机で資料とにらめっこしているのは今回の隊長である中尉。ここ数分ずっとあのままだ。

 

 「ほんとに作戦について考えてんのかなぁ…」

 「まぁ、どうせろくでもないこと考えてんだろ」

 

 「なんだ…?君の瞳に…大輪のバラは違うか、ねぇーひかりちゃんちょっと…」

 「は・く・しゃ・く・さ・ま・?」

 「うひぃ!先生、あの、これは、その…」

 

 <ギャア!

 

 「あーあ」

 「口説き文句考えてやがったか」

 「あの人やっぱダメなのでは?」

 

 

 予定時刻となったため、出撃する。長距離の飛行はウィッチにとっても負担となるため300㎞ごとに最寄りの基地で休憩をはさむ。途中、基地要員を中尉がくどいたりあったこともないブリタニアウィッチの写真だけで惚れけられたりしながら4機は北海まで進出した。

 

 「海を見るのは久しぶりだなぁ」

 「少し、急ごうか」

 

 つぶやくような声に振り替えるとそこには真剣な顔をした中尉が。

 

 「なぜです?」

 「ちょっとここからは見えないけどね、あの水平線の向こうにはネウロイの巣"グリゴーリ"がある。ここは安全な海域らしいけどね」

 

 そういって指さした先は一見何もないように見えたが言っている通りならそちらの陸地が原作最終決戦の地となるのだろう。

 

 「くっそー、このままいって何とかしてやりたいぜ」

 

 逸る管野を中尉がたしなめる。

 

 「慌てない慌てない。あっちは最終目標、今は船団が優先さ」

 

 

 

 

 

 日も暮れたころ、4機はムルマンへと到達した。途中、ニパのユニットが黒煙を吐き出し停止するといったトラブルもあったが何とかたどり着いた。

 

 「いやぁー、遠かった」

 「やっぱり1,000キロは遠かった」

 

 格納庫にてケージにユニットを固定し移動する。どうやらニパのユニットは分解整備の必要があるくらいに壊れてしまっているらしい。自分たちにどうすることができるわけでもないので当初の予定通り新型を受領しに行く。

 

 「いやー、凄い量の物資だ」

 「まだまだこれからも来るんでしょう?」

 「まだ陸揚げされてるのはほんの一部だけだからね」

 

 基地内にはあちこちにカバーのかけられた木箱が山積みになっており、広いはずの基地が狭く見えるほどだ。港湾の外にはまだ多くの輸送船が待機しており、荷揚げの順番待ちをしている。港湾能力が強化されても処理が追い付かないほどの船団が来ているのだ。 

 

 「うーわ、なんだありゃ」

 「うお、戦艦でも作ってんのか」

 

 ニパの驚く声にそちらへ顔を向ければそこには巨大な砲身がカバーから顔をのぞかせていた。扶桑にいたころ戦艦を見かけることもあったが比較にもならないような口径と砲身長だ。

 

 「むむっ!」

 「中尉も何か見つけました?」

 

 今度は中尉がうなり声をあげたためそちらを見れば、

 

 「陸戦ウィッチのかわいい子発見!いいねぇいいねぇ!」

 「うわっ…」「またかよ」「そのキッショイ動き今すぐやめてくれません?」

 

 

 

 目的地の倉庫は基地の中心を少し外れたところにあり、照明も少ないため薄暗かった。

 

 「んー、ストライカーはこのあたりのはずなんだけど、おっ!あったあった」

 

 倉庫のさらに端、壁際に置かれたケージには"三機"のユニットが固定されていた。一機は水冷の角ばった機体で黒十字が描かれていた。残りの二期は日月旗の描かれた見覚えのある機体だった。

 

 「やったぜ紫電改だ!ひかり、おまえの分もあるぞ!」

 「ぴかぴかだぁー!」

 「こっちのK型は僕のだね」

 

 管野の言う通り、そこにあったのは山西航空製紫電二一型だった。姉・孝美が試験を行っていた機体の正式量産モデルだ。

 姉と同じ機体ということに何とも言えない感情が沸き上がり、口を閉じているとニパが近くにあった別の木箱に反応する。

 

 「こっちは何だろう」

 「えーと、ラル隊長にロスマン先生、それにこっちのはー…」

 「扶桑の字だ。てことは下原の分の紫電改だろ」

 

 おかれていた木箱は3つ。二人の言う通りなら、502内で新型が配備されなかったのはジョゼさん、ポクルイーシキン大尉、そしてニパということになる。

 

