念能力者(?)なひかりちゃん(?)   作:シチシチ

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元々はこの話だけで3つくらい内容を書くつもりだったのが2話目で一月近く苦戦していたんで諦めて3分割することにしちゃった


久しぶりの修行編 ~季節感くるいそう~

ジョイント能力編

 

 「今の私たちの連携についてまずはまとめようと思うんですよ」

 

 仮とはいえ管野にコンビとして認めて貰ってからしばらく。日頃の訓練でも僚機として固定されたことで一緒に飛ぶ機会が増え、連携訓練にも力を入れて取り組んでいる。

 今日は午前中のシフトがスクランブル要員としての待機なため、格納庫とに併設された搭乗員待機所にいる。待機所は簡素な作りで、これと言った娯楽もなく互いに手持無沙汰になってしまう。この際にと話題を振った。内容はコンビとして飛んだ時の連携についてだ。

 

 「私たちってどっちも機関銃を使う前衛タイプじゃないですか」

 「まぁ、そうだな。どっちかが援護に徹するって感じでもねぇし」

 

 前衛が比較的小口径の機関銃で近距離からかく乱、大口径の対装甲ライフルやフリーガーハマーを装備した後衛が装甲を砕き、露出したコアを前衛が破壊する。これはこの世界でのネウロイ相手の空戦における基本戦術であり、そのためどこの部隊も火力のある後衛を混ぜたこの編成と言っていい。

 

 戦争最初期の頃は機関銃で十分撃墜可能な程度のネウロイばかりだったのに対し、現在では装甲に優れたタイプが珍しくなくなってしまい火力を持った後衛が必須となった。ただし、高火力の武装は重く、大きく、装弾数が少なく、何よりお値段が高いので配備数が限られてしまうのが欠点だ。

 

 

 「そうなると二人とも初手から突っ込むことになるわけじゃないですか」

 「まず、私がコアを見つける。そしたら二人で装甲を削って、どちらかがコアを叩く。場合によっては装甲を削る段階から管野さんが殴りに行く可能性もあるわけですけど、言ってしまえばこれだけです」

 

 

 実はこの戦術自体は既存の戦術を焼き直しているだけだったりする。

 常に相手に張り付きながら早期にコアを見つけ、短期決戦で済ませるこの戦術は、ネウロイの装甲が比較的薄かったネウロイ大戦初期の戦い方だ。現在でもその基本は変わらないが、重装甲の敵が増えたことで短期決戦ではなく入れ代わり立ち代わり四方八方から攻撃し続けることで時間をかけてコアを捜すのが一般的となった。

 扶桑には魔眼持ちが多く、その中にはコアの位置を知れるものも多かったこと、近接格闘を好む気風が合わさったことから、短期決戦戦術が現在でも一部で残っていたりもする。

 

 

 「ただ、この連携で改善しておきたいところがあるんですよ」

 「コアを見つけても、相手に伝えれるかどうかだろ?」

 

 

 そう、この戦術の最大の欠点がそこだ。補足したコアの位置を伝える方法が、撃って伝えるか口頭で伝えるかのどちらかしかないのだ。

 

 この方法はどちらも問題があり、まず撃って伝える方法は確実に位置を伝えられるが、防御砲火の激しい相手だとすれ違いざまにコアを補足する形でしか接近できず、銃撃する余裕が無かったりする。対して口頭で伝える方法では正確な位置を伝えづらいし、激しい攻撃の前では同じように通信する余裕がない。

 

 熟練のペアの場合、空戦の最中でも互いの挙動に気を払い続け、片方が見つけた事をもう片方の側で察する事で戦術を成り立たせる。言い換えればそんな阿吽の呼吸ができるようなレベルのロッテしか使っていないのがこの戦術だ。

 

 「んー、実戦でなら他の隊員もいるし、そこまで切羽詰まった状況になりはしないと思うが…、どうにかできればってのは賛成だな」

 

 ウィッチの最小単位は2機一組のロッテである。それと同時に最も重視されるのが二機連携(ロッテ)である。

 軍隊である以上、空中であっても集団戦が前提であるが、ウィッチの数自体が少ないため通常の航空機のように何十機で一部隊みたいな編成はできないため一部隊の構成人数は少ない。

 だが、それ以外にも少数で編成するのには理由があり、ウィッチの戦闘距離が非常に近距離であることがあげられる。使用する武器が小口径であることも相まって至近距離からの射撃が戦闘のほとんどを占めるウィッチの空戦。そうなると、ネウロイに集団戦を仕掛けた際にフレンドリーファイアや空中衝突が起こりやすくなってしまうのだ。同時に接近して攻撃できるウィッチの数は多くて4機程度、そのためロッテ編隊二個で4機編成シュバルムが基本となるのだ。

