いぬの生活   作:アスラン

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七話:犬以上人未満

「なんなのあの素人は?」

撮影中私はとうとう我慢ができなくなり怒りをたまたまついてきていたかおちゃんこと薫にぶつけていた

「で、でもふざけてるようには見えないよっ…?」

私の剣幕に怯える薫

「ふざけてるなら、ぶん殴ってるわよっ!」

「まぁまぁ、今も練習…なのかな?」

あがっているのか全てがオーバーアクションでわざとらしい、舞台の動きよねあれ

「あぁいう演技もあるんだ…」

薫が変な関心をもっている

あぁいう(演技)が好みなのかしら?

オーバーアクションというか、正確には中二病というものよね?

後年わかったけど、中二病もオーバーアクションもナルシストも薫もみんな同じようなものよね?

「ことあるごとに苦しむのには何か理由があるのかな?」

左手を押さえたり、額を押さえたり、兎に角忙しいし煩わしい、ドラマには要らない動きばかりする

「あ、演担休憩いれたよ」

流石に素人相手に疲れたのね

残されたあの子は、悔しそうにしていた…あんな顔もするんだ

気分を入れ換えるためか、背伸びをして体を捻り体をほぐすと、ピアノの前に座った。

「どうして何かを抑えるように腕を掴むのかしら?」

必ずやってる気がする。

「なんかかっこういい…」

薫の情操教育によくない気がしてきた

「え?」

響いてきたのは爆音?

なにこの音?ピアノの音なのこんなの??私はこんな音出したことはない

「!!」

薫の目が陶酔している、凄くキラキラしてる…これはまずいかも

爆音みたいな音が抑えられていき、調った音が抑制された音が響いてくる

「なんなの?この音は?」

中からなにかが破裂しそうな音

力強いというより怖い

その音が更に制御され纏まった旋律に変化していく、なんなの?このとんでもない音楽は?

「すごい、綺麗な音になっていく…」

力強く正確無比、まるでCD音源のような音楽に変わっていく

「なんなの一体…」

訳がわからない

わかることは…あの男の子がこの音を出していること

「音楽も不安定なのかしら?」

あの爆音を聴いた後では今の演奏が嘘のようだわ

「…泣かない代わりに音で泣いていたんだよ」

薫が変なことを言う

なぜ泣く必要があるの?

「ちーちゃんは強いからだよ」

薫がそんなことを言うけど、よくわからない

「でも本当、上手いわね」

あの爆音がなければ素直に聴き入れれたのに

「よくわからない子ね」

 

 

 

結局、素人の舞台演技を越えれなかった男の子は、薫と交代になった、背格好が近く、薫の方がまだドラマ向けの演技ができたからだ

「演奏パートだけお願いします」

彼はただ頷いていた

そして、私は彼にバイオリンを弾く振りを教えられるはずが、演奏()き方を教わった

音楽は面白いと言うことを…人に教えるのがあまり上手くないなりに一生懸命伝えようとしてくれた

鬱陶しい素人から、不器用な器用貧乏に印象は変わった

撮影で薫の代わり(本来は彼の役なのだから変な言い回しよね?)で演奏をする彼は、薫じゃないけど『かっこういい』と思わず思ってしまった

あの爆音のことを忘れるくらいに…

 

「あなたのお陰でいいドラマになったわ」

独奏協奏(コンチェルト)パートの撮影が終わったら、元々メインの役ではない為彼とはお別れと思っていたのよね…

結局私のバイオリンパートは演技中、何回でも彼が演奏()いてくれた、だんだん自分が弾いているのではと錯覚するくらいになる頃には『かっこういい』は『恋心』に変わっていた。

今思うと、私ちょろくないかしら?

「礼はいい、こんなことしかできなかったんだから」

こんなことと言い捨てる彼のことは少しわかってきていた

「そう?でも私は、そのお陰で楽しく演技できたわ」

本当に自分が弾いてる気分を味わえた、脚本がピアノからバイオリンになって本当よかった

私の演奏じゃ駄目だったと心底思う、この不器用な天才の演奏だから私の演技も活きた、視聴者は私が弾いていると思っている人が殆どらしい、それくらいの出来だった

「…期待に応えられたのか」

歳不相応にシニカルに笑う、今もたまにするのよね。これは私にも言えるけど大人に囲まれて育った影響、よくも悪くも大人びてしまったのよね、

でも…それに対抗して幼児退行(中二病を発症)するのはどうなのかしら?