 「いいなぁー、新しいユニット。スオムスは貧乏だからなぁ」

 

 こぼすようにニパが言う。スオムス側に余裕がない以上仮に新型が手元にあっても配備先はエイラのとこかスオムスのエースのもとだろう。

 それを見た伯爵は

 

 「なら、これはニパ君が使うといい」

 

 そういって別の木箱のほうへと歩いて行ってしまった。

 

 「えぇ!でもこれクルピンスキーさんの…」

 

 「ニパ君のユニットは壊れちゃったんだから仕方ないよね、それより僕はこっちの、っと!ふふん♪」

 

 ニパの声に反応を返すも未練などは感じさせず、代わりに興味が言っているのはこじ開けた木箱の中にあったワインのようだった。

 

 受領手続きを終え、慣熟訓練に入る。原作において"雁淵ひかり"はその魔力量の少なさから紫電改の性能をまともに発揮することができず、シールドの分の魔力まで回すことでようやく飛行していた。そのことから不安があったが、いざ飛んでみれば特に出力の不足を感じさせることもなく飛ぶことができた。

 よくよく考えてみれば、次期主力機である以上"雁淵ひかり"のように低魔力のウィッチが使用することだって当然あるだろう。正式量産型である以上そのような欠点は改善されているに決まっている、原作で飛べなかったのは試作機で魔力の多い姉が使用していた紫電改だったせいでもあるのではないだろうか。

 

 

 

 海に面した飛行場に三機で並ぶ。

 

 「管野一番出る!」

 「カタヤイネン行きます!」

 「雁淵ひかり、紫電改発進!」

 

 飛び経ってすぐに零式とはあまりに違う速度性能に驚く。今日のところはあくまで確認に留めるようにムルマン基地司令部から言われているため、模擬戦形式での空戦訓練はまた後日となるだろう。

 

 

 一通り試し終わり、地上へ降り立つと管制を担当してくれていた基地の人間がサウナがあることを教えてくれた。複数あるらしくそのうちの一つをウィッチ部隊用に割り当ててくれているらしい。

 

 ペテルブルグのサウナと同じくらいの小屋サイズのサウナはとても気持ちがよく、長距離の移動に加え、慣れない機体まで使った疲れが汗と共に流れ出るようだった。

 

 「あのK型本当に使っちゃっていいんですか?」

 

 隣に座るニパが伯爵に問いかける。K型はこれまで使っていたG型以上に洗練されて、良くなっていると実感できるものだったらしい。それだけにこれほどのものを譲られてしまったのを気に病んでいるらしい。

 

 「いーのいーのぉ!いやー、仕事の後のぶどうジュースは最高だねぇ!」

 「おめーは何もしてねぇだろ!」

 

 一応ここまで飛んできているのだから何もしていないわけではないと思うのだがまぁ置いておく。

 格納庫で箱一杯の瓶入りぶどうジュースを見つけてからというものずっと飲み続けている中尉の顔はサウナに入ってからというものよりいっそう赤みを増しており、異様に高いテンションと呂律の回らない舌は酔っ払い以外の何物でもない。

 

 「なぁ、あれってもしかして」ヒソヒソ

 「明らかに発酵の過程を踏んでるぶどうジュースですよ」 ヒソヒソ

 

 「あ゛ぁ゛ー、!殴りてぇー!」

 

 

 案の定酔いつぶれたのか消灯時間になっても部屋に帰ってくることはなく、管野とニパも探しに行くのはめんどくさいとそのまま寝息をたて始める。

 

 穏やかな寝息が二人分聞こえだしたころ、こっそりベッドを抜け出し背嚢を持って部屋を出る。今回の任務は比較的長期に渡る上、その特異性から絶対に原作において一話割り当てられている話だろうと思っていた。しかし、突然出撃するように言われたために記憶メモを確認する暇がなかったためとっさに背嚢に突っ込んできたのだ。

 記憶メモに書かれている内容は念以上に人に知られてはいけないため他の三人がいないこの瞬間にしか読めなかったのだ。

 

 (えーと?なんで7話の次が13話なんだこれ、でもエイラとサーニャについて書いてあるってことは多分あってるんだな。で、8話はー、護衛任務ってことはビンゴかな)

 

 原作の話について書かれているページの中では比較的書いてあることが多い。基本的に終盤に近付くほどメモの内容も増えるのだが。

 ちなみに、メモの内容はある程度話の流れが書いてあることもあれば単語が書きなぐられているだけであったりもする。両方のことも多く、今回はそのパターンだった。

 

 (えー、さすがに地名なんかはあやふやだな、港としか書いてねぇや。メンツは変わらないのか、それから当然戦闘もある、と。…は?)

