鬼滅の刃~蒸の呼吸~【完結】   作:木入香

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 キングクリムゾン!(超便利)

 前話は色々とご意見がありましたが、まぁ言い訳は前話の前書きに書いておきました。言い訳して良い訳です。はい。


第参拾参話 未来へ

 明暦(めいれき)四年春。

 黒死牟(こくしぼう)との戦いから二年が過ぎた。

 創里(つくり)は数えで二五歳。実際では二四歳になっていた。柱の一人として日々鬼を狩っているが、あの戦い以降、上弦(じょうげん)所か、下弦(かげん)も含めた十二鬼月(じゅうにきづき)の足取りが掴めなくなっていた。

 

(上弦を再編成する為に、下弦の中で精鋭を作ろうとしているのかもな)

 

 自身の屋敷の庭で日輪刀(バスターソード)を構えた姿勢のままで目を閉じていたが、瞑想(めいそう)をしている訳ではなく、考え事に没頭していた。

 現在、上弦の鬼は()(ろく)の二つ席が空いた状態。それが埋まったのか、埋めようとしているのかは全く分からないが、いずれにせよ、今鬼達は確実に力を蓄えようとしていることは確かである。

 

(原作開始までおおよそ二五〇年……と、いくつだ? 四、五年くらいか)

 

 これまでの行動から、どのような流れになるのか全く分からない。自分が直接関わる訳ではないから当然だが、どうせなら明治時代に生まれていればと思う日がなかった訳ではない。だが、後悔はしていない。

 

「つくり」

「創里さん」

「創里お兄ちゃん!」

 

 呼ばれてゆっくりと目を開け、声のした方へ振り向く。すると、縁側から藁草履(わらぞうり)を履いて出てくる三人の姿があった。

 ゆき、太郎(たろう)(うめ)、彼女達を鬼にすることを防ぐことが出来た。今でもゆきが鳴女(なきめ)になる予定だった人物かは分からないが、目の前にいる助けられる命を助けただけであって、彼女が何者かは関係ない。

 ゆき。現在数えで一八歳となり、立派な女性へとなっていた。相変わらず目を隠す程の長い前髪。後ろも腰を超える程のストレートの長い髪。以前までは閉じられた目は髪の向こう側にあって、素顔を見ることはほとんどなかったが、去年の出会いの記念日に髪留めを渡したら、それで右目だけ見せるような感じで留めている。誕生日を祝う概念はまだまだ(はる)か先の昭和時代になるので、出会いの日を創里の中では誕生日として祝っている。

 身長は五尺(約150cm)のままだが、身体付きもすっかり女性らしいスタイルとなっている。時代的にはだらしがない体格とみられるのかもしれないが、未来の価値観の残る創里にとっては、こちらの方がどちらかと言えば好みである。

 この二年で、鬼狩りとしても急成長を果たし、遂に柱へと就任することとなった。(かなで)の呼吸の使い手ということから、奏柱(そうばしら)と呼ばれている。

 他にも柱に変化はあった。炎柱(えんばしら)遠藤虎恭(えんどうとらやす)水柱(みずばしら)(うた)が、それぞれ年齢を理由に引退。後任はそれぞれ炎の呼吸、水の呼吸の(きのえ)の隊士から任命された。岩柱(いわばしら)雫柱(しずくばしら)の後任は別の岩の呼吸と風の呼吸の使い手が就任した。そしてつい先日、鳴柱(なりばしら)釋縁連(しゃくえんれん)が引退を決め、その後任としてゆきが選ばれたのである。

 だが、ゆきは創里の屋敷を出て行くことはなく、今も一緒に暮らしている。

 

「つくり。大好き」

「あーはいはい」

「むー……」

 

 勢い良く飛び掛かり、そのまま()き付かれてしまった。

 創里とゆきは、交際を始めている。何故か結婚する話も進んでいるらしい。らしいというのは、そこの所全てをゆきが取り仕切っているからだ。あの戦いから積極的に、所か強引にアプローチを仕掛けるようになり、断る理由を探そうとしても、(ことごと)くを潰されてしまい、逃げ道のなくなった創里は観念して結婚を前提に付き合うことを決めたのだ。

