いぬの生活 作:アスラン
―3日目
「先生?サイドバッシャーでくるのやめちゃいましたか?」
教員用駐車場に止めて荷物を出していると、初日のゆるふわちゃんが声をかけてきた
「おはようございます、早いですね?えっと、広町さんでしたね」
本日授業があるため名簿に目を通させてもらったので覚えた
「はい、広町です♪」
ふにゃっと笑う、今まで会ったことの無いタイプだなと思っていると
「先生はバンド関係者ですよね?」
…いきなりぶっこんできたけど
「そうだけど、どこかのスタジオで見かけたのかな?」
隠すことでもないので肯定すると
「やっぱりですよね、CiRCLEで
「そうなんだね」
…会話終了、と思ったら
「黒のツインネックですよね?」
…最近はstrandbergばかりなんだけど?いつ見られたんだろ?
「あと黒のM-2に…特注なんです?黒のベースなんてstrandbergにないですよね?」
…あれ?なんか、地元に居たときのような寒気が?
「あれ?私、何か変なこと言いました?」
目の前の生徒に違和感を覚えてしまい閉口していたら、そんな事を聞かれた。
ふと思い当たったのは日菜ちゃんや僕がよく指摘される「主語の無い、相手も判っている前提の話し方」だった
「いえ、広町さんはかなり記憶力と洞察力が高いのですね、驚きました」
「そんなことありません、私普通ですから」
何故か慌てて否定するとそのまま慌てて校舎に戻っていった…
多分日菜ちゃん並だなと感心していると
「柴田くんどうした?なにかトラブルかい?」
会議室の窓から草加さんが身を乗り出して声をかけてきた、良く通る声が羨ましい…というか、もうそんな時間??
大丈夫とサインをして頭を下げて荷物を持ち校舎に慌てて向かう
あれ?でも他の職員の車まだそんなに無いよ?
「先日からお世話になっている、教育実習の柴田です。短い間ですがよろしくお願いします」
初めて授業を受持つクラスなのだけど、視線がおかしい?
挨拶しただけだけど…僕もうなにかやらかした?
指導担当の先生もなんか変な顔してるし?
「先生質問よろしいですか?」
どこかで見た気がする生徒が手をあげる、まだ授業始めていないのだけど?
「どうしました?桐ヶ谷さん」
写真よりは綺麗だけど、もう少し髪に注意を払ってもいいのでは?という長さと綺麗さをもった子だ
「私達自己紹介していませんけど?名前と顔一致していますよね??」
そんなことか
「はい、受持つクラスの皆さんは名前と顔を一致させていますけど、どうかしましたか?」
指導担当の先生をはじめ一部を除いて小さな動揺がおきている
あれ?これ普通やることじゃないの?名前と顔の一致って
「え、えーっと、彼女!彼女の名前わかりますか?」
桐ヶ谷さんの指した生徒に目を向けると…あぁ
「平野さんですね?あっていますよね?」
確認をとるとまた動揺が走る
彼女は髪の長い子だったのに切ってしまったらしい、実にもったいないと思う。見せてもらった写真では綺麗な長い黒髪だったのに、今はショートボブ位になっている。
「えっと、彼女は?」
また一人指名されるが
「洲崎さんですよね?」
また動揺が走る
この子は逆に、エクステでロングにした髪を後頭部でシニョンに纏めている、ちなみに髪質はよくない。エクステの方が綺麗かもしれない。誤魔化している。
スタイリストさんの腕が良いね、お見合いか何かの準備かな?
「…なに?本当になにものなの?」
ぽそっと呟く桐ヶ谷さん
聞こえているけど聞こえないふりをしておこうと思ったら
「トーコちゃん、柴田先生だよ?」
怖いゆるふわな広町さんが桐ヶ谷さんに指摘してる、トーコ?あれ?桐ヶ谷トーコ??最近耳にしたような?関係無さそうで記憶に残ってない
「ほら、あの変態ギターとトーコちゃんが真似して買った黒のギターの人だよ?」
変態ギターってツインネックだろうな、格好良いのはギター?ベース?って、桐ヶ谷トーコも知ってるのか?
流石にその言葉と、それに驚いたのが表情に出たのか他の生徒が
「柴田先生!先生も軽音楽を嗜んでおみえなんですか?」
なんて質問が来だした
初回授業からこれはまずいと指導担当教員を見るとなにか微笑ましい顔をして話を促している
え?なに話せば良いの??
困っていると
「柴田先生緊張されてますか?まずは私達とお話しして親睦を深めましょう」
なんて言い出す生徒まで
「えーと正直(大勢の人と話すことに)慣れてなくて困惑してます」
「(女性と話すのに)慣れてないなんてお可愛いですね」
まってなんで可愛いと?言われるの?
「なんて泣き言いってました」
本日もグループチャットをしている…私暇人みたい?仕事はしてるし明日は差し入れをするつもりで準備もしてある
『見ました!ていうか、あたし当事者です!』
月ノ森の生徒さんが今日も元気?
『昨日のアレに比べたら、もう大人気ですよ!可愛いのにスマートで気づいたら授業に入ってましたから、担当員の先生も驚いてましたよ!』
アレって草加さん(仮称)かな?
『賢人さんってまとまに教えれるのですね…』
『お兄ちゃん教えるの上手だよ?なんというの、引き込むのが上手なのかな?』
家庭教師の生徒の証言も出てきた
『そうです!それです!気づいたらみんな授業に引き込まれてました』
『…そういう類いの本を読んだのかしら?』
『うーん、興味あることへの共有化?そういうのじゃないかな?
言われてみれば、気づいたら普通の人よりは詳しくなっている、見ただけでバイクの名前が判るくらいにはなってるとかちょっと怖い
『それって、一歩間違えるとなんかの団体とか興せそうだよねー♪流石ケントくん♪』
そっちには行かないように願いたいです。
『政治家からテロリストまであらゆる道が見えてるって…気持ち悪いわね』
『そうですね』
約二名が落としにかかってませんか?
『でも授業面白いし、分かりやすくて好評ですよ?あたしも現国とか古文なんてあまり得意ではないけど、少し見方が変わりました』
そうなんだと感心していると
『まだボロが出てないようね…』
『鍍金が剥げるのは何時でしょうね?』
あくまで
賢人くんには逆効果だから
『紗夜さんと千聖さんが言うなら気を付けてますね?』
ほらもうフラグ立ってる
まぁ、無自覚にへし折っていくのも賢人くんなんだけどね
しかし、まだ3日目なのに…
多分草加さん(仮称)にはもう嫌われてるんだろうな
気にしてなければ良いけど
休みに愚痴くらい聞いてあげようかなランニングに連れ出して
読了ありがとうございます。
…おかしい…シロが全然出てこない( ̄▽ ̄;)