念能力者(?)なひかりちゃん(?)   作:シチシチ

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いっけな~いスランプスランプ☆



2つの統合戦闘航空団

 ブリーフィングが終わり、大佐達が退出した。部屋に残されたウィッチ達はそのまま会議へと移っていく。それぞれの部隊で運用する資材や支援人員、機材等の資料を互いに突き合わせ、額がつくような距離で話すのだ。

 同じ戦線を共にする者同士、協力できる部分は多い。戦場に絶対はない、お互いの戦場を幾分かでもマシにするためにできる事は何でもやる。戦場においては自然とみられる光景だ。話し合いの中では書類操作やら裏取引を得手とするラルとスオムス軍からの絶大な信頼を得るウィンド少佐はかなり突き詰めたところまで話し合っていた。指揮官として、自分の部隊が前線へと赴く前に出来る細工はしておこうというものだ。

 

 そういった話をするのは部隊でも上位の者たち。502からは隊長であるラルに戦闘隊長のサーシャ。加えて、秘書のような立場でもあるロスマンが。507からは同じく隊長であるウィンド少佐と戦闘隊長の迫水中尉。また、それ以外の隊員達も自分達で出来ることを話し合っていた。

 どこそこの部隊の物資をちょろまかす。基地の人間の権限で供出させられる物は何かあるか、対価に出せる物はあるかなどだ。

 

 

 

 それ以外の隊員たちも集まって会話する。物資の調達は何も上の人間に限られた手段ではない。現場に近い彼女たちだからこそ手に入る物もある。

 こういったことは502のウィッチ達にとっては慣れたもの。ちょろまかしから後ろ暗い闇取引まで常に物資に困窮している彼女たちは物資を手に入れられる機会に対する嗅覚が優れている。とはいってもそんな手段に慣れているのは502の中でも"物資を困窮させる側"の3人くらいで下原やジョゼはそうでもない。なお、ひかりは困窮"させる側"である。

 

 「武器はまだいいとしてもストライカーがまずいかも」

 「P-51も隼も507でしか使ってないだろうからな。最悪現地で機種転換訓練をやるしかあるまい」

 「マジの最悪は転換するユニットもなくなって地上砲台だな」

 「陸戦ストライカーもちょろまかしておく?」

 

 隊長達ほど真面目に話し合われているわけでは無かったその中で、ちょっとした話題が出た。

 

 「んー、でも前線に行くんならその前に旅の埃は落としておきたいよね」

 「シャワー位なら借りられないかな……」

 

 プロイの発言に乗っかったのはジョゼ。掃除が好きな彼女としても汚れは落としておきたい。下手をすればシャワーを浴びるチャンスなどここを発てばもうないかもしれないと思っていたからだ。

 この後、部隊が進出する先は民間人のいなくなって久しい街。せいぜい軍人が駐留する程度、シャワーがろくに使えないだろう事は想像に難くない。ジョゼも元はアフリカで戦った歴戦といえるほどのウィッチ。しかし、他の隊員達のように雪でグズグズの塹壕の中で丸まって寝た経験、まして月単位でお湯で拭う事も無いような生活の経験は無い。落とせる垢は落とせるうちに落としておきたいと思うのも当然だろう。

 

 「風呂入りてぇ……」

 「あれは?ドラム缶ブロって奴。前にカンノが作ってくれたじゃん」

 「ここなら探せばドラム缶くらいあるかもな……」

 

 風呂好きな扶桑人の管野もぼやく。よその統合戦闘航空団では風呂があるところもあるのだがペテルブルグにはない。そういったものがあるのは都市やほかの基地が近くにあるようなところばかりだ。作りたくても基地の移動が前提の攻勢的戦闘航空団の502ではできない。

 昔、整備班から手に入れたドラム缶で風呂を作ったことがある管野だが、多大な労力がかかった割にすぐに使えなくしてしまったこともありそれ以降新しく作ったことは無い。精々他の隊員たちと同じようにサウナで汗を流すぐらいだ。

 

 「管野さんいつの間にそんな!」

 「言っとくが下原がうちにくる前のことだからな。省いたわけじゃねぇ。ドラム缶もネヴァ川の底だ」

 

 ペテルブルグに来て一年以上が経つ下原もドラム缶風呂という単語に反応するが、管野の言葉を聞いておとなしくなる。ちなみに孝美はまだ欧州に戻ってきて一月経っていない上、欧州初期の戦いでリバウの地獄と撤退戦を経験しているためまだそこまでの反応はない。

