鬼滅の刃~蒸の呼吸~【完結】   作:木入香

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 本格的にこのペースでの投稿が厳しくなってきました(筆が進みにくいw)。
 とりあえずほのぼの回を挟んでお茶濁し。ほのぼの好きなのですが、書き始めたら全然筆が進みません。どうにか次回へ繋がることを書けた所で、さてどうしようかと検討中です。


第拾肆話 微睡みの中の二人の想い

 とある日の昼。創里(つくり)の住む屋敷のある山の中がすっかり雪化粧で白く染まる頃。彼は机へと向かい、筆を走らせていた。

 季節はすっかり冬となり、屋敷の縁側から見える景色も一面雪で真っ白である。同じ名前のゆきは、見えなくともその寒さと冷たさに興奮し、庭へ飛び出してはしゃいで転んで泣くまでワンセット。そこを創里や使用人が(なぐさ)めて、一緒に雪だるまを作るなどして遊び、疲れたら寝るという子供らしい生活を送っていた。今は屋敷のどこかで使用人の手伝いをしているのか、少なくともこの場にはいない。

 

(笑顔が増えたし、喜ばしいことだな)

 

 下弦(かげん)()討伐(とうばつ)から一ヶ月弱が経った。正式に鬼殺隊(きさつたい)へ入隊し隊士となった直後から、過密スケジュールにて鬼狩りを行っていたこともあって、夜中にいきなり呼び出されて出撃なんて事態にも迅速に正確に行動することが出来ている。

 鬼は夜に行動する。その為に昼間の鍛錬(たんれん)や書類業務、ゆきの相手の合間に仮眠を取り、夜は常に起きているようにしている。仮に夜寝るとしても、その時間はほんの半刻(約1時間)程度の睡眠で済ませるように意識して生活している。

 そして不定期に、屋敷のある山とその周辺の集落などを巡回し、鬼の痕跡(こんせき)がないかなどの確認を行っている。

 

「うーん、そろそろ休むか」

 

 一通り書類の整理を終え、仮眠を取るべく座敷へ移動して布団を敷く。屋敷の中には(かくし)を含めて数名の使用人が常駐していて家事などを行ってくれているが、流石(さすが)に布団を敷くなどの身の回りのことくらいは自分で行うようにしている。

 そして、横になって四半刻(約30分)程。違和感を覚えて目が覚めた。

 

(ん? 何だ?)

 

 眠っているからといって、完全に無防備になっている訳ではなく、ふとした時にすぐに飛び起きられるようにしている。だが、この目覚めは緊急性のあるものではなさそうだ。

 

「何か気配を感じた気がしたが……気のせいか?」

 

 上体を起こして周囲を見るも閉じられた(ふすま)があるだけで、自分以外に人の姿はない。隠や鎹鴉(かすがいがらす)による伝令でもないとすると、本当に気のせいだったのだろうと思い、再び布団に(もぐ)ろうとした所で気付いた。何かが布団の中にいる。その証拠に創里とは違う小さな山が出来ており、リズム良く小さく上下に動いている。

 

「まさか」

 

 そっと掛け布団を(めく)ると、ゆきが創里に寄り添う形で小さく寝息を立てていた。

 

「はぁ……何でコイツがいるんだよ」

 

 呆れながらも、その表情は柔らかい。

 彼女が創里に気付かれることなく座敷に侵入しただけでなく、更に睡眠を(さまた)げることなく(ふところ)へ入ったことに驚愕するが、それに似たことは日常的に行っているのですっかり慣れてしまった。流石に布団に入られるのは初めてであるが。

 

(何か、(なつ)かれているというか甘えられ方が段々とエスカレートしているような……)

 

 ゆきは目が見えない。そして長い間、人と満足な交流をすることが出来なかった所に、創里の乱暴ながらも優しい手を握り、人肌を感じたことに嬉しさと安心感を覚えて以来、屋敷にいる間は彼にくっついて行動することが多かった。

 屋敷の他の住人も勿論(もちろん)ゆきには優しくしているし、その優しさに嘘がないことも何となく分かっているが、最初に(ぬく)もりを与えてくれた人の所が一番落ち着くのは彼女にとって当然のことであった。

 だが、最初の頃はおっかなびっくりな部分があったことを考えると、この頃の過剰(かじょう)なスキンシップは如何(いかが)なものかと思ってしまう。

 

(その内、風呂にまで突撃してくるとかないよな?)

