いぬの生活   作:アスラン

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切りどころが解らず
きづいたら少しグダ長くなってしまいました。


いえ、決してガルパのPastel✽Palettesイベント頑張って・・・ました。

だってもう見ないと!
ちなみに石はなくなりましたが千聖さんはいませんorz
最後虹だったから一枚は出るかな?なんて喜んでいたら
花音ちゃんが2枚・・・あなたの親友が欲しいんです(泣)


十一話:天才って・・・

再会からいきなり疲れさせられた

その後もこの規格外生物(柴田賢人)はやらかしてくれ続けました

 

「なんですこれ?」

黒いハードケースに入れられたのは

「ツインネックギターです」

…先程の一件で怖がられてるみたいでかなり余所余所しい

見ればわかる、ネックが二本という変態ギター(個人的主観)だった

あと黒い、黒の中にオフホワイトで羽根のついた星が描かれていた

 

問題は…4弦と6弦という

「ギター・ベースのツインとか、なんてシバケン向け…」

そう一本?でギターとベースを扱うことになる

普通は6弦12弦との組み合わせがオーソドックスだと思われている

ギター・ギターの組み合わせがメジャーであり

ギター・ベースの組み合わせは使い勝手がいいとは言えない

当たり前だ、ベースとギターを同時に引くなんてありえない

「流石にシバケンでも両方を同時には弾けないよね?」

「手がもう一対あれば…」

真剣に言ってるなら馬鹿ですね

それ以前に…

「柴田さん、それ()けるんですか?」

知りたくて、それでいて答えを聞きたくない内容だった

「いや弾けないから杏子にベースとギター教えてもらおうと思ってきたんです」

…やっぱ…え?

「杏子さん…?」

「何?」

「杏子さん、ギター演奏()れるんです?」

「まぁ人並み以下程度には」

…それはダメじゃない?

「まぁ基本を教えることくらいはできるから」

なんて言っている

なんなのこの人たちは?

 

 

 

「…ベースもギターも弾いてる」

「面白いでしょ。基礎をしっかりやり込むんだけど習熟度がおかしいから」

幼馴染は慣れてるのか笑っている、笑えない冗談なのに

「まぁシバケンは弦楽器大好きだから」

大好きってなんなのかしら?

「こいつピアノなら初見でどんな曲も弾くからね、うちの教室でも先生泣かせだったから」

……あれ?

「杏子さんもピアノしてたのですか?」

「そだよ、シバケンほど才能なかったし情熱もなかったけど、楽譜の早読みと微妙な絶対音感は手に入れたよ」

この人も天才もどき(アレ)だったのか、そう言えばチューニングしてるところ見たことない事に気がついた

…チューナー使わずやっていたのね

類友って本当にあるのだと呆れたように見てたけど…

柴田さんは凄い反復練習をしていた

出来たら次、また次と新しい事をするものだと思っていたら

基礎の基礎の反復練習を見てるこちらが止めたくなるくらいすごい勢いで弾いている

「変わってないなぁ、練習嫌いだけど基礎練だけはやるんだよね」

基礎をおざなりにしないのは少し好感が持てるかも知れない

「まぁ教室に来てががががって基礎練やって、レッスン受けてたから」

前言撤回

 

「面白いけど、腹立つよね~。真面目にレッスン受けに来てる他の子なんか目の敵にしてたもん」

それで居づらくなって教室来なくなったんだけどね、と付け加えていた

「まぁあの頃は子供だからねぇ」

子供の方が素直に残酷だ、と困った笑い顔をしていた。

「でもシバケンはピアノ(弦楽器)はやめなかったんだよね…」

杏子さんが何かを言ったけど聞き取れなかった

 

 

柴田さんが延々と基礎練習をしはじめてどれくらい経ったか

それにしてもこれは異常な光景だった

それでも杏子さんは柴田さんを止めなかったし

柴田さんは指に極端に負荷をかけないように手を止めるときは止めていた

あの人たちにはあれが普通なのだと思うことにした

 

天才のやることはわからない

 

日菜とのことがあって私はそう片付けるだけで済ませてしまった

杏子さんも、柴田さんも日菜ほどの才能はないけど天才の部類なのだからと

今思うとそれは僻みにも似ていたのかもしれない

 

 

 

それからも杏子さんとの関係は不思議と続いていた

柴田さんは、結局

「腕が四本あっても無理だ…重いし」

ギター弾きながらベースを出来るはずもなく

サイドギターをしても逆にベースと同じリズム隊だしやっぱり弾けないと気づき

…普通最初に気づくと思いますが

でも折角のツインネックだからと

「持ち替えるの面倒くさいから、練習はこれでやる。筋トレにもなるし…」

どれだけもやしなのかと持たせてもらったら、意外に重かったのに驚いた

少しだけですが…

 

それから湊さんに見出され、ライブハウスを荒らしまわり(杏子さん談)

Roseliaになり日々忙しくなり杏子さんとは少し疎遠になった

やはり杏子さんは湊さんと組む事を自分の事のように喜んで送り出してくれた

…柴田さんは相変わらず「クッキー缶の子」という認識だったけど

LINE等での連絡だけは今でもしていて、湊さんとの活動で相変わらず心配をかけていたと思う

 

そして、頂点を見る事で周りを見ないように突き進んだ私は心配された通り

大きく転倒して身動きがとれなくなった

もう何もかもがどうでもよくなりそうだった…いえなっていましたね

 

そこに現れたのが柴田さんでした

相変わらずの自称偽善者はどこからともなくやってきて

いつもの、そして懐かしいスタジオに連れてこられた

「なんかすごい顔してるけど大丈夫?」

今思うと相変わらず失礼な人ですが、それよりなによりもう天才という人種が無差別に憎かった

天才というだけで…とにかく憎く疎ましかった

 

「天才天才って、天才じゃないのに天才の何がわかるの?」

一瞬その言葉に意識を持って行かれたけど、今の私はそんなことでは止まれない

「…天才じゃないんです!わかるわけないじゃないですか!!」

「でしょ?天才だったら苦労しないって思ってるよね?」

「あたりまえじゃないですか!!なんの苦労もせずになんでもかんでも真似して追い抜いて!」

もうどうでもよくなっていた、この先何もかもこんな感じならもう私の存在意義なんて…

「だからね、どうして天才だと苦労してないと思うの?」

「苦労してないなんて言わせない!!」

感情的になっている私に柴田さんが急に熱を失ったように一言

 

「だからどうして天才でもないのに苦労してないって言い切るの?」

 

同じ言葉なのに急に冷水をかけられた気分になった

先程までの勢いなら、馬鹿にされたと思い更に激高して返していただろうけど

その、柴田さんらしからぬ佇まいに私の勢いが削がれ

…急に不安になり、言葉が止まる

目の前にいるのに意識を向けられていない

 

「天才ってだけでなんでも出来ると思われたり、苦労してないと思われるんだよね」

つまらなさそうに言葉を続け

「天才なんて言葉がもう差別用語なんだよ?」

…確かに、天才という言葉で片付けられてしまうし片付けてしまう

「君の怖れてる天才も苦労してないって言い切れる?」

「日菜はなんでもできて…」

「なんでもできると苦労しないの?」

「なんでもできるのだから…」

「なんでもできるからなんでもさせられるし、出来ないと勝手に落胆されるんだよ?それってどう思う?」

「しかし日菜は…」

思わず言い募ると、柴田さんの熱がまた一段と冷めていくのがわかる

見えているのに見ていない、何を見ているのかわからない目をしていた

さらに不安になる

 

「日菜ちゃんはすごい天才なんだね。天才だからって差別されて、実の姉に疎まれて、天才ってだけで」

「そうやって皆日菜の肩をもつ…」

この人も私なんかより日菜に興味があるのだ、だからもう私なんかに

「肩を持つって、知らない子の味方なんかできないよね普通」

「日菜を知ったらみんな私から離れていくんです!天才じゃないから」

同じ双子(人間)なら日菜を…日菜を知ればRoseliaも私を必要としなくなるだろう

「ちょ、なんでそっちに??」

「私なんて面白みもないし、友達も少ないですし、取り柄はどんどん日菜に追い抜かれるし」

なにより、目の前にいる人にさえ認識されないとかもう…天才とかそんなことより泣きたくなった

 

「何女の子泣かせてんの!!」

スタジオに入ってくるなり杏子さんが柴田さんの頭をカバンでフルスイングしていた

止める間もなかった

-重くにぶい音がした

「え?よけない??」

叩いた本人が驚いている

「ちょ、本入ってるから殺傷力あったけど大丈夫?」

あまりのことにすべてが止まってしまった

柴田さんは椅子に座っていることも不可能らしく床に膝をついていた

「大丈夫ですか!?」

自分が泣いていたことも忘れて、蹲る柴田さんに駆け寄ると

「なっ!?」

強い力で手を取られ、柴田さんに引き寄せられ…

「さっきから天才天才ってぐだぐだぐだぐだと!」

凄い目で見られた…さっきとは真逆だった、しっかりと見据えられていた

 

「天才が苦労知らず?誰にも理解されないんだよ天才ってのは!」

まっすぐに、まるで自分の思いをたたきつけるような言葉

「孤独にさせられて、絶望して、弱いとこんなことになるんだよ!!」

そういうと左の袖をまくって見せられた…大きな傷跡が一本、大きな血管に沿う様に走っていた

その傷から目が離せなかった

 

リストカット(かまってちゃん)はバカだと個人的に思っていた

腕を切った(本気の)人には何も告げれなかった

そしてこの傷からは目が離せなかった、その覚悟と潔さをもった絶望に

確実に死ぬ気だったのだろう

この人なら首の血管でも平気で斬ったのかもしれないと直感でわかった

 

ただ死にざまを見せつけるように、世の中を、天才であることを恨んで死んでいこうとしていたにちがいない

 

「天才だからって…」

日菜にこんなことをさせてはいけない

日菜だからないとは言い切れない、現に目の前の人がそうだった…

 

天才だからと敬遠されて、勝手に期待されて、落胆され、貶され、絶望させられるなんて

「ごめんなさい…」

私は目の前の人に謝るようで、その先にいる日菜に謝っていた

姉なのに…魂を分けた双子なのに…

何を私は卑屈になっていたのだろう

今はもう泣くしかなかった

 

 

 

「あーなんか久々に怒鳴ったら疲れた」

落ち着いた頃、柴田さんが何故か機材の準備を始めていた

いつもみたいな調子で、ちょっとまっててねとスタジオを出ると、何時ものとは違うハードケースを持ってきた

 

「本当は見せる気はなかったけど」

入っていたのは、黒い、私のと同じM-Ⅱだ

相変わらず羽根の生えた星が意匠されていた

 

「真似されて追い抜かれると思っちゃうでしょ?」

…確かに気分はよくなかったと思う

「多分日菜ちゃんと一緒だよ、僕は氷川さんのギターする姿が格好いいと思ったからね」

そんなことがあるのでしょうか?…でも実際柴田さんは私を真似てM-Ⅱを持っている

恥ずかしそうに照れくさそうにストラップをつけて準備をしていた

 

「さて、身近すぎる相手だから多分気づけてなかったことを僭越ながら」

軽く指を動かして確認をする

…そう言えば柴田さんはよく左手の動きを確かめる事があった

変わった癖だと思っていたけど、先程の傷を思い出した

 

疑問を挟む前に流れてきたのは…これは「BLACK SHOUT」

天才に完コピされ、それを見せ付けられるのかと身構えると…

「え?」

全然違う?

わざと私と違う弾き方を…違う、まだ出来ないところを自分の出来ることでカバーして、機材でもごまかしを入れている?

ギター初心者ということを知らなければ騙されていただろう

日菜の天才が身近すぎて、天才と呼ばれる人は皆一緒だと思い込んでいた

この人も天才なのは実感できた

「もうこのレベルで聴かせれるなんて…」

違う、基礎練習が出来ているからだ

基礎をとにかく異常とも思えるやり込み方をしているこの人(柴田さん)だからだろう

 

基礎を応用して昇華する

昇華いい言葉です、昇り咲く華

Roselia(湊さん)の「頂点で狂い咲く」にはこの言葉も含まれているのでしょうね

 

日菜を模倣の天才だとすると、この人は応用の天才

そしてどちらも差はあれど礎が必要…いくら日菜でもいきなり難しい模倣を何もない状態ですることはできない、培ってきたものがあるからできる事だと

目の前の天才に演奏で教えられた

私が日菜に追いつかれて捨ててきた事、日菜はそれを大事に仕舞って蓄えて力にしていたのだろう

 

やはり日菜は天才だ、それが出来るから天才なのに気づけていなかった

簡単なことが出来る出来ないは人それぞれだ

日菜はそのできない事がたまたま少なかっただけ、私も少ない方だった

そして目の前の人(柴田賢人)は、できなかったことが多かった人なのだろう

 

「天才の概念がいきなり崩されましたね」

今までの焦りに似たあれは何だったのだろう

「そんな概念いらないでしょ?なんなら天才って言葉もいらないよ」

演奏()きおわり、どこを直したほうがそれっぽくなるかとか考えている柴田さん

「いえ、必要です」

「なんでさ?」

少し不満げだ

「天才であろうとする努力に対する賞賛する言葉が必要です」

そんなもんいらないけどねと言いながら、弾いてる本人に改善点訊けばいいんだと言い出した

自分の興味に意識が全て持って行かれているようだ

…こういうところは天才故の欠点なのね

 

「あの、いい雰囲気の中申し訳ないんですけど、そろそろ崩していいですか」

スタジオの隅から御伺いします的な感じで声がかかる

杏子さんが隅っこで正座させられていた

ツインネックの入っているあの重いハードケースを石抱のように抱えさせられて…

 

…柴田さんは結構抉いのかもしれない

そんな杏子さんを当たり前のように無視していた

…演奏のことに意識が割り振られているから認識していない

 

それにしても、同じ「BLACK SHOUT」()なのにアプローチが違うとこんなに変わるとは思わなかった

自分以外の演奏(やり方)は全く無視していた

それは天才の悪いところと同じなのでは?

違う、天才を蔑称としている人達の悪いイメージがこれかもしれない

そう考えたとき

私が一番天才を解っていなかった、わからないからこそ間違った怯え方をしていた

身近にいるのにわかろうともしなかったことに気づけた

 

それと

音楽も何事も道はひとつではないこと

追いつかれた、追い抜かれたと思っても道はひとつではない

頂きは一つではないし道もひとつではない

自分のやり方を、自分の道を、自分の音を昇華させていけばいい

 

他人の意見を求める天才

天才は独りよがりで人の意見を求めないと思い込んでいた

逆だった、人の意見さえ寛容に受け入れ取り入れていくのが天才

独りよがりでいたからこそ私はだめなのだろう

この歳下にさえ恥も外聞もなく教えを乞うてくる天才を見ていたらおかしくなってきた

気分がすごく楽になった気がする

 

「だからいい雰囲気のとこすみませんけど、マジもう許してください」

 

杏子さんの悲痛な叫びがスタジオに響いた

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