衝動的。電気系ってもっと強くて良いよね。
初回なので短いです。
この世界には「個性」なんてものがある。
個性ってのはまあ、言うなれば超能力みたいなもんだ。口から火を吹いたり、とんでもないパワーを発揮したり、それと……電気を体に溜めることができたり。
昔は異能とかそんな呼び方もされていたらしいが、今は皆個性って呼んでる。なぜなら、もはや個性があって当たり前の世界だから。
人口の約8割が個性を持った超人社会。10人中2人は無個性って考えたら意外と多くね?なんて思ったこともあったが、実際はクラスに数人どころか学校に数人くらいしかいなかった。多分インドとか中国とか人口が多い国に固まってんだろ、知らんけど。
ともかく、個性は異能でも超能力でもない、普通の人間の能力となった。故に、個性。
とはいえ、元々は人になかった能力。個性を使って悪さをする
今やヒーローは立派な人気職業。人知れず蜘蛛や蝙蝠のピッチリスーツで街を歩く変態ではなくなった、らしい。俺が産まれるだいぶ前のコミックのことだから、詳しくは知らねえけど。
ともかく、そんな事になれば当然子供はヒーローに憧れる。カッコイイもんな、ヒーロー。だから俺、上鳴電気がヒーローに憧れるのも、まあ当然と言えば当然だった。だって俺、電気を扱えるとかいう強個性だし!
あと、これは全くもって関係ないが、ヒーローってのはモテるらしい。ダチが言ってた。
3歳の時、指先から電気が出た。
色々調べた結果、俺の個性は電気を纏える個性らしい。医者や母ちゃんは帯電だって言ってた。父ちゃんも同じような個性だったからそう思ったんだと。
でも、違った。俺の個性は電気を纏うだけじゃなく、溜めることも、放出することも出来た。放出する電気もある程度は指向性を持たせられるし、強弱の調整も出来た。
それを聞いて、周りの大人たちは皆口を揃えてこう言った。「とても強くて、カッコイイ個性だ」、「ヒーロー向きの個性だ」と。
俺がヒーローに憧れてたのを知ってたから、お世辞で言ってくれたのかもしれない。でも、その時の俺は嬉しかった。舞い上がった。
だから、ひたすら鍛えた。個性は当然のこととして、ある使い方を閃いてからは身体も鍛えた。電気に関してもめちゃくちゃ勉強した。体内電気についてや、ただ放電するんじゃなく電磁波として放出したり、電気による磁力で金属を動かしたり、発生する熱を利用してみたり。おかげで理科の、電気や磁力の部分は高校、大学の範囲でも割と理解できるようになった。他はちょいビミョーだけど。
シンプルな特訓もしてみた。ひたすら電気を浴びて容量を増やしたり、ひたすら放出して操作できる量を増やしたり。
そんなこんなで、俺は大好きな女の子にも目を移すことなく(たまに誘惑に負けてたかもしれねー。だってモテるし)自身を鍛え、中学3年の卒業を間近に控えた春。ついに、雄英高校受験の日がやってきた。
「うお、デッケー」
日本でトップのヒーロー育成学校、雄英高校を前にして、思わず呟いちまった。いや、マジでデケェんだもん、これ。
俺が受験するのは、雄英高校ヒーロー科。倍率が300倍とかいう狂った学科だ。その雄英のヒーロー科と言えば、何人ものトップヒーローを排出してきた超名門だ。だからこそのこの倍率。まあ推薦入学を除けば36人しか受からない超狭き門。しょうがねえっちゃしょうがねえ。
本番当日になれば少しは緊張するかと思ったが、案外そんなことはなく、むしろ俺は楽しみでしょうがなかった。なんせあの雄英ヒーロー科の受験である。ここを突破できずどうしてトップヒーローになれようか。マジで燃えてきた。
ここから、始まるんだ。俺のヒーローへの道が。
落ちるかもとか、そんな不安は全くない。ぼちぼち始まった筆記に関しても特に問題はなかった。俺はアホだけどバカじゃねえし。
そして、こっからが本番、実技試験。
試験の説明はあのプレゼント・マイクがやってた。俺はリスナーなんだよ。受験勉強とか特訓の時めっちゃラジオ聴いてた。
その説明によると、ともかくロボットを倒しまくれば良いらしい。それぞれ1〜3のポイントが割り振られてるとのことだが、あんまし関係ねえかもな。0Pのお邪魔ロボもいるらしい。ますます関係なさそう。
「かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!」
試験について考えていたら、ふと意識が彼に向けられる。
「
それは、プレゼント・マイクからの激励。そして雄英の校訓。
…………痺れるぜ。
「おっし、36P!」
試験が始まってからしばらく、俺はロボに電流を流すことでポイントを稼いでいた。正直この試験、俺に有利すぎる。減った電力もロボから充電できるし、ロボから漏れ出る微弱な電波を感知して索敵もできる。受け取った電波を視覚として脳に電気信号を送れば、電磁波やらも目視することが出来るのだ。マジで有利だなこれ。
ただ、いまいちポイントが伸び悩んでいるのは……。
「死ねェ!」
近くでひたすらロボを爆破させてるとんでもないヤンキーがいるからだ。
「俺んだぞ!盗んじゃねえクソ電気!!」
「クソ電気は安易すぎんだろ!っと」
横からやってきたロボから電気を奪って行動不能にさせる。これでまた充電できた。にしてもこいつ倒しすぎだろ。おかげで他の奴にロボが回ってねえ。というかめちゃくちゃこいつに集まってる。
「流石にこの量はキツいんじゃねえの!?ヒーローらしく協力しようぜ!」
「誰がてめェみたいなザコとすっかよ!1人で十分だ!」
爆破ヤンキーが派手にやるせいで更にロボが集まってくる。ポイントは稼げるようになったが、ここまで多いとちょっとめんどくせえ。
そんなこんなでヤンキーから罵倒を受けつつポイントを稼いでいると、何か大きな電力を感じた。まさかこれって…………。
背後のビルが轟音と共に崩れ、それよりも更に大きなロボが現れる。
0Pのお邪魔ロボ!?電力の大きさからして嫌な感じはしてたけど……デカすぎだろ!