 

 一抹の不安を覚えつつ、さてどうするかと今の状況に頭を悩ませる。

 

(ゆきには悪いが、これは一緒に寝る訳にはいかないよな)

 

 ここですんなり布団を明け渡せれば問題ないのだが、彼女はその小さな手で創里の着物をギュッと握り締めている。これで、無理して()がそうとしたら起きてしまうかもしれない。

 

(しょうがねぇな)

 

 左手を伸ばし、ゆきの髪を手で()く。サラサラとした柔らかい手触りに、つい夢中になってしまう。時折、頭を撫でられていることが気持ち良いのか、軽く身動(みじろ)ぎをするもその顔はどこか満足そうである。

 

(最近寒いからな。この時代にちゃんとした暖房器具なんてないから、暖かい所を探していたのかねぇ?)

 

 そんなことを思いながら、のんびりとした昼下がりを過ごすのであった。

 ゆきが目覚めたのはそれから一刻(約2時間)後。目覚めた時はぼんやりとしていたが、次第に自分がどこで寝ていたのか思い出してきたのか、すぐ横にいた創里に笑顔で抱き付いた。

 目が覚めた所で、早速どのようにして侵入してきたのかを聞いてみたが、彼女は軽く首を(かし)げる程度で、普通に入っただけと言った。

 

「何か用でもあったか?」

「え? う、うん、その……何でもない。ただ、つくりがどこにいるか探していただけ」

 

 何か言い掛けたことも気になるが、それよりも創里の脳内は別のことを考えていた。

 

(察知能力だけでなく、無意識の気配遮断(しゃだん)? 見えてないのに見えているかのように動き回れるし、やっぱ才能あるよな?)

 

 彼女を正式に継子(つぐこ)にしたいと最近考え始めている。創里が柱に就任して屋敷を与えられ、一緒に移り住むようになって数日経った頃には既に屋敷の大まかな間取りを把握し、家主よりも屋敷のことに詳しくなっていたのだ。

 当初は目が見えないことに加え、知らない屋敷ということもあり、一人での移動の際は壁や床を撫でながら慎重に行動していた。そのことを雑談の中で(こぼ)すと、創里は、もしかしたら役に立つかもしれないと、自身の普段の行動を教えたのだ。

 透き通る世界の訓練。そう彼が呼んでいるそれは、正しい姿勢や呼吸を維持したまま、決まった歩数や歩幅、速さ等、様々なことをパターン化して行動するというもの。それが身に付けられれば、住み慣れた家の中でなら目を閉じても行動出来るようになるということ。それを雑談の中で話したことを正確に覚えていたゆきは、誰よりも信頼している創里が言うならと積極的に訓練に(はげ)み、メキメキと成長してしまったのだ。

 だが、その成長の裏で、ゆき自身の思いと努力があることを彼は知らない。

 

(言えなかった……)

 

 創里を探していた理由、それは継子にして欲しいとお願いする為であった。

 この屋敷で暮らすようになってもう少しで二ヶ月になる。その間、ゆきは創里だけでなく屋敷に住む人達とも交流を重ね、少しずつであるが他人への恐怖を払拭(ふっしょく)出来るようになってきていた。話題となるのは当然屋敷の主人である創里の話が多く、その仕事や立場等々、様々なことを聞いていた。そして、その話の中で柱やそれを引退した人には、継子と呼ばれる次世代の育成を行う権利があることを知った。

 鬼は怖い。怖いが、それ以上に大切な人を失うことが怖かった。いつも任務に飛び出しては、必ず朝には帰ってくるという約束を守ってくれて、それ故に安心して過ごすことが出来ているが、いつまでもそれが続くかは分からない。その不安が日毎(ひごと)に高まる中で、その継子という話を知り、自分が強くなれば守ってあげられる。と、子供らしくもしっかりとした考えを持つようになった。

