いぬの生活 作:アスラン
レオンさんに悪いことをした気がする
ドックランでの騒ぎ
主に騒いでたのはパスパレメンバーなんだけど
他の利用者にもなんかいろいろな視線を送られた
僕なんかしたの??
「いままでこんなそぶり見せたことないのに、本当大丈夫なのレオン?」
今は白鷺家のリビングの定位置で千聖さんに膝枕?をされながら頭と背中を撫でられている
お昼のドッグランでの一件
どうやら意識せずになにかやらかしていたみたい
パスパレメンバーだけではなく、他の飼い主さんにまで「すごい」だの「犬なのに紳士」「犬でもいい!」とか言われたけど
僕はいつもどおりの偽善を…
…
……
………
レオンさんごめん、普通犬はしないよね偽善とか…
まずい、犬に怒られるとか普通に受け入れてるよ僕
「彩ちゃんの話だと、すごい勢いでも走ってたっていうし」
四足走行最高!
AWDの車買うよ僕!!
元に戻ったら今の車好きだから、頑張って二台維持する!!
…うん、バイトしないとね
花音ちゃんのとこ以外かぁ
なんて考えていたら
「こら?聞いてるの?」
え、お説教だったの?
「あの日からなんか柴田さんに感化されてないかしら?」
顔を少し強目にもふもふされる
感化もなにも、本人なんだけど
「もう、歳なんだから無理とかして心配させないで頂戴」
本気のやつだった、この顔は始めてここに来た時にも見せられた
申し訳なく思っていると
また膝に上に頭をのせてくれて撫でてくれはじめた
入れ替わって二週間が過ぎたんだよね
あまり無理をしないようにしつつ過ごしているつもりだけど、レオンさんの体、そんなに高齢には感じないんだよね。
むしろ動けるのを我慢している気がする
なんでだろう?
あれだけ動けるのに??
よくわからないけど、よく人で言う30代40代を脂が乗っているというけどそんな感じかな??
こればかりは本人(犬だけど)の考えだからなんとも
「それにしても、あの短い間に色々あったみたいね?」
あれ?なに?
千聖さん?
笑ってるよね??
笑ってるよね???
「彩ちゃんと日菜ちゃんが事細かに教えてくれたけど、なにしてるのかしら?」
え、なに?
さっきまでのシリアスは?
なんかいいムードだったのは??
「レオンはいつからそんな悪い犬になったのかしら?」
痛くないけど顔を両手で挟んで目線を合わせるようにしてくる
「あなた今日何をしたのかしら?」
なにをって、走りやすかったから限界を試してみようかと・・・
「どこの世界にボルゾイというハウンド系をぶち抜くレトリバーがいるのかしら?」
遠縁にグレイハウンドとかいるんじゃないのかな?
「・・・ゴールデンレトリバーも造られた犬種だからどこかで混じってるのかしら?」
そうそう、きっとそうだよ
「それはまぁ置いておいて、無茶はしちゃダメって約束したわよね?」
無茶?全速力してただけだけど??
「どこの世界に犬の誘拐犯に突撃かましてノックアウトする犬がいるの?」
助けてって言ってたから思わずそのままの勢いで突っ込んじゃいました
人の姿ならいい飛び蹴りができたと思う!
・・・僕の身体じゃ無理だろうけど
「・・・柴田さんじゃないんだから。誰でも彼でも助けなくていいのよ」
え?
「どうも最近のあなたはあの人みたいに綺麗に生きた証を残そうとしてるみたいで不安になるわ」
え?誰それ??僕じゃないよね???
綺麗に生きた証ってなんか嫌だよね
「あなたは私にとっては弟であって兄であって大切な家族なのだから」
千聖さんの顔が目の前に
いつもの凛とした姿はなく
歳より幼く見えた
「もう、生き急いでるみたいなことはしないでね」
人と人がするように額をくっつける
想いがまっすぐに伝わってくる
そうだね、レオンさんの体だしね
レオンさんが全力で動かないのは千聖さんとの約束なのかな?