 

(まぁこんな可愛い嫁さんもらえるんだから、幸せっちゃ幸せだが……)

 

 だが……時々怖いくらいに愛情を感じる時がある。今はまだ創里は自身の貞操(ていそう)を守ることが出来ているが、いつそれが奪われるか気が気でない。何故男である自分が貞操を気にしないといけないのか疑問に思うまでもなく、とにかくあれやこれ理由を付けて、どうにか踏み留まらせているが、そろそろ決壊するかもしれないと冷や汗を()く日々である。

 

(まさか、これがヤンデレって奴か……? いや、違うだろ。うん。彼女に限ってそれはない……と思う。うん。そう思うしかない)

 

 重症である。

 ちなみに、ゆきの日輪刀(にちりんとう)の刀身は一〇〇本もの(げん)の集合体である為、悪鬼滅殺(あっきめっさつ)の文字を(きざ)めないが、代わりに(さや)の方に文字を入れている。当初は(つか)に掘る予定だったが「持ちにくい」の一言で取りやめになった。

 

「相変わらず仲良いな二人共」

 

(俺としては、(へび)(にら)まれた(かえる)の気分だがな)

 

 脳天気に言うのは、太郎。元々遊郭(ゆうかく)で生まれ育った兄妹の兄。歳は数えで一九歳。身長も六尺半(約195cm)とこの時代としてあり得ないくらい大きい。だが、がたいも良いので決してヒョロヒョロではない。髪は相変わらず創里以上にボサボサで無造作に伸ばされているので手が付けられない。鼻周りに生まれ付き大きな(あざ)があり、目付きも悪いことから、見た目だけは非常に怖い。というよりも一九歳が出して良い貫禄(かんろく)ではない。

 だが、妹想いの優しい少年で、義妹のゆきが初任務で命の危険に(さら)されたことが切っ掛けで、本格的に鬼殺隊(きさつたい)を目指す。

 炎の呼吸の派生として毒の呼吸を用いているが、毒だったら水の派生ではとツッコんだら、炎の派生だと言い切られてしまった。

 その名の通り、毒を染み込ませた片手鎌を使用し戦う。明らかに原作の上弦の陸の一人、妓夫太郎(ぎゅうたろう)である。

 毒の開発には創里も噛んでおり、適当にそれっぽいものを放り込んで煮詰めて抽出(ちゅうしゅつ)したものを使用している。

 藤の花の濃縮液(エキス)を基礎として、そこに彼岸花(ヒガンバナ)(くき)烏頭(うず)(トリカブトの根)、水仙(スイセン)の葉を()り潰して混ぜている。更に(マムシ)毒腺(どくせん)蟇蛙(ヒキガエル)耳腺(じせん)河豚(フグ)の肝。

 とりあえず人体に影響のある毒をかき集めてまとめたものなので、中には互いに効果を打ち消し合うものが含まれているかもしれないが、毒の知識のない二人はアッサリ(さじ)を投げて毒の闇鍋を作った。調合の配分が甘いのか、合わないものが含まれているのかは不明だが、効果としてはそこそこ強い鬼の回復を遅らせるのと回復するまでの間は激痛を与える程度のものである。

 毒草や薬草、その他に毒が含まれるもの等を一つの資料としてまとめ、産屋敷(うぶやしき)にて厳重に保管してもらっている。いつかこれが必要な時が来る。その時は今代ではないかもしれない。次代でもないかもしれない。遙か遠くの未来かもしれない。だが、信じて守って欲しいと告げたが、当主の輝正(てるまさ)は疑うことなく了承。当主しか触れることを許されない金庫に保管することとなった。その際に、もう一つ保管をお願いした箱があるが、それはまた後程。