 

 「扶桑の軍艦は風呂がついているとかいう話を聞いたことがあるが」

 「あぁ、遠くまで出ばるのが軍艦だからな。扶桑人としちゃ週一でも入れるってだけで士気も上がるってもんだ」

 

 リーの疑問に管野が答える。

 浴槽のついた軍艦など扶桑海軍所属ぐらいだろう。しかし、如何に軍艦と言えどもそんな大量の真水は使えない。入れるのは週に数回。それも引き込んだ海水を温めたものに浸かるというもの。当然そのままではベタ付くため真水で洗い流すのだが、引換券と交換で洗面器に3杯のみといった具合だ。

 

 「ん?いや、そうでは無く、借りられないのか?扶桑の艦隊も来ているのだろう?」

 「そういえばフレイヤ作戦には三航戦が来てたはずですね。来るまでお世話になったわ」

 「ていうか入港してなかった?あのでっかいの空母でしょ?」

 「「本当か!?(ですか?!)」」

 

 フレイヤ作戦の失敗後、参加していた各国艦艇は北上し、ムルマンの沖合に停泊していた。そのうち、旗艦となった艦を含め何隻かは港へと艦を近づけている。埠頭には輸送船が優先されるため、沖合に停泊した軍艦と内火艇等が陸地と往き来している。ムルマンスクにも小規模ながら町はある。いかな船乗りとはいってもいつまでも軍艦の中では気がめいってしまう。時には上陸も必要である。

 

 「管野さん!私、貸してもらえないか交渉してきます!」 

 「隊長達は何とかしてみる!シャワーを浴びたいのはあの人達も同じだろ!」

 

 下原が駆け出し、部屋を出て行く。その背に管野は声をかけた。普段、行動をよく共にするジョゼも置いて駆け出すその姿にいつもの下原の姿を知る者たちが驚く。

 

 「おぉー、あんなにはしゃいでる下原ちゃんを見たのは……、いや可愛い物を見たときは大体似たような物かも」

 「でも、ジョゼさんも置いてくなんて中々無いよ」

 「べ、別に何時も一緒にいるわけじゃ無いから」

 

 「隊長!ちょっといいか!」

 

 ほかの隊員たちをしり目に管野がラルに声をかける。ラルたちも会議の最中だったが中断して管野に目を向ける。会議を中断させてしまった上、頭の上がらない相手が一斉に目線を向けてきたことに管野がたじろぐ。

 

 「どうした管野。お前がこういう話に混ざりたがるとは思ってもみなかったが」

 「あー、そういう会議するような話じゃないんだ。扶桑の艦隊がここに来てるんらしいんだが、風呂を借りてきていいか?」

 「風呂?」

 

 ラルが怪訝な顔をする。カールスラント軍人としてはなじみがないものだからだろう。

 

 「借りられる物なのかしら」

 「お風呂!良いですね!」

 

 そもそもの問題を上げるロスマン。それを遮るようにして声を上げたのは迫水中尉。目を輝かせ、開かれた口からはよだれが飛び散る。横にいたウィンドがそれを見て顔をしかめる。

 

 「あんたもそう思うか迫水中尉、あー…」

 「そりゃあもう!皆さんのあんなところやこんなところ!普段はガードの堅いウィンドさんやこんな機会でも無ければ見られないでしょうラルお姉様までいるのですから、これは是非とも皆さんで入るべきです!さあ!さあ!さあ!」

 

 管野は、同意を得られるかと思い迫水中尉の名前を呼ぶ。が、その途中に相手がどのような人物かを思いだしてしまう。案の定その欲望にまみれたパッションを弾けさせたことに話を振ったことを少し後悔した。

 

 「あー……、下原が交渉しに行ってるがどうなるかはまだわかんねぇぞ」

 「くっ!なら私もお話してきます!」

 

 管野がそう言うと迫水がそう返し、部屋を出ていく。手に持っていた資料も投げ捨てていってしまったが、周囲の反応は特にない。ウィンド少佐がこっそり息を吐いたことから会議の最中も欲望に忠実だったのだろうか。

 

 「あー、それで?どうだ隊長」

 「了承がとれたのなら行って構わん。私も行く。私も汚れは落としたいのでな、噂の扶桑の風呂文化を試すのも良いだろう」

 「なら下原と迫水中尉の結果待ちか」

 

