ピッタリ二日です。
でも6700しか書いてない。前回のと合わせて10000ってことにしといてください。
ところで閉じるボタンで内容の保存されない多機能フォームってどうやってつかえばいいんですか
敵の包囲が完成する前に危機を脱することができたウィッチ達。しかし、敵を殲滅して脱出したわけではないため、難を逃れた個体が追撃に転じてくる。
追撃を受ける側というのは常に苦しいもの。まして空中戦となると逃げながらの攻撃というものが難しい。時折振り向いてやみくもにばらまく機関銃では当たる弾も当らない。こういう時にも役に立つのが広い範囲を攻撃出来て火力もあるフリーガーハマー。これを見越して突撃の際に後ろ側に2人が配された。
包囲を突破した後もラルは部隊をあまり散開させず適度な距離をとらせるにとどめた。追われる側が一塊になることで追う側もまた塊になることを強要する。こうすることで機関銃の低い命中率をカバーし、フリーガーハマーの効率を上げている。
ただし代償として、敵の攻撃が集中することも意味している。
「……まだ遠いか」
目標まではまだ距離がある。どうやら出せるネウロイは吐き出しきったのか前をふさぐ敵こそいないものの、追撃の光線に妨害されて最短距離をまっすぐに突き進むこともできない。
「火力不足だな」
「このままではたどり着いたところで挟み撃ちになるだけということも」
このままネウロイを引き連れていった時、砲台型に自衛能力があった場合前後両方からの攻撃にさらされることになる。
「部隊を分けますか?」
「……、」
故に、ロスマンの提案通り追撃を相手にする部隊と砲台型を攻撃する部隊とに分けるという策もありだろう。ただしその場合、追撃を押しとどめる側は先ほど以上の敵の圧力にさらされることとなる。同時に、攻撃を担う者たちも少ない人数で未知の大型を相手に攻撃を敢行することになる。
部隊長として、未知の敵を相手にするのならば持てるだけの戦力で臨みたいところだった。
「……わかった。全員聞け!これより部隊を二手に分ける!」
「サーシャ、ニパ、ロスマン、クルピンスキー、ジョゼ、下原はこの場で追撃部隊の足止め。それ以外の者で敵砲台型を相手にする」
フリーガーハマーを持つロスマンを火力役に残し、ほかの者たちも2年近くを共に戦ってきてその実力はよく知るところだ。まとめ役となるサーシャも大戦初期の地獄を生き残った実力者。多くのネウロイを相手にしても生き残ってくれることと信じている。ジョゼも粘り強い防御的な戦い方を評価されたウィッチであり、部隊唯一の貴重な治癒魔法を持つゆえにこちらへと回した。
対して、ラル自身が率いる6人は大型ネウロイを相手取るのに長けた人選だ。魔眼持ちの雁淵姉妹、火力役の管野とリトビャク中尉。西沢飛曹長は扶桑海事変以来のベテランで大型を多く相手取ってきた経験を持ち、ユーティライネン少尉は未来視の魔眼持ちで一度も被弾したことがないという逸話で名の知れたウィッチだ。仮に何かあろうとも彼女だけは必ず生き残って情報を伝えられる。
「了解しました。お気を付けて」
「そちらもな」
別れの挨拶は端的に。言い終わったが最後互いに背を向け合い、それぞれの目標に向かって飛ぶ。
───
「散開!」
追撃を相手にするにあたってサーシャが最も恐れたのは先刻のように包囲されそうになること。13人いた時ですら固まって突撃などという手段でなくては突破できなかったのだ。人数が減っていればなおさら危険な状況になる。
だからこその散開。ウィッチ同士の距離が離れてしまえば、ここのペアを囲むネウロイの数は著しく減少する。それぞれの相手で3分割される上、囲むとなればさらに薄くなる。
距離を離しすぎなければ局所的に挟み撃ちの固いも狙えるかもしれない。古い時代の支城戦術のようなものだ。火力と実力を備えたカールスラントのペアがいち早く自分たちの割り当てを殲滅すれば状況はより有利に傾くことだろう。
「ニパさん。改めて背中はお願いします」
