葉隠との事件もひと段落つき、オールマイトから戦闘訓練のルールを説明される。何かスゲー疲れた。
今回のルールでは、二人一組でヒーローチームとヴィランチームに別れてやるらしい。ヴィランチームは核兵器(ハリボテ)を持ってビルに籠城。勝利条件は配られたテープで相手チームを確保するか、制限時間である15分の間核兵器を守り通すこと。ヒーローチームも同じく相手をテープで確保するか、核兵器にタッチすれば良い、と。アメリカンな設定だな。
チームはくじで決め、俺は耳郎と同じGチームになった。多分俺の電磁波サーチじゃビルの上階まで把握できないから、他に索敵できる奴がいると助かる。耳郎とは個性トークもしたからお互い何となく能力わかるし。
「同じチームじゃん。縁あるね」
「それな」
隣にいた耳郎がふと呟く。確かに入試で会ってから妙な縁あるなあ。音楽やファッションの趣味も似てるし、席隣だし。登下校も一緒で話も合うときた。これもはや運命じゃね?相性良すぎだろ。相性良いってなんかエロいな……。
「なんかやらしー顔してる。葉隠のことでも思い出してんの?」
「ちげーよ。てか葉隠に関してはマジで反省してっから、俺」
ちょっとエロいこと考えただけでバレた。いや、葉隠のことは考えてねえけどな?ジト目で睨んでくる耳郎に弁明する。
「冗談だって。上鳴が嘘ついてないのはウチわかってるし。……それよりさ、葉隠ってどんな顔だったの?そこはちょっと気になるかも」
「あー!私も気になるー!」
横から会話に入ってくる芦戸。聞いてたのか。
「んー。こればっかりはなんと言うか、本人のアレだしなあ」
「紳士ぶってんじゃねぇぞ上鳴!良いから葉隠のおっぱ───」
突然荒ぶりだした峰田が梅雨ちゃんの舌でしばかれる。良い音したなあ。
「私は全然良いよー?上鳴くんがエッチなこと言わないならね!」
横から顔を出す(多分)葉隠。許可が出たので容姿に関しては説明しても良いってことだろう。つーか裸に関しては言わねえって。
「まあなんだ、あれだったな。見たことないレベルで美人だった。綺麗系っつーか、黙ってたら冷たい印象与えるほどの美人って感じ?」
「えー!意外!」
「たしかに。……というか、ちょっと褒めすぎじゃない?」
「いや、マジで他意はねえから。思ったまんま言っただけだって」
「……ふーん」
再びジト目になる耳郎。なんだこれ、浮気を問い質されてる気分だ。葉隠が照れるから余計に芦戸が興奮し、耳郎のジト目が続く。芦戸はあれだな、恋バナ大好きなんだな。恋バナじゃねえけど。耳郎のアレは嫉妬とかじゃなくて、女にうつつを抜かす馬鹿な男に呆れてるだけだ。
「なあ……。そんな美人のおっぱい見たのかよ。下も見たのかよ。おっぴろげの全裸をよぉ!」
峰田。お前マジでいい加減にしとけ。男だけの時ならいくらでも付き合ってやるから。
ちなみに、準備しに行った緑谷、麗日、飯田、爆豪以外の全員が聞き耳立ててた。まあ葉隠の容姿気になるもんな、しゃーねえ。
その後、緑谷&麗日vs爆豪&飯田の戦闘訓練をモニターで見た。結構みんな自由というか、感想とか発言し放題だ。ゆるいなー、オールマイト。いや、相澤先生が厳しすぎるだけか?
爆豪と緑谷はやっぱ因縁があるらしく、かなり派手にやり合った。てかやりすぎでしょ、緑谷ボロッボロじゃねえか。今の爆豪は絶対弄らんとこ。殺される。
次は轟&障子vs葉隠&尾白。個人的には葉隠チームを応援してたけど、一瞬で轟チームが勝っちまった。なんで葉隠チームを応援してたかって?葉隠と尾白という一見地味な個性が、轟とかいうド派手個性に勝つとこを見たかったからだ。思ったより轟が強かったせいで見れなかったけど。ありゃ反則だ。
そして何個か別チームの戦闘が続き、ようやく俺らの番が回ってきた。相手は切島&瀬呂チーム。俺らがヒーロー側だ。切島は体を硬くできるとかいうシンプル故に強い個性。瀬呂は肘からテープを出す。一見弱そうだが、強度や射出距離、速度や粘着力が結構あるらしく、個性把握テストで見た限り厄介そうな個性だ。つーか相手の個性の情報が少なすぎる。個性把握テストでしか見てないからなあ。切島と瀬呂は見りゃあわかりやすい個性で助かった。
ヴィランチームはヒーローチームより5分ほど早くビルに入り、核兵器を置く部屋や作戦を決めている。ヒーローチームの持ち物は小型無線とビルの見取り図、確保テープのみ。つーか俺の特製電子変換無線、腐ってんな。まあいつでも小型無線配られるって訳でもなさそうだし、いつか役立つか。今回は出番なしってことで。
「ウチの個性は話したよね……。まあ詳しく言っとくと、コードはそれぞれ6mくらい伸ばせる。あとプラグを足のスピーカーに刺せば、音波に指向性を持たせることもできる、って感じかな」
「…………おっけ。俺は核の近くじゃ放電できねえから、指向性持たせられるのはありがたいな」
「できないの?何で?」
「八百万が言ってたろ、爆豪戦の後。核を本物として扱うってのはヒーロー側だと特に大事になるんじゃね。電気に指向性は持たせられるけど、どうしても漏電はするからな」
「……やっぱあんた、意外と頭良いよね。考えてるし」
「意外とってなんだよ」
まあわかってる。見た目アホっぽいしな、俺。でもこの髪とファッションが好きなんだよ。
「相手は切島と瀬呂だ。多分奇襲とかせず核の前で構えて守るって感じだな。テープでも張り巡らせときゃそれだけで罠になるし、それがベストだ。奇襲してきたならしてきたで俺たちなら探知できるから、むしろ楽に終わらせられる。耳郎の個性で二人がいる部屋わかったら突撃だな」
「…………その見た目からまともな意見が出てくるの、慣れない」
……いつか慣れる。
ビルの最上階、その一つ下の階で切島鋭児郎と瀬呂範太は核を守っていた。部屋中に瀬呂のテープが張り巡らされ、準備は万端といった様相で部屋への唯一の入口を見据えている。
そして、廊下から走っていると思われる足音が近づいてきた。
「来るぞ!」
「応!」
後衛の瀬呂が前衛の切島へと呼びかける。切島がその硬さで攻撃を耐え、瀬呂が後ろからテープで援護できるポジションだ。シンプル故に二人の個性を最大限引き出すことができる。切島が動けるよう、テープは切島より後ろにしか貼られていない。それらのテープが上鳴の無差別放電に耐えられるかは未知数だが、核が置いてある部屋でそんなことはしないというある種の信頼があった。
「俺あんま上鳴と話してないからわかんないけどさ、大丈夫かな!?」
「そこは俺が保証する!アイツはアホそうに見えて意外と考えてる!」
悩む瀬呂に切島が応える。切島は上鳴がそこまでの考えなしではないと知っている。アホそうだが。
いよいよ足音が部屋の前まで来る。入ってくると身構えたその瞬間、部屋中に爆音が響き渡った。
「……っ!!」
「う、うるさすぎる……!」
思わず両手で耳を塞いでしまう程の音量。その発生源は────。
「上か!」
何かあった際、天井をぶち抜いてでも逃げられるよう、最上階にしなかったことが裏目に出た。瀬呂の個性で比較的容易に核を運べる故に、それが隙となった。当然、相手も上から攻撃できてしまう。
そして、二人の意識が上階へと向いた瞬間、音が止んだ間を狙い上鳴が侵入する。
「切島ぁ!漢らしくタイマンといこうぜ!」
「───っ!いいぞ、漢らしいな!」
部屋の入口から走ってくる上鳴に、思わず近寄る切島。狙いは切島と瀬呂の間に距離をつくること。耳郎がいないことで、よりこの作戦に乗りやすくなる。
思い出すのは、爆豪の動き。天性の戦闘センスからなるあの動きはかなり理にかなっている。爆豪が筋肉を動かす際の電気信号を再現。先ほどモニター越しに見たアレを模倣する。
切島の目の前で掌から放電、その光を目くらましとした。そのまま身体強化によって切島を飛び越えると、天井へ向けて局所的な放電をすることで、反動によりすぐさま床へと戻った。これも切島に突っ込んできてもらい、核との距離を確保できたからこそ。核との距離がなければ、上に向けての放電すら核に影響を及ぼすかもしれない。
「なっ!消え…………」
「
切島が上鳴を見失い、振り向こうとした瞬間。背中に針で刺されたような、小さな痛みが走る。それを感じた時には、切島は床に崩れ落ちていた。
「───あ?なんだ、これ……。体が…………」
すぐさま立ち上がろうとするも、体が動かない。指先などは動かせるが、それだけだ。
「人間はたった1Aの電流も耐えられない。20mAの電流でも流され続ければ死ぬこともある。つまり何が言いたいかっていうと、動きを止めるくらいなら一瞬、ほんの少しの電流で良いってことだ。もちろん直ぐに立てるようになるから、ヴィラン相手にはこうもいかない……けど、今回はテープ巻けばそれで終わりだから」
動けないうちに巻かせてもらうぞー、と切島に確保テープを巻こうとする上鳴。急いで瀬呂がテープを伸ばすことで止めようとするが、上鳴に当たる直前に焼けてしまう。
『切島少年、リタイア!』
「テープくらいなら電気で燃えるぜ。俺にそれは効かない」
「くそっ!」
本当は効かないこともないのだが、相手を焦らせるために嘘をつく上鳴。接近戦での圧倒的速度を見せることで近寄らせず、尚且つ遠距離攻撃の手段も封じた(と思わせた)。
瀬呂が足踏みしている内に、上階から耳郎がやってくる。既に痺れが取れピンピンしている切島だが、確保テープを巻かれたため見ていることしかできない。
その後、耳郎の音波でテープの罠を全て除去され、伸ばしたテープも耳郎を庇う上鳴に焼かれ、制限時間もまだまだあったため、瀬呂は覚悟の特攻を決める。一瞬で上鳴に痺れさせられ、耳郎の音波で吹き飛ばされる瀬呂を横目に、二人は危なげなく核に触れた。
『ヒーローチーム、WIN!』
「……吹き飛ばす必要あった?」
「ごめん、つい」
つい、で飛ばされた瀬呂を見ていたA組から、ドンマイコールが上がったとか上がらなかったとか。
「今戦のベストは耳郎少女だ!何故かわかるかな、上鳴くん!」
「はい。まず索敵で相手の位置を把握したのは耳郎っス。それに、上階から床にプラグを刺して音で怯ませるってのも耳郎が発案しました。俺の作戦は切島が釣られる前提でしたし、核の近くで放電できない俺では張り巡らされたテープを除去出来ません。それに音での怯みがあったからこそ近接戦闘もスムーズにできましたし、瀬呂の判断力を鈍らせて二対一の状況に持ち込めました。大元の作戦の発案は俺っすけど、それだと俺ばっか動く作戦になってたんで、チームの作戦としては弱かったです。耳郎はチームとして二人とも動く作戦を考えてくれたので」
「………………うん、ホントみんな優秀だね……。上鳴少年は自分ばかりに負担がいかないように、他人を動かせると尚良しだね」
「わかりました」
またほぼ言われちゃった……とイジけるオールマイト。トップヒーローでも教師としては新人だからか、教師っぽいことに憧れてるらしい。すんません。
その後、切島と瀬呂もアドバイスを貰い、次の戦闘訓練へと移る。全チームの対戦が終わるとオールマイトはダッシュで消え、俺たちは教室へと戻った。忙しそうだなー。
昨日の放課後にはいなかった麗日や飯田と改めて自己紹介をしつつ、みんなでプチ反省会を開く。ボロボロのまま戻ってきた緑谷は、そのまますぐに帰った爆豪を追いかけてった。
「にしても、上鳴強かったな!俺何が起きたかわかんなかったぜ」
「傍から見てると、動きが爆豪ちゃんみたいだったわ」
「意識したからなー。アイツの動きマジで参考になるわ」
切島と梅雨ちゃんに褒められ、少し調子に乗る俺。これからもどんどんパクっていくつもりだ。キレられそうだけど、まあ良いだろ。
「これだから才能マンは……。爆豪に轟といい、お前らどうなってんだよ」
こちらを睨みながらボヤく峰田に、轟に勝てるかはわかんねえけどなと考える。炎や氷に電気ぶつけたことなんてないから、マジでどうなるのかわからん。
「でもさー、個性が強いと怖いよね。私の酸とか、爆豪や轟の炎や氷、電気も簡単に人殺せちゃうもんね」
「だからこそ今日の訓練なんだろ。個性を人に向けるってのはどういうことかを考える…………まあ爆豪と緑谷はブッぱなしてたけど」
芦戸の個性も、調整ミスったら人が溶けるかもしれない。コンクリ溶かしてたし。だからこそ早めに対人訓練ってことだろうな。
「……やっぱ慣れないなあ」
「上鳴頭良いよねー!同類だと思ってたのに!」
複雑そうに呟く耳郎に芦戸が同意する。同類ってなんだよ、まあ確かに芦戸はアホっぽいけど。
アホっぽいってなんだー!と肩をポカポカ叩いてくる芦戸。やっぱアホっぽい。
本来の意味は、ざっくり言うと雷が落ちた場所のこと。上鳴的にカッコよかったので、この技名にしたらしい。使用電力も少ないため、アホになりづらいのが良い、とは本人談。