鬼滅の刃~蒸の呼吸~【完結】   作:木入香

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 また時間が飛びます。
 日輪刀の説明です。
 これまでも、そしてこれからもオリジナル要素をガンガン入れていきます。
 本作に登場するあれやこれについてですが、ほとんど知識はないのでそれなりに調べて知ったかぶりをしつつ、後は適当にでっち上げてます。
 それと、お気に入り、感想、評価ありがとうございます! もっとしてくれても良いのよ?(建前) 欲しい!下さい!(本音)

追記:遊女の名前を蛍で書いていましたが、刀匠の鋼鐵塚さんも下の名前が蛍だったことを思い出して修正しました。


第陸話 遊ぶ

 最終選別を終えて、正式に鬼殺隊(きさつたい)の隊員となって半年以上が経過した。その間に創里(つくり)は順調に鬼狩りを続け、七日に二、三体。多い時は四体の鬼の(くび)を斬ってきた。

 休みは討伐(とうばつ)と討伐の間の移動時間と、藤の家紋(かもん)のある家での滞在(たいざい)くらいである。大体三〇日を過ぎる頃にはこの生活にも慣れ、四〇日目からは少しの時間をみて街に繰り出すなど出来るようになった。

 

(まだ江戸時代には曜日がないから、週で数えられないから面倒くさい。それにしても、俺だけか知らないけど、単独任務ばっかりだな。それに、やたらと任務の量が多い気がする。まぁ、任務の数が多いのは良いとして、単独行動ばかりというのは……もしかして藤襲山(ふじかさねやま)での七日間、鎹鴉(かすがいがらす)などに監視されていたのかな? そんでボッチ認定されたとか? それだとしたら悲しいな)

 

「なぁ、権三郎(ごんざぶろう)。話し相手になってくれないか?」

「……」

「ほんとお前って、任務以外に口聞かないのな」

「……」

「はぁ……」

 

 権三郎とは、創里の下に来た鎹鴉で、普段は寡黙(かもく)で余計なことは何も言わない。口を開いたと思えば、伝令と鬼の位置を(しら)せる程度。

 

(カーナビだってもう少し色々(しゃべ)るぞ? まぁこの時代にカーナビなんてないから言っても無駄だけど)

 

「しょうがねぇ。今の所は鬼の報告がないみたいだし、俺は夜ちっと出掛けてくるわ」

 

 今日は何もないとのことで、創里はいそいそと出掛ける準備をする。しかし、万が一にも鬼と遭遇(そうぐう)することを考慮(こうりょ)し、日輪刀(にちりんとう)を持って行くことも忘れない。

 創里の日輪刀は、最終選別で玉鋼(たまはがね)を選んだ際に残り物を全てもらい、それを一本の刀……太刀(たち)? 大剣(たいけん)? のような巨大な刀を打ってもらった。

 大きさは、創里の身長がおよそ五尺三寸(約160cm)なのに対し、長さが()も含めておよそ五尺(約150cm)程度。刀身だけでおよそ四尺(約120cm)あり、幅もおよそ七寸(約20cm)と大きい。()りはなく、真っ直ぐな()で先端のみ刀のようになっている。これだけのサイズだと当然厚さもあり、一番分厚い所でおよそ三分(約1cm弱)もある。そして何より重い。この時代にキログラムで(はか)れる重量計など存在しないので分からないが、かなり重いとだけ言えるだろう。その分頑丈(がんじょう)で、折れず()がらず刃毀(はこぼ)れせずのお墨付(すみつ)きだ。

 別に『FFⅩ』のアーロンのようにしたいという思いがあった訳ではない。最も、完全にないとは言い切れないが、これだけの大きい武器にしたのには創里独自の呼吸、()の呼吸に関係してくる。

 最終選別の時点では型が壱式(いちのしき)しかなかったのだが、その理由は、弐式(にのしき)参式(さんのしき)を使うと並の刀では刀身が消滅してしまう程の熱量が発生するのだ。技を出す度に刀を新調していてはキリがないので、最初からこのような大きさで作ってもらったということだ。これならば、多少壊れても修復出来ると()んでいる。

 つまり、鍛冶師(かじし)本人から壊れないと太鼓判(たいこばん)を押されたにも関わらず、それでも(ひそ)かに壊す宣言をしているのだからこの男無茶苦茶(むちゃくちゃ)である。

 

「着物は良いとして、髪は……まぁいいか。面倒くさい」

 

