そして、いつもいつも誤字脱字報告本当に感謝です。前にも言い訳しましたが、あぁいった事情で満足に添削出来ていない状態で投稿していますので、申し訳ないです。
ゆきが最終選別を突破してから五日後。相棒の
「西ヘ向カエ! 西ヘ向カエ!」
昼前に告げられた指示に従って、ゆきは行動を起こす。
本来なら方角だけを言われても、盲目であるゆきはどちらへ行けば良いか分からないはずである。しかし、彼女は特に問題なく西へと足を向ける。
屋敷での遊びの中で
これは
創里が
それはともかく、西瓜の代わりに石を用いたのには他にも理由がある。そもそも食べ物で遊ばない。これが原則である。食が
そして、もう一つの理由としては、石である以上生半可な力では割ることは出来ない。しかし、屋敷の子供達三人共、練度に違いはあるものの呼吸を
後は西瓜割りのルールと同じだ。目隠しをしてグルグルと回し、石のある場所まで行って割る。ただ、周囲からの声掛けはない。事前に場所を把握しているので、後は自身の記憶と
方角、方向の特定とはまた違うが、そういった位置を間違えないという点で、ゆきは問題なく指定された場所へ移動することが出来ていた。最終選別でもそうだが、彼女の行動は普通に目が見えている人以上に動いている為、産屋敷家の関係者以外、あの試験を共に突破した者達は、彼女が盲目であることを知らないでいる。
そんなゆきにも弱点はある。当たり前だが、目が見えない以上文字の読み書きは出来ない。
一応、目以外の残された四つの感覚が鋭いゆきは、紙に書かれた
「ココダ! ココダ!」
案内された場所は、何かの建物の前らしい。
「ここは?」
「ココデ休憩! ココデ休憩! 鬼殺隊ノ協力者!」
「藤の家紋の家?」
「ソウダ! ソウダ!」
藤の家紋の家は、創里からも聞かされている。鬼殺隊に助けられた先祖を持つ一般人が、宿や療養所として無償で助けてくれる家。
早速中へ入り、家主の案内で部屋まで通される。家の中は家主の老婆と自分だけで、他に人はいないようだ。
鬼が出没したと情報があった場所に最も近いのがこの家。ここで夜まで待機し、日が沈んだら行動開始である。鬼殺隊である以上、本来なら隊を組んで行動すると聞いていたのだが、どうやら単独での行動らしい。ちなみに、創里の同行は認められなかった。というよりも、ゆきに出動命令が下るよりも先に、緊急の伝令が届き、急ぎ出発しなければならない用事によって屋敷を
「とりあえず休もう」
特に疲労はないが、かといって夜まですることはない。情報収集で街へ出ることも考えたが、今から街へ出ても中途半端な時間帯であり、また自身で
それから数刻、日の入りを感じ取ったゆきは
この藤の家紋の家は街の外れにあり、しばらく歩くと街に到着する。鬼の発見現場は、この街から少し離れた街道とのこと。人通りの一切がなくなった通りを、下駄を鳴らすことなく静かに、そして素早く移動する。
「ココダ! ココデ、鬼ガ発見サレタ!」
そう言われて周囲を見渡すような動作をするも、特に変わった感じはしない。
「ここ?」
相変わらず空を飛ばず頭の上に乗ったままの芍雀に聞くが、返答は変わらない。
「分かった」
周辺に人の気配はない。動物も感じられない。変な匂いもない。
「フュォォォォォォォ」
――
周囲に木はない為、一〇〇本の
「?」
気になる反応が数点あるが、距離があるからか詳細は不明。そこで今度は、自ら弦を
その音は、周囲の闇に溶け込み、消え……一つ
「見つけた」
日輪刀を
彼女の素早い行動が功を奏したのか、まだ被害は確認されていない。どうやら獲物を物色しているようで、こちらには気付いていない様子。
(感じた違和感と違うけど、鬼は鬼。倒さなきゃ)
とはいえ、距離が離れているので今すぐ手が出せないので、更に加速して距離を詰める。すると相手も接近に気付いたのか足を止め、ゆきへ視線を向け
「
「鬼を発見。