 

 読み進めていく中で目に留まった一文。その一文を見た瞬間、はるか昔の見たはずの、とうに薄れて消えた記憶の一シーンが脳裏によみがえる。

 

 "クルピンスキー撃墜、リベレーターがみがわり?になって生き残る"

 

 原作第八話。

 二日酔いで不調なクルピンスキー。

 気遣ったひかりから渡されるお守り。

 ありがちな胸元にいれておいた○○のおかげで生き残ったの実演。

 

 (やばい、やばいやばいやばいやばいやばい!)

 

 原作ひかりがクルピンスキーに渡したお守り。

 原作ひかりが可愛いと言い、クルピンスキーがお守りと言ってだまして渡した物。

 傍からみればお守りなどでは決してなく、無用の長物とすらいえる物。

 

 ("リベレーター"なんて持ってきてねぇ…)

 

 ひ弱な拳銃弾を一発しか撃てないゴミ、そんな会話を自分から振り、切って捨てた記憶がよみがえる。自分の呼吸が早くなり、目の前が真っ暗になる。気づけばあれだけ修行した"纏"まで乱れている。取り返しのつかないことをしてしまったという意識が強くなる。

 

 (クソッ、クルピンスキーがピンチになるのは何となく覚えてたが今回の任務だったなんて!なんでもっと普段からノート全体に目を通しておかなかったんだ!)

 

 思考が過去の自分を責め立て始めるが、それを無駄と切り捨て先のことを考えるように意識する。恐怖を必死に抑え込みながら。

 

 (なんだ、もっとよく思い出せ!クソッ、クルピンスキーの被弾原因は何だった!?誰かをかばった?いや、違う、ブリタニアの追加ウィッチはほとんど噛ませだったし残りは普通に飛んでいた。クルピンスキーは単独で飛んでいた覚えがある)

 

 8話の内容はクルピンスキーの見せ場回であり、前に出まくっていたはずだ。となれば単独で動いていたというのも納得がいく。

 

 (俺がかばうしかない…何時クルピンスキーが被弾するかわからない以上、注意を促したところであまり意味はないだろう。ああもう、せめて酒を二日酔いにならない程度に抑えられてればもう少しましだったかもしれないのに…)

 

 それてしまった思考を再び元に戻す。

 

 (かばうためには常に近くにいなくちゃならない、そうなると分かれて行動するであろうクルピンスキーについていかなくちゃならない…。問題はどうやってついていくか、ついていって構わないのか…。原作だとつまりクルピンスキーが相手していた奴との三人で相手をしていた相手の二手に分かれているはず…戦力配分を変えて大丈夫なのかどうか…)

 

 

 

 結局、考えは纏まることはなくその日はベッドに戻ることになった。自分が考えたところで記憶が思い出せない以上打開策が思い浮かぶわけではないのだから。

 

 

 

 

 

 「そろそろ時間だというのに…」

 「遅いな…」

 

 翌日、船団護衛に向け出撃する予定時刻になってもクルピンスキーは格納庫に現れていなかった。不安と焦燥感が募っていく。

 

 「お?来たみたいだぜ」

 

 「うぅうぅう、おぇ。きもちわるい…」

 

 現れたクルピンスキーは見てわかる体調の悪さで、異様に青い顔とおぼつかない足取りがさらなる不安を誘う。

 

 「あぁ、やっぱりな…」

 「二日酔い、ですか」

 

 「やぁ…、ひかりちゃんは今日も可愛いねぇ~」

 

 お決まりの挨拶にも力がなく、正に弱っているという表現がぴったりだった。もはや見ていられず、口を出す。

 

 「あの、出撃をやめてください。そんな体調じゃ戦闘以前の問題です。基地で休んでてください」

 「いや…、僕は行くんだ。ブリタニアのかわいこちゃんを迎えに行かないと…」

 

 最後の望みとしてのとしてのこの発言も軽くあしらわれてしまう。この後の戦いのことを知っているのが自分一人な上、そのことを言うこともできないのがもどかしい。

 

 「こいつ…なんも反省してねぇ。海に捨てようぜ」

 「この人はさぁ…」

 (…なんとかしなくちゃ)

 

 

 

