とりあえずほのぼの回を挟んでお茶濁し。ほのぼの好きなのですが、書き始めたら全然筆が進みません。どうにか次回へ繋がることを書けた所で、さてどうしようかと検討中です。
とある日の昼。
季節はすっかり冬となり、屋敷の縁側から見える景色も一面雪で真っ白である。同じ名前のゆきは、見えなくともその寒さと冷たさに興奮し、庭へ飛び出してはしゃいで転んで泣くまでワンセット。そこを創里や使用人が
(笑顔が増えたし、喜ばしいことだな)
鬼は夜に行動する。その為に昼間の
そして不定期に、屋敷のある山とその周辺の集落などを巡回し、鬼の
「うーん、そろそろ休むか」
一通り書類の整理を終え、仮眠を取るべく座敷へ移動して布団を敷く。屋敷の中には
そして、横になって
(ん? 何だ?)
眠っているからといって、完全に無防備になっている訳ではなく、ふとした時にすぐに飛び起きられるようにしている。だが、この目覚めは緊急性のあるものではなさそうだ。
「何か気配を感じた気がしたが……気のせいか?」
上体を起こして周囲を見るも閉じられた
「まさか」
そっと掛け布団を
「はぁ……何でコイツがいるんだよ」
呆れながらも、その表情は柔らかい。
彼女が創里に気付かれることなく座敷に侵入しただけでなく、更に睡眠を
(何か、
ゆきは目が見えない。そして長い間、人と満足な交流をすることが出来なかった所に、創里の乱暴ながらも優しい手を握り、人肌を感じたことに嬉しさと安心感を覚えて以来、屋敷にいる間は彼にくっついて行動することが多かった。
屋敷の他の住人も
だが、最初の頃はおっかなびっくりな部分があったことを考えると、この頃の
(その内、風呂にまで突撃してくるとかないよな?)
一抹の不安を覚えつつ、さてどうするかと今の状況に頭を悩ませる。
(ゆきには悪いが、これは一緒に寝る訳にはいかないよな)
ここですんなり布団を明け渡せれば問題ないのだが、彼女はその小さな手で創里の着物をギュッと握り締めている。これで、無理して
(しょうがねぇな)
左手を伸ばし、ゆきの髪を手で
(最近寒いからな。この時代にちゃんとした暖房器具なんてないから、暖かい所を探していたのかねぇ?)
そんなことを思いながら、のんびりとした昼下がりを過ごすのであった。
ゆきが目覚めたのはそれから
目が覚めた所で、早速どのようにして侵入してきたのかを聞いてみたが、彼女は軽く首を
「何か用でもあったか?」
「え? う、うん、その……何でもない。ただ、つくりがどこにいるか探していただけ」
何か言い掛けたことも気になるが、それよりも創里の脳内は別のことを考えていた。
(察知能力だけでなく、無意識の気配
彼女を正式に
当初は目が見えないことに加え、知らない屋敷ということもあり、一人での移動の際は壁や床を撫でながら慎重に行動していた。そのことを雑談の中で
透き通る世界の訓練。そう彼が呼んでいるそれは、正しい姿勢や呼吸を維持したまま、決まった歩数や歩幅、速さ等、様々なことをパターン化して行動するというもの。それが身に付けられれば、住み慣れた家の中でなら目を閉じても行動出来るようになるということ。それを雑談の中で話したことを正確に覚えていたゆきは、誰よりも信頼している創里が言うならと積極的に訓練に
だが、その成長の裏で、ゆき自身の思いと努力があることを彼は知らない。
(言えなかった……)
創里を探していた理由、それは継子にして欲しいとお願いする為であった。
この屋敷で暮らすようになってもう少しで二ヶ月になる。その間、ゆきは創里だけでなく屋敷に住む人達とも交流を重ね、少しずつであるが他人への恐怖を
鬼は怖い。怖いが、それ以上に大切な人を失うことが怖かった。いつも任務に飛び出しては、必ず朝には帰ってくるという約束を守ってくれて、それ故に安心して過ごすことが出来ているが、いつまでもそれが続くかは分からない。その不安が
だが、継子になる為には、優秀な人材でないといけないとも聞いている。そこで、創里が自分を継子にしたいと思ってもらえるように、日々努力をするようになっていたのであった。
とはいえ、自身の口から申し出るのは恥ずかしかったし、何より怖かった。
(もし、いやって言われたら……)
まだ一緒に住むようになって期間は短いが、それでも創里の業務の忙しさは間近で見続けている。更に、その中でもゆきとの時間も作れるようにしてくれている。その優しさには感謝しているし、それについつい甘えてしまっている。だが、正式に継子となると彼の業務は増える。簡単に甘えられなくなるのは……我慢出来るとして、自分の為に創里が身を割いてくれるというのは、嬉しいと同時に申し訳ない気持ちになってしまい、踏ん切りが付かないまま
この二人、互いに継子にしたい、なりたいと考えているのに、お互いの思いが邪魔をして言い出せないまま擦れ違っていた。だが、目に見えて避けている等の言動がある訳でもなく、日常生活は至って変わらずなこともあって、誰も気付くことはなかった。
「ゆき、少し早いが、そろそろ
「あ、うん」
ゆきは立ち上がり、音も気配もなく座敷を出て行った。
(むしろ、忍者だな……この時代はまだ
創里も布団を片付け、引き戸を開ける。今日は空が雲で
時折冷たい風が自身の肌を撫でるが、呼吸の関係か寒さを感じることなく、涼しいとさえ思える程である。
そんな時、一羽の鎹鴉が彼の下へ舞い降りてきた。
「
相棒の名前を呼ぶと小さく「カー」と鳴いた後、自身の足を
「ん?
足に
(宗教……か。嫌な予感がするな……)
更に読み進めると、その宗教に参加した者の中で何名もの、特に若い女性を中心に
(あまり派手に動いていないし、あくまで人の起こす事件の
そして、その鬼には、心当たりがあり過ぎた。文の最後には、創里に調査を命じるというものであった。長期の調査になるかもしれないから、準備をしておけとも書かれている。
(十中八九
「分かった。俺が調査に入る。それと、この件にはあまり他の一般隊士を関わらせないようにと伝えてくれ。
「カー」
創里の指示に、権三郎は一鳴きして羽ばたいていった。
「さて、準備をするか」
気合いを入れ、まずは飯だと屋敷を進むのであった。
江戸コソコソ話
後書きに書いている江戸コソコソ話ですが、事前に決めている場合もありますが、ほとんどが投稿予約した時に思い付きで書いていますので、ネタ切れする場合が今後あるかもしれません。3話で既にネタ切れしていますがw