鬼滅の刃~蒸の呼吸~【完結】   作:木入香

10 / 35
 途中から色々面倒くさくなったので、適当にでっち上げたりして強引にまとめました。申し訳ありません。
 最後の場面、あれが書きたいが為に頑張っただけです。はい。


追記:水柱の名前がとあるキャラと被っていることに気付きましたので、修正しました。


第拾話 蒸柱

 多少の嫌疑(けんぎ)は掛けられたものの、無事に柱就任を果たした創里(つくり)は、鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)遭遇(そうぐう)し戦闘を行った際の印象を聞かれたので、素直に思ったことを告げたら、周囲から戸惑(とまど)い、または冷たい目で見られていた。

 

「面白い評価を下しますね。まるで、その程度の存在だとでも言うかのようですね」

 

 その中で、産屋敷守通(うぶやしきもりみち)のみが、ただ小さく()みを浮かべただけで何事もなく話を進める。

 

「あの男は、確かに力があります。知恵も知識もあります。物事を冷静に見る目もありますし、何より長年存在してきたという経験があります。しかし、それはあくまで(おのれ)の身を守る甲冑(かっちゅう)です。そういった表面を全て()いてしまえば、傲慢(ごうまん)嫉妬(しっと)深さ、他者への一方的な怒りといった、心の小ささが残るだけの小さな怪物です」

 

 それなりに脚色(きゃくしょく)しているとはいえ、大きく外れていない評価だと創里自身は思っている。原作を読み、実際に出会って、そうして(いだ)いた感想がそれだったのだ。

 継国縁壱(つぎくによりいち)によってトラウマを植え付けられた彼は、余計に表を警戒し、影に(ひそ)むようになった。それからは、これまでほとんど表に出てくることはなく、仮に出てくるとしても鬼を増やすか食らう時くらい。

 恐らく、偶々(たまたま)出遭ってしまった隊士はいたかもしれないが、その(ことごと)(ほうむ)り去られてしまったことで正体不明のままである。そこから多くの人は、姿が見えない、分からないという恐怖から勝手にとんでもない巨大なものと戦っていると思い込んでしまっている。

 (あなど)ることは勿論(もちろん)危険であるが、かといって必要以上に(おび)えることもないのだ。

 人は分からない物事を怖がる。だから、何かしらの理由などを付けて、分からないなりに分かったことにしてきた。時代が進めばそういった疑問の多くは化学や科学が解決してくれるだろうが、この時代では、まだまだ亡霊や妖怪といった(たぐ)いのものを存在するとして信じられている。

 よって、周りの柱から創里へ向けられた視線は、決して彼を軽蔑(けいべつ)するとかの意味ではなく、単純に「あんなすごい鬼の集団の首魁(しゅかい)なのに、何でそんな低評価なの?」とか「何言ってんのコイツ?」という程度のものである。

 知らないことが恐怖へ繋がるなら、知ってしまえば良い。だから創里は、必要以上に虚仮(こけ)にする。

 そう言った意味も込めて簡潔に補足すると、一部を除き、多くの柱が得心(とくしん)したという雰囲気(ふんいき)へと変わった。また残る一部の人も「検討(けんとう)の余地あり」として、創里の評価を保留することに変わった。

 

「容姿は分かりますか?」

「私が見た時の姿形で良ければですが」

「なるほど。確かに鬼の中には容姿(ようし)(あやつ)る者がいますね。鬼舞辻もそうだと?」

「はい。私が見た時は細身の男性の姿でしたが、もしかしたら女性に変化(へんげ)することも出来るかもしれません」

「性別まで変えますか」

「あくまで可能性ですが」

「いえ、信じましょう。何より、実際に戦った貴方(あなた)が言うのです」

「感謝(いた)します」

 

 それからも、守通だけでなく各柱からも、無惨が使ってきた技や皮膚(ひふ)硬度(こうど)、力量や対処法など様々な質問を受け、一つ一つに答えていく。しかし、その中で一つとして、どのようにして(・・・・・・・)渡り合ったのかという問いが来ることはなかった。

