鬼滅の刃~蒸の呼吸~【完結】   作:木入香

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 今回は珍しく他者視点入ります。元々三人称ですので、あまり意味はないような気がしますが一応。
 モブなので、今後登場するかは分かりません。
 モブなので、容姿、名前など何も考えていません(性別くらい)。
 モブなので、誰がどういう感情かなどもあまり考えていません。
 ご了承下さい。


第拾参話 鬼の正体

 鬼を討伐(とうばつ)した後、周囲を警戒に当たらせていた他の隊士も集め、改めて他に鬼の情報がないかなどの確認を行う。そして、事後処理部隊の(かくし)が到着するまでの間、周辺の警戒を緩めないようにと、現場の責任者である柱の創里(つくり)は二人一組を組ませて、再び街中の探索へ向かわせた。

 鬼との戦闘現場の調査は柱本人が行うということで、探索範囲を軽く打ち合わせた隊士達は、それぞれの持ち場へと向かう。

 その中の一組。最初に十文字槍(じゅうもんじやり)の鬼と遭遇(そうぐう)し、戦闘に入った男二人。最も創里に対して反抗的な態度を取り、絶対に負けないと意気込んでいた。

 実際に、鬼殺隊(きさつたい)の正式な隊士として活動を始めて半年以上。着実に鬼を狩り、実力も伸ばしてきたという自信があったことで、油断さえしなければ二人で倒せると思っていた。

 だが、その思惑(おもわく)(わず)か数号打ち合っただけで見事に(くだ)け散ってしまった。素早い()きや()ぎ払いに対応出来ず、接近することさえ難しい。だが、そこで冷静さを失う程の新米ではなかった。当初の予定通りに遅滞戦術へと移行し、負けない戦いへ切り替えることで創里の到着まで持ち(こた)えることが出来たのだ。

 

「お前、あの戦い見えたか?」

「いや、全然」

「同期だよな?」

「そのはず」

 

 自分達が戦った時は槍の攻撃をいなすだけで精一杯で、血鬼術(けっきじゅつ)を使わせるまで追い込むことすら出来なかった。もし仮に(ふところ)へ飛び込むことが出来たとして、待っているのはあの血のように真っ赤な槍に串刺しにされる未来だろうと容易(ようい)に想像出来た。

 あんなもの初見ではどうしたって対応出来ない。鬼も必中の時期(タイミング)を見計らって()り出しただろう。実際に自分達では、蒸柱(じょうばしら)のような動きは出来ないと確信している。

 途中まではどうにか目で追うことは出来ていた。動きそのものは理解を超えたものであったが、まだどうにか動きを追えていた。しかし、最後の一撃。あれは完全に見失ってしまっていた。そして鬼の(くび)が斬られていることを理解するまで、頭の中で今起こった出来事を処理するまで、少し時間が掛かってしまった。

 全てが追い付き、目に映る光景が実際に起こった出来事だと把握(はあく)すると、そこでようやく驚愕(きょうがく)恐怖(きょうふ)、そして安堵(あんど)が二人に襲い掛かってきた。

 一つ目は、単純に目の前で行われた戦闘の驚き。二つ目は、それを成したのが同期で悪い噂が多く聞かれる(一部は自分が流したが)人物であることの(おそ)れ。そして三つ目が、そんな彼が味方であること。自分達は無事に生き残れたということからであった。

 

「あいつ、あんなに強かったのか……」

「俺達では例え六人で挑んだとしても、きっと他の同期の部隊と同じ結末を迎えていたかもしれない」

「そうだよな……はぁ、柱ってのは遠いなぁ」

「柱になりたいのか?」

「まぁ、そりゃぁな。どうせなら上を目指したいだろ」

「俺はよく分からんが、良いと思うぞ」

「おぅ。ただなぁ」

「あぁ」

「「あいつと同じくらい強くなれるだろうか……」」

 