当然、受験生は巨大ロボから一目散に逃げていく。中には腰抜かしたり、叫んでるやつもいた。
「……………………」
「ちょっとあんた!さっさと逃げなよ!」
つっ立ってる俺を見て、耳からイヤホンジャックみたいなもんを垂らした女の子が腕を掴んでくる。こんな状況でも他人を思いやれるなんて、優しいな。さすがヒーロー志望。
でも、だからこそ。
「……ここで逃げたら、誰がアイツと戦うんだ?」
「え?」
「皆アイツから逃げてる。ビビって動けなくなってる奴もいるし、いつ追いつかれるかもわかんねえ。だからこそ、アイツに立ち向かえるのはヒーローだけなんじゃねえの?」
そうだ。例え試験だとしても、ヒーローが逃げたら誰がやるんだよ。
「お前もそう思うだろ、爆破ヤンキー」
「……初めて気が合ったなぁ」
俺と同じく、全く逃げる素振りを見せなかったヤンキーが前に出る。
「「ブッ飛ばすぞ!」」
ヤンキーは両手を爆破させながら、その勢いで進んでいく。俺も身体に電気を流すことで身体能力を強化し、巨大ロボに突っ込む。
「お前飛べるなら上の方やってくれよ!俺は下から動き止めっから!」
「俺に命令すんなクソ電気!!」
そんなことを言いながら素直に飛んでいくヤンキー。ツンデレか?
まあ、信じて任せてくれたってことにしておこう。その方がモチベ上がる。
キャタピラみてえな下半身の部分に近づく。走りながら右手に溜めたエネルギーは更に高まっていく。
「最大出力────」
そして、1つも漏らすことのないように。右手だけから放電する。今まで溜めた電力を無駄にすることなく、全てを。
「
瞬間、巨大ロボの全身に電気が巡る。精密機械であればある程ショートさせやすい、っつーか機械を壊すのは得意なんだよ。
動きが止まる。
「今だ!!」
「だから命令すんじゃねえ!!」
上空で火の塊が突っ込むのが見えた。こっから見ると花火だな、人間花火。
少し後、今までとは比較にならないほど大きい爆破が巨大ロボをぶっ飛ばした。えー、試験後半とは思えない威力。スロースターターなんですかね?まあいいや。
「うぇーい、カンペキ」
「すご……」
後ろにいたイヤホンの女の子が呟く。やべ、今のアホっぽい発言聞かれたかな?あんま電力使いすぎるとアホになるんだよ、俺。女の子の前では死んでも見せたくないので周囲の電気で充電する。あー、キマるぜ。
残ったロボ数体から電気を貰っていると試験は終了した。まあ受かってるだろ、流石に。0Pのタイムロスで落ちてたとかだったら……まあ別に関係ないな。どこの高校だろうとヒーローは目指すし。雄英が1番良いけど。
後日、家に雄英からの封筒が来た。プロジェクターにオールマイトが映されて、結果を発表する。試験は受かってた、どころか2位だった。いや、1位誰だよ。俺の個性とあの試験内容で1位になれないとか流石雄英。てか電気使えるならロボの試験くらい1位で通過しろよ、俺。
まあ、そんなこんなで俺も春から雄英に行くことが決まった。両親はガチでビビってたな、まあ俺普段はアホだし。実際は勉強もほどほどに出来るんだぜ、物理に比べたらビミョーってだけで。
とりあえず入学式まで暇になったから特訓は続ける。むしろ受かってからが本番だしな。中学のダチと遊んだりしながら。雄英受かってからは更にモテたから忙しかったぜ。
あと、試験で見た爆破ヤンキーの動きを思い出しながら真似してたら筋肉痛がエグいことなった。個性の応用でパクリは得意なのに……。アイツやべえわ、絶対入試1位アイツだろ。
アニメで壊理ちゃんの笑顔見て泣いた人はたくさんいるはず。