今回はいつもの半分程度の5400字程度です。ちょっと切りよくしたかったのと、いつも通りにするとまたいつ投稿できるかわからなくなりそうだったので……。
13人のウィッチ達は2人一組になって飛ぶ。
ラルとロスマン、クルピンスキーはケッテを組み、ニパとサーシャ、ジョゼと下原、エイラとサーニャの組み合わせは以前から変わらない。
残る4人の扶桑組は西沢と組んだことがあるのがひかりだけということから管野と孝美が引き続きペアを組む。
「敵砲台の射撃間隔は不定期的で読めない。だが、高速で飛び回るウィッチに照準が合わせられるとは思えん」
「ですので、皆さんは砲台の射線に入らない位置から攻撃を行ってもらいます」
とはいえ、いざ発射されればその余波だけで全滅しかねない。いざ発射体制となれば無理をせず距離をとることとした。
ラルの指揮の下、部隊は敵砲台を横目にして一度背後へと回ってから突入を行う。
まず最初に仕事があるのは孝美と下原。
「…見つけた!」
「いえ、待ってください!下腹部にも!」
下原と孝美の魔眼を髪飾りの発で重ねることで、より遠距離からより精密にコアの位置を探るという組み合わせだ。
横に長いコの字型の形状の砲台型ネウロイ、その最後部に存在したコアを下原が発見した。しかし、それと同時に孝美も己の視界にちらりとだがコアを映した。言われた場所を下原が見れば、確かにそちらにもコアがあることが見て取れた。
「コアが二つある!?」
驚く孝美たちとは対照的に冷静だったのはラルやロスマンと言った年長組。
「これで合点がいったな」
「ええ。あの不定期な砲撃は2発だけ連続で撃てるのではなくコアが2つだから連発できたのですね」
ロスマンの言う通り、この砲台型はいわば2発装填できる銃のような物だ。装填された2発だけは好きな間隔で撃てるが、撃てば再装填が必要となる。そしてどちらも再装填には時間がかかっているのだ。
「んー、さっきのはあまり間隔を開けずに撃っていたけれど、第三射はずいぶん間隔が開いているあたり装填には時間がかかりそうだ」
「次が何時かはわかんねーけど、撃ってきたらまたスグその次が来るかもしれないってことでもあるわけだ」
管野の言う通り。装填には時間がかかるが短時間に続けてはなったことで第3射と第4射の感覚は短い。カラクリはわかっても油断はできない。
「方針は変わらん。射線外から懐に潜りこんでコアを破壊する」
───
比較的低い高度を、ロッテごとに距離をとって飛ぶ。あの大威力の光線の他にも攻撃する方法が無いとは限らない。道中、たどり着くまでに発生する損失を少しでも抑えるための策だ。
砲台型までの距離が直線であと半分と言ったところまで来た頃。途中の空間にジワリとにじむように黒い点々が浮かびだす。索敵を担当する下原の目に映ったそれは、無数の小型といくらかの中型が砲台型から吐き出されて出来る様だった。
「母艦型…拠点型ということもあるな」
「自分を削って小型を生み出すというあれですか?南の方で何度か見られたそうですがこちらでは初めてになりますね」
下原からの報告を受けてのラルのつぶやきにロスマンが反応した。
母艦型は大型が内部に小型中型を格納しているタイプであり、言ってしまえば見慣れたタイプだ。逆に拠点型というのは初期のアフリカや地中海で見られたタイプで、何処かに居座った大型が自らを資材に小型を生み出すタイプだ。特徴として小型を落とし続ければ大型の構造・装甲が削れて弱くなるというものがあるがアフリカではその特性を利用して小型移動プラントととして鉱山や資源地帯を襲い猛威を振るった。時折マルタ島に現れたのもこのタイプだ。
「地に足つけられない以上、無尽蔵ってことは無いでしょうが……」
「取り付きにくくなったのは確かだよね」
ニパが口にした通り、それらは間違いなくウィッチ達を足止めするべく用意されたものだろう。シミのようだった小型も、互いに接近しあっているためにすぐに他のウィッチたちにも大きくはっきりと見えるようになりそのまま戦闘の火蓋が切って落とされた。
────
「突入!」
号令を背に一気呵成にウィッチ13機の全機が戦闘に入る。フリーガーハマーを持った二人が一番最初に前に出る。魔力のこもったロケット榴弾が二人合わせて18発。装填された全弾をただの一度で使い切る豪勢な攻撃だが、その威力は折り紙付きだ。敵の軍勢、その先頭を行く集団を纏めて消滅させる。
即応弾を全弾撃ち切って一時的に攻撃が出来なくなった二人と編隊を組む者達が即座にカバーに入り、再装填の時間を稼ぐ。同時に、先頭集団が消失したことで生まれた空間に他のウィッチ達がその身体を捻じ込み、消滅した最前衛の後ろにいた敵機に火線を浴びせかける。
「コア無しだけど結構多い!」
「まずいよ定ちゃん!横に広がってる、囲むつもりなんだ!」