 飛び立った後もクルピンスキーの動きはひどく、まっすぐ飛ぶこともできない始末だった。管野も心配し、基地に戻るよう促すが頑固で、首を縦に振ろうともしない。逆に、不慣れな機体からくる操縦の粗さを指摘される始末だった。

 

 「!緊急入電!艦隊にネウロイ接近!」

 「出ちまったか…前情報なんてあてになんねぇもんだな」

 

 直後、編隊の後ろを飛んでいたクルピンスキーが飛び出し、"俺"達をおいて飛び去ってしまう。

 

 「わあぁ、急にどうしたの!?」

 「出遅れた…!?行かなきゃ!」

 「ああ!?、おいひかり!ったく、俺達も行くぞ!」

 

 途中、艦隊所属のウィッチが撃墜されたという連絡も入り、艦隊の損耗がひどくなっているという。

 

 船団についたときには、クルピンスキーが船団護衛艦隊旗艦をシールドでかばっているところで、見上げる先には巡洋艦並みに大きな球状のネウロイが空中に鎮座していた。

 こちらがその大きさに圧倒され動きを止めたその瞬間、球状のネウロイは二つに分かれ、その内側から数えきれないほどの小型ネウロイが戦場にぶちまけられた。

 

 「ニパ君直ちゃんでロッテを組んで右翼を、ひかりちゃんは僕についてきて」

 

 先手として放たれた敵の初段をクルピンスキーが防ぐ。背負っていた銃を構えて指示を出してくる。

 

 「ひかりちゃん、背中は任せたから絶対に離れちゃダメだよ!」

 「はい!絶対に!」

 

 放出された小型ネウロイは耐久も低く光線も放ってこないため墜とすのはたやすい。しかしとにかく数が多く倒しても倒してもきりがない。加えて、ある程度数を減らすと大型のネウロイからの補充があり、戦局は一進一退が続いている。

 

 「ひかりちゃんそっちお願い!」

 「はい!」

 

 ウィッチが戦線を支えている隙に船団は護衛の艦艇を残し輸送船だけをムルマンへと急がせたようだ。

 戦闘を続けているとネウロイ側にも限界が見え始め、"俺"達の担当していたほうの大型ネウロイからは一時増援が発生しなくなった。

 

 「ふう、どうやらひと段落だね」

 「あとは大型だけ…!」

 

 ≪やべぇ!こっちの大型に抜かれた!≫

 ≪子機が邪魔で追いつけないよ!≫

 

 管野達の通信は鬼気迫る声色であり、余裕のなさを感じさせた。

 その通信を聞いたクルピンスキーは何事もないような朗らかな顔で振り返り、こういった。

 

 「ひかりちゃん、ちょっと直ちゃん達手伝ってきてくれるかな」

 

 ついに来てしまった。

 そう思った。

 ここまでの戦いはむしろ順調であり、クルピンスキーが戦闘となった瞬間に調子を取り戻したのも相まってもしかしたら大丈夫なのではないかとすら感じさせていた。

 しかし、そうではなかった。

 クルピンスキーは一人で残る意思を決め、"俺"一人に手伝いに行くよう促した。

 

 「…駄目、です。クルピンスキーをひとりになんて」

 「おや?階級じゃない上にひかりちゃんに呼び捨てだなんて新鮮だなぁ」

 「茶化さないでください!」

 「なぁに大丈夫大丈夫。なんとかなるさ」

 

 何となくわかる。お守りを渡すなら今だったのだと。だがそれはできない、手元にあるべきお守りがないのだから。悩んだ末に、脳裏に閃くものがあった。

 

 「…じゃぁ、お願いがあります」

 「なんだいなんだい今日は珍しいねぇ。言ってごらん」

 「…こいつの撃墜スコア私にください」

 「へぇ!」

 

 "俺"の渾身の策。

 

 「ひかりちゃんが向こうに行って戻ってくるまで持たせろって?流石にそれは聞けないなぁ」

 「まさか、もっと単純ですよ。今からこっちの大型に私が突っ込んで、写輪眼で相手を見ます。もしこちらにコアがあったなら私が墜とすのを手伝ってください。なかったらいっそこいつを無視して二人でもう一つに突っ込んで墜としましょう」

 

 クルピンスキーを一人にさせず、かつ危険な大型ネウロイへの接近をさせない策。

 

 「へぇ…」

 

 そう言うとクルピンスキーはにやりと笑い、

 