 創里の使用する()の呼吸は、体温と心拍数を上昇させ、(あざ)を発現させることを主目的とした呼吸である。そして、その新たな呼吸を開発するにあたり、炎柱(えんばしら)遠藤虎恭(えんどうとらやす)の意見なども参考にしたことで、痣に関しては虎恭も認知している。そして、炎柱が知っているということは、当たり前だが鬼殺隊(きさつたい)のトップである守通も知ることになるはずである。

 元々産屋敷家(うぶやしきけ)には鬼殺隊の歴史を記した書物も残されており、そこに痣に関する記述もあることから知っているのは当然である。しかし、痣に関することを周知させないのは、寿命(じゅみょう)を短くするというデメリットがあるからに他ならない。よって、この場で二人からこのことに関する質問はないし、また他の柱はそもそも痣のことなど知らないのだから聞きようがない。つまり、創里が純粋な剣士としての力のみで戦ったと思っているのである。

 勿論、単純な技術のみで戦えるのかと疑問に思う者もいたが、しかし自身が敬愛するお館様が何も言わないのであればと、口に出さないことにしたのだ。

 そして、無惨の情報を粗方(あらかた)放出し終えた頃、守通が「忘れていました」と言って創里に向き直る。

 

「今回の柱就任に関してですが、生憎(あいにく)(すで)に炎柱は在位の身であります。よって、創里にはもう一つの呼吸、蒸の呼吸から取りまして、蒸柱(じょうばしら)として改めて務めて頂きたいと思います」

(つつし)んで(うけたまわ)ります!」

「よろしくお願いしますね。虎恭、この後少々よろしいですか?」

「は!」

「他の皆さんは、各自で交流して下さい。この機会です。それぞれ自己紹介をして、お互いの理解を深めましょう」

「「「「「「「「「御意(ぎょい)」」」」」」」」」

 

 そうして始まった交流会。当たり前だが、新人の柱である創里の周囲には人が集まり、それぞれ言葉を()わしていく。

 

「先程は失礼しました。わたくしの名は作吉(さくきち)です。洗礼名(せんれいめい)はありません、神に(つか)える存在です。(さば)く柱、裁柱(さいばしら)を務めています」

「この吉利支丹(キリシタン)の言葉の半分は聞き流してくれて構わない。実力は確かなのだがな……私も先程は失礼を。戒名(かいみょう)釋縁連(しゃくえんれん)。元武士だ。鳴柱(なりばしら)を務めている」

 

 先程、宗教対立していた二人だ。二人共袈裟(けさ)を身にまとい(作吉は袈裟のようなものとなるが)、体格も五尺三寸(約160cm)の創里より頭一つ分高い(約190cm弱)という点で似ている。そして、どちらも仕えるべき神様や仏様がいる。

 

(この二人が仲悪いのって、同族嫌悪(どうぞくけんお)?)

 

 見た目の違いで言えば、釋縁連は坊主頭で細目をしており、作吉は、髪は黒く短く切り(そろ)えられていて、キッチリと整えられている。七三分けというものではないが、スーツを着たらキチッとハマるのではないかと思われる。目付きは釋縁連がキツネっぽいと評するなら、作吉はタヌキのように丸い目をしている。

 

「この二人はいつものことじゃ。放っておけ。(わし)は元風柱(かぜばしら)理太郎(りたろう)じゃ。先程は早とちりをしてしまったが、儂の言うことは変わらん。柱として正しい行動を取るように」

「はい」

 

 創里よりも少し低い身長の、見た目四〇代後半の男性。しっかりと(まげ)()っていたり、身だしなみがしっかりとしていたり、迫力といい、武士出身かと思うが、名前からして平民出身なのだろうと考える。

 

「私達も紹介良いかな?」

 

 次に話し掛けてきたのは、後ろに二人を置く女性だ。恐らく虎恭と同年代のベテランの風格を(ただよ)わせている。

 

「私の名前は、(うた)水柱(みずばしら)さ。そして後ろの二人は……」

 

 唄の言葉を受けて二人の男女が前に出る。どちらも二〇代前半か一〇代後半といった所だろう。

 

