鬼滅の刃~蒸の呼吸~【完結】   作:木入香

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 いつも通りの独自設定、独自解釈、ご都合主義です。
 それと、モチベが上がらなくなってきました。
 黒死牟どうしようかな……元々の構想としては倒すまではいかないですが、弱体化に成功するというものになっています……うーん、カットかな?


第弐拾話 上弦の弐

 冬のある日の夜。森の中。

 現在創里(つくり)は、とある鬼が付近を通過するのを待ち構えていた。

 

(多分、今夜辺り現れるはずだが)

 

 切っ掛けは、村から男衆が消えたと記述された書類だった。

 そんな報告が目に留まり、詳しい資料を本部の産屋敷(うぶやしき)から取り寄せて、更に精査する。鬼は全国におり、それぞれ縄張りがあってあまり行動範囲は広くない。一部例外がいるが、そういう(やから)に限って強い鬼だったりする。その強い鬼を求めて調査をしていくと、そのポイントを発見。そして移動していることに気付いた。

 あの鬼は、とある特殊な指令を鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)から受けて行動している。上弦(じょうげん)の鬼なだけあって、その強さに加えて足取りを掴ませないことにも()けているが、鬼である以上は避けて通れないものがある。

 人食いである。

 鬼は人を食えば食う程に強くなる。そして特に若い女は栄養価が高くてより好まれるが、探している鬼は女を食わない。となると、より多くの人間の男を食う必要があり、時には村壊滅ということも出てくる。

 下級の鬼であれば、食事量はそこまでなので逆に痕跡を追うことは難しいが、上弦という立場かつ更なる強さの向上を目指すならば、人食いは必須である。

 この時代の大雑把(おおざっぱ)過ぎる地図に、ぼんやりと記憶にある日本列島の地図を照らし合わせて、行動パターンを見つけていく。早く伊能忠敬(いのうただたか)よ登場してくれと思いつつ、童磨(どうま)探しと同じように机上での捜索。そして、ポイントが絞られたら実際に現地へ(おもむ)くというものだ。

 鬼の行動そのものを追うことは出来なくとも、人間が消える等の事象があれば、必ず何らかの形で記録に残る。幕府や大名、奉行といった上に立つ者からすれば、税を取り立てるのに個人個人の動向を把握しておく必要があるからだ。その為に藩と藩の間に関所を設け、不用意な行き来がないよう監視を強めている。そういった情報も得つつ、不自然な失踪(しっそう)を念入りに洗い出した結果が、今、創里がいる場所であるということだ。

 

(書類業務をサボるから上弦と会えないんじゃねぇかな。あの脳筋共)

 

 脳内にて同僚で先輩の柱達をディスりながら、その時を今か今かと待ち受ける。

 すると、何か周囲の空気の流れが変わった気がした。

 

「来たか……(おせ)えじゃねぇの? 一体どんだけ待たせるんだか」

「お前は……あのお方から報告があった、鬼殺(きさつ)の剣士か」

「何て言われているのか何となく想像出来るな」

 

 クククと、思わず悪い笑みが(こぼ)れる。

 

「童磨を倒したのもお前だな?」

「そうだ」

「アイツは気に入らない奴だったが、強さは本物だった」

「そうかもな。まぁ無傷で倒せたから知らんが」

「……あのお方から、巨大な刀を持つ白黒頭の剣士との戦闘は、極力避けろとお達しが出ている」

「ほぅ、つまりお前じゃ俺に勝てないと、言外に言われたってことか」

 

 夜の森という一切の光のない場所の為、相手の顔を認めることは出来ないが、透き通る世界を通して見る相手の身体の様子を(うかが)い知ることが出来る。筋肉、血流、体温、鼓動、力の入れ具合。そういった身体の微妙な機微を鋭敏に察知し、相手が怒りのボルテージを上げていることを確信する。

 

「……俺としては、お前の武は非常に興味がある。だが、今はその時ではない」

「ってことは、尻尾巻いて逃げるか? 最強の鬼がただの人間様を前にして、何もせずに逃げると? せっかく日の出になっても日差しがほとんど入らないよう森の中で待っていたってのに、そりゃねぇんじゃねぇのか?」

「……許可はされていない」

 

 この時、月明かりが微かに差し込み、相手の顔をぼんやりと照らす。

 

「残念だがここは通行止めだ。この先に行くには通行手形がいるんだよ」

「……」

 