「まっかせて!シールドの固さと体の頑丈さには自信あるからね!」
「…ストライカーのほうが脆いっていうのはどうなんでしょう」
部隊を分けて早十分近く。
状況はおおむねサーシャの予定通りに推移している。三か所を同時に包囲せねばならぬ上、空中では三次元的に囲む必要があることから去らぬ必要とされる数は増える。必然的に一か所一か所のネウロイの厚みは減り、火力によっては一撃で穴をあけることもできた。
ただし、敵の数が圧倒的なことに変わりはない。
もともと13人で相手にしていた数だ。脱出のときの突撃に巻き込まれて大きく数を減らしはすれども未だに雲霞の如き数がいる。減らせど減らせど空いた穴をほかの個体が埋めるという無限ループとも思える時間。ウィッチの体力や弾薬が尽きるのが先か。ネウロイが蹴散らされるのが先かの勝負になるように思えていた。
異常が起こったのは下原・ジョゼのペアが戦っていた場でであった。
「きゃぁ!」
「ジョゼ!?」
まず最初に悲鳴を、次いで何かが爆発したかのような音を耳にした下原がジョゼがいたはずの方に顔を向ける。そこには黒煙が漂い、ジョゼはそれを振り払いながら中から抜け出てきたところだった。
「ジョゼッ、大丈夫!?」
煙の中から出てきたジョゼは服装の端やストライカーの先のほうが煤けている。対して体の中心のほうは何ともないように思えたため、咄嗟にシールドで防ぐことに成功したかのように思えた。
ところが、下原から見て影になっていた左腕には沿うように走った裂傷から血がしたたり落ちていた。
「ジョゼ!」
「大丈夫だよ定ちゃん。血は出てるけど動かせる」
仮にこれが神経や骨などにまで達する傷だったのであれば状況が許せば即座に撤退させられただろう。幸運だったのはこの傷が飛び散った破片があくまで腕を切りつけた、かすめた程度であったという点。そしてジョゼが貴重な医療系固有魔法の使いてであったことだろう。
治癒系固有魔法を基にしたジョーゼット・ルマールの"発"。
系統は具現化系で彼女の生まれ持っての形質にあったもの。具現化されるのは特に変わったところのない純白の包帯。
その特徴は"重ね掛け"と"遠隔治癒"。
包帯を巻きつけた部分のみを集中的に。かつ、巻き重ねた回数だけ重ねて治療できる。その特性上、胴体部などよりは腕や指などの比較的末端部位のほうが巻き重ねやすく治りが早い。
もう一つの特徴である"遠隔治癒"は直接手を翳さずとも包帯そのものから治癒が発動する。そのため、飛行中等においても低リスクでの治療が可能。いざという時には戦闘しながらでも傷をふさげるという力。
固有魔法と合わせたこともあってかなりメモリの消費が少なく作られた"発"。
『彼女』の固有魔法は決して優れているとは言えなかった。彼女の生まれは宿屋で、医師の家系というわけではなかった。比較的早くから軍で飛行資格を取ってみせたとはいえ"固有"とあるように治癒魔法の出力は生まれ持っての才能によるところが大きかった。
彼女の治癒魔法は応急処置程度と評されたがそれですら貴重なほど数が少ないのが治療系固有魔法持ちのウィッチ。出力が低いなりにその扱いにも習熟し、また、上げた戦果はガリアでも名のあるエースに数えられるほどまでになった。
それでも、彼女は自身の"発"に固有魔法を応用した、固有魔法をより医療に特化させた能力として扱うための者としての力を求めた。"発"はなにも固有魔法に縛られる必要はない。絡めることで魔力やメモリの消費を削減するものもいるがまったく関係のない能力を作ったものもいる。
それでもなお、自身の戦闘力を強化するでもなく、戦いにおける手札を増やすでもなく、固有魔法の強化を選択した。
部隊における生命線。
昔、ラル少佐から502で失われたら最も困るウィッチだと言われたことを彼女は正しく受け取っていた。
手に取った包帯を器用に片手だけで巻いていく。最後は口も使ってきつく縛り上げた腕からは淡い光がともり、赤く染みた血が徐々に収まっていくのが傍からも見て取れた。