 白髪(しらが)混じりの黒髪は、隊士なりたての頃はボサボサながらも短く整えられていたが、今は散髪する暇もほとんどなく、ほぼ伸ばしっぱなしでもう少しで肩に届きそうである。

 日輪刀は(さや)に納め、何重にも布を巻き付ける。このサイズを隠すことは不可能なので、(こと)を運んでいると思わせるように分厚く巻いていく。

 

「よし、じゃあ行くか」

 

 こうして夜の街へ繰り出した創里。その行き先は……遊郭(ゆうかく)であった。

 少しでも時間が出来ると、その街の遊郭や小規模でも水商売をしている所へ赴くのが習慣となっていた。言わば風俗通いである。

 基本単独行動である彼のこの行動が、何故か密かに鬼殺隊の中で話題となっており、隊随一(ずいいち)の不良隊士と影で呼ばれていたりするのだが、そのことを創里は他者と関わることが滅多(めった)にないので当然知らないままである。また、鬼を退治する為に全国を東奔西走(とうほんせいそう)し、その合間、行く先々にある水商売の店に行くようになり、歩く遊郭図鑑とも揶揄(やゆ)されていることも、当然本人の知らぬことである。

 本日は駿府(すんぷ)(現在の静岡市の一部)の遊郭に来ていた。東海道(とうかいどう)故郷(こきょう)尾張(おわり)(現在の愛知県西部)と結ばれている為、行き来はしやすいはずだったが、何故か訪れる機会のなかった土地である。

 

流石(さすが)城下は(にぎ)わっているなっと、こっちか」

 

 そして、目的地に到着した彼は、適当に()いている遊女(ゆうじょ)のいる部屋へ通される。

 

「今晩お相手させて頂きます。格子(こうし)(かがり)と申します」

 

 まさかのお高い部屋に驚く。普通はランクの高い遊女程、簡単に会えないはずなのだが、どういう訳だろうか。首を捻るが答えは出ないので、とりあえず食事と酒を注文する。

 

(そういえば「ありんす」などの廓詞(くるわことば)は江戸吉原(よしわら)からだっけか。駿府は吉原に近いから言葉遣いも似ると思ったが、そうでもないみたいだな。それとも時代が違うのか? まぁ普通の言葉の方が分かりやすいからこっちの方が良いけど)

 

 料理が届けば数口食べ、(はし)を置く。不味(まず)い訳ではなく、満腹になる為の料理というよりも部屋に(かざ)られた花や絵のような、一つの装飾品(そうしょくひん)としての料理であるので口にするのは少々、メインはお酒である。とはいえ、創里は呼吸の関係上アルコールの摂取(せっしゅ)(ひか)えていることから酒もほとんど口にせず、代わりに遊女に飲ませている。

 とはいえ、酔わせるまで飲ませることはなく、適度に状態を見ては本題へと入る。

 

「最近、この街で変わったことなどはないか?」

随分(ずいぶん)漠然(ばくぜん)とした質問ですね」

「そうだな……人が消えたとか、理由もなく逃げ出したとか、逆に人が増えたとか」

要領(ようりょう)を得ませんね。でも、そうですね。ここの禿(かむろ)見習いで良いのでしょうか。盲人(もうじん)(目が見えない)の子だったのですが、楼主(ろうしゅ)身請(みう)けで買ったは良いけども持て余していたみたいで、最近、別の屋敷の人が引き取ったそうですよ?」

「ほう、盲人」

「禿見習いと言っても、元々教養があった訳でもないみたいですし、それを学ぶ為に禿にすることも出来なかったとかで。おまけに部屋に引き()もって毎晩泣くものだから、困っていたと(おっしゃ)っていましたわ」

「して、その娘は今?」

「さぁ? 気になるのでしたら屋敷は近くにあるみたいですし、行ってみてはどうでしょう? 瞽女屋敷(ごぜやしき)と呼ばれていますからすぐに分かりますわ」

瞽女(ごぜ)……なるほどな。それなら引き取ったとしても不思議はないか」

 

 瞽女とは、日本の女性の盲人芸能者である。三味線(しゃみせん)や琴、時には(つづみ)琵琶(びわ)の演奏を行っていたとされている。そして、そういった集団に屋敷が与えられる場合があり、その一つがここ、駿府にあるという。

 

(鬼の情報らしいものはなかったが、一度行ってみるか。また別の話を聞けるかもしれん)

 

 その後も、何か行為をすることもなく、ただダラダラと世間話をして時間を過ごしていく。話をして時間を引き延ばすのは本来なら遊女が行うことなのだが、ここでは逆で、とにかく創里が様々な質問を投げてくるので、最初はほろ酔いということもあってドンドン答えていたが、次第に酔いが()めると不思議に思うようになっていた。

 それを敏感(びんかん)にキャッチした創里は、腰を上げて「帰る」と告げた。不思議が不安。不安が不満。不満が疑念に変わる前に早々に立ち去る。慌てて引き留めようとする篝に対し、優しく声を掛けて引き下がってもらう。その時に、時間としては線香一本半程度しか経っていないが、口止め料として線香三本分の料金を支払っておく。

 

「よし、じゃあ次行くか」

 

 創里の遊郭通いは、鬼に関する情報を得る為の行動であった。

 夜に活動する鬼の情報は、表の人間では手に入りづらく、裏社会に精通した人間でないと分からないことも多い。鬼殺隊の情報網に掛からないような情報が市中(しちゅう)に転がっているとは考えにくいが、もしかしたらと思って裏社会と関わる機会の多い、夜の遊び場である遊郭に通うようになったのである。

 特に、今回のように格子級のランクの高い遊女になると、その客層もどこかの金持ちや高い身分などの上客が多い。そうなると普段聞けないような情報を得ることが出来る場合がある。

 勿論(もちろん)、遊女は口が硬く、無闇に他人の話をすることは早々ないが、そこは酒の力を借りて理性を(ゆる)くしてしまえば良い。話術だけで引き出せたら良いのだが、生憎(あいにく)と創里は他者を(あお)る言葉は出ても、心を開かせるような言葉は出せないと自覚している。

 そもそも、衛生面(えいせいめん)でも医療面(いりょうめん)でも避妊面(ひにんめん)でも、色々と信用も信頼も出来ないこの時代。仮にそういう目的だったとしても、不特定多数の遊女と(まじ)わった挙げ句に病気に感染して早死にしましたとか嫌過ぎる。

 

(鬼殺隊末代までの恥になるな)

 

 遊郭を出てしばらく歩くと、目的地と思われる建物が見えてきた。他が賑わっているだけに、この区域だけシンと静まり返っているのが少し気になるが、とりあえず行くだけ行ってみようと足を運ぶ。

 

「ここかな。想像よりも大きいな」

 

 屋敷と言われていたが、精々(せいぜい)が少し大きい程度の家を考えていたが、これは中々に立派な。門があるなどの、小さいながらも屋敷と呼べる(たたず)まいをしていた。

 門番はいない。門扉(もんぴ)を少し押す。(かんぬき)は掛かっていない。

 

(誰もいな……)

 

「っ! これはっ」

 

 門の先を(のぞ)き込んだ途端(とたん)、何かとてつもない違和感(いわかん)が襲ってくる。

 

(何が、何がおかしい? 見た目は普通。静まり返っているだけ。人の気配がないのは出掛けているのでは? いや、そういうことではない。でも、この嫌な感覚は……もしかして!)

 

 最悪の事態が頭に浮かぶ。そしてすぐに屋敷の中へ飛び込むと、とんでもない光景が目に飛び込んできた。

 

「死体……鬼か! しかしどこだ……」

 

 血だらけの女性の死体があちこちに転がっている。

 懸命(けんめい)に気配を辿(たど)っていくと、屋敷の奥に人の人間の気配を感じた。死体を踏まないように注意を払いつつ、全速力で生存者がいるであろう部屋の扉を開け放つ。すると、そこには泣きじゃくる幼い少女と、その前に立つ背の高い顔立ちの整った青白い肌(・・・・)の男性が立っていた。

 

「何だね、貴様は?」

 

(っ! この声……まさか!)

 

 原作ではなくアニメで聞いたことのある声。何よりも、この顔立ちはどこか似ているし、これまで()ってきた鬼とは気配が圧倒的に違う。

 

鬼舞辻(きぶつじ)無惨(むざん)……」

 

 思わずその名前を口にした瞬間、男性の目は見開かれて創里を(にら)み付けてくる。そして明確なそれだけで人を殺せるのではないかという程の濃密な殺気を放ってくる。その反応だけで、全てを物語っていた。

 上弦(じょうげん)の鬼と対峙(たいじ)する前にラスボスと出会ってしまったのであった。




 江戸コソコソ話

 駿府城は今川領地だった所を徳川家康が乗っ取り、築城し直したお城です。
 1635年に火災により焼失しますが、その3年後に再建(天守なし)されました。本作に登場するのは、再建された後の駿府城の城下ということになります。
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