 平静を保とうと努力しているのが沈黙から読み取ることが出来る。

 ピンク色のベリーショートヘアに、真っ白の顔に幾本もの縦線が走り、右目には上弦、左目に()と刻まれたその鬼、猗窩座(あかざ)は表情筋が透き通る世界を通さずとも分かるくらいにピクピクと動いていた。

 

(コイツが()ということは、本来なら後の時代に入れ替わりの血戦で童磨に負けて、(さん)に降格するってことか? まぁ何でも良いや。倒せば何も問題ない)

 

 思考は冷静だが、口から出る言葉は相手をトコトン傷付ける。舌戦で創里に勝とう等、そう簡単に出来るものではない。

 

臆病(おくびょう)卑怯(ひきょう)で小心者の上司の部下は、やはり強い相手がいたら迷わず逃げるような、小さい奴だったってことだ。こんな程度の存在に、何百年もビクビクと生活しているとか人間も人間だな。まぁ分からんものに恐怖するのは分かるが、俺からしたら調理場に出没する油虫(ゴキブリ)に怯えているのと変わらん」

「お前!」

「お? ちょっとやる気になるの遅くないか? こっちは最初からやる気だったってのに」

「ちっ……」

 

 ハッキリとした舌打ちが聞こえた。明らかにイライラしているのが手に取るように分かる。もう一押しだろうか。

 

「全く、あんな矮小(わいしょう)な存在に付き従うお前等も大変だな」

「黙れ! あのお方を侮辱(ぶじょく)するな!」

 

 ―― 血鬼術(けっきじゅつ) 術式展開(じゅつしきてんかい) 破壊殺(はかいさつ)羅針(らしん)

 

 徒手(としゅ)の構えを取る猗窩座の足下に、雪の結晶のような陣が浮かび上がる。

 

(闘気を感知し、動きを読み取る術だったか。透き通る世界に入っている俺の気の流れを、果たしてお前は掴むことが出来るかな?)

 

 ―― 全集中 ()の呼吸 二速(にそく)

 

Service(サービス)だ。最初はEasyMode(手加減)してやるよ」

「何だその言葉は?」

「気にするな。ただの悪口だ」

「なっ!」

 

 ―― 炎の呼吸 参ノ型(さんのかた)・改 野火(のび)怪火(かいか)

 

 相手の一瞬の動揺を誘った隙に技を繰り出す。

 炎のような闘気を複数一直線に飛ばす技。創里自身は闘気を発していないが、一部の技は闘気がまとうものもある。

 

(どう対処する?)

 

「ハッ!」

 

 ―― 破壊殺・乱式(らんしき)

 

 拳による連打で相殺(そうさい)されてしまった。

 だが、創里はのほほんとした様子で、ゆったりと次の構えを取る。

 

「なるほどなぁ、だったら接近戦でやり合おうじゃねぇの」

 

 ―― 炎の呼吸 壱ノ型(いちのかた)・改 不知火(しらぬい)電光石火(でんこうせっか)

 

「速い!」

 

 相手の知覚をも超える速度で接近し、袈裟斬(けさぎ)りをお見舞いする。しかし、長年武闘の修行を積んできている猗窩座は、経験則で咄嗟(とっさ)に後ろへ下がることでギリギリ躱す。しかし、それでも完全に避けきれなかったのか、上半身に斜めの傷が走り、血が噴き出す。だが、その傷もすぐに治る。

 

(能力だけに頼らないのは良いな。手強(てごわ)いが、まだこちらは何もしていない。相手にはどれだけ手札が用意されているかな?)

 

「コイツの技の動きとか何も感じられない。おまけに恐ろしく速い。まるで……」

「何だよ?」

「いや、何でもない」

「あっそ」

 

(大方、黒死牟(こくしぼう)のようだと言いたかったのだろうな。こっちが知っているという情報を、わざわざ与える必要もないから知らん振りしたけど)

 

 童磨との戦いでもそうであったが、相手のことを知っていると相手に伝えることは、かなり大きな情報となる。それで相手が手の内を全て知られているという恐怖で縮こまれば良いが、感情の動かない相手にはタダで、自分の戦い方が知られているという情報を与えるだけになってしまう。知られているなら、それなりの戦いへと切り替えれば良い。あの時、童磨は引き際を誤ったが、もっと早く身を引くことが利点と算出出来ていたら、もしかしたら逃げられていたかもしれない。

 一方で、無惨相手には知っている前提で話をしていた。これは、相手が自身のことを知られることを恐怖しているからだ。情報を封じる為に知っている人間を殺す。短絡的だが有効的な手段だ。知っているという情報を使って相手を挑発し、ゆきを意識から外させ、創里に集中させる意図があった。