 「いいよ?でも、言うからには絶対にやれる自信があるんだよね」

 「はい!あれは私が墜とす、墜として見せます!」

 

 「ごめん、直ちゃんニパ君もう少しだけ持ちこたえてくれるかな」

 ≪あぁ!?…持ちこたえりゃいいんだな?≫

 ≪あまり長くってわけにはいかないけどね…!カンノ!雑魚はこっちでやる、大型に少しでも追いすがって!≫

 ≪任せろォ!≫

 

 通信が切れ、静かになる。

 

 「二人のためにも、じゃぁやろうか」

 「行きまぁすっ!」

 

 

 大型ネウロイからは先ほどまでと打って変わって多くの光線が降り注ぎ、特に大型ゆえの極太の光線が厄介だ。言わずともクルピンスキーが盾になってくれ、道を切り開いてくれる。

 

 「ここからは一人で行きます!クルピンスキーは陽動を!」

 「オッケー、気を付けるんだよ」

 

 二手に分かれる。クルピンスキーは大型の注意を引きながらあえて小型の中を飛ぶことでうまく敵のヘイトを稼ぐ。

 対してこちらは大型に向けて一直線に突っ込みコアを探りにかかる。問題は対象があまりに大きいため写輪眼の射程では一度にすべてを精査することができない。なのでまとわりつくように飛びながら探すしかない。

 

 「見つけた!」

 

 コアは基本、機体の中心線上にあることが多い中このネウロイは少し外れたところにあったため先入観が邪魔をして遠回りをしてしまった。

 

 「クルピンスキー!」

 「そのまま行くんだ!君がやるって言ったんだろう!」

 

 銃を放り捨て、刀を握る。"周"で魔力を刀身に纏わせ、大きく振りかぶる。

 

 「はあぁぁぁぁぁ!」

 

 気合一閃。振り下ろした刀身をコアへと差し込みそのまま振りぬく。その瞬間に纏わせた魔力を散らすことで少しでもコアに影響を及ぼすように。

 

 

 

 

 「はぁー…」

 

 墜とした大型ネウロイが弾け、光の断片が降り注ぐ。同時にクルピンスキーも気を吐き、銃を下ろす。

 

 瞬間、墜とし損ねていた小型ネウロイがその身を崩壊させながらクルピンスキーに特攻する。

 

 「しまっ」「うわああああああああああ!」

 

 すんでのところで割って入るのが間に合う。刀を構えるのも間に合わず、クルピンスキーに体当たりするような形となったのだが。

 

 「…私、撃墜初体験です」

 「ブレイクウィッチーズ入りおめでとう、ひかりちゃん」

 

 二人並んで波間を漂う。

 

 「あの、呼び捨てにしてしまっていた件についてなんですけど」

 「あー、個人的には年下の子から呼び捨てにされるのもクるものがあったのだけど」

 「上官ですからね」

 

 「なら、なんか呼びたいのとかあるかい?」

 「じゃぁ、伯爵で」

 「おや意外なのが」

 「今日の伯爵はかっこよかったので呼び方もそれらしくしようと思って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日のムルマン港、海軍病院にて。

 

 「あーんな、強いネウロイを倒すなんてすごいです!」

 「いやぁー!君のためならどんな時にだって駆けつけるよ?」

 

 

 「あれ、二人ともいつの間に?」

 「せっかくお見舞いに来てあげたのにこのエセ伯爵ときたら…」

 「やっぱ殴りてぇ…。つかひかりはどこ行ったし」

 「あぁ、なんか電話かけてくるとかって。扶桑まで連絡するならペテルブルグじゃ無理だしね」

 

 

 




「あぁ、どうも。お久しぶりです」
「はい、今ムルマンです」
「えぇ、えぇ。…それでですね、先生にちょっと相談がありまして」
「こっちに来て、やっぱり現場はレベルが高いなって思いまして」
「学校で学べることじゃ限界があるとことなんですかね、それでですね?」
「噂じゃ"扶桑最強"が欧州をぶらついてるっていうじゃないですか」
「そうです、"虎徹"の方です。できたら"魔王"にも連絡取れませんか」
「えぇ、どちらかだけでも修行つけてもらえたらなーなんて」
「時期ですか?そうですね……」
「早ければ早いほどいいですが、1月中にこのあたりまで来てるといいんですが」
「えぇ、えぇ、はい。お願いします」
「どちらも昔のお弟子さん……、姉弟子たちを経由して頂ければ伝わるかと」
「えぇ、よろしくお願いします」

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