原作よりも260年前の話ということを念頭にお読み下さい。
謎の宗教団体の調査の命令を受けて行動を開始して一〇日程、早くも
鬼そのものの動きは
「この地点は白。こことここも白だな」
手に持つのは簡易地図。まだ
とはいえ、前世の知識のある創里ならばこの簡易地図からでも十分に日本列島の形を想像出来るので、あまり不便はなかった。
「
遊郭からもたらされる情報は大したことのないものが多い。だが、裏の人間世界に精通した商売だ。よって、不自然な人の流れには
変な客がいた。金払いの良い武家の人が来た。足抜けがあった。新しい遊女が入った。
重要度で言えば様々で、事件化したものも
そういった情報を、創里は
一般市民の協力者に関しては、普通の町人ではなく、少しだけアウトローな存在、ヤクザとまでは行かないが、それなりのワルに依頼をすることで、お金
「ここか」
そして見つけた。地図のある一点を、指で
遊郭から得られるのは街、もしくはその周辺の情報だ。当たり前だが、金持ちが利用する施設だけに、そういった身分の人は街にいることが多い。
確かに一つの遊郭だけならば得られる情報はその程度だが、遊郭同士で競わせる為か、遠方から来た客のもてなしも
人の住む集落におおよその目星を付け、主要都市、表街道、更に別の鬼に
「
(冬場に
心の中でぼやきながら移動を開始する。というよりも、
その時、創里の鎹鴉である
「どうした?」
「
「っ! 位置は!」
「アッチダ! アッチダ!」
―― 全集中
すぐさま呼吸を使って身体強化を
雪の中、それも
(っ! あれは、寺か!)
「遅かったか!」
「あれ? お前も
お堂の中は
床には三名の人間だったと思われる
(鴉が来た時間から考えると早過ぎる。少人数でしかも階級が低かったのだろうが……コイツは、やはり上弦か!)
「てめぇが上弦の鬼か?」
「あ、知ってるんだ? あぁ、そうだよ。俺の名前は“
「よろしくすると思っているのか?」
「してくれないんだ? まぁ良いけど」
のれんに腕押しとはこのことか。会話は出来るのにどうにも掴み所がない。何より、目の前にいる見た目若いイケメンの男は、表情こそコロコロ変わるのに、まるで言葉の
目の前に立つこの男。
「気持ち
「あはは、
感情の動かない相手に
(ちっ、『キングダムハーツⅡ』のノーバディの方が、もうちょっと感情の
「やることは変わらない。お前を斬る!」
―― 蒸の呼吸
―― 炎の呼吸
右目付近に色濃く
「速いねぇ!」
しかしそれは両手に持った
「すごい力だね!」
――
―― 血鬼術
しかし鬼の力も凄まじく、その腕からは考えられないような怪力を見せて創里を
蓮の花の形をした氷が複数生み出され、それが一斉に蔓を伸ばして次々と創里へ襲い掛かってきた。お堂の中を走り回りながら、回避しつつ、隊士の遺品である日輪刀を回収する。回収した三本の刀の内、二本が折られ、もう一本もボロボロである。しかし、折られた刀身も器用に拾い上げていた創里は、適当な布で巻き付けて
「? 変なことするね。遺品回収かい? それとも武器にするのかな? どちらにしてもそんなことしても意味はないよ?」
開けられた戸や
ジュッ……
「あれ?」
しかし、それは予想外の出来事であった。目の前の隊士の肌に触れたはず冷気が、全く効いていない。
「変だな? 外したのかな?」
だが、ただ
―― 血鬼術
術発動と同時に、童磨の周囲には赤い霧が発生する。赤いのはあれが童磨の凍らせた血であり、それを微細な霧状にしたものである。それを二枚の扇を振ることで広範囲へ散布される。
吸い込むと肺が破壊されてしまう、呼吸を扱う鬼殺隊の隊士にとっては驚異的な術が発動される。そしてそれは、
(肺での呼吸を停止。これから呼吸の
―― 蒸の呼吸
体温を上昇させても、気温が低いおかげで継戦能力を維持出来ると踏んだ創里は、ギアを更に一つ上げて体表に貼り付こうとする冷気を
―― 炎の呼吸
刀を横へ
「何だいそれ? すごいなぁ、俺の攻撃が全然効いていないみたいだ」
「……」
互いに互いの姿は視認出来ないが、どちらも動揺することはない。最も童磨がその程度で感情が揺らぐことなどあり得ないのだが。
―― 炎の呼吸
地面を
「うわっ」
霧の向こうから驚いたようにみえるだけの声が聞こえる。そこへ向けて、
(回転数四〇〇〇)
―― 炎の呼吸 壱ノ型・改 不知火・
「おっとー! すごいすごい。斬られちゃった!」
「ちっ、浅いか」
(やっぱ上弦は化け物だな)
そう再認識した。
「変だな? 普通はすぐに再生するんだけど。もしかしてお前何かやったかな?」
「知りたければ
「それは遠慮しておくよ」
―― 血鬼術
扇に冷気をまとわせて攻撃してくる。右腕はまだ再生が追い付かず本調子とまではいかず、左腕のみでの攻撃だ。
それを創里は刀で受け止め、
周囲の空気に含まれる水分まで凍結させるが如く冷える扇と、全てを燃やし尽くすのではないかと思われる程の熱を帯びた刀。その二つがぶつかることで、接触面からジューという激しく蒸発する音が発生する。
(こっちは両手、向こうは片手だってのに、ほぼ互角かよ! 何つうパワーだ。コイツでこれだということは、
創里は諦めず、半歩踏み込むことで相手を押し込む。
「すごいなお前。お前柱だろ? 今までこんな強い柱と戦ったことなかったよ」
「そりゃどうも!」
(五〇〇〇回転!)
そこから左足を出して勢い良く相手の腹を蹴る。童磨は数歩後退したのに比べ、蹴った本人である創里は大きく飛ばされた。距離が出来たことで、互いにまた霧によって姿が隠された状態となった。
「フシュゥゥゥゥゥゥ」
(体温は四六度くらいか。一度回転数を二〇〇〇まで落として体温も四五にする)
上がりすぎた体温を調整すべく、口から蒸気を吐き出す。
「おっかしいな。そろそろ息が出来なくなるはずなんだけど、お前、全然変わらないね」
まだ肺や内臓を認識していないのか、ハッキリと肺と口にしなかったが、その赤い霧が呼吸を封じる役目を持つことは知っていたようだ。
「俺には効かねぇよ」
「それは厄介だね」
「っ! 逃がすか!」
相手がお堂の外へ駆け出すのが分かり、すぐに追い掛ける。
―― 蒸の呼吸
見えなくとも位置は分かる。
それは不知火・電光石火にも匹敵する速度で接近しての水平斬り。確実に頸を狙って放たれた。瞬間、逃げようとする童磨と目が合った。相手は
「追い付かれるとは思わなかったよ」
「テメェは逃がさねぇよ」
「んーでも、このままだと不利だからね。だから頑張って逃げるよ」
―― 血鬼術
その術を見て、創里は改めて気を引き締める。
第二ラウンド開始である。
江戸コソコソ話
炎の呼吸 参ノ型・改 野火・怪火
野火の本来の意味は、野原の枯れ草を焼く火のこと。野原で草木などが燃える火事ですが、ここに怪火が付くことで日本の妖怪となります。
土佐国(現・高知県)の長岡郡に伝わる妖怪で、山中や人里を問わず出現するそうです。
簡単に言うと、花火のような火の玉の妖怪ですね。多い時は数百も出るそうです。