 そう言葉が重なり、二人して溜め息を吐くのであった。

 その男二人とはまた別の男二人組。彼等は同期である創里が既に柱となっていることに、思うことは多少あれど、鬼殺隊は階級が全てだと理解していたし、それに実力があるならと指揮権を預けることに不満はなかった。

 

拙者(せっしゃ)達が到着する前に終わっていたな」

「そうですね。俺達遅かったですか?」

「いや、伝令を受けてから最短距離で向かっていたし、それ程距離も離れていなかった……む、隠れろ」

「っ!」

 

 堅苦しい話をする隊士が何かに気付き、同僚を押さえて建物の影へと隠れる。その近くを、数名の役人の武士と思われる者達が、提灯(ちょうちん)片手に見回りを行っていた。息を(ひそ)めて通り過ぎるのを待ち、姿が見えなくなった所でホッと息を吐く。

 

「仕事熱心ですね」

「それが役人の仕事だ」

「俺達も刀持っていますから(つか)まりますよね」

「拙者は元武士(ゆえ)、特に問題ないだろうが、貴様は難しいだろうな」

(かば)ってくれないんですか?」

善処(ぜんしょ)する」

 

 幕府(ばくふ)に認知されていない闇の組織である鬼殺隊。幕府に(つか)える隠密、公儀隠密(こうぎおんみつ)と呼ばれることもあるが、その人達にさえ尻尾を(つか)ませないように慎重(しんちょう)に行動する必要がある。

 鬼がどの程度の情報網を持っているかは不明だが、どこから日輪刀(にちりんとう)の素材についてや、産屋敷(うぶやしき)の所在について等の情報が()れるとも限らない。勿論(もちろん)、水面下である程度の擦り合わせが行われている可能性があるが、それはあくまで(ひそ)かに行うことで、将軍家は全く把握すらしていないと思われる。

 鬼の情報は必要だが、それ以上に鬼に知られてはいけない情報の方が比重は大きいのだ。

 

「この周辺は問題なさそうだ。次の場所へ向かうぞ」

「分かりました」

 

 どこまでも冷静な二人は、静かに街の闇の中を歩く。

 二組とは少し離れて、鬼が現れた地点とは反対側で警戒を行っている二人の女隊士。彼女達も先の一組と同様、参戦する所か鬼の姿を見ることすら出来なかった。

 特に同期達で繋がりがあった訳ではなかったが、あの最終選別を共に過ごし、生き残ったという仲間意識はそれなりに強く、彼等が死傷したと聞いた時には動揺(どうよう)した。鬼と戦う立場である以上、いずれ誰かがそうなるという覚悟はしていたつもりだった。しかし、自分達が知る顔がいなくなってしまったと考えただけで恐怖が忍び寄ってくると同時に、それを払い()ける為に(かたき)()つと意気込んでいた。

 普段から気が強く、男相手でも物怖(ものお)じせずに意見を言う一人の女隊士も、今は少し自信をなくしたように(こぼ)す。

 

「私、向いていないのかしら?」

「え? 何が?」

「鬼殺隊」

「え、でも、それは……」

「ごめんなさい。少し後ろ向きだったわね」

「い、いえ」

「ねぇ」

「は、はい」

「あの男、創里って言ったわよね? 同期なのにもう(きのえ)。それ所か柱よ? 私達の中でも一番高くて(つちのと)(上から六番目)よ? 一体、どれだけの鬼を狩ってきたというの?」

 

 曲がったことを余り好まない彼女は、最終選別直後の創里の行動は認められるものではなかったし、当時も抗議(こうぎ)した。しかし、半年以上会わず、連絡もなく、そして日々鬼を狩って生き残ることに必死な生活であったことから、彼女の頭の中からその存在はすっかり忘れ去られていた。それが今、一番上の階級となった上に、その中でも()りすぐりの戦闘集団、柱となって現れたのだ。驚くなという方が無理な話である。