そう言っていつでも刀を抜けるように構える。
それと同時に心の臓は早鐘を打ち、体温が上昇する。
左
「ちっ、鬼狩りかよ。だが、食っちまえば同じこと!」
戦闘態勢に入った鬼は、全身に力を込めた。
その瞬間、ゆきは
――
―― 奏の呼吸
前方から飛んできた無数の針を、グッと踏み込んで横へ一閃。全てを迎撃する。針の一本一本は筆並に太く、そして先端は非常に鋭い。しかも高速で複数本を同時に発射してきた。普通の人間なら、反応すら出来ずに全身を刺されて死んでしまうだろう。鬼殺隊の隊士だとしても、接近を
しかし、それを漏れなく無効化したことで、相手の動きが一瞬止まった。
「何っ! 俺の針が! だが!」
―― 針
一瞬の隙を突いて攻めようと足を前に出すも、その前に立て直されて先程よりも多い数の針が飛ばされる。
血鬼術なのか、全身から針を生み出して、そのまま射出してくる能力のようだ。身体自体は縦にも横にも大きく、日中はどこに潜んでいたのかと思うくらいに大きいが、今はそれを考える時ではない。
―― 奏の呼吸 一曲 雅楽・催馬楽
もう一度、針を消し飛ばす。
距離が詰まったことで、発射されてから到達するまでの時間が非常に短い。その上に本数も増えているから、迎撃するだけで精一杯だった。
距離は
だが、ゆきに焦りはなかった。平静を保ち、常に隙間を見つけることに尽力する。むしろ、心を乱しているのは相手の方。自身の血鬼術に絶対の自信を持っていたようだが、その
「ま、まだまだ!」
―― 針
更に本数を増やし攻撃してくるが、そこに隙間を見つけた。飛ばす針を増やせば増やす程、相手は体力を使い、集中力も乱れる。失った体力は一瞬で戻るとはいえ、その一瞬を見逃す程ゆきは甘くない。
「何!」
今度は迎撃じゃなく
普通であれば針の迎撃をしている間に体力を回復されてしまうのだが、そんな時間を与えるはずがない。
―― 奏の呼吸
一〇〇本の弦を、
創里が考案した剣技。というより、ドリルである。
高い突破力があるが、一方で動きが直線的になり、かつ面での攻撃が主体の奏の呼吸で、ほぼ唯一点での攻撃になるというものだ。これで
仕留められなかったことを、微塵も気にする素振りなく、すぐに刀を引いたゆきは軽く手首を振って、回転によってまとまりそうになっていた弦をばらけさせて次の攻撃の動作へ移る。
対する相手の負ったダメージは強烈で、これだけ大きい傷、大穴を
「ガァァアアアアアアアッ!」
激痛によるものか、それとも精神的なものか。いずれにせよ、鬼である以上元からない理性が完全に吹き飛び、まるで獣そのもののように残った左腕で
距離にして
―― 奏の呼吸 一曲 雅楽・催馬楽
その攻撃は今度こそ鬼の頸を捉えた。
左から右へ振り切り、鬼の
鬼は苦痛に顔を
(勝った。けど、何か変。確かに鬼はいた。元々報告に上がっていた鬼は多分アレだと思う)
初任務を無事に終えたにも関わらず、ゆきの気分は晴れない。元々任務を行うのにあたり、透き通る世界を持続すべく感情の揺らぎを起こさないように意識している為、彼女の表情に変化はないが、どうにも帯締めの位置が違うかのような、何かスッキリしない感覚が彼女を襲う。
果たしてその感覚は正しかった。
「……柱を
(索敵に引っ掛からなかった)
動揺しそうになる心を押さえ込んで呼吸を整え、いつでも抜刀出来る体勢になる。
ゆきから少し離れた位置に現れたのは鬼。しかも、先程戦った鬼よりも遙かに強そうな感じがする。しかし、殺気というか敵意のようなものはあまりハッキリと感じられず、
ゆきの前に姿を現したのは、右手に刀を持ち、紫と黒色の着物を着た、六つ目の鬼。
「お前……鬼になる気はないか?」
絶望が今、彼女を襲う。
江戸コソコソ話
西瓜についての話ですが、これは諸説あるので、まぁそれっぽいものを適当にでっち上げただけで正しいものではありません。
そして、親子参観出来ず創里ドンマイ。