とにかく書く時間が欲しいです。
既存のキャラクターの言葉遣いは本当に難しいです。全然分かりません。
読んでいる時と書いている時とでは、どうにもズレが生じてしまいます。
「私は、鬼になるつもりはない」
目の前に
目が見えない分、他の四感でびんびんに感じ取っている。自分では敵わないと。だが、ここで逃げるという選択肢はないし、逃げられるとも思っていない。
不思議と鬼に対する恐怖はない。今この場で死のうとも、
「……鬼になれば、更なる高みへと行くことが出来るぞ?」
「鬼になることはない。もしなってしまったら、師匠や家族に顔向け出来ない」
尚も勧誘を続けてくる鬼に対し、ゆきはハッキリと言った。
「そうか……だったら、死ね」
―― 月の呼吸
素早い横薙ぎの一閃。しかし、技はそんな単純なものでなく、まずとんでもない速度。そして振るわれた攻撃と同時に、三日月の形のような無数の斬撃が飛んできた。
――
考えるよりも先に迎撃を行うも、
相手に気の緩みがあったのか、手加減をしたのかは分からないが、どちらにせよ、こちらが何も行動しなければ今の一撃で死んでいたことになる。
「……良い腕だ……益々惜しいな……これ程の
相手の鬼がただ感心したような言葉を漏らす中、ゆきは少なくない動揺に襲われていた。
(
思考に
―― 月の呼吸
先程繰り出した横薙ぎ一回ではなく、それを二連続で繰り出してくる。それに比例して飛んでくる月の形をした斬撃も増え、周囲から襲い掛かってくる。
(今は考えている場合じゃない!)
―― 奏の呼吸 一曲 雅楽・催馬楽
―― 奏の呼吸 三曲 雅楽・
全ての攻撃に対応せず、自身に影響のある分だけ、邪魔なものだけを薙ぎ払い。そして出来た一瞬の隙間へ飛び込んで、先程の
その思いっ切りの良さと、踏み出しからの加速、そしてあの位置からの攻撃はないとのほんの少しの油断が招いたほんの小さな
「惜しいな……」
鬼は、その場から一歩も動くことなく、手に持った刀で防御した。
刀と刀が激しく接触し、激しくそして不快な金属音を響かせながら一瞬、両者とも
バキッ
鬼の刀がドリルによって
ゾクリ
バッと無理矢理身を
―― 月の呼吸
刀を振っていない。否、刀を持っていないのに月の斬撃が飛んできた。
「ほぅ……」
今のを躱されたことに、驚きと同時に感心する。誘ったつもりがすんでの所で回避された。だが、そこに怒り等はなく、ただ面白いと思ってしまっていた。
どうにか飛来する斬撃を避けて体勢を整えたゆきは、鬼の手に刀が握られているのを知覚する。
「はぁ、はぁ、何で……」
「……私の刀は……私自身の血肉によって生み出される」
つまり、生きている限り何度でも再生可能ということだ。
「くっ」
(駄目、焦っては駄目。心を保つ。つくりにいつも言われていること。上手くいかない時は、最初から組み立て直す)
土台がしっかりしていなければ、どれだけ太い柱と丈夫な壁で家を建てようとも、簡単に崩れてしまう。その土台となるのは、自分自身の心。
「フュォォォォォォォ」
(駄目な時は、最初から組み立て直す)
「む?」
鬼は、相対する人間の女の雰囲気が微妙に変わったことに気付く。先程までも十分高い実力を持っていたように見えたが、今はそれが更に洗練された、
「面白い女だ……」
そんな鬼の呟きに耳を貸さず、集中する。右手に持つ
―― 月の呼吸
切り上げるようにして正面に三連の斬撃が放たれ、それに合わせて月輪の斬撃も飛ぶ。しかもその月輪は放射状に進まず、まるでゆきを囲って逃げられないように
だがそんなものに目もくれず、ゆきは三連の斬撃にのみ注意し、攻撃を放つ。
―― 奏の呼吸
相手の切り上げに合わせる形で、こちらも切り上げる。その速さは鬼からしても一級品で、その速い斬撃から発生した
「む……やるな……」
似た技で相殺し、かつこちらに攻撃を仕掛けてきた。先程もそうだが、守るだけでなく攻めへの切り替えも良く、一瞬でも鬼が気を抜けばたちまちにその小さな穴を無理矢理押し広げようと突っ込んでくる。
楽しい。
そう感じてしまう。武を極めるのに程良い障害だ。これを乗り越えられれば、自身はまた一段と強くなれる。
「やはり……強者と戦うのは……良いな」
だが、鬼もこの戦いを長引かせようとは思っていない。柱二人を
しかし、結果はどうだ。中々決着が付かない。
