という方へ向けた繋ぎ回。
そして……
「そんなものどうだって良いんだよ! 早く戦闘を見せろ!」
という方へ向けた焦らし回となっております。
ご都合主義タグは全力で呼吸しております。大丈夫です。タグ詐欺ではありません。
残酷な描写タグも元気でいます。ご安心下さい。
時はゆきの初任務の日。
ゆきはまだ任務の連絡がなく、屋敷内で
そんな午前中に緊急の案件が飛び込んできた。
創里の書斎に現れたのは、
「っ!」
(昨夜……柱が二人……
思わず声を上げそうになったのをグッと
(岩柱が最初に接敵し、そこに雫柱が救援に入ったが、二人共返り討ちに遭った。柱二人が近い距離にいたということは、何らかの強い鬼の情報があったのか?)
そこに、もう一枚の文に目をやる。それは文ではなく書類。
(
そしてもう一度、一枚目を読み進める。
(俺と、もう一人柱を加えての現場検証と言った所か。仕方ねぇ。ここ数年はてんで足取りが掴めていねぇんだ。例え
そうして、急いで出撃の準備を整えて屋敷を出たのであった。その後ゆきに初任務が舞い込み、そして
道中合流したのは、かつての創里の師匠である
「師匠、今日はお願いします」
「うむ、それはこちらの台詞だ。最早、いや、もうとっくの昔に私はお前に抜かれている」
「
移動中、久々の再会ということもあって会話が
同じ鬼殺隊に所属し、かつての師弟であったとしても、任務等によって互いの生活はバラバラ。また、二人共
話は世間話から任務のことへ切り替わる。
「柱が二人とのことですが、やはり……」
「うむ、十中八九、十二鬼月だろうな。しかし、そのことに関しては私よりもお前の方が詳しいはずだ。そちらの知見はどうだ?」
「俺は、上弦の鬼だと思います」
「ふむ、なるほど」
「戦闘での痕跡を見てみないことには何とも言えませんが、柱が二人掛かりで仕留められない所か瞬殺となりますと、相当なものです」
「うむ、だが、その上弦を単独で二体も仕留め、かつ
「それは俺が強すぎるからということで」
「ふむ、言うようになったな」
急いで現場に駆け付ける必要がある為、移動は極力走って行われる。だが、二人共呼吸のスペシャリストである柱。長距離を走りながらでも呼吸を乱すことなく普通に会話を続けることが出来ている。
数刻後、現場に辿り着いた時には
(真っ昼間に顔まで隠すくらいの黒一色は、目立つよな……)
そう感想を
「酷いな……」
「うむ……」
がたいの良い岩柱の両脚はなくなっており、腹が大きく裂けて内蔵が飛び出ている。
一方で雫柱の方は、刀を持つ右腕がなくなっている。まだ見つかっていない模様。そして
(恐らく、岩柱は多少持ち堪えたが、雫柱はすぐにやられてしまったということだろうな)
手を合わせて冥福を祈りつつ、次のことを考える。
(鋭利な刃物で斬られたような傷。地面にも多くの裂け目が出来ていることから斬撃系。上弦で斬撃と言ったら……
仮説というよりも、ほぼほぼ決め付けによって犯人を絞り込む。
(アイツは移動したはずだ。柱を仕留めて足が付くのを恐れて、少しでも距離を作りたいはず。だがどこに行った……? 南……すぐ海にぶつかるからない。東……こちらは
普段から持ち歩いている簡易地図に脳内の日本の地図を照らし合わせて、大まかな動きを予想していく。
(となるど、残りは北か西か……北は保留だな。一応、下級隊士だが三個小隊が動いているが、全滅したとの報告は受けていない。西はどうだろう)
そこで、自分達が来た道を思い返す。鬼だから馬鹿素直に街道を移動するとは思わないが、何も痕跡はなかっただろうか? こういう捜し物に関しては、自分よりもゆきの方が得意だと思っている。
(あぁ、ゆきを連れて来れば良かったかな)
そう思うも、今から帰ってここまで引っ張ってくる気にはならない。
(移動出来る距離を考えると、西が硬いよな……
目を付けたのは、戦国時代に
行商の道として多少残ってはいるが、やはり
幕府非公認組織であり、表の人間にはほとんど知られていない鬼殺隊という組織。鬼を狩るという目的があるが、表の人間からすれば藩所属でない者が帯刀をして、集団で
つまり、藩の中を移動するだけならば、ある意味で鬼殺隊の目から隠れることが可能となる。
(これが確証バイアスって奴かな。だが、何も考えず立ち止まっているよりはマシだろう。このまま放っておいたら、どちらにせよ再び隠れられてしまう。そうなると、余計に探し出すのは難しい。せっかく見えた尻尾だ。例え外れだとしても、何かを掴みたい)