 

 これらはネウロイ相手の空戦を一早く経験したカールスラント空軍にて確立された物であり、今次戦争初期の戦いの中で洗練され、欧州から人類が撤退した後は常に前線にいた彼女たちから世界の軍隊へと伝わっていった。

 

 

 「で、銃もダメ。口頭で伝えるのもダメ。一流の連携は望むべくも無くってなわけだが」

 

 「念をつかいます」

 

 「そうなるわな。しかしよ、念ってのはそんないくつも作れるもんなのか?」

 「あー、それはですね。メモリって呼んでるものがありまして」

 

 容量と書いてメモリと読んだこれは、人が覚えられる念の量というか限界を指すものとして使われる。

 

 念能力者には複数の技を持つものが多いのだが、おおむね二種類に分けることができる。一つの能力を工夫して複数の技として使うパターンと、能力自体を複数持っているパターンがある。前者は電撃を使うキルアや、煙に対し自在に形を与えることで多くの使い道があるモラウ等が、後者にはヒソカやゲンスルー、クラピカ等が該当する。

 今回の場合は複数の能力を作ろうとしているため後者に該当する。

 

 

 「私の"発"はもともと持っていた魔眼に魔力自体の性質の応用である"円"や単純な肉体機能の強化という単純な形で作ってますから消費しているメモリ自体は少なくなるよう意識しています」

 「そういうことなら俺のも…、あー、魔力をため込むってのはどうなんだ?一から作ってるしな」

 

 

 写輪眼自体は単純なものの組み合わせに誓約(制約)で縛ることで意識的に容量を小さくしてある。もともと、後から能力を新たに作る余裕を残していたのだ。先ほど例として挙げたキャラたちは精々2、3個しか能力を作っていなかったが、彼らの能力は容量(メモリ)を多く消費しそうな複雑なものが多かった。そのため、シンプルでオーラそのものの基本性質から大きく外れないものとすれば複数の能力が作れるのではないかと考えたのだ。

 

 対して、管野はどうだろう。"紫電一閃"自体は"剣一閃"の魔力量を増やしただけだが、魔力を貯め込むという能力は一から作ったものだ。やっていることはシンプルだが、魔力本来の性質に無いものを能力としている以上容量(メモリ)はそれなりに消費しているのだろうか。

 

 

 「いや、俺のはあとでいいか。それよか新しい能力だ。なるべく単純な能力にするべきなんだろ?どうすんだ?」

 「今考えているのは私が見たものを管野さんに共有するって感じです」

 

 発想のもとは写輪眼と同じ出典の"NARUTO"に登場した"輪廻眼"と、H×H原作に登場した“淋しい深海魚(ウインクブルー)”。輪廻眼は、劇中に登場した複数のキャラが持っていた眼なのだが、持っていた全員の視界を共有しており、誰かが見ていれば自分もその光景を見ることができるというものだ。"淋しい深海魚(ウインクブルー)"の方は右目だけで見た者という条件で最大三人までその周囲を、さながら千里眼のごとく第三者視点から遠隔視出来るという能力。

 

 

 「それシンプルなのか?魔力の性質を利用してるってわけじゃねぇだろ」

 

 

 管野の懸念道理、一から作る上に自分で完結するのでは無く他人にも影響を与える能力である以上消費容量(メモリ)は多くなることだろう。

 

 

 「一応、誓約でガチガチに縛って消費容量(メモリ)を小さくできれば作れると思っていまけど、どうなるかは作ってからじゃないと……」

 

 

 この、制約で縛れば消費する容量(メモリ)を小さくできるのではないか、という考えはH×H原作キャラのヒソカが使う"薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)"という能力から得た発想だ。

 能力の内容は紙や布のような薄っぺらい物の上限定で、鉄や木などありとあらゆるものの色や質感を再現できるというもの。

 注目するのは薄っぺらいもの限定という部分。ヒソカはこれのほかにメインで使っている能力があるのだが、かなり汎用性の高い物で、おそらく容量(メモリ)を多くは無いが少なくもない程度消費するのではないだろうか。そうなると"薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)"自体の消費容量(メモリ)はなるべく小さくなるよう考えられているはずである。

 

 念の容量(メモリ)という概念はヒソカが劇中で言及したのが初出であり、その本人が限界まで容量(メモリ)を使うような能力の作り方はしないだろう。そう考えると、二つ目に作ったであろう"薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)"に使い道の限定される誓約を作ったのはある程度容量(メモリ)に余裕を持つためなのではないかと考えたのだ。