(…中二病の合間に大人びてる?)

本当よくわからなくて面倒くさい

 

でも、一緒にずっとこうしていたいかもと思わせられたのはこの面倒くさい男の子なのよね

 

別れは寂しかったけど、私は子役の女優よ?

大きくなった頃に「あの人に会いたい番組」に出て、再会してお付き合いをするつもりだったのに(母に凄く笑われた)

なに普通に大学進学で引っ越してきてて、何食わぬ顔で花音の家庭教師してたり、Roseliaの潤滑剤(殆ど紗夜ちゃん)してたり、ピアノ辞めてるし!

更に…

私の事忘れてるとか

かなり酷いわよね?

私よく怒っていきなり叩かないわよね本当…

うん、それしたらただの頭のおかしい人認定だからしないのよ

 

全く覚えてないって流石に堪えたわよ

 

私は結構追っていたのに…

え?番組、それはそれよ

 

コンクールに出なくなっていたことも知っていた

実は三藤さんや白金さんと競っていた事も知っている(本人は競っている感が全く無いけど)

妹に演奏後の花束のプレゼントを渡す役を御願いしたくらいには知っている

コンクール以後の足取りが追えないのは本当やきもきした、本当に「あの人に会いたい企画」に頼るしかないとか考えてずるずると時が過ぎ、

Pastel*Palettes(バンド)の話が来た、女優だけでなく名前にもう少し話題性という箔がつけば「あのひと企画」も来やすいと思ったのもある。

まさか番組企画の前に再会出来るとは…嬉しいけど、なんか納得いかないものを感じた、

企画が来たら彩ちゃんに出てもらうことにしようと思いつつ

…公然カップルという手段も取れるのではと最近の柴田さんの周りを考えるとかなり強引な方が良いのではとも考えている

 

本当、あんな面倒くさい男は、私くらい面倒な女の方が釣り合っているのに…

確かに紗夜ちゃんも…特に日菜ちゃんは面倒くさい上位ランクなのは友達であり仲間である私から見てもわかるけど…

まだあの二人はましじゃない?

…なんかポジティブに自分を卑下(ディ)するって訳がわからなくなってきたわね、え?ちなみに独り言じゃないわよ?

レオンが黙って聞いていてくれているもの

最近たまに迷惑そうな顔をするようになったのが気になるけど

兄で弟なんだから少しは付き合いなさい

え?妹?

…子供の頃に花束の代役とか色々お願いしたものだから、強く出れないのよ

柴田さんと再会したのはまだ話してないわよ

(絶対弄られるもの!!)

最近身長も伸びてなんか勝手に私の服を着たりするくらいになっているのよ…

余裕を見せていないと姉としての尊厳が揺らぎそうよ

レオンが膝をぽふぽふと叩いて慰めてくれる

なんか少し複雑な気分になる

なんなのその余裕は?

弟の癖に兄ぶってるの??

このお見合い申込み急増中のリア充!

 

 

 

(柴田様…本当、貰うか徹底的に振るかなんとかしてください)

あのあとお酒を飲んでもいないのに延々と愚痴られ…

(お嬢お友達に素直になりましょうよ…)

花音さんにもこのような姿は見せてないでしょうし

(柴田様にもそろそろ知らない振りはやめていただかないと)

記憶の共有でダイレクトではないにしても、幼少期にお嬢と出会ってることは伝えられたはずですけど

(柴田様の記憶は解りにくくて、特に過去の事は無くしているのかもと思いたくなるほど少ないですよね)

思いきりの良い記憶の住み別けなのですよ、要るものと要らないだろうという潔さ、頭おかしいですよね?記憶容量をどれだけ節約しているのかと

その中でも微妙な位置にある記憶

(お嬢をみると反応する記憶なんですよね、氷川様にも反応しますけど…なにか鍵があるのでしょうか?)

ご友人にも反応していますしね。

多分本人も気づいていないというか…忘れてますね。

一度入れ替わった身としては、再度入れ替わった時に記憶を無理矢理開く事に挑戦するのもやぶさかではありません

お嬢のためにも…そして

「柴田さんはぁ…」

抱き枕にされるこの身のためにも

柴田様の(共有)した記憶によると、柴田様も抱きつかれて…あれ?

(お嬢…かなり脈が出てきていますよ)

また車の運転をしたいと願いしなくてはいけませんね。

 

 

あと、少しお節介なお説教をさせていただきましょうか…




久々のいぬパートかもしれません
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