 あの時に倒せていたら原作は始まることなく、今後巻き起こる悲しみの連鎖を断ち切ることが出来たかもしれないが、逃げに徹する無惨を追うことは中々に難しい。

 今回、猗窩座に「お前を知っている」と言わないのは、あの血鬼術があるからだ。武闘の達()でもあるから、それに頼り切りということもないが、やはりそれに頼っている部分は大きい。それが完全に効果がないと分かった時、どのような行動を取られるか分からないので、口に出すことをしなかった。

 勿論(もちろん)、知られるのは時間の問題だとしても、今渡して良い情報ではないことは確かである。

 下手に情報を渡さないのが目的であれば沈黙を保っていれば良いはずである。沈黙は金、雄弁は銀とも言うし、口は災いの元ともある。現在進行形で災いとなって怒りの暴風が襲い掛かってきているが、創里にしてみればそよ風同然である。ならば何故無駄に喋るのかと言えば、無惨相手にもしたように集中させない為である。余計な情報が引っ切りなしに入ってくる状態では、感情のないロボットでもない限り、何らかの言葉が癇に障ることがある。そうして、髪の毛一本程度でも集中力が乱れれば、その小さな隙間を突いて、攻撃等の手段を執ることが出来るということだ。

 また、相手に聞かれて困るような情報は与えていないはずである。鬼舞辻が猗窩座の目を通してこちらを見ている可能性がある以上、挑発に青い彼岸花(・・・・・)を口にするのを避けた。猗窩座が無惨の命令を受けて、ソレを探していることを知っているとわざわざ相手に伝えることは悪手である。

 

(本当は、一人での初めてのお使い偉いね。とか、花を鬼舞辻の目の前で握り潰すとかって挑発したかったんだけどな……)

 

 作戦云々以前に、鬼に対してクズというか容赦がないだけかもしれない。鬼が相手だから問題ないが。

 

「じゃあ、そろそろGear(ギア)を上げるか」

 

 ―― 三速(さんそく)

 

「っ! 更に速く!」

 

 そして(つか)を強く握り、赫刀(かくとう)も発動させる。

 

 ―― 炎の呼吸 肆ノ型(しのかた) 盛炎(せいえん)のうねり

 

 素早く接近してからの前方広範囲へ向けて薙ぎ払う。普通と違う日輪刀(バスターソード)のおかげでその範囲は更に広く、また防ごうにも勢いと重さ、そして赫刀が合わさることで相手の防御すら打ち砕く。またも血鬼術で(とら)えられない創里の動きに、しかし今度はしっかりとタイミングを見て後ろへ下がる。

 ()けきれず、()けきれず。

 しかし、猗窩座の腕に切り傷が走り、その周囲が焼け(ただ)れたかのようになっている。

 創里もこの技で相手の腕を切断するつもりでいた為、内心舌打ちをする。

 

「何だこの熱は! そしてその刀の色は!」

「教えるかバーカ」

 

 そしてちょっとした隙間でも、相手を侮辱することを忘れない。

 童磨は揺れない感情で、物事を常に冷静に見ることが出来、一方で猗窩座も有利不利の判断と、そこからの素早い行動が出来る。相手にまともな思考をさせるのを邪魔するべく、挑発を重ね……

 

 ―― 炎の呼吸 伍ノ型(ごのかた) 炎虎(えんこ)

 ―― 炎の呼吸 弐ノ型(にのかた) (のぼ)炎天(えんてん)

 

 立て続けに技を繰り出すことで、冷静に戻る時間を与えないようにして相手を釘付けにする。

 

 ―― 破壊殺・空式(くうしき)

 

 それに対して猗窩座は、拳圧の連打によって衝撃波を発生させて技の勢いを落とさせ、回避し距離を作る。

 本来なら距離のある相手へ向けて放つ中距離技であるが、触れてしまうと鬼の頑丈さ関係なく斬られてしまうということで、腕の痛みを押さえ込みながら必死で迎撃する。

 

(良し、斬ろう)

 

 元々あまり時間を掛けずに勝つつもりでいたが、(くび)を斬ろうとするとどうしても見えなくとも軌道が読めてしまう。そして、その隙を突いてカウンターを食らう恐れがあった為に踏み切れなかったが、相手が対処の手段を見つけようとしている。完成しても負けることはなかったが、万が一に逃げられるのは避けたい。よって、一瞬で勝負を決める。