 

 

 

 「なるほどな……、誓約(制約)ってのは"発"自体を強くするってだけじゃねえんだな。俺のも後付けできねぇかな…。あぁ、いや、それでだ。そこまで決まってんだったら作り始めればいいんじゃねぇか?」

 「一応、管野さんにも意見を聞いてからにしようと思って」

 

 能力自体はコアの位置を共有するというもので決まっているため、あとはそれをどのような形で伝えるか、発動条件、制約と誓約についてだ。

 今回もなるべく消費する容量(メモリ)は小さくしたいのでしっかりと縛っておきたい。

 

 

 「……なぁ、視界の共有ってお前の視界だけなのか?」

 

 管野は少し考えこむそぶりをした後、不意に顔を上げ、つぶやくように聞いてきた。

 

 「?、どういうことですか?」

 「俺が見たもんもお前に見せることも出来るように、つまり双方向で見せられるようにならないかってことだ」

 

 元々、俺が考えていたのは俺が見たものを一方的に相手へ送るというもので、一方通行のつもりだった。その上、俺の視界をそのまま管野に見せるのではなく、管野の視界にコアの位置だけを表示するようにすることで低コスト化しようかと思っていた。ようするにFPSなんかでいうピンを刺す感じが近いだろうか。

 

 それを、参考元の輪廻眼っぽい仕様にできないかということらしい。

 

 

 「でも、そうなると誓約で縛っても消費する容量(メモリ)は結構大きくなると思いますよ?」

 「限界まで誓約(制約)で縛っても駄目か?」

 「難しいんじゃないかな……、縛りすぎると使いにくくなっちゃうかも」

 

  恐らく実用出来るレベルでの縛りではそこまで意味はないだろう、縛りを設けすぎれば使いにくい微妙なものになる。

 かといってこれほどの能力となると、誓約(制約)が少なければ以降新たな能力を作るだけの容量(メモリ)は残らなくなるような気もする。

 

 容量消費を少なく、かつ十分使える程度の誓約(制約)に留める方法。そんな裏技のようなのがあるのか、と考えれば思い当たらないでもなかった。

 

 

 「容量をあんまり消費しないで実用レベルの誓約(制約)に留める方法、無いこともないかもです」

 

 「相互協力型…ジョイントタイプと呼ばれる“発”なら」

 

 

 相互協力型

 

 H×H原作で、わりかし新しい方の話になって登場したタイプの発。

 

 相互協力型(ジョイントタイプ)と一言で言っても、また幾つかの種類に分けられると思っている。複数人で一つの能力を作るタイプと能力を発動する者とそれを使う者に分かれるというものだ。

 

 前者は明言されているわけでは無いが、グリードアイランド編に出てきたゲンスルー達、カキン編の王子にもそれらしき描写がある者がいる。対して後者は、相互協力型(ジョイントタイプ)が原作で登場したときに出たパワードスーツと銃を具現化するというもの。発射される念弾に射手側のオーラを用いる事で具現化担当と射手兼オーラ供給係で役割を分担しているようだった。

 

 また、グリードアイランド編のカードなども同じようにゲームマスターが分散して担当しているのでは無いだろうか。

 

 

 菅野には原作云々を省いてそのことを説明する。

 

 「念ってのはマジで何でもありだな」

 「ただ、ちょっと問題が…。これって具現化系がよくやる手法でして…」

 

 そう、先の例にも挙げたとおり相互協力型(ジョイントタイプ)というのは具現化系ばかりなのだ。例外は王子とその護衛達のものくらいだろうか。

 恐らくは具現化するのに多くのオーラを使う分、使用するに当たってのオーラを他人に依存するという方法で解決するための手法なのでは無いだろうか。

 

 「俺らどっちも強化系と放出系だぞ!ダメじゃねぇか!」

 「いや、出来ないってことも無いと思うんですよ」

 

 参考となるのはグリードアイランド編に登場した、ゲンスルー達の"命の音(カウントダウン)"という念能力。

 

 作中の描写からどうやら3人で行う相互協力型らしいのだが、具現化、放出、操作の三系統の複合なのだ。

 他の相互協力型と違う点として、メインであるゲンスルー以外の二人が発を使えなくなるらしいところと、能力が影響を及ぼす点が第三者である点がある。

 つまり、誓約(制約)を複数人で分担した上、相互協力型でありながらオーラの消費を発動者側に依存するため対象を選ばない能力なのだ。

 

 これを参考にできないだろうかと考えた。しかしそれでも問題は多く残る。

 