 一時間もしない頃、使わせてもらえることになりました!という声と共に下原が帰ってきた。いつまでも会議室を占拠しているわけにはいかず、会議室からは既に出た後。隊員たちは司令部の建物の外で待っていた。507も建物を出るところまでは一緒にいたのだが、彼女らは迫水中尉を待つこと無く移動していった。人望のなさが伝わってくるかのようだと管野は思った。

 下原が交渉してきたのは三航戦に所属する空母雲龍。基地内に扶桑海軍の出張所ができていたらしく、そこからつなぎをとってもらったらしい。

 今日最後の往来船がもうすぐ出てしまうらしく、下原が隊員たちを急かしてくる。作戦からこっち手に持つ物も殆ど無い身の502の隊員達はそのまま内火艇の待つ埠頭へと向かって歩き出した。

 

 下原の案内でたどり着いた埠頭に繋がれていたのは扶桑海軍の十七米内火艇。明治設計の古い船だがその堅実な作りから今なお使われ続けている。主に士官が使用する艇で1度に100人近くを運ぶことが出来る。

 側面まで来たところで内火艇から出てきた士官が声をかけてくる。

 

 「雲龍まで行くウィッチの方々ですか?」

 「はい!お世話になります」

 「そうですか、もうすぐに出ますので乗ってしまったら渡し板を引き込みますんですぐに船内へどうぞ!」

 

 最後に渡ったサーシャが船内へと入ったところで扶桑海軍の水平たちが木製の渡し板を引き上げる。ニパが渡る瞬間だけ渡し板が音を上げるといったアクシデントもあったが無事に乗り越え、出航の用意が始まる。数人の水平が甲板を走り回っており発進に備えたチェックと用意が行われている。

 

 

 「待った待った待ったー!」

 

 用意が終わり、埠頭へと繋がれた舫いが解かれ内火艇が埠頭を離れ出したその瞬間、埠頭に並び立つ倉庫群の間から飛び出してきた人影が内火艇に向かって声をかけてくる。それに続くようにして倉庫の陰から連なるようにして人が出てくる。

 

 「あれ、507の子たちじゃない?」

 

 船内から窓を通して外を見ていたクルピンスキーの声に他の隊員たちも顔を向ける。

 そうこうしている間にも507のウィッチ達はみるみる近づいてくる。全員、何かしら獣の要素が見受けられることから、魔力まで使って本気で走り寄ってきていることが分かる。

 しかし、内火艇を操舵している人間は気づいていないようで内火艇は速度をつけ始め、その舳先も徐々に沖合へと向けられている。

 

 「飛び乗れ!」

 「とあー!」

 

 ヴェスナの掛け声に先頭から順に大地をけって跳ぶ。常人ならば届かないような距離を超えてウィッチ達が内火艇へと転がり込んでくる。飛び移った者から後続の邪魔にならないようにと船の前側へと身を寄せるがたどり着くと同時に崩れ落ちる。

 

 「ゼェ、ゼェ」

 「ま、間に合った……」

 

 「こいつはどういう事だお前ら」

 「そうですよ。それに、迫水中尉の姿もないようですが……」

 

 最後にウィンドが着地ならぬ着船したあたりからなんだなんだと扶桑海軍の軍人たちも出てくるが、甲板で息を荒げてへたり込むウィッチの集団を見て誰もがギョッとする。異国人ということもあり、彼らでは声をかけにくいだろうと502の中から管野とロスマンが声をかける。

 

 「まさに、その迫水中尉のせいです……」

 

 いち早く息を整えたリーが答える。曰く、迫水も他の軍艦の士官と話をつけたらしい。その時点になって隊員たちは危機感を覚えたのだそうだ。というのも迫水が戻ってくるまでに三隅から扶桑海軍艦艇の風呂がどういう物かの説明を聞いていたのだそうだ。イモ洗いとも称されるような環境の風呂、それを迫水が取り付けてきたとなれば何をしてくるかわからないと判断。自分が被害にあうのも嫌だし新人を毒牙に掛けられるのをみすみす見ているわけにはいかないとヴェスナが三隅を連れてその場を逃亡。遅れてそのことに気づいた他の隊員たちも後に続いたのだそうだ。

 

 「で、基地に残っていたら逃げられないかもって話になって」

 「なら、他の軍艦のお世話になろうって話になったんだ。そしたらこのウンリュウ?の内火艇がもう出るって聞いてさ」

 「それで追いかけてきたと」

 

 リーの説明の最中に復活したほかの隊員たちも口々に自分たちの置かれた状況を告げ始める。三隅だけがまだ座り込んでおり、船内から持ってこられた水を受け取っている。

 