「それにしても・・・彩ちゃん達が見た、格好いいレオンも見たかったわね」
額でぐりぐりしないで
まだ怒ってる?怒ってるよね??
「今日本当るん♪って来たんだよ!」
Roseliaの練習帰り何時になく興奮気味の日菜と一緒になった
パスパレのメンバーでドッグランに行っていたらしい
レオンさんが何か凄かったらしい
らしいというのは、日菜のとりとめのない感覚話だからだけど
帰り道からさっきまで延々とその話題だったから内容は十分に理解できた筈
後で丸山さんと答え合わせをしてみましょう
でも正直日菜がここまで興味を示してるのが珍しい
人ではなく犬なのが余計に混乱を招いているけど
「ボルゾイやコリーより速かったのですか?」
確かボルゾイはハウンドの血統でかなり足の速い犬種だったと記憶している
コリーも速い犬種がいたと記憶している
『そうなんだよね、軽く走ってると思ったらだんだん速くなって、気づいたらそんなことに』
電話の相手である丸山さんに、みんな犬種には詳しくないので不確かな話と付け加えられたけど
「日菜に聞きましたけど、捕物があったとか」
日菜が一番話していたから少し気になっていた
『うん。やっぱり血統書とかで高い犬が多いのと…』
少子化で子供の代わりに犬を愛でている世帯も多い
身代金目当ての本当の誘拐というわけだ
「それをレオンさんが体当たりでのしてしまったと」
ゴールデンレトリバーの体当たり
話だけで判断してもかなりの速度での体当たり
『凄かったよ、悲鳴と鳴き声?と思ったら、犯人が吹っ飛んでたから』
それ、レオンさんの体的に大丈夫だったのかしら?
『日菜ちゃんが言うには、身体に頭から突っ込んだんじゃなくて…』
足下から顎めがけて少し体を丸めて首から背中でぶつかったと…
「・・・・・・なんですそれ?」
犬の動きなの?
『私もちゃんと見てないから何とも言えないけど、日菜ちゃんの話だから』
なら間違はないというか、何回も聞いている私より丸山さんの方が理解しているの?
現場にいたからよね・・・
『紗夜ちゃんどうかした?』
「気にしないでください、少しアイデンティティが揺らいだだけです」
『?』
丸山さんとの通話を終えて物思いに耽ける
レオンさんの動き・・・白鷺さんがそんな動きをさせるはずがない
いや、もしかしたらボディガードとして・・・
邪魔な人間を消すとか・・・
「私の冗談は笑えないわね」
レオンさんの動きは多分レオンさんの意志だろう
それにしても
「・・・賢人さんみたいなことをするのね」
動きの話じゃない
あのもやしにそんな動きはできない
でも誰もが動けない、動かない時に動く、動こうとする
その心のあり方が似ている?犬だけど・・・
本人は「偽善者だから、偽善をしないとね」と片付ける
その心の元はわからない
けど、その歪でわかりにくいのを私はよしとしてしまった
「本当、なんであんな面倒くさいのを好きになったのかしら」
それにしても最近の私は前にも増しておかしい
どうして犬であるレオンさんの事で賢人さんに繋がるのか
「それだけあの人のこと考えてるのかしら?」
自分で言って気恥ずかしくなった
ね、眠れない・・・
あのあと、なぜか眠ってしまい
気がついたら
「・・・・・スゥスゥ」
小さな寝息をつく千聖さんが隣に
人の姿に戻ったのかと一瞬思ったけど
レオンさんの体のままだった
抱き枕にされてしまっている
犬の姿とはいえ、その、なにこれ?
すごくドキドキするんだけど・・・
あれ?なに?なんでこんな?
レオンさんの記憶に引っ張られてるの??
・・・千聖さんあったかくて柔らかいんだね
じゃなくて、どうしよう、どうなってるの?
よくわからない
なにこれ
眠れない・・・
ドキドキして眠れないよぉ