波柱(なみばしら)九十九蓮滋朗(つくもれんじろう)貴公(きこう)の心は思ったよりも揺れないのだな。まるで細波(さざなみ)のようだ」

雫柱(しずくばしら)の、たえ、です。たえ(・・)ず努力し、困難にもたえ(・・)ます。どんな質問にだってこたえ(・・)ますので、気軽に話し掛けて下さいね」

「え、は、はい。よろしくお願いします」

 

(やっぱ柱ってキャラ濃いのばっかだなぁ……九十九さんのは、まぁ何となく分かるとして、たえさんのは駄洒落(だじゃれ)……? かどうかはともかく、わざと(いん)を踏むような言い回しだな。どちらも美形なのに、残念美男美女だな。その点、水柱の唄さんは普通で良かった)

 

 と、安心したのも(つか)の間。

 

「二人共自慢の弟子だよ。だけどねだけどね。私は二人のどちらかに水柱を継いでもらいたかったのさ。それなのに何で二人共独自の呼吸を見つけちゃうかね。私は早く隠居してのんびりまったり辞世(じせい)の句を読み続けたいのに。そりゃ二人共才能があるのは嬉しいさ。でもさ、それならどちらか私の後を継いでくれても良いじゃないか。何でこうなるのさ。理太郎の(じじい)はさっさと()めてしまって、本当に(うらや)ましい限りさ。今からでもあの爺を説得して、代わりに私が身を引きたいが」

 

(この人もこの人で濃いな! というか、のんびりまったり辞世の句を読み続けるって何だよ! 死ぬのか? 死ぬ気なのか? 隠居するのに死ぬつもりなのか? のんびりまったりはどこ行ったよ! それともあれか、遺書を書くのが趣味とか、そういうのか。それなら理解は出来ないが、そういうのもあるのかと分からなくもない気がする。俺は分からん!)

 

 宗教家の二人に言動がおかしい水関連の三人。直情的だが割とまともな理太郎は引退してしまったので、残るまとも枠は創里本人を除けば師匠である炎柱のみ。となると、残すは二人。この二人がどちらに転ぶかで、柱の異常性が決定する。

 

三助(さんすけ)! 岩柱(いわばしら)!」

「ぐひひひひ……(いわ)さん、今日も元気……ぐひ、ぐひひひひひ」

「岩さん! 違う! 三助! コイツ! 二兵衛(にへえ)! 土柱(つちばしら)!」

「ぐひひ? よろしく、ぐひひひひひひひひ」

 

(こええよ! これ、二人共コミュニケーション能力というか言語能力崩壊(ほうかい)してるだろ! さっき揃って「御意」って言っただろ! あの格好良い雰囲気どこ行ったんだよ!)

 

 結論、柱は異常者だった。

 それからは、思い思いに交流し、その際に何故か筆と(すずり)(すみ)、そして俳句用と思われる短冊を所持していた水柱から借りて、それぞれ名前を書いて字を覚える。

 

(この人、隠居するまでもなく辞世の句書いてるんじゃね?)

 

 そんな疑いを残しつつ、創里は受け取った短冊とそれを書いた人の顔を見比べて、出来るだけ覚えられるようにする。理太郎は、既に柱ではないからという理由で書くことを固辞(こじ)したので、ここには含まれていない。

 

随分(ずいぶん)と打ち解けたようだな」

「打ち解けているように見えますか?」

「うむ。これで私が、彼等の相手をする機会が減ってくれるとありがたい」

「やはり、師匠もあの人達の相手は大変なのですね」

「うむ。そうなるな」

 

 守通との話を終えたのか、虎恭が創里の(もと)へ来て他愛もない話をしてくる。その意図(いと)を何となく察した創里は、二人で庭の(すみ)へ移動して雑談に興じる。それからは自然解散の形となり、一人、また一人と柱が散っていくのを見届ける。

 

「さて」

 

 それを合図に、二人は揃って守通の所まで移動する。

 

「話とは何でしょうか?」

「虎恭は何と?」

「何も。ただ、先程の流れから、私に何か聞きたいこと、もしくは確認したいことがあるのだと思っただけです」

流石(さすが)です。良い弟子ですね」

(まこと)に、私には勿体ないです」

「では、上がって下さい。誰もいないとはいえ、外で出来る話でもありません」

「「は! 失礼します」」

 

 広い屋敷である為、部屋の一つ一つがとても広いのだが、創里達が通されたのは、僅か六(じょう)程度の空間であった。

 

(一般庶民からしたら十分な広さなんだけど、何というかさっきからスケールの違いを見せ付けられていたから、麻痺(まひ)してんのかな?)

 

 守通が正座をし、その正面に二人並んで同じように座る。

 話の内容は、先程の会議で触れなかった痣に関することである。ただ、そのことは一年以上前、まだ最終選別を受ける更に前に既に伝えているはずである。そして、痣のことは産屋敷家の文献(ぶんけん)にも残されているはずなので、今更創里に聞くことはないと考えている。

 赫刀(かくとう)については記述があるのかは分からないが、痣と合わせて虎恭が報告していると伝え聞いているので、知らないということもないだろう。

 だが、透き通る世界。これに関しては虎恭にも伝えていない。目で見て分かりやすい痣や赫刀と違い、透き通る世界は見た目では分からない上に、言葉で説明することも難しい。医術、特に解剖学(かいぼうがく)(とぼ)しいこの時代に、相手の身体が透けて、体内を(めぐ)るの血管や臓器が見えると言った所で、どれだけの人が「なるほど」「そうか、分かった」と言えるだろうか。

 そして何より、痣が寿命を縮めることは過去の文献で証明されているとしても、それを透き通る世界で取り戻せるというのはどこにもない。つまり、ここで透き通る世界が見えると証明出来たとしても、それで何故短命ではなくなるのかを説明することが出来ないのだ。創里の想像はあくまで想像でしかなく、持論、仮説の域を出ない。

 だがそれも、仮に相手が納得したとしよう。そうすると、今度は“どうやって”その知識を得たのかということになる。

 痣を発現した者は例外なく二五歳で死ぬ。その前例を(くつがえ)すには、二五を越えて生きる必要があるが、創里はまだ一七歳。証明するには足りない。

 

「先程の柱合会議では出しませんでしたが、創里の身体に関わることです。痣が発現し、戦闘能力が飛躍的(ひやくてき)に向上したと。そう報告を受けています。そして、その後の活躍も、まさに飛ぶ鳥を落とす勢い……素晴らしいです」

「は」

 

 静かに頭を下げる。

 

「しかし、忠告しなければならないことがあります」

「はい」

「痣を発現した者は、確かに戦闘能力が上昇します。これは、産屋敷家に代々伝わる書物にも(しる)されています」

「何ですと。やはり、創里のこれは意味があったということですか」

「そうですね。実際に彼の力は(すさ)まじく、単独で鬼舞辻と対面して生還、それも無傷で行うという偉業を成し遂げました」

「では、我々もその痣を出すことが出来れば、更なる強敵にも対抗出来るということですか。ならば、私含めて他の柱にも創里の蒸の呼吸を身に付けさせれば……」

「それが、そういう訳にもいかないのですよ」

 

 虎恭の言葉を(さえぎ)って、守通は首を振る。そして創里を静かに見つめ、告げた。

 

「痣が浮き出た者は、例外なく二五歳で死に至ります」

「なっ……」

 

 創里は当然知っていたが、鬼のような痣が浮き出た、刀が熱を帯びたかのように赤くなった、という現象しか知らなかった虎恭は、そのメリット、デメリットを聞き絶句した。

 

「では、創里は……」

「残念ながら……」

 

 二人して沈んだ空気となっているが、創里本人としては恐らくであるが、解決出来ていることである為、割と他人事(ひとごと)のように眺めていた。しかし、このまま黙っている訳にもいかないので、「大丈夫です」と前置きをしてから話し始める。

 

「私は、二五では死にません。とはいえ、何も証拠(しょうこ)がありません(ゆえ)に証明することも出来ませんが」

「創里。私達のことを思ってか知らんが、お館様の前であまり出鱈目(でたらめ)なことを言うと、怒るぞ?」

「出鱈目ではありません」

 

 そうして、彼は、透き通る世界について語る。その内容は二人を驚かせるには十分なものであった。創里が話せる範囲のことを話し終えた時に、沈黙が辺りを(つつ)む。

 二人共、信じて良い話なのか判断しかねている様子であったが、いち早く再起動した守通が正面から創里の目をジッと見つめて言った。

 

「その知識はどこで得ましたか? 痣や赫刀については確かに書物にはありますが、下手(へた)(あつか)うと危険である為に、柱でさえもほとんど知らされておりません。何より、その透き通る世界というものは、どの文献にも記載(きさい)されていない私も初めて聞くものです。鬼殺隊の歴史を一手にまとめてきたこの産屋敷家でさえも把握(はあく)していないことを、貴方はどこでどのように知って、身に付けたのですか?」

 

 言葉だけ見ると尋問(じんもん)のようにも思えるが、その表情、その視線は、疑っているということもなく、ただ不思議に思っていることを聞いているだけのように創里には思えた。しかし、彼は事実を告げることは出来ない。よって、口から出たのは……

 

「言えません」

 

 であった。

 

「なっ!」

「なるほど」

 

 虎恭は、戸惑いと怒りと疑問とがごちゃ混ぜになった表情を見せる。しかし、守通はどこか納得したかのような穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「分かりました。信じましょう」

「お、お館様っ?」

「え、えぇと……お館様? よろしいのですか?」

 

 思わず創里も師匠に続いて聞いてしまった。いくつかの押し問答をし、最悪信用を失う覚悟も持っていた。だが、結果はあっさりと信じられてしまった。

 

「ふふ、では、話して頂けるのですか?」

「そ、それは、申し訳ないですが、出来ません」

「でしたら仕方ないですね」

 

(えー……どういうことなの?)

 

「二人共、面白い顔をしていますよ? 流石師弟ですね。似てないようで似ています」

「む」

「え……?」

「安心して下さい。私は創里の言葉を全て信じた訳ではありません」

 

 そこで一旦言葉を切り、笑みを消す。そして、真剣な眼差しで真っ直ぐに創里を見つめる。

 

「ですが、貴方の覚悟を信じています。その目の奥にある、強い想い。それはどれだけ言葉を重ねるよりも分かりやすく、相手を判断する材料になり得ます」

 

 その雰囲気と言葉に、創里も虎恭も何も言えなかった。

 威厳(いげん)のある者が相手を圧倒するような物言いをしたものではなく、ただ穏やかな口調で静かに語るだけ。にも関わらず、その言葉一つ一つが、心にまで染み込んでくる。

 

「もしかしたら、貴方は鬼殺隊に新たな歴史を(きざ)む存在になるのかもしれませんね」

 

 その言葉を最後に、守通が立ち上がったことで話し合いは終了となった。

 その後は、来た時と同じように(かくし)によって虎恭の屋敷近くまで連れてこられた。

 

「私は、お前の言葉を信じたいが、如何せん材料が少なすぎる」

「はい」

「だが、お館様が信じると言った。ならば、私も信じよう。何より、お前は私の継子(つぐこ)だ。師匠である私が信じなければ誰が信じるというのだ」

「師匠……ありがとうございます」

「良い」

 

 こうして、創里の初めての柱合会議は終わりを迎えた。しかし、修羅場(しゅらば)は屋敷に戻ってから待ち受けていた。

 

「つくりー! つくりー!」

「あらあら……」

 

 目が覚めたら創里の姿がどこにもなく、また耳に届くのは知らない場所の音、知らない人の声、そして見知った気配が近くにいないことを察した彼女は、泣きじゃくりながら創里の名を呼ぶゆきの姿があった。

 すぐさま、創里はあやすが知らずに置き去りにされていたゆきの機嫌は直らず、一緒の布団で寝るという彼女の要望を渋々受け入れることで、一応の仲直りとなった。

 これにて、ようやく一連の騒動は一先(ひとま)ず解決となったのであった。




 江戸コソコソ話

 当初の予定では、水の一門は割と普通に書いていました。ですが、やはり柱はぶっ飛ばなきゃ駄目だと謎の信号をキャッチしましたので、こんな変人共になりました。変人ですが、見た目は良い(特に波柱と雫柱)ので、それぞれ異性の隊士からは人気があります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。