 「じゃぁ、迫水中尉は……」

 「今頃ほかの軍艦の内火艇かまだ私たちを捜しているか」

 

 十七米内火艇は既に陸からは大分離れ雲龍の方が近くなっていた。結局、このまま連れて行ってくれと頼み込まれたのと今更岸に戻ることも出来ないということもあって、507(-1名)は502と一緒に雲龍でお世話になる事になった。

 

 

 雲龍への乗艦後、艦長への挨拶やら部屋の割り当てやらを終え、一同は艦内風呂へと案内された。運よく入浴日ではあった物の、本来ならば乗組員達が入る時間。その風呂の時間を強引に割って入り、本来の乗組員達に後へずらしてもらっての入浴となったがむしろ兵からは笑顔で譲られた。

 

 風呂の後は、食事の用意ができているということで士官食堂へと案内される。本来の食事の時間は既に過ぎているのだが、特別に食事が用意された。

 

 「うお!米に味噌汁、鉄火巻までありやがる!」

 「こっちのはイカ飯かしら?」

 「イカのけんちん蒸しですね」

 

 食堂に用意されていたのは扶桑食を中心ではあったが中には欧州でもなじみのある料理もあった。

 欧州からの人員が大半を占める両航空団だが、扶桑勢からの勧めもあって徐々に扶桑食にも手を付け始めた。502では普段から下原が扶桑食も作っているのだが、ペテルブルグでは用意できない食材も軍艦となれば貯蔵していることもあり、なじみのない食材・料理もあった。中には、気にせず食べ始める者たちもいたし、早々にお代わりを求めて食堂に声をかけに行ったものもいたのだが。

 

 「すいません!お米と後他にも何か残ってるものありませんか?」

 「あぁ、白米ならすぐによそいます。おい!なにか残ってるか!」

 「イカあります!あとすぐ出せるのは漬物くらいです」

 「どっちもください!」

 

 ジョゼが渡した茶碗には彼女自身のオーダーによってこんもりと銀シャリが盛られ、イカと漬物が乗った皿と共に渡された。

 その間に主計科の士官と下原が料理に関して会話をしていた。

 

 「よろしければレシピを交換しませんか?」

 「へぇ、欧州の食材でアレンジしてるのか。いいでしょう!」

 

 片や本職の料理人、片や長く欧州で腕を振った身と互いに利のある取引となった。取引の後も料理という共通の話題がある二人はしばらく話し込む。

 

 「これ、重巡加古風ってことは元は重巡に乗ってらしたんですか?」

 「あぁ、42年の8月にマルタ島で沈んじまってな。扶桑に戻ってからはこの雲龍に配属されたんだが、どうにか名前を残してやりたくてな」

 「いい話ですね」

 「だろう?あんたもそれを誰かに伝えるってときはこの名前のままで頼むぜ」

 

 

 

 

 「あー、うまかった」

 

 夕食を全て平らげた後、食堂では各々が思い思いの姿勢でくつろいでいた。

 

 「これであとは寝るだけだな」

 「ワタシ、こんな大きな軍艦で寝るの初めてだよ」

 「思ったより揺れるね。寝れるかな」

 

 管野達ブレイクウィッチーズは主計科の好意で出された緑茶を啜っていた。ペテルブルグでもお茶の類はたまに出ていたし、その中には緑茶が出ることもあったためクルピンスキーやニパも慣れている。緑茶に限らず、お茶は普段の補給にも入っているが、下原が追加で取り寄せたものだったり、ひかりが隠し持っていたのを下原が徴発したものだったり、現地の植物から下原が自作したりと様々だった。そのため比較的余裕があり、かつ消費量を制限できたため、粗食に耐え忍んだ時期の数少ない娯楽でもあった。

 

 「何を言っている。お前たちにはもう一働きしてもらうぞ」

 「「「えっ」」」

 

 お茶を味わっていた管野達の溢すような発言を聞いたラルが一言告げる。

 そのことに他の隊員たちも反応する。502も507もその多くがあとはもう寝るだけだと思っていたようで、皆驚いたような顔をする中でウィンドだけが変わらずお茶を啜っていた。そのことに気づいた三隅が問う。

 

 「何か知っているんですか隊長?」

 「うん。今日はかなりお世話になったと思わない?なのに何の対価も出さないのはどうだろうかって話になってさ」

 