 聞かれた若干(じゃっかん)オドオドとした印象の女隊士も、同じような印象を持っていた。彼女にとっての創里とは、ただの不良。目付きが(するど)くて、言葉遣(ことばづか)いも乱暴で、ただ怖い存在。一緒に行動したくないという思いでしかない。よって最終選別以降出会うこともなく、ホッとしていた一面もあった。

 

「私も、怖そうな人だなって思う。一緒にいたくないし。でも、強かった」

「そうね。最終選別で私達は生き残った。皆で協力して見張りや休憩(きゅうけい)、食べ物の調達など役割分担して、それでも何とか合格出来た。でも、あの人は違う。きっと、単独で行動して生き残った。しかも、怪我所か無駄な汚れすらもなかった」

 

 つまり、必要最低限しか動いていなかった。仮にずっと隠れて過ごしていたとしたら遭遇する確率は減らせるかもしれないが、七日間ずっと隠れっぱなしとはいかない。それに食糧は必要であり、また単独であれば昼間はともかく夜間は常に警戒し続けなければならない。

 闇の中たった一人で、そのような孤独(こどく)を続けることは、とてもではないが耐えられないと二人は考えている。そこでふと気弱な女隊士が呟いた。

 

「一人が好きなのかな?」

「そんな話だったかしら……まぁいっか。あ、次はそこを右へ行くわよ」

「はい」

 

 とんでもない誤解であるが、訂正する人がいない為そのまま話は終わりとなり、二人は探索の任務へ集中する。

 そんな誤解を受けた創里は一人現場に(とど)まって、先程戦った下弦(かげん)()痕跡(こんせき)を集めていた。

 

(着ていた服装からしても、恐らく武士なのだろうな。実力はあるが、如何(いか)せん血鬼術の扱いが未熟だ。これならまだ原作に出て来た下弦の()(るい)か、元(ろく)響凱(きょうがい)の方がちゃんと使いこなしていて強かったと思うが……それともあれはただ単に炭治郎(たんじろう)が未熟だったからそう見えただけか? 現に義勇(ぎゆう)さんによって、累アッサリ死んだしな)

 

 思考の中で敬称を付けていることに気付かずに、考えに(ふけ)っていたら、見回りを終えたのか六人の隊士が戻ってきた。

 

「異常はなさそうだな?」

「おう」

「あぁ」

「えぇ」

「それじゃあ、戻るか。あ、いや、その前に少し確認しておきたい。お前、さっきあの鬼の使っていた技が、えぇと、ほうぞう……何とかって言ってたな?」

宝蔵院流槍術(ほうぞういんりゅうそうじゅつ)か?」

「そう、それだ」

「それが何だ?」

「歩きながら話す。行くぞ」

 

 周囲に何かしらの被害が出ている訳ではなく(地面が多少(えぐ)れているが)、また隊士の一人の鎹鴉(かすがいがらす)を残しているので、隠の到着を待つことなく藤の家紋(かもん)の家へと向けて移動を始める。

 その道中、創里は自身が立てた仮説を口にする。

 あの鬼は、まだなってそんなに日が経っていないこと。宝蔵院流槍術を学んだことがある人物であること。それに関連して武家の者、武士であること。鬼は姿を変えられるので年齢は不明だが、あの口調からそれなりの年だと考えていること等。

 そこまで話した所で、一人の隊士が口を(はさ)む。

 

「拙者、もしかしたらその人物に心当たりがあるかもしれん」

「本当か?」

「断定は出来ないが、何月か前、幕府の転覆(てんぷく)(はか)ったとかで数名の罪人が断罪されたことが江戸で知られている。その中の一人が、確かそのような流派の道場の師範(しはん)をしていたと耳にしたことがある」

 

 元武士の隊士の話を聞いていた一同の中で、「もしかして」という声が出る。創里に対して突っ掛かってくるような言動が目立つが、敵の流派を看破した実績のある生意気隊士だ。

 

其奴(そいつ)の名前、確か丸橋忠弥(まるばしちゅうや)って言わなかったか?」

「そんな名前だったかもしれない」

 

(誰?)