 だが、継子になる為には、優秀な人材でないといけないとも聞いている。そこで、創里が自分を継子にしたいと思ってもらえるように、日々努力をするようになっていたのであった。

 とはいえ、自身の口から申し出るのは恥ずかしかったし、何より怖かった。

 

(もし、いやって言われたら……)

 

 まだ一緒に住むようになって期間は短いが、それでも創里の業務の忙しさは間近で見続けている。更に、その中でもゆきとの時間も作れるようにしてくれている。その優しさには感謝しているし、それについつい甘えてしまっている。だが、正式に継子となると彼の業務は増える。簡単に甘えられなくなるのは……我慢出来るとして、自分の為に創里が身を割いてくれるというのは、嬉しいと同時に申し訳ない気持ちになってしまい、踏ん切りが付かないまま悶々(もんもん)としていたのである。

 この二人、互いに継子にしたい、なりたいと考えているのに、お互いの思いが邪魔をして言い出せないまま擦れ違っていた。だが、目に見えて避けている等の言動がある訳でもなく、日常生活は至って変わらずなこともあって、誰も気付くことはなかった。

 

「ゆき、少し早いが、そろそろ夕餉(ゆうげ)の支度をお願いして良いか?」

「あ、うん」

 

 ゆきは立ち上がり、音も気配もなく座敷を出て行った。

 

(むしろ、忍者だな……この時代はまだ隠密(おんみつ)って言うんだっけか)

 

 創里も布団を片付け、引き戸を開ける。今日は空が雲で(おお)われ、雪がチラチラと舞っている。前世では見ることのなかった景色に、何度見ても感動を覚える。ただ、庭の所々に人の形をした穴が出来ているのは、サイズから見てもきっとゆきの仕業なのだろうなと、自然と笑みが零れてしまう。

 時折冷たい風が自身の肌を撫でるが、呼吸の関係か寒さを感じることなく、涼しいとさえ思える程である。

 そんな時、一羽の鎹鴉が彼の下へ舞い降りてきた。

 

権三郎(ごんざぶろう)? どうした?」

 

 相棒の名前を呼ぶと小さく「カー」と鳴いた後、自身の足を(くちばし)で指した。

 

「ん? (ふみ)(手紙)か?」

 

 足に(くく)り付けられていた紙を外して広げる。その内容は、最近、奇妙な宗教が流行(はや)っている。神教なのか仏教なのかも分からず、また規模も一つ一つは小さく、その出没地点が(まさ)しく神出鬼没(しんしゅつきぼつ)である為、幕府(ばくふ)も調査に踏み切れないでいるとのこと。

 

(宗教……か。嫌な予感がするな……)

 

 更に読み進めると、その宗教に参加した者の中で何名もの、特に若い女性を中心に失踪(しっそう)しているとあり、幕府は彼女達の足取りを追うよう各大名に命じるも、結果は(かんば)しくない模様である。

 

(あまり派手に動いていないし、あくまで人の起こす事件の範疇(はんちゅう)だ。だけど、これをわざわざ俺に(しら)せてきたということは、お館様は鬼の仕業だと(にら)んでいるということか)

 

 そして、その鬼には、心当たりがあり過ぎた。文の最後には、創里に調査を命じるというものであった。長期の調査になるかもしれないから、準備をしておけとも書かれている。

 

(十中八九アイツ(・・・)だろうな。アイツの為に、鬼舞辻(きぶつじ)との戦いでは炎の呼吸の捌ノ型(はちのかた)を封印していたんだ。これで奴を潰す)

 

「分かった。俺が調査に入る。それと、この件にはあまり他の一般隊士を関わらせないようにと伝えてくれ。十二鬼月(じゅうにきづき)の可能性もある」

「カー」

 

 創里の指示に、権三郎は一鳴きして羽ばたいていった。

 

「さて、準備をするか」

 

 気合いを入れ、まずは飯だと屋敷を進むのであった。




 江戸コソコソ話

 後書きに書いている江戸コソコソ話ですが、事前に決めている場合もありますが、ほとんどが投稿予約した時に思い付きで書いていますので、ネタ切れする場合が今後あるかもしれません。3話で既にネタ切れしていますがw
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