「私はこれで大丈夫。それよりも、今私を攻撃してきたネウロイについて」
「そう!何があったの?」
「自爆してきたの。あいつら、自分自身を爆弾みたいに使ってきたの!」
───
ジョゼ達が突然行動を変化させたネウロイに襲われだしたころ、同じように襲われていたのはロスマン・クルピンスキーのカールスラント組。
同じようにというのは正しくない。彼女たちはより一層激しく攻撃されていた。
「次、上から!」
「くっ、矢次早に」
数機ごとに突っ込んでくるネウロイがこちらの懐に入る前に撃墜しなくてはならない。クルピンスキーは正確に照準を合わせるために体ごと寝そべるように上を向き、きちんとMP43の銃床を肩に充てて引き金を引く。
戦闘を行く一気にねじ込まれた弾丸は自爆用のエネルギーを刺激し炸裂。後続を巻き込んで花を咲かす。その間にも、失敗したとみるや次の一団が突入しようと蠢くのを感じ取ったロスマンが榴弾を叩きつけ機先を制する。
このような攻防をすでに十何回と繰り返していた。
「こいつら、なんでいきなりこんな!」
このような状況下にも関わらす口を開く余裕があるのは彼女らがトップエースたる証左だろう。
「わからないわ。考えてもしょうがないなら手を動かしなさい!」
だが、戦場に長くいたトップエースとはいえど敵の、それも人ならざる者の考えなどわかるはずもない。今はただ、生き残るために瞬間瞬間へ全力を投じるのみだった。
「もう、手どころか足も頭もフル回転だよ~」
───
その状況を正確に把握しているものが居た。
「ねぇ、サーシャさん!これってどういうこと!?」
「なんてこと、敵も私たちと同じようなことを……!」
まず、ニパが感じ取った違和感。それは他と同じく自爆する個体が現れたこと。次いで、撃破されて減る以上の数のネウロイが彼女たちの周りからいなくなっていることだった。
そして、サーシャが気が付いたこと。それは減ったネウロイがロスマン・クルピンスキーのペアのところへと集って行っているということだ。
「同じようなことって!?」
「戦力の分散、いえ、手分けをしているとでもいうべきです」
ラルの判断でウィッチ達は二方面の敵に対し、"足止め"と"撃破"で二手に分かれたのだ。
「じゃあこいつらは足止めってコト…!?」
「えぇ!そして、それ以外の戦力集めてまずあの二人から墜とすつもりなんです!」
なぜ、ここで最初に狙われたのがあの二人だったのか。それはあの二人が飛びぬけて戦闘力が高かったから。本人の技量と取り回しのいい銃で撃破数を稼ぐクルピンスキーと高火力範囲攻撃ができるロスマンの組み合わせは、ほかの機関銃のみを装備したペアに比べて脅威度が高かった。
特に、この分断作戦で他のペアに狙いを置いた場合、その高火力から包囲を突破されて逆に痛手を負うことになる可能性が高いと判断されたからであった。逆にここでこの二人を捕殺できれば残る4人も同じ方法で時間をかけて始末することができた。
「最近のネウロイやっぱり変だよ!」
「明らかに知能をつけています。……いえ、その兆候ならもう何年も前からありましたね」
サーシャの脳裏によぎるのは度々起きる人型ネウロイによる事件。戦争初期のスオムスにおけるいらん子中隊の複数にわたる交戦記録から、502でも去年に引き続き今年にも出会い計二回。501が遭遇したという資料をミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐からの密書で見たし、ヴェネツィアで人型との接触作戦を行った504が壊滅状態だという話は耳に新しい。
幾度となく人類の、そしてウィッチの前に現れる奴らはそのたびに他のネウロイとは違う行動をしてみせた。
自爆という戦術をとったのは小型のネウロイであっても防御を強要でき、かつそれを抜いて手傷を負わせるだけの威力があるから。コアなしの小型など使い捨てでしかない。数の優位を利用した戦術であった。
(もしや、今回のこの動きも…?)