まずは、どこへ逃げたかよりも、どのような戦闘があったかの検証を独自に行う。
周囲は建物もない開けた土地。少し離れた所に木々が生い茂る場所があるが、森や林という程でもない。主要な街道からは大きく外れているが、誰かがここを利用するのだろう、馬一頭が通れる程度の道が地形に沿って蛇行しながら伸びているのが分かる。
(獣道ではないな。となると人の手が入った道。馬は無理でも
「おい、あそこが戦った場所か?」
「え、あ、は、はい。恐らくは」
「ありがとう」
近くにいた隠に確認を取り、その場所へ移動する。周囲が赤黒く染まり、地面にも染みが出来ている。草木や石、岩にも大量に付着していることから、血が激しく飛び散ってそれが乾いたものだろうと予想する。晴れているから乾燥も進み、酸化して黒くなっているが、日数が経ったものではなさそうだ。
(昨夜の戦闘の現場ね……)
顔を上げて周囲を見渡すと、遠くで数頭の野犬がこちらの様子を
(血の匂いに寄ってきたか……いや、一頭だけ口周りに血が……)
素早く気配を消してその犬に接近。確保する。突然目の前に現れた創里に対し、警戒したり飛び掛かろうとしたりするも、すぐさま周囲を威圧することで
自身の手で首を押さえられて大人しくなった野犬を観察する。まだ口から血が
それを辿っていくと、先程ちらりと目にした木々が生えている場所まで繋がっていることが分かる。
「これは……」
そこには、行方不明になっていた雫柱の腕が、確保した野犬に食い散らかされた状態で放置されていた。残った死肉に、鎹鴉でない普通の
(
自身よりも少しだけ年上、二〇代前半から中頃という若い女性の肉体がこのような結末になるとはと、悲しみを覚えるも今は感傷に
腕らしき残骸がある場所の近くには、血塗れの刀の
(刀身がないな……それに、あの場所からここまで斬り飛ばされたにしては、距離があり過ぎる。となると、この犬が他の目を盗んで隠し場所としてここを選んだ。じゃあ、元々は別の所にあったということ)
だが、死体そのものには戦いによる傷はあったものの、野生の獣に食われた痕跡はなかったことから、腕だけどこかに飛ばされていたことだけは事実のようだ。近くに大きな肉があれば、そちらに食い付くはずだからだ。
それからは地道な捜査が続く。死体が隠によって運ばれ、現場の事後処理も着々と進んでここが戦場であった痕跡が消されていく。そして一人また一人と隠が退却する中で、捜索を続ける創里と、それを見守りつつも自身も見逃されたものがないかを捜す虎恭。
そうして日は次第に傾いていく。
すると、創里がようやく証拠を発見した。
「これだ……」
雫柱の日輪刀の刀身の部分。現場から大きく離れた場所で、日中も日差しが入らないような草木が生い茂る場所にて捨て置かれていた。そこには血が付着し、半日以上が経過していることから他と同じように乾いている。だが、数滴分だけ、乾くことなく揺らめいている血液があった。
「これは……鬼の血か?」
もしそうだとしたら、雫柱の刀は少なくとも一回は黒死牟に届いたことになる。その血が溜まっていた場所は、柱のみが許可されている
周囲が闇に
(ここに鬼の血があるということは、深々と根元まで突き刺すことに成功しているということ。だが、直後に刀身を両断され、腕も切断。そしてそのまま頸を斬ったということか)
刀身が刺さったままでは回復出来ないから抜いて捨てた。わざわざ見つかりにくい場所に捨てる意味はない。むしろ日に晒された方が痕跡が消えるのだから、日当たりの良い場所に放置すれば良い。
(ということは……西か)
予想が当たったようで、創里は虎恭に一言言って走り出す。
まだ追い付けると。
それからしばらく、彼の下に一報が入る。今向かっている方向にて、ゆきが上弦の壱と戦闘に入っているというものだった。
―― 全集中
――
――
どんどんとギアを上げていき、加速する。
そして
―― 蒸の呼吸
鬼を斬ることよりもゆきを守ることを優先し、振り下ろされそうになっている刀を吹き飛ばす。そして彼女を守るように立ち、
「よぉ、
創里と黒死牟、最強の鬼殺隊士と最強の鬼の戦いが今、始まる。
江戸コソコソ話
江戸時代の現場検証のやり方等は知りません。完全に妄想です。資料として『名奉行 遠山の金さん』を参考にしております。松方弘樹さんの声、渋くて格好良いです。