相手の攻撃は鋭いものの、対処が出来る程度。かと言ってこちらからの攻撃も、相手に通ることはなく、攻撃と同じように鋭い感覚によって察知され、対処されてしまう。それは例え相手から見て死角からの攻撃だろうと同様であった。
「見えていないのか?」
それならば納得がいく。
なまじ見えてしまうことで、情報のほとんどを視覚から得ようとする人間は、視覚の外で起こることに咄嗟に動けない。鍛えれば、ある程度隙を埋めることは出来るが、それでも限界はある。ただし、最初から見えていなければどの方向からの攻撃だって同じこと。見えていないのだから、目で情報を得る必要はなく、その尖った感覚を頼りに瞬時に動くことが出来る。
益々面白い。
「見えていてもいなくても変わらない。ここであなたを倒せば、関係なくなる」
「ご
確かに、女の言う通り、殺してしまえばどちらでも同じことだ。
「女……名を聞こう」
「……知らない鬼に無闇に名乗ったら駄目って教わった」
「……
「……」
「……名乗らないのか?」
「名乗る意味が分からない」
「……」
返答を受けて、黒死牟と名乗った鬼は
自身の名を一方的に告げてしまったが、今ここで殺せば問題ないとすぐに切り替える。
「フュォォォォォォォ」
再び乱れそうになった呼吸をやり直すゆき。常中自体は維持し続けることが出来ているが、透き通る世界に入る為には
「やはりな……」
「?」
「お前にも……あの世界が見えているようだな」
「も?」
「やはり……お前は別格のようだ……柱二人よりもお前一人の方が強いのはそういう訳か」
恐らく、透き通る世界のことを言っているのだろうと文脈から読み取ることが出来るが、それを表情に出さない。この状態で大事なことは、平常心だからである。
スッと刀を構える。
―― 奏の呼吸 一曲 雅楽・催馬楽
相手の攻撃の合間を縫って仕掛けていたが、今度はこちらから攻める。
「だが……」
そう言って黒死牟が刀を振るう。
―― 月の呼吸
「私には届かない……」
先程の壱ノ型よりも範囲が広く、強力な一閃がゆきの斬撃にぶつけられる。
ピン
その時、何かが
「……使い手も良いが……打ち手も良いみたいだ」
言外に、もっと数を減らすつもりだったと言っているように感じたが、今度は動じることなく次の構えを取る。
―― 奏の呼吸 四曲 秘曲・揚真操
ゆきの扱う奏の呼吸の型は六つある。そして、その内の四つを既に見せているが、その中の一つは索敵専門で、実質攻撃には三つの技しか使っていない。また三曲に至っては突き技になることで隙も大きく、使い勝手が悪い。
残る技も防御用と攻撃用の二つが残されているが、使う
切り上げる形での斬撃と、それに
―― 月の呼吸 参ノ型 厭忌月・銷り
ピピン
また弦が斬られた音がした。
長さが半分以上残っている弦の本数は、残り九三本。
(私を倒す前にまず、刀を消耗させようとしているみたい?)
先程まではどうにか打ち合っていた上に、相手の攻撃の多くを防御し反撃も行っていた。それまでは刀身が幾本もある弦の形状、その柔軟性と長さ、更に既存の呼吸にない奏の呼吸。そういった未知の存在であったものだったことから、一応本気でゆきを殺そうとはしていたのだろうが、今考えればどこか様子見をしていたようにも思える。
それがここに来て急に弦が立て続けに斬られた。それはつまり、ゆきの技が見切られ始めている。扱いこそ難しいが、細く速く鋭い弦は、小柄で隊士の中では非力の部類に入る彼女でも鉄のように硬い鬼の頸を斬ることが出来る。だが、その瞬間こそが弱点であった。
(どれも弦の真ん中辺りで斬られている。多分、威力の高い先端に近い部分じゃなく、威力も速度もそれ程なくて、直線になる部分を狙ってきたんだと思う)
この短い時間の攻防の中で、特殊な形の日輪刀の特性を掴み、その弱点となる部分を看破してみせた彼の観察眼は、流石としか言いようがなかった。
(でも、それだったら)
―― 奏の呼吸 四曲 秘曲・揚真操
「ふん……芸がない」
同じ技を繰り返されたことで
「何?」
だが、今度は弦を斬ることが出来なかった。ゆきが弦の動きを細かく
そして、その代わりとして自身の腕に小さな傷を付けられた。上弦の鬼である為、赫刀状態でなければその切り傷は一瞬後には
「あの御方から頂いた尊き血……それを例え一滴とはいえ落とさせたこと……見事」
相手を
絶望の夜は明けない。
江戸コソコソ話
物理法則? 知りません。
次回に続きます。
あえての引き延ばしです。