いぬの生活 作:アスラン
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スマホの電子音がなり、それを停めて起き上がる
あんな事でも精神的に疲れていたみたいね
普段ならアラームの前に目を覚ましている
いつもどおりロードワークに出ようかと思ったけど、窓の外がまだ暗く
昨日の今日で少し躊躇われた
スマホの待機画面を見て苦笑いを漏らす、今日は日曜だった
昨日はやはり自分でも思った以上に動揺していたみたいで休みなのに態々アラームをセットしていた
-フッ
シニカルな笑いとは思うけど、少し笑えるくらいには回復した
LINEのアイコンにメッセージの通知数が表示されていた
私は着信数もあまりないことと、緊急なら直で通話してくるでしょう?の考えから普段から音を消している
(後で知ったのだけど、賢人さんも同じらしく・・・LINEの既読も返信も遅目なので少しやきもきさせられたわね)
通知を見てみると昨日の事でアフターケアなのかリーダーさんからだった
(・・・そうだった、
・・・苗字は、忘れて・・・いえ、訊いてないわね。今度改めて本名を訊かなくては。
杏子さんからはとりとめのない話と気晴らしでよければ少しセッションしないかというお誘いだった
・・・昨日抜けたバンドでセッションって
普段の私なら一笑に付したと思うけど、バンドメンバーとしてではなく気晴らしのセッションと態々言ってくれている
お礼も兼ねて良いだろう、もうひとりお礼を言わないといけないし
昨日の今日での一人の外出には、流石に母に心配されたが行き先とお礼を言いに行く旨を話て許可を得た
外に出てスタジオに向かう、流石に用心をしてスマホを片手に移動している
遠回りになっても人通りの多い道を選んでいた
もう大丈夫だからと昨日と同じ道を使う事は憚れた
(後日、警察も動いたのでしばらくあの周辺は巡回を増やされ安全だったと言われ少し微妙な気分にさせられたのよね)
スタジオに着くと杏子さんがもう受付にいた
「おはようございます」
「おはよ、みんなまだ来てないから座って待ってて」
「その前にすみません、これを」
母に持たされたお礼の品を手渡し、母に連絡を入れるので電話に出てもらうことを了承してもらい電話をした
「氷川さんってやっぱりいいところのお嬢さんだったんだね」
「いえ、うちは普通の家庭です」
電話も終わり、待合室の丸テーブルで
「お金持ちという意味じゃないよ?しっかりしてるっていう意味。普段の氷川さんの言葉使いとかからもそう思ってたんだけどね」
「そうですか」
「そうでした、柴田さんにもお礼をしたいのですけど」
柴田さんの分のお礼の品も持たされている、最悪杏子さんに渡せばいいのだけど
「シバケン?呼べば来るんじゃないかな?バイトかも・・・」
スマホを取り出すと、通話で呼び出す
「ら、LINEとかメールで先にお伺いとかは?」
「シバケンはスマホ気が向かないと見ないから、あ、私私、いまから昨日のスタジオ来れる?え、バイト中、バイトなんかしてたんだ?どしよ、氷川さんがお礼したいって態々来てくれてるんだけど?無理?うん、わかった伝えておくね」
通話が終わると杏子さんが
「ごめんね、シバケンバイト中だって。呼び出そうと思ったんだけど、今日は無理みたい。どうしよう?預かっておく?」
お礼の品を見る、直接渡してお礼を言うのが筋だし・・・
「ご迷惑でなければ、また取り次いでいただけますか?」
「うーん、いいよ。面倒だと思ったら本人に直電教えていいか訊いて教えるね」
含みもなく言ってくれて助かる
「あ、そうだ、教えておかないといけないことがあったよ」
昨日の事かと気を引き締めると
「違う違う、昨日の事じゃなくて、えっとね湊友希那って聞いたことない?」
湊友希那、噂には聞いてる孤高の歌姫だ
実物も、その歌声もまだ触れたことがない、私は
「一応は噂程度なら」
その湊友希那がどうしたのだろう?