「ニパさん、私たちで側面に回ります!」
対峙するネウロイの個々の力は大したものではない。ここ一、二年の間に見かけられるようになったコアを持たない小型のネウロイは7㎜級の機銃弾でも十分に貫ける程度の装甲にシールドで余裕を持って弾ける程度の光線しか持っていない。一般の兵士には有効でもウィッチの前にはカモでしかない。
なぜ苦戦しているのかと言えば、数の問題である。押しとどめられる、削る、それ以上の数が押し寄せては取り囲もうとしてくる。
もしも囲まれてしまえば、ウィッチ達は全方向に気を使いながら戦わざるを得ない。ウィッチ達とて一人ではなく十三人。互いが互いを信頼し背を預けることも出来る。しかし、それでは足を止めて戦わざるを得ない。急がなければ第三射が放たれるかもしれないという状況でここで足止めされるのは敵の思う壺だ。
「ちぃ!ぶっとべぇ!」
管野が覚えたての魔力砲撃で敵の一角を削るが、被弾を免れた個体がすぐにその穴をふさぎにかかる。
「くそっ!」
「無駄遣いするな管野!もう何画も残っていないだろう!」
ラルの声にハッとした管野が左の袖をめくればもうそこには呪印が無く、残るはグローブの下に隠れた手の甲の3画のみであることを示していた。
「菅野さんの一閃は大型の装甲を破れる数少ない手段なんですよ!?もっと大事に使ってください!」
「うっせぇ!んなことはひかりに言われるまでもねぇ」
「そんなこと言ってぇ!余裕が出来るようになったからって気軽に使いすぎなんじゃないですかぁ!?」
「んだとぉ!?」
敵の包囲が徐々に完成に近づき、ウィッチたちは密集して戦うことを強いられだす。管野の近くにまで下がってきていたひかりが飛ばすヤジに管野も敏感に反応する。言い合いながらも視線は敵に向けられ銃口もまた同じくだ。
「余裕なのか危機感が無いのか…」
「お姉ちゃん的にはどうなの?」
「……き、緊張して動けないよりかは、い、良い…ん、じゃないでしょうか……」
「複雑そうだねー」
「懐かしい感じの頭痛にホッとしてしまった自分が嫌になりそう…」
「大丈夫?サーシャさん」
「ニパさん……お願いですからまだしばらくは落ちないでくださいね……」
「まだしばらくはってなに!?」
彼女らのペアもまた戦場とは思えない軽口をたたき合う。これが新米や練度の低いウィッチ隊ならば絶体絶命とでも思ったのかもしれないがそれを幾度も経験した者たちにとってすれば数ある戦場の一つに過ぎない。
とはいえ余裕があることと態度は別の問題。生真面目なサーシャは周囲の空気間に頭痛を覚えると同時にそのことに当に順応している自分の感性との間に揺れ動いていた。とりあえず、彼女は自分の気持ちに折り合いをつけることを後回しにして後々の悩みの種が増えないよう祈ることにした。
───
「あまり出し惜しんでもいられないか…」
戦況を見据える指揮官として彼女は、戦う部下達の背を見て全体の状況を知ることが出来る立場にいる。だからこそ、今の奮闘が続いたところでこの場を突破できないとわかる。いや、このまま戦い続ければいつかはこのコアなしの小型や中型とて殲滅できることだろう。しかし現状、今すぐにでも敵砲台型にとりつきたい身としては第三射に間に合わないだろうと勘がささやく。
故に彼女は、指揮官として自身の手札を切ることを躊躇わなかった。
おもむろに右腕を顔の横にまで上げる。手の形は扶桑人の管野やひかりたちが見れば貫手でもするかのよう、とでも言っただろうか。あるいはそれにしては親指が離れている、と言っただろうか。
親指とそれ以外の4本の指の間。そこに、何の前触れもなく厚い紙の束が現れる。
「突破力となるとバルクホルンあたりか」
この書類の中身はほとんど頭に叩き込んでいるといっていい。記憶を頼りに何枚もまとめて摘まみ一度にめくる。期待通り、一回目で目的のページを見つけることができた。それに連なる数枚を間違いかないか確認したうえでまとめて引き抜く。改めて確認を終えると、右手のうちに残ったお目当て以外の紙束を消す。
そうして左手の中に残った数枚を両手でつまみ上げ、一息に破り捨てる。
視線の先で空間が急激に歪みだす。見る人が見れば破いた書類からあふれた魔力がそこにたまっていくのが見えるだろう。
それは人型とかたどったかと思えば徐々に色が付き始める。総じて瞬き数回分もないかという時間の後、何もなかったはずの空間にはこげ茶の髪を後ろで二つ結びにしてbf109のE型を履いたウィッチがそこにいた。
───
「サーシャ、MG42を二挺。低燃費化にそこだけ省いた」
「はい!……どうぞ」
話を振られたサーシャは、それでも慣れた手つきで己の"発"を行使して求められた銃を具現化した。具現化した銃をサーシャから手渡されたそのウィッチは、ピクリとも表情を動かすこともなく無言のまま敵へ向き直ると、そのままその只中に向けて突入した。