 そこで一気に心臓の鼓動を強めるが、急激にアクセルを踏んで回転数を引き上げた負担で胸に強い痛みが生じる。

 

「ぐっ!」

 

 痛みとは警告だ。身体がこれ以上は壊れると警告をして、リミッターを掛けようとしている。だが、それを無視して更に先の領域へ足を踏み入れた時、その身体能力は鬼を(はる)かに凌駕(りょうが)する。

 

 ―― 四速(よんそく)

 ―― 蒸の呼吸 壱式(いちのしき) 雲蒸竜変(うんじょうりょうへん)

 

 『スマブラ』でアイクが使うような居合いで、先程の衝撃波によって開いた距離を一瞬所か(またた)きする間もなく詰められ、猗窩座からすれば気付けば斬られていた。しかしそれでも、かろうじて生きていた。

 特に何か予感があったとか勘が働いたとかでも何でもない。そもそも四速を発動してからの一連の動作を、彼は知覚することすら出来ていなかったのだ。偶々(たまたま)。そう、ほんの偶然、更に距離を開けようと後ろへ跳んだ。そのタイミングと創里の技の出が重なっただけ。それ故に生き延びた。生き延びてしまった。

 

「がっ!」

 

 意味も分からず地面に転がされる猗窩座。同時に襲い来る痛みと熱さの元へ目を向けると、両脚の(ひざ)から下が消滅していた。

 確かに斬られたが、雲蒸竜変に付随(ふずい)する膨大な熱量によって、斬られた部分を中心に吹き飛んだのだ。その衝撃まで赫刀の効果範囲なのか、失われた部分の再生が行われる様子はない。

 何とか逃げねばと、どうにか残っている両腕を使って後ずさりする。その表情は先程までの怒りは微塵(みじん)も残っておらず、ただただ未知への恐怖のみで染まっていた。

 

「お前は……一体!」

「答える必要はない」

「なっ」

 

 またである。

 正面にいたはずの声が後ろから聞こえた。そして気付けば自身の視界はグルグルと回転する。後頭部が地面とぶつかって、離れた場所に自身の身体があるのを目視し、そこで初めて頸が斬られたことを知った。

 これまでも強い相手とは戦ってきた。そしてその(ことごと)くを打ち砕いてきた。そして気付けば十二鬼月(じゅうにきづき)の次席となっていた。だが、そんな彼でも敵わないと思った相手がいた。上弦の壱、黒死牟だ。その鬼の経歴を猗窩座は知らないが、とてつもなく強い剣士で、自身が何度挑戦しても全く(もっ)て歯が立たなかった。

 もしかしたら、自身の頸を斬った剣士ならば、奴に届くかもしれないと戦っている最中は思ったが、敗北した今となるとそのもしかしたらは、勝つかも知れないに変わっていた。

 

「鬼にならなくても強くなれるのか……」

「むしろ鬼になったら弱くなるんだよ」

「分からぬ。分からぬが、そうなのかもしれないな……」

 

 その瞳に映る光景は何だろうか。創里は、猗窩座が最期、遠くの何かを懐かしむような(いと)おしむような表情をしていたことに気付いた。だが、そのことを問うことなく灰のように崩れ、(ちり)となって消えていく鬼を見届けた。

 

「身体だけ強くなってもな。心がなっちゃいないから弱いまんまなんだよ。鬼ってのは」

 

 虚空(こくう)を見つめ「フシュゥゥゥゥゥゥ」と自身の体内に籠もる熱を、大量の蒸気と一緒に一気に吐き出す。そして巨大な日輪刀を(かつ)いでゆっくりと帰宅の為に歩き始める。

 それからしばらくして、産屋敷(うぶやしき)に上弦の弐が討伐(とうばつ)されたという(しら)せが届けられたのであった。




 江戸コソコソ話

 主人公の蒸の呼吸はスロースターターですので、最大火力、速力まで持って行くまで時間が掛かります。MT車で、いきなり二速はあっても、四速や五速に入れる人はいないですよね? 彼の場合はそれと同じで一速から段階を踏んで強化していかないと、心臓破裂の恐れがありますのでこういう結果となります。ピークまで達しなくても十分強いですけどね。
 猗窩座は他にも使える技はあったのですが、ほとんど何もさせてもらえず退場という形になりました。
 MT車乗りがグッと減り、そもそもMT車が絶滅危惧種になり、(個人的に)保護対象になりそうです。あのクラッチを踏んで、ギアを合わせて、丁度ピッタリとハマってスムーズに加速した時はとても気持ち良いものです。
 以下駄文が続いたのでカット。
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