サーシャはそう考えずにはいられなかった。
───
クルピンスキーとロスマンの連携は見事の一言に尽きた。互いの行動、そのすべてが嚙み合い、常にどこかの敵機が撃破されて塵と消えゆく。
しかし、それでも徐々に敵の包囲が狭まっていく。リロードの瞬間、確認の瞬間など、どうしても手が止まるときがある。常に絶え間なく押し寄せるネウロイにそのような"停止"する瞬間は存在しない。
もはや、これまでか。
そう言葉が頭をかすめる。
見れば敵との距離は縮まりきり、これ以上近づかれればフリーガーハマーのロケット榴弾は信管の安全距離の問題で起爆しない可能性すらある。クルピンスキーももはや飛び回る空間がなくなり、ロスマンのバックブラストを避けて上方で留まっている。足を止めたことでリロードに割く意識が増えたこともあって撃破レートは増えているような気がしないでもないが焼け石に水だ。
「ともすればこれが最後に引く引き金かもしれないわね」
そう口にしてから放たれた数発。せめて少しでも多く巻き込めるようにと祈りつつ放たれたそれ。
縁起でもない、とクルピンスキーが文句をつけようとした。
───
ロケット弾の着弾とは別に、下方の包囲を行っていたネウロイが一斉にその身をガラス状の欠片へと転じた。
「!?、伯爵!」
「りょう、かい!」
咄嗟に体を翻してその穴へと飛び込む。声をかけられたクルピンスキーは行き掛けの駄賃とばかりにカンプピストルの26㎜榴弾を放ちそれに続く。
穴を抜け、ネウロイの包囲で暗かった空間から一転明るい日の光の下に出たロスマンが一瞬目をくらませる。その瞬間をつかれやしないかと"円"に意識を注ぐ。自身の近く範囲が拡大していき、周囲を飛び交う光線と銃弾までも手に取るようにわかる感覚にやがて飛び込んでくるいくつもの存在。
「……ウィッチ?」
「お待たせしてしまいました」
見慣れたbf-109のG型からガリアのMS406。ほかにもリベリオンやロマーニャ等雑多なストライカーを履いてはいるものの服装は統一されている。空色の軍服に両サイドには四角い物入れがつくそれはこれまでにも幾度も纏っているものを見たことがある。
「スオムス空軍第24戦隊…いえ、この場にはそれ以外の者もおりますが。ともかく救援に参りました」
先頭に立つ少女。ラウラ・ヴィルヘルミーナ・ニッシネンがこの場のまとめ役なのだろう。よく見れば周囲のウィッチの中にはストライカーに真新しい応急処置をした痕のあるものや巻かれた訪台が制服の破れた跡から覗いている者もいる。
「先の攻撃の後、動けるものをどうにかこれだけそろえるのに手間取りました」
「そう、パブロフスクから来たのね?」
「はい。そこで補給と整備を」
これだけ、という言葉にふとクルピンスキーがあたりを改めて見まわすと自分たちのところだけでなくサーシャやジョゼ達のほうにもウィッチが向かっており、すでに4人とも包囲を脱していた。
「よく短時間でこれだけ集められたねぇ」
「誰もが死線をくぐってきた者たちですから」
「ほうほう。それはそれは。よくよく見ればかわいい子たちばかりじゃないか」
窮地を脱してか意識の浮ついているクルピンスキーにロスマンが思わず肘を入れる。ラウラもラウラで何やら視線が厳しくなるが、閑話休題。
空気を換えるようにラウラがんんっと咳をいれ、改めて仕切りなおす。
「この場は我々スオムス空軍で受け持ちます。時間が立てば今動けなかった者たちやヘルシンキのカールスラント夜戦中隊もこの場へ集うでしょう。あなた方は大型の方へ」
「それは…ありがたいけれども」
「こちらは大丈夫です。みな、傷だらけでも強い。それよりも私たちではあの大型にどこまで立ち向かえるかはわかりませんから」
「……わかりました。ご武運を!」
「そちらこそ!曹長殿!」
階級では尉官であるラウラのほうが上なのだが、最後まで目上を敬う態度を崩さなかったのは彼女なりの敬意なのだろう。
包囲を抜け、近づいてきていたサーシャたちに向かって声をかける。
「サーシャさん!聞いていましたか!」
「えぇ!ここはスオムス軍にお任せして私たちは隊長たちの方へ行きます」
加速をつけるべく緩降下からの上昇を行う中でロスマンはちらりと後ろを振り返る。空の広い範囲であちこちで銃火が交わされているのが見える。それでも致命的な被弾をしたものや落ちていくものは見えない。
視線を下に向ければ、ヘルシンキから来た艦とパブロフスクが合流し艦隊を組んでいる。甲板にはウィッチと思わしき影が数人おり今にも飛び上がりそうな雰囲気を見せている。
「大丈夫そうね」
「ここは信じてあげるとしようよ先生。彼女たちだって立派なウィッチだ」
「えぇ。そうしましょう」
前へと向き直り、一度目を閉じる。
改めてロスマンが目を開いた時にはすでに意識は切り替わり、ただ目前の砲台型のみを見据えていた。
みんな評価ありがとう!!!!!
ゲージが赤い!やったああああ
これからもよろしくお願いします