集合場所となっている藤の
トレードマークとなっているいつもの着物。右が
その背には、大きな布で巻かれた巨大な
肩に届きそうだった
身長が
「ここか」
鬼の情報や本部からの伝令などを伝える、隊士一人一人にあてられる人の言葉を
すぐに特殊能力のようにどこからともなく現れた家主の
創里が入ってきたことで、一斉に振り向かれ注目を集めるが、特に気にする素振りも見せずドカドカと部屋へ入り、適当に出入り口に近い
「悪い。遅くなった」
「お、お前!」
「あん?」
声を荒げた男性隊士をよく見る。電気などないこの時代、当然
「お前……いや、お前等、最終選別の」
そこにいた四人の男性と二人の女性、合わせて六人の隊士は、かつて最終選別で一緒になり、共に合格を果たした者達であった。しかし、着ている着物は皆バラバラである。鬼殺隊の隊服と言えば、詰め
軍であれば、防具によってデザインが統一されているが、そのようなものを着るのも面倒な上、何より動くのに邪魔である。防御力も鬼の一撃を受けられるとは言い難く、それならばない方が良いということで、皆軽装なのである。
「柱が派遣されるって言ってたのに、何でお前が来るんだよ?」
「そうよ。他に隊士が来るとは聞いてないわよ」
最初に声を上げた男性隊士に同調するように、気の強そうな女性隊士も文句を言う。最終選別の後の
「いや、俺がその柱だし」
「は?」
「え?」
「嘘だろ?」
「本当かよ……」
四人がすぐさま反応する。残りの二人の男女は言葉を失っていただけで驚いてはいるようだ。
「改めて紹介する。新しく
「何でお前が仕切るんだよ」
「俺が柱だからだよ。仮に柱でなくとも階級が全てだ。俺は
手の甲に階級を浮き出させて確認させる。それを見て、一同は黙りこくる。
「よし、それでは行くぞ」
「お、おう」
移動しながら鬼の情報を確認する。対応にあたった部隊はほぼ全滅。四人死亡、二人重症で再起不能とのことであった。その全滅した六人の部隊が、最終選別を突破した同期の残りの六人とのことらしい。鬼の情報はその生き残った二人の証言によるものだが、ただ強い男の鬼という話しかなく、かろうじて分かったちゃんとした情報は槍を使うということくらいであった。
「槍……か。武器を持つ鬼とは珍しいな」
(知っているのだと、
鬼であるから元々の戦闘力が高いのは確かだろうが、そこに槍という武器を扱うともなると、更に並の剣士では厳しいものになると思われる。それはリーチの差だ。刀よりも遠くへ攻撃が出来る槍と、鬼の身体能力、そして血鬼術もあるかもしれない。それらが合わさることで、凶悪なものとなる。
「
「あぁ、話を聞いた
(伝言ゲームかよ。まぁ今の時代だとそれが普通か)
「それじゃあ二人一組で
「分かったわ」
「おう」
「分かった」
それぞれ三班と一人に別れて四方へ散る。
創里の担当は、街の西側。他の探索地点と比べると森に近い場所だ。
(静かだな……他の地点へと移動したか? だが、他に手掛かりもないしな……)
辺りをキョロキョロと見渡しながら、すっかり静まり返っている街並みを眺める。通りや家々の隙間の闇の奥を見ようと目を凝らすも、特に何も感じない。しかし、感じないにも関わらず、創里は納得しない様子であった。
(直感か、勘か。何となくとしか言えないが、きっとこの近辺に
行動理念や心理など知るはずもない。この思考も行動も無駄足となる可能性だって十分ある。だが彼は諦めず、しかし焦らずにしっかりと一つ一つの可能性を目で見て潰していく。
気配だけに頼らず、五感全てを使うことを意識し、どんな
その時、離れた隊士の状況を素早く知る為に、
(位置は……良し、それ程離れていないな)
―― 全集中
―― 一速
一直線で目標地点へ向かう。
―― 二速
(見えた!)
