やっぱ電気使いって強い。
戦闘訓練の翌日、学級委員長を決めることになり、飯田の発言から投票で決めた。てかみんな委員長やりてえんだな。いや、俺もやりたいけど多分向いてないし。このクラスなら飯田か八百万か緑谷だな。
迷った結果飯田に入れた。一番委員長っぽいし、真面目だからちゃんとやってくれるだろ。結果としては緑谷が3票で委員長に、八百万が2票で副委員長になった。みんな自分に入れてっからバラツキがすげえな。0票の奴は……轟、麗日、耳郎の3人。飯田と俺が1票なのを見るに、飯田と麗日が緑谷に、轟が八百万に、耳郎が俺にって感じか。つーか俺はないだろ耳郎さんよ。
そう思い隣を見ると、耳郎と目が合った。
「いや、あんた頭も良いし冷静だからさ。意外と真面目だし」
「それは否定しねえけど、他にもっといるだろ……」
「うっさい」
ぷいと顔を逸らす耳郎。その耳はコードまで真っ赤だったのであまり突っ込まないでおいた。俺はデリカシーあるんだよ、どっかの変態葡萄と違って。
「デクに入れた奴誰だよ……!」
「ちょっと考えりゃわかるだろ。まあお前に入れる奴はいねーわな」
「ンだとクソ電気!」
「そういうとこ!」
昨日はヤバそうだった爆豪も、今日になると復活していたので思う存分弄る。目が吊り上がりすぎてやべえことになってるぞ。相澤先生に睨まれたのでここらで止めておく。引き際がわかる男だ俺は。
その日の昼休み、相変わらず真っ赤な謎の物体を食ってる爆豪、切島と一緒に食堂で昼飯を食う。なんかもうあれだ、匂いだけで痛い。見てるだけで辛い。
そんな時、急に警報が鳴り響く。どうやら校内に侵入者が出たらしい。
「
「やめとけかっちゃん。あと違えぞ多分」
かっちゃん言うなァ!と騒ぐ爆豪を無視し、電磁波での探知結果について考える。大量の電子機器────マイクとカメラだな。それに大勢の人間が集まってる。体格としてはお世辞にも良いとは言えない。要は非戦闘向きだ。今朝の様子からしてマスコミだろ。問題はどうやって入ったか…………。マスコミに侵入できる個性持ちがいた?だからって大胆すぎる。誰かが侵入できるようにした、と考える方が自然か。にしたって誰が?校外に怪しい奴はいない。まさかもう校内に────?
「大丈ーーーー夫!!」
ふと、思考が止まる。見ると非常口に飯田が張り付いていた。なんだアレ。
飯田がマスコミが入ってきただけだと伝えると生徒たちは落ち着いた。やっぱアイツ委員長向いてるよ。俺はマスコミと気づいても、この事態を収束させようと動かなかった。すぐに動けるああいう奴がいるとみんなが安心できる。
その後、緑谷が飯田を委員長に指名し、自分は降りた。結果的にA組は飯田が委員長、八百万が副委員長になった。まあ妥当だな。
結局、あの騒ぎはマスコミが侵入しただけと伝えられた。先生たちの様子を見るにそれだけじゃなさそうだが、まあプロヒーローである先生たちが判断したことに突っかからなくても良いだろ。
それから数日、マスコミのことも薄れてきたある日。俺たちは
「救助でも上鳴は強いよなあ。電磁波で人がいるのとかわかるんだろ?俺なんて硬くなるだけだしなあ」
「まあ、と言っても耳郎や障子の下位互換に近いけどな。そこまで広い範囲までわかんないし」
「ハッ!雑魚が」
「うるせえ、個性以前にお前はそもそも救助向いてねえだろ」
「確かにー!爆豪はなんか『自分で助かれや!』とか言いそう!」
「ンだと黒目!助けまくるわ!」
「黒目!?」
芦戸が爆豪の黒目呼ばわりに驚いている間、爆豪の隣に座る耳郎はずっとうるさそうに顔をしかめていた。ごめん、俺らが弄るせいだな。
その後も個性やらなんやらについて話していると、相澤先生からお叱りを受ける。どうやらそろそろ着くらしい。
そうして着いた場所は、巨大なドームのような建物。中は水難ゾーンや火災ゾーンなど、災害を再現した場所に別れているらしい。通称ウソの災害や事故ルーム、USJ。今回は13号と相澤先生、オールマイトが教えてくれるらしいが、オールマイトは来ていないっぽい。てか13号やっぱ声可愛いな。
スペースヒーロー、13号は災害救助を主に活動としているヒーローだけど、個性はブラックホールとかいうクソ強い個性だ。だからこそ、人に個性を向ける危険性を知っている。俺たちの個性を人助けのために使う。今日はそのための訓練だ。
そんな13号の演説にみんなが感動しているとき、ふと違和感を覚える。入口の正面、セントラル広場。そこに何かが現れる。
俺は常に電磁波で周囲を探知している。葉隠のこともあってコスチュームの時は視覚情報はカットしているが、それでも問題なく探知できる。だからこそ、最初に気づいた。
何かが現れたんじゃない。
先日のマスコミの件。今回、バスに乗る前に相澤先生が言っていた───3人体制で見ることになった、という発言。
なにか、ヤバい。
「先生!広場の方向、何か来ます!」
「…………?」
相澤先生が広場へ目を向けたその時、謎の黒いモヤが広場に現れた。
「ひとかたまりになって動くな!!」
相澤先生も気づいた。他の生徒はまだ状況を理解できておらず、相澤先生に顔を向ける。黒いモヤからは、明らかに見た目がヤバい奴らが何人も出てきた。相澤先生が訓練などではなく、本物の
「上鳴!」
「もうやってます!…………けど、ジャミングされて繋がらないっす!続けますけど、最悪大元の個性持ちを叩かない限り連絡取れないかもしれません」
学校へ通信を試みるが、別の電波に邪魔されて繋がらない。やっぱこの無線、持ち腐れになってる!