 

 二人の隊士が納得したような表情をしているが、創里含めて五人は置いてけぼりであった。詳しく話を聞くと、今から三ヶ月以上前に起こった事件で、幕府に不満を持っていた一部の武士が軍学者と共謀してクーデターを起こそうというものだったらしい。しかし、クーデター犯の中に密告者がいて、実行に移す前に全員が捕縛または死亡という形になって終わったとのことである。その中の実行犯の一人が、話に出た丸橋忠弥という人物らしいと教えられたが、その人物のことを一切知らない創里達は首を傾げるだけ。

 話をした二人も、そういう話を聞いたとうだけで、直接人間だった頃の彼を見たという訳ではなかった為、結局は、あの鬼の元々の人物かもしれないという曖昧(あいまい)なままで、終わりを迎えた。

 藤の家紋の家に到着すると、創里は同期の隊士達と別れて一人帰路に就く。自身の屋敷まではそれ程離れてはいない。戦闘が早く終わったこともあり、今から帰れば明け方前までには着くだろうと考えている。

 

(ゆきと約束しちまったしな)

 

 出発前に朝には帰ると約束してしまっていたので、あのまま藤の家紋の家に泊まってしまうと時間が中途半端(ちゅうとはんぱ)になってしまう。また、同期とはいえ階級が自分達よりも高い、しかも柱と同じ屋根の下で休めと言われても、中々落ち着いて(くつろ)げないだろうという配慮(はいりょ)も少なからずある。

 

(とりあえず戻ったらどうするかね……)

 

 こういう仕事であるということは常々教えてきたが、いざとなると泣き付かれてしまった。この一ヶ月で随分と(なつ)かれてしまったが、いずれは屋敷を出て行く時が来るかもしれないと思っている。しかし、それは必ずしも親元へ帰すという訳ではない。

 金銭的理由か何かは知らないが、いずれにしても目の見えない一〇歳に満たない娘を売った。そんな所へ戻した所で、また同じような目に()ってしまう可能性は十分ある。

 

(うーん、まぁ、大人になるまでは面倒見るか……)

 

 盲人が生きていくのに、いつの世も優しくはない。環境面だけでなく、差別や偏見といった人との繋がりの中で、嫌な思いは沢山するだろう。だからと言って、いつまでも自身の手元に置いておいて良いということにもならない。

 まだ大人になるまで数年ある。早い所では女は一四で成人と見做(みな)されることがあるが、流石(さすが)に早いだろう。

 

(まぁそこは追々本人と相談かな)

 

 他人の自分が勝手に決めて良いことではない。引き取った以上は中途半端で終わらせず、ちゃんと納得した送り出しをしたいと考え、子を持つ親とは難しいものだなと思う創里であった。




 江戸コソコソ話

 丸橋忠弥は歴史上に実際に登場した人物です。
 本文の中で彼について触れていますが、その扱いは史実とは若干変えてあります。
 史実では町奉行の襲撃を受けた際に死亡し、その後に磔にされたとありますが、本作では無傷で捕縛され、市中引き回しの上に磔にされるも、恨みが強く中々息絶えることがなかったということにしています。
 そこを鬼舞辻に興味を持たれて鬼にされた上に、元々高い武があったことから偶々空席だった下弦の肆の椅子を与えたことになっています。
 血鬼術を身に付けたのは創里達と遭遇する一ヶ月前です。だから創里から未熟と言われてしまうものでした。
 ちなみに、鬼としての名前は天裏(てんり)です。本文に出すことが出来ませんでしたのでここで……
 意味は、(幕府)裏切られた(見捨てられた)者、あるいは(幕府)裏切った(見限った)者という二つがあります。
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