 ちなみに、トリカブトはご禁制の植物である為、産屋敷の力を用いてコッソリ用意してもらった。だが栽培はしていない。知識がないので仕方ない。また、本来ならそれに加えて神農本草経(しんのうほんぞうきょう)大同類聚方(だいどうるいじゅほう)東医宝鑑(とういほうかん)といった医学、薬草、薬品事典も一緒に入手出来れば良かったが、生憎(あいにく)と神農本草経の写しを入手出来たくらいであった。これも一緒に保管してある。

 

「私、お腹空いたんだけど」

 

 創里達のやり取りを見飽きたのか、慣れた様子で空腹を訴えるのは梅。身長は創里と同じ五尺三寸(約160cm)。歳は数えで一六歳。まだ少しだけ子供っぽい部分が残るものの、その美貌(びぼう)とスタイルは完成されつつあり、時代が時代なら、モデルとしても何ら遜色(そんしょく)ないものとなっている。

 太郎と同じ遊郭出身の、太郎の実の妹。原作では太郎の相方である上弦の陸の一人。兄妹とも鬼になることも死ぬこともなく、元気に過ごしている。

 梅も、太郎と同時期に鬼殺隊を目指す覚悟を示し、無事に入隊。しかし、修行は創里の(もと)で行わず元風柱(かぜばしら)理太郎(りたろう)の所で行われた。これは本人の希望であったが、その理由は明かされていない。呼吸は風の派生で(まい)の呼吸。刀身の先端が幅広になっている所謂(いわゆる)中国刀と呼ばれる刀を二本使用する。

 マイペースな性格で、出撃直前まで化粧(メイク)をしていたり、身なりの確認(チェック)を行ったりするくらいにお洒落(しゃれ)。彼女の言動に、いつも兄の太郎が振り回されるが、本人は文句を言いながらも何だかんだで面倒見の良い兄でいる。

 兄妹揃って出撃することが多く、動の梅と静の太郎で上手く連携している。また、二人共痣や赫刀(かくとう)、透き通る世界には至っていない。ゆきは元々透き通る世界へ入る素質があった為に痣を出すことを訓練に盛り込んだが、その世界へ辿り着けなければ短くなる寿命を克服することが出来ないので教えていないし、知っていてもやるなと口酸っぱく言っている。

 そもそも、十二鬼月がほとんど現れない現状で、痣を出すことは戦力過多である。下弦であれば痣などなくとも瞬殺出来る実力はあると思っているので問題ない。

 

「ゆき、今日は昼から出掛けるから」

「私も行く」

「分かってるよ」

 

 どうにも彼女には頭が上がらない。頑固であるから、言うことを聞かせるのは骨が折れる。何故、未だに貞操を守ることが出来ているのか不思議でならない。

 それはともかくとして、創里は鬼の捜索(そうさく)に加えて、とある人を捜していた。と言っても珠世(たまよ)ではない。今でもどこかで隠れ住んでいると思われるが、こちらから接触するつもりはないし、向こうからもアプローチを掛けている様子もみられない為、放置である。とりあえず、その捜し人の足取りを掴めた為、午後からその人の下を訪れようと考えていた。

 その人物は山奥でヒッソリと暮らしていた。道中は、ゆきに索敵(さくてき)を行ってもらい、念入りに鬼の気配がないことを確かめてもらいながら進んだ。すると、遂に目的地が見えた。

 目的地である木造の小さな家の横からは煙が立ち上り、周囲には切られた木々が綺麗に並べられていた。

 

「突然失礼する」

 

 煙が出ている所に行くと、一人の赤毛っぽい中年の男性が座り込んで火の番をしていた。

 

「こんな山奥に人が来るとは珍しいな。どうした?」

竈門(かまど)の者でよろしいか?」

「そうだが?」

「ふむ……」

 

 創里の目の前にいる男性の耳に目をやると、旭日(きょくじつ)の模様があしらわれた花札のような耳飾りがあった。

 

(間違いない)

 

「本当に突然申し訳ない。不躾(ぶしつけ)だが、一つ、頼まれ事を引き受けてもらいたい」

「それは、どのようなもので?」

 