 そういうとウィンドは部屋を用意してもらったこと、風呂の順番を譲ってもらったこと、食事を用意してもらったことなどを上げていく。もしこれが前線ならありえないほどの好待遇。比較的余裕のある後方、それも海軍の軍艦だからこそ受けられた好意だが、だからといって無償でとはいかないのもまた事実。かといって着の身着のままの彼女たちには支払えるものはないしそもそも何なら釣り合うのかもよくわからない。

 

 「で、ですが対価といっても我々に持ち合わせは」

 「そこはラル少佐がうまくまとめてくれたね」

 

 三隅の反応にウィンドが返す。その言葉に視線がラルに集まる。

 纏めてくれた、ということは話し合いがあったということ。ラルとウィンドは雲龍へ乗艦した際、他の隊員たちはそれぞれのまとめ役に任せて艦長や艦隊司令官の元への挨拶に行っていた。その時話し合われたのだろうと察しのいい隊員たちは気づく。

 

 「ふむ。戦場では貨幣以外にも取引の材料となるものは多々ある。時に糧食、時に記念品」

 

 視線を向けられたラルが喋りだす。対価として相手に差し出される物として戦場において、軍人同士のやり取りにおいて何があるのか。

 

 「ま、まさか」

 「エディータは勘がいいな」

 

 勘がいい、というよりは長く戦場にいたことによる経験だろうとロスマンは思った。19歳、この場の誰よりも長く戦場にいたキャリアをもつロスマンは往々にしてそう言った部隊同士、ひいては軍人同士の取引や物資のやり取りを見てきていた。自身がそれを担ったことだってある。何となくの察しはついた。

 

 「写真ですか……?」

 「そうだ」

 

 ウィッチのブロマイド写真。それは戦場においては下手な貨幣よりも価値を持つ。部隊を率いる将官として、戦場で物資を融通してもらった時、よその部隊や将官とのつなぎを取り持ってもらった時など戦場で誰かにちょっとした世話になったときには必ず対価が支払われる。それは時に武器であったり乗船の順番などの形のない物であったり、あるいは嗜好品の類であったりもする。ウェイターに対するチップのような形でも支払われるそれは兵士にとっても求められるものであり戦地の写真屋はよそから仕入れた写真の卸売りすらも行う。

 自身が記者兼カメラマンでもあるどこぞの部隊長は部下であるスーパーエースの写真をそれは便利に使っているという。

 

 写真を撮る。つまり、この雲龍にいる者達の為に自分たちが被写体になるということを聞いたウィッチ達。

 顔を赤らめる者、しかめる者、余裕な態度を見せる者等、多種多様な反応を返すが、明らかに拒否をする者はいない。自分たちがそれだけの物を享受したという自覚があるしそれを踏み倒せるほど豪胆なものもいなかった。

 そろそろ行くかというラルに続いて食堂を出る。

 

 

 格納庫にて行われた撮影会。

 偵察機用の現像室の使用許可まで出された大大的なそれは静かな盛り上がりを見せた。盛り上がるうちにただ写真を撮られるだけであったそれはポーズや小道具などが追加され、最終的に艦載機の主翼やら機銃座やらを使ったグラビアもかくやといった写真まで取られだした結果、艦長からのやんわりとした静止が入るまで続けられた。

 




 「扶桑海軍で良かった……」
 「やっぱり欧州人の方が受けがいいんでしょうか。おかげで私たちはそこまで指名されませんでしたね」
 「私もアジア人だからかそこまでだったなー。ところで相方が助けを求めてちらちらしてるけど」
 「ごめんねジョゼ……。またおいしいご飯作ってあげるからね……」
 「相棒売りやがった」
 「孝美ってひともこっち見てるけど」
 「すまねぇ孝美……。佐世保の英雄は知名度高いけどデストロイヤーはそうでもないみたいだ……」
 「こっちも売っちゃったよ」

 「定ちゃん!一緒に写ろう!」
 「!?ジョゼ……!?」

 「あぁ、連れられて行く」
 「ジョゼの方からボディタッチが多いのは珍しいな。撮る側のウケもいいみたいだ」
 「あれじゃない?身近感じのする扶桑人が欧州人と絡んでるのになにか感じ取ってるみたいな」

 「……その感性。やっぱブロイも507か」
 「ちょ!?まてまて待って!やめてよ、ウソでしょ!あれと一緒にされるのは嫌!」

 「あの!お二人一緒にいいですか!身長が近いお二人でお願いしたいんですけど!」
 「「あっ、はーい!」」
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