「あぁ!?誰だ!知らねぇ奴が一人で突っ込んでるぞ」
突っ込むまでに横合いをそのウィッチにすり抜けられた管野が無線で叫ぶ。その間にもそのウィッチは何物も顧みないかのように突き進む。両手に構えたNG42はその高レートの発射速度が話題に挙げられる機関銃だ。その特性を十全に生かしそのウィッチは早くも手前にいた数機を撃墜していた。
「落ち着け管野。私の"発"だ」
グンドュラ・ラルの発、それは『人自所類/Puppenhaus』と『十二人目の撃墜王/Mensch ärgere Dich nicht』。
二つで一つのことを成す発。『人自所類/Puppenhaus』は書類を具現化する能力であり、『十二人目の撃墜王/Mensch ärgere Dich nicht』はそれを破り捨てることによって書類に記載されたウィッチの念人形を具現化する能力。具現化されるウィッチの能力や持続時間は書類にどれだけ緻密にその人物について書き記すことが出来たかが反映される。
特質系という希少な系統と事前準備にかける時間と労力を対価にした制約によって成り立たせている発。
「お、おう。そんなことまでできんのかよ"発"って」
そう口にしながら管野は具現化された念人形だというウィッチに目をやる。自在に飛び回る彼女の軌道からは"人間らしさ"とでもいうべきものが感じられ、管野にはとてもそれが人ならざるものだとは思えなかった。
「あの人突っ込んで行っちゃったんですけど大丈夫なんですか…?」
ひかりの言った通り、具現化されたウィッチ"ゲルトルート・バルクホルン"は獅子奮迅の活躍をしているともいえるが同時に時折、敵の攻撃で姿勢を崩していたりと不安になる場面もある。その戦闘技術は決して稚拙なものではないのだが、どこか冷静さを欠いているようにも感じる
「おお、ドっからどう見ても大尉だ……。しかもなーんか見覚えある感じの」
「今の大尉じゃなくて去年の夏ごろ、芳佳ちゃんが部隊に来る前の大尉みたい」
バルクホルンとは501JFWで同じ部隊だったエイラとサーニャが彼女を模した念人形の動きを見てそう評する。
彼女らの感想は正しい。バルクホルンの『人自所類』は情報を書き込むのがラル自身ということもあって再現される彼女はラルの知っている時の姿となる。故に、ラルとバルクホルンがまだ同じカールスラント空軍JG52で戦っていたころの、妹を目の前で昏睡状態にさせてしまった頃の姿をもとに具現化されている。故に、彼女たちが言う宮藤芳佳とミーナ・ディートリンデ・ヴィルケによって持ち直した後の姿とはならず、ネウロイに対して苛烈なウィッチとして再現されたのだ。
「あー…あれは彼女自身がちょっと追い込まれていた時期というか……。まぁ、今は全然持ち直してるから気にしなくて大丈夫さ」
「そういうことだ。今、敵がかき乱されているあのポイントを突破する。全機集合!一点突破で行く、後ろに構うな!」
バルクホルンの持ち直した後、目を覚ました妹さんの見舞いにブリタニアまで行ったこともあるクルピンスキーが一応のフォローを入れる。
過去の彼女を知る、複雑な表情を浮かべる者もいるが、それはさておき集合したウィッチ達は突撃陣形を形成。管野とニパを要する2ロッテをトップとして一塊となって突入する。
「行くぞぉー!」
「「「やぁああああああ!」」」
シールドの強度に優れる2人をツートップとし全員のシールドを一つとしての突撃は統合戦闘航空団ではたびたびおこなわれる戦術だ。激戦区で採用されるだけあってのその威力は確か。バルクホルンの念人形がかき乱した空域を横合いから殴りつけることに無事成功し、その包囲を抜け出したのだった。
設定メモからコピペ
ラル
・人自所類/Puppenhaus(ドールハウス)
→書類を具現化する能力。基本フォーマットに対し、如何に情報を詰め込むかが重要。人物の情報を貯蓄する能力。詳しい情報であればあるほどいい。魔力を込めて描く必要がある。クソ時間がかかる。面倒
発想元は「BLEACH」の毒ヶ峰リルカの完現術「ドールハウス」
・十二人目の撃墜王/Mensch ärgere Dich nicht(イライラしないで)
→ドールハウスにて記憶した人物の念人形を生み出す。一度に一人のみ。
発想元は【魔法少女リリカルなのはA's PORTABLE THE BATTLE OF ACES】より闇の欠片
12人目と言うのは統合戦闘航空団の定員は11人とかいう設定を古の時代に見た記憶から
管野
・発送元は「Fate」の預託令呪。純粋な魔力リソースということで今後も多彩に活躍する予定。
出来る人だけでいいので評価おなしゃす!なんでも島風!配信頻度を上げるくらいなら頑張ります