それと、鴉と鋼の順番を逆にしています。鴉はアッサリ終わりますからね。
(しかし、誰とも会わないな……)
(全員東へ逃げたか、ほとんど食われたか)
この試験の攻略法として、
(だけど、東に行ったっきりだよな? ずっと中間地点で網張ってるけど、ほんと誰も来ない。日の入りは西だから、東に留まるとその分早く夜になると思うんだけど。それとも別の比較的安全なルートでもあって、そこを行き来しているのか?)
創里は、西と東を繋ぐ一番の近道になるであろう場所を拠点として行動している。それ
(後数刻で七日後の朝。試験終了か。何体斬ったっけな?)
(結構水分消費激しいからなぁ……人体の
しかし、蒸の呼吸は体温を急上昇させる。それも、普通の一般人では即死となる温度まで引き上げるのだ。それだけでなく、これまた並の人体では考えられない程のとんでもない身体能力を
(塩分は、まぁ何とかなる。多分。それよりも水だな)
現在の課題はここである。蒸の呼吸を
(まぁ、透き通る世界がそこまで万能かは知らんけど、少なくとも
「さぁて、狩りの時間再開だ」
また一体の鬼が、
「直線的過ぎるだろ。馬鹿が」
そして、もう何度も繰り返した、
(
透き通る世界のおかげで、夜の森という視界最悪の状況でも、相手の位置、行動、予測が手に取るように分かることで、例え視界外からの
「そういえば、集合地点はあの広場で良いんだよな? 確か、こっちから来たから、こっちだよな?」
(まぁ、周りを藤の花で囲っているから、どこからでも出ることは出来ると思うが……あぁそうか、鬼は藤が嫌いだから、朝日と藤のコンボが出来る東端に集まる訳か。なるほどなるほど)
そして、行き場を失った鬼が創里と
(三二体は斬ったけど、山ん中の鬼、全滅してたりするんかね?)
そんなことを考えながら、ゆらりゆらりとのんびりとした歩調で歩き出す。そして、藤の壁に
「良し。合格っと」
広場には、まだ誰も来ていないようだ。
(早かったか? それとも全員死んでしまったか?)
創里自身は特に積極的に協力して戦っていなかったが、それでも東に向かう鬼を見つけては数を減らしていたので、多少の
直後、気配を感じて振り返ると、そこに何名もの人がボロボロになりながらもここに歩いてきているが見えた。
(俺含めて一三人か。半数生き残ったと言うべきか、半数死んでしまったと言うべきか。だけど、全滅することも不思議ではない試験だ。それでこれだけ生き残れたのなら良かったと言うべきか)
ぼんやりと考えていると、また以前にも感じた気配を
「皆様、お疲れ様でした。さぁこちらに来て下さい」
大きい声ではない。むしろ、周りが騒いでいたら
「改めて、皆様、お疲れ様でした。今年は多くの方が無事に戻ってこられたことを嬉しく思います。これからは、鬼殺隊の隊士として、更なる
そこで一度言葉を切ってお
そこにあったのは、いくつもの石。光の角度などで所々光沢の見える、鉱石のようだ。その数は二七。丁度、最終選別を受けに来た人数と同じである。
(全員が生き残ると願ってのことか? だが、あの試験は、誰もが実戦は初めてだ。例え
バラバラの地点から山へ入る初日の夜を何とか乗り切り、他の人と合流することが出来、更に協力関係を結ぶことが出来れば、かなり楽に突破出来る試験ということになる。
(なるほどな。全員生き残れる筋道はちゃんとあるってことか。そしてそれをあえて告げずにいたのは、自分達で気付かせる為。極限状態の中でその答えに辿り着けなければ、力がなければ死ぬってことか。この試験は、個の力か、数の力のどちらか、あるいはその両方がないと突破出来ない)
合格者に人数制限はない。よって、結果次第では全員合格もあり
(もっと早く気付くべきだったな。そうすれば、もう少しは多く生き残ることが出来たと思うのは、
一人反省している創里を
「皆様には、こちらから自身を守り、そして鬼の
その瞬間、周囲から
「選べって……」
「どれがどれだか……」
「違いとかあるの……?」
「大きさや形に多少の違いはあるけど、それ以外は全部同じ……?」
口々に疑問が出、しかし選ばなければ刀は
(俺も違いは全く分からんが、多分ハズレとかはないと思う。まぁ誰かが動けば連鎖的に動くだろう。
かといって、創里はそのペンギンになるつもりはなかった。自分は最後に行くと決めて、立ち続けた。
どれだけの時間が流れたか。互いに
と、そこで
「これにします」
すると、今度は同じく少女の合格者が前に出て、一つの鉱石を手に取った。
「わ、私は、こ、これにします!」
受験者の中で女は二人。この二人は、見事にあの七日間を生き抜いたのだ。そして、女が先陣を切ったことに男達は次々と前に出て、思い思いの鉱石を手にしていく。そして、創里以外の一二人が玉鋼を選び終え、残すは創里のみ。皆の視線が集中する中、ゆっくりと机へ向かう。
(まぁ、どれが残ろうと最初から決めていたんだけどね)
「残り一五個。全部もらう」
瞬間、時が止まったかのように辺りは静まり返った。そして、
「何だそれは!」
「
「選んでいないじゃないか!」
「そのようなことが許されるのか!」
「あり得ん!」
まさかの暴言が浴びせられるとは思ってもみなかったが、すぐに立て直した彼は、次々と反論していく。
「
多少ムキになっていたこともあり、普段よりも二割増しで口調荒く、
しかし相手も負けじと「
「一つ聞きます」
「はい」
「刀は一五本の注文で良いですか?」
「へ? あ、いえ、失礼しました。一本にまとめて頂きたいです」
「ほぅ。そうなりますと、相当重くなりますが良いのですか?」
「構いません。私は、見事扱ってみせます。ただ、多少の形の注文をさせて頂けるとありがたいのですが」
「大丈夫ですよ。では、詳しいことは……」
そう言いかけた時、空からバサバサと羽音がして一斉に上空を見上げた。すると、そこには一三羽の黒い鳥がいた。鳥はすぐに高度を下げて、一人につき一羽ずつ肩や頭、腕に止まっていく。それは見た感じ普通の
「後程、こちらの
こうして、無事に最終選別を終えた創里達は、鬼殺隊の一員として鬼と戦っていくことになるのであった。
江戸コソコソ話
蒸の呼吸 壱式 雲蒸竜変
雲蒸竜変とは「雲が湧き上がり、竜が現れる」様のことを言います。また、それに例えて「英雄や豪傑が現れ活躍する」ことを表す熟語でもあります。
蒸の呼吸の基本の技であり、最も一撃必殺に長けた技です。