「その湊友希那がバンドメンバーを探しているわ」
それがなんなのだろうと思っていると
「氷川さん、あなたならあの孤高の歌姫についていけるんじゃない?」
なるほど、私の新しい場所を提案してくれているのだ
本当人がいい
「そうですね、本人にまだあったこともありませんから選択肢の一つとして覚えておきます」
「そうして、それまではセッションとか練習くらいならうちで付き合うから」
どうやらバンドの質を上げる方法を変えたみたい
「しばらくお試し期間延長ですか」
「そういうこと、私としては願ったりだわ」
練習と考えればそこまで無碍にする必要もない
多分杏子さんに裏はないと思う
この人のベースは凄く上手いわけではないけどいい音を響かせている
(今思うと、Roselia結成当時の今井さんのベースにそこまで不満がなかったのは
それから湊さんと出会う少し前に柴田さんと再会した
あれから何かと世話を焼いてくれる杏子さんと一緒することが多くなった
共通の話題が音楽か柴田さんしか無いため
会えてもいないのに柴田さんに詳しくなっていた
杏子さん共々こちらの出身と思っていたら違ったこと
大学生であること、頭はかなりいいのに浪人をしていたこと
名前に関しては少しコンプレックスがあるらしいこと
子供の頃から黒が好きで、たまに変な事を言っていること
(・・・宇田川さんと同じよね。そう言えばあの二人が話してるところ見たことないわね。賢人さんが避けて・・・認識してないわね多分)
兎に角あまり接したことのない・・・男の人自体父と教師くらいしか接してないけど・・・変人タイプの人間であり
その突飛な所は日菜を連想させて微妙な感情にさせる人だという認識だった
柴田さんがどんな人だったか杏子さんの話だけで人物像が固まった頃にそれをぶち壊す再会をした
杏子さんと待ち合わせでスタジオを訪れたら
「え?あんたなにそれ??」
相変わらず先に来ている杏子さんと
大きなハードケースを持った黒づくめの人がいた
ハードケースまで黒とかどれだけ黒が好きなのだろう・・って
「柴田さん?」
「・・・・・?」
「氷川さんおはよ~、これみてよコイツまた変なもの持ち込んで」
ギターケースにしては大きく、キーボードケースにしては小さい?
「柴田さん、演奏されるんですか?」
素朴な疑問だった
「こいつピアニストでヴァイオリニストだよ」
なら小型のキーボード?
それより・・・
「あの柴田さん?」
反応がおかしい?
「あ、ごめん氷川さん、シバケン!!この子!少し前にお菓子もらっただろ?」
・・・え?もしかして?まさかでしょ??
「・・・?」
「この前警察行っただろ?」
「うん」
「どうしてだった?」
「偽善をしにいって・・・ん?」
まさかと思うのですが・・・
「あ、あの時のクッキー缶の家の子か、ありがとう美味しかったよ、いや僕クッキー大好きなんだよ♪」
「嘘でしょ?」
「いや、こういう奴なんだよ。数年ぶりだからって幼馴染の顔も忘れてたくらいだ」
忘れられていたとは、それも思い出したのがお礼の品のクッキー缶とは、なんか情けなくな・・・る要素がどこにあるんです!!
これだから天才って人種は・・・
「いやごめんね、正直三回は会わないと人の顔って覚えられないんだよ」
とんでもない事を言っている
「幼馴染の顔忘れてたのは?」
「お前はがらっと変わりすぎだし、二年も顔見てなければ仕方ないよ」
諦めるところ?切り捨てるの潔良すぎない?
更にクッキー缶と結びつけたから覚えたと思うと言われても・・・
「思うって・・・」
なんなのこの人、馬鹿よね?バカじゃないはずがないわ!
(この時はこんな人を好きになるとは思いもしなかったから、人生は楽しいのかもしれない)