 「一回まとめておくとですよ?私たちに必要なのは私の見たコアの位置を伝える能力、ひいては相互に見たものを共有しあえる能力です。決めなくちゃいけないのは"発"を作るにあたっての能力自体の制約と誓約、そして消費容量を減らすための制約と誓約です。なら、物を具現化する必要はないと思うんです。」

 

 相互協力型(ジョイントタイプ)の例として挙げた能力には具現化したもの自体が銃弾や爆弾として影響を及ぼすものが多かった。しかし、"視たもの"という実体のない物を影響させあうなら物理的に影響するためのモノを具現化する必要はないだろう。

 具現化せずに、念能力の影響を人に与える方法、

 

 「いわゆる、魔力のこもった一品ってあるじゃないですか?」

 

 "呪いの品(マジックアイテム)"を創ってやろうじゃないか。

 

 

 

 

 発動条件、使うにあたっての制限を決めるのに、互いに多くの意見を出し合い、最終的にはこうなった。

  

 

  能力 :一組の髪留めをつけた二人の視界を共有する。

 発動条件:一組の髪留めを二人が互いの髪に付けた場合。

  誓約 :視界を共有できる時間に制限時間を設ける。

      共有できる時間は髪留めを髪以外に身に付けていた時間の半分のみ。最大12時間。

      使用中の魔力の消費は身に着ける側が負う。

      使用する髪留めは既存のものに念を込めることで自作する。

 

 発動条件をもう少し詳しくすると、普段から髪留めを互いに身にけておき必要に応じて交換するというもの。また、着けていた時間は24時間が最大値であり、自分の体を離れた瞬間から2倍速で使用時間が減ることとしている。

 

 相互協力型(ジョイントタイプ)である点はこの念具を作る工程を二人で分割している点だ。管野は既存の髪留めに魔力を込め、基本となる素体を作り出す。そこに俺が"視界を共有する"という能力を付与するという仕組みだ。

 これにより、髪留めの素体を流用し、後々新たな能力を作る際の素材にもなるという優れもの。

 

 つまりこの能力、厳密には視界を共有する能力ではない。視界を共有する"念具"を創る能力としたのだ。

 本来ならこういったものは具現化系能力として作るモノだが、普通の品に念を込めるのは具現化系よりも放出系の領分なのではないかという想像からこの能力となった。原作でもGIのゲームソフト等々原作でも能力ともいえる物を纏った品は登場する。

 この世界においても、アニメ二期の頃には原作キャラが魔力のこもった妖刀ともいえる物を自作している。

 

 なにより、"念具"を創る能力であることからこの髪留めを使うことで他の隊員間であっても視界の共有が可能になった。

 

 「いいんじゃねぇか?もうなにも思いつかねぇし」

 「じゃ、あとは私が手探りでこれを形にするだけですね…」

 「おう、ちなみに俺の魔力をためるやつはスゲー苦労したぞ。どんだけかかるかわかんねぇから少佐にも言っとくか」

 

 

 この日から暇さえあれば髪飾りをいじり、念を込める時間ができるようになった。具現化系の修行を参考に、どういう能力かを頭の中で考えながら髪留めをいじり、写生し、眺めて等々を幾日にもかけて行った上で、それを止める。頭がおかしくなるような日々に二人して周囲からも不安の目で見られたが、ある日目が覚めるような感覚と共に互いの持っていた髪留めが魔力を帯びていることに気づいたことで完成した。

 原作でクラピカが修行している描写を見た時も思ったが髪留めをしゃぶっている二人の少女はひどい絵面だっただろう。

 

 

 

 完成したのなら試してみろということで互いにつけてみる。

 

 「うわ、なんだこりゃ」

 「口で言い表すのも難しい光景が広がっている・・・」

 

 無理やり例えるのなら一つの画面に二つの動画を再生している感じだろうか。

 また、あくまで自分の視界がメインであり共有しているほうの視界は意識していなければそこまで気にならないため酔ったりはしない。

 

 

 「ふむ。これは使い道が多そうだな」

 「さしあたっては下原さんの遠隔視を試してみたいところですね」

 

 このことを報告すると、いろいろ試してみろとのお達しで部隊内で代わる代わる様々な組み合わせで視界の共有を試した。

 

 身に着けた時間の半分という誓約から、一回の時間は短かったものの結果から、最終的に扶桑魔眼組の二人以外は意味がないこと、元々の目的などから特に理由がない限りは俺たちのコンビでの運用をされることとなった。

 

 

 




後2話に時系列とを先に書くか書きやすい原作の話を書いちゃうか悩む悩む。でも次ってもうお姉ちゃん出てきちゃうんだよなぁ

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