イメージ内の回転数が三〇〇〇に
その鬼は大柄な男で、刃が三つ付いた、まるで十字のような形になっている長い
「遅くなった!」
「はやっ、あ、いや、助かった!」
「気を付けろ! コイツ、かなり強い!」
新手、それも今相手にしていた二人とは明らかに力量の違う鬼狩りが登場したことで、その鬼の視線が厳しくなる。対して創里は刀を右肩に乗せ、左腕は肩から露出させる『FFⅩ』のアーロンと同じスタイルとなってジッと相手を見つめる。
「そのまとう空気。噂に聞く柱というものか」
「知ってんのか」
「強い人間ということだけだ」
「十分!」
合図はない。ほぼ同時に二人は駆け出して一気に間合いを詰める。いくらバスターソードのように大きな刀とはいえ、槍のリーチには負ける。しかしそれでも
相手が槍を突き出してきたタイミングに合わせて、振り下ろす。
ガァン! と重い金属同士がぶつかり合う
しかし鬼は軽く
「力の勝負で
「その割には驚いてないな」
「驚いている。この
そう言って、鬼の二つの目とは違う、額にあるもう一つの目が開眼し、そこに“下肆”の文字が
「やはり
刀を中段の構えにして、
「蒸柱、あの鬼の構えと動き、もしかして
「長いな。何だそれ?」
「俺もそう見たことがある訳じゃないが、十文字槍といい、あの動きといい、そうなのかもと」
「なるほどな。よく分からんが、そういう流派かもしれんってことだな。気を付ける。お前等は周囲の警戒と、周りに被害が出ないように注意を払え。後から合流する連中にも伝えろ」
「お前はどうするんだ?」
「俺か? 決まってるだろ? あの鬼を狩る」
―― 炎の呼吸
瞬間、踏み込みから一気に距離を詰め、相手の槍の間合いの内側まで飛び込む。
「むっ!」
―― 血鬼術
すると、創里の足下から突然真っ赤な槍が飛び出して来た。それを、上体を
――
不知火の為に上段の構えになっていたことから十分な威力は見込めないが、上体が大きく反り返った状態だった故に、
そのまま刀は地面から突き出された赤い槍と接触し、またも重い金属音を響かせながら軌道を逸らした。
しかし、その崩れた姿勢は明らかな
だが、それを予想していない創里ではなかった。叩き付けられるような腕による攻撃を、昇り炎天の切り上げた勢いのまま後ろへ跳び、バック宙する形で回避する。下半身に集中していた重心を捨て、全てを刀に預けることで、勢いの付いた非常に重い刀に引っ張られる形で彼の小さい身体は宙へと投げ出された。
その動きは完全に想像の外だったのか、鬼が
そんなものは知ったことではないと、創里は着地した際に大きく
先程の血鬼術で生み出した槍は、発動時間に限りがあるのか
―― 炎の呼吸
今度は相手の間合いの外から、熱量を持った闘気を真っ直ぐに飛ばす斬撃を放ち牽制しながら接近する。
(あの地面から生えるのが一本とは限らん。だけど、距離がある時に使わず、間合いに入った時に使ったということは、もしかしたらあの手持ちの槍の間合いが、そのまま血鬼術の間合いだったりするのかもしれん。試すか)
どちらにせよ、近付かなければ
(あの手に持った槍も、多分血鬼術で強化しているんだな。普通の槍だったら俺の刀と打ち合ったら壊れるぞ)
槍の間合いに入る直前、創里は急激に左へ方向転換して、今度は相手の右から攻める。
「舐めるな!」
―― 血鬼術 槍操葬
今度は五本の血塗れのように真っ赤な槍が地面から飛び出して来た。予測した通りの結果に満足し、早々に離脱する。
「なるほどな。確かに並の隊士では無理かもしれないな。それにお前自身の技術も
もしかしたら元武士なのかもしれないと考えつつ、攻略法を見つけていた。
「だけど、それだけだ」
―― 二速
(三〇〇〇から五〇〇〇へ)
―― 炎の呼吸 壱ノ型・
勝負は一瞬だった。
熱風が駆け抜けたと思った瞬間には、鬼の
「じゃあな」
創里の呟きは、鬼の
江戸コソコソ話
この頃はまだ統一した隊服はありません。本作の設定では、江戸後期から統一した着物を着るようになったということになっている予定ですが、本作の舞台が江戸初期ですので、まぁ主人公生きていないでしょうね。ということで、表に出ない設定です。