 男性はジッと創里を見つめる。疑っているようにも見えるが、どこか心の中を見通そうとしているようにも思える。

 

「代々受け継いでいるものがあるはずだが、それに一つ加えてもらいたいものがある」

「何?」

 

 そこで、男性の表情がピクリと動き、火の側であるにも関わらず、どこか冷えるような空気を感じた。だが、それに(おく)することなく創里は一つの布の(つつ)みを取り出す。それは手の平サイズの細長い何かであった。

 

「これを、家を継ぐ者に引き継いでもらいたい。そして出来れば肌身離さず持ち歩いて欲しい」

「理由を聞いても?」

「信じてもらえるか分からないし、俺の考えている通りになるかも分からない。だが、もし、俺の考えている未来になるとすると、それは必ずとは言えないだろうが、少なくとも貴方の子孫の力になると信じている」

「ふぅむ……よく分からぬが、相分かった。(うけたまわ)ろう」

 

 その返事を受けて、創里はその布で(くる)まれた何かを渡す。

 

「ありがとう。そして、何も話せず申し訳ない」

「いや、良い。どうだ? せっかくこのような所まで来たのだ。お茶くらい出すが」

「ありがたいが遠慮しておく。これから行かなければならない所があるのでな」

「そうか。それは残念だ」

「では、失礼する」

「あぁ、元気でな」

「ありがとう」

 

 挨拶としては素っ気ないものであるが、これで良い。近くで警戒に当たってもらっていたゆきと合流し、下山する。

 

「何を渡したの?」

「うーん……そうだな。二五〇年後くらいに、役に立つものだよ」

「?」

 

 意味が分からず首を(かたむ)ける彼女が可愛くて、つい頭を撫でてしまう。

 

「本当なら俺達の代でこの呪縛から解き放ってやりたかったが、どうにも無理だったらしい。まぁ、まだ時間は沢山ある。俺がいる。ゆきがいる。太郎も梅も、屋敷の住人がいるし、他にも多くの仲間がいる。諦めるには早い。これからも一緒に頑張るぞ?」

「うん」

 

 竈門家に渡したのは一つの鍵。ただの鍵ではなく、創里の担当刀鍛冶師(かじし)である鉄仞(てつじん)に依頼して作ってもらった。猩々緋(しょうじょうひ)の金属を含んだ特別製で、その鍵で開けるものは産屋敷の金庫に眠っている。

 毒の資料は、必要とあらば当主の許可の下で誰でも閲覧出来るようにしているが、箱は違う。竈門家の者が直接産屋敷を訪れなければ開くことはない。

 

(まぁ、未来がどうなるかは分からないが、少しでもマシと言えるようなものになってもらいたいな)

 

 そう思いを()せながら、高く昇った太陽を(あお)ぐのであった。




 江戸……大正コソコソ話

「お館様、お呼びですか?」
「よく来たね。カナエ。少々面白いものが見つかってね」
「面白いもの……ですか?」
「これだよ」
「? それは?」
「随分と古いものだけど、様々な動植物の毒をまとめた資料のようだ。これと一緒に薬草事典の写しも納められていた」
「っ!」
「是非活用してもらいたい」
「感謝致します。妹が喜びます」


 というやり取りがあったとかなかったとか。
 
 一つ問題が……この時代からでは手鬼を何ともすることが出来ないので、錆兎や真菰を含めた鱗滝さんの弟子達を救うことが出来ないとうことです。
 真菰好きなので助けたいですが……出来ることがあるとすれば、鱗滝さんに鬼補充の任務を与えないとするしかないのですが……手紙くらいしかそれを伝える手段がないですね。
 ただ、それをピンポイントで伝えるのは、色々と弊害がありそうですね。

 とりあえず、本編はこれにて完結となります。
 一応、後日談として、柱合裁判の模様を描く予定です。それで本作は終了予定です。

※追記
次回の投稿は明後日以降になる予定です。申し訳ありません。
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