みんなが段々と状況を理解していく中、相澤先生が
すると、背後にまた何も無い空間ができる。黒いモヤ────ワープ系の個性か!
モヤ曰く、コイツらは
モヤに爆豪と切島が攻撃するが、効いている様子はない。モヤの部分は物理攻撃が無効か。けど服を着てるってことは本体部分がある?そこなら…………。
だが、前方に何人もいるため放電はできない。今ちょうど、爆豪と切島が邪魔になって13号が攻撃できていないように。何やってんだアイツら。
その隙に、
モヤが晴れると、さっきまでとは周囲の景色が全く違った。岩山にかけ橋────山岳ゾーンか。随分遠くに飛ばされてしまった。
「見た感じ山岳ゾーンだ。周りは完全に囲まれてる。
「…………頼りになるねえ」
「上鳴さん、武器は?」
耳郎が八百万の身体から、剣のようなものを引き抜きながら呟く。なるほど、そういうことも出来るのか。
「金属の棒を。長さは2mくらい。無理なら短くても良いし、そんなに細部に拘んなくてもいい」
「了解しましたわ」
すぐさま八百万の身体から棒が生えてくる。すげえ、何でも創れんのな。
「相手はただのチンピラだな。電磁波で体格わかるし、構えや重心の置き方も素人だ」
「あ?ガキがナメやがって……!」
「ナメてんのはお前らだろ。んな雑魚共集めて勝てると思ってんのか」
「──殺す!」
突っ込んでくるムキムキの
「
左手から敵に向けて真っ直ぐ放電する。その電流は背後まで貫通し、直線上の敵たちを一度に気絶させた。
それを見たからか、一度に多方面から敵が押し寄せる。
「
ま、多方向に同時に放電できるんですけどね。3、4方向くらいなら指向性を持たせたまま別々の方向に放電できる。残った敵には金属棒を当てて電流を流す。これなら中距離の相手にも周りを巻き込まず対応できる。サポートアイテムとして申請しよっかな……。
「やば。上鳴一人で充分なんじゃない?」
「おい、ヒーロー志望の発言かよ」
「冗談っ!」
そんなことを言いつつ、耳郎も足のスピーカーにプラグを刺し、音波で敵を倒していた。耳から血出てる奴いるし、けっこうヤバい攻撃だ。岩が割れるレベルの音ってなんだよ。
「お二人共、真面目にやってください!」
八百万が敵を捌きながら俺らを叱る。けっこう余裕あるじゃん。
「ふざけやがって!!」
接近すれば放電はないと思っているのか、近接戦闘を仕掛けてくる敵。俺が近接戦闘を得意としていることを知っている二人は、可哀想なものを見る目で敵を見つめる。
敵の拳を顔を逸らし最小限の動きで躱すと、重心を下ろし相手の下から潜り込む。ボディがガラ空きだぜ。
「
敵の体に触れると、掌から放電させる。雷撃が線、雷撃点が点だとすれば雷掌は面だな。発動時のイメージとしてってことだけど。何で雷掌だけ英語じゃないのかって?技名はカッコ良さで決めてるからだ。英語に拘りがある訳じゃねえ。
俺の個性を見てか、敵は近寄れずにこちらを窺うだけだ。こんなに人数差があるのに情けねえ。いや、まあ電気って近寄るの怖いよな、普通は。
「出来た!」
八百万がそう叫ぶと、背中から大きなシートが出てくる。よし、これで思う存分やれる。
絶縁シートが二人に被さったことを確認すると、全方位に無差別に放電する。
「出力10%────
俺を中心として迸る電流は、その場にいた敵を全員気絶させた。
「もう出てきて良いぜ」
敵が全員気絶しているので、二人に近寄り絶縁シートを捲る。するとオッパイ丸出しの八百万が出てきた。
「きゃっ───上鳴さん!」
「うお、わりぃ」
取り敢えず俺の上着をかける。そっか、背中から創造したからコスチューム破けたのね。一瞬何事かと思ったわ。
「いやいやいやいや、冷静すぎでしょ。何普通に対応してんの」
「そ、その……。コスチュームを新しく創るので、あちらを向いて頂けると有難いのですが…………」
「りょーかい。すまんかった」
八百万に謝罪し、耳郎のジト目から逃げるように背中を向ける。
そして、着替え終わった八百万から上着を返してもらう。個性の関係上、八百万のコスチュームは露出度が高い。そのおかげか八百万はすぐに許してくれた。なんなら耳郎の方が怒ってる。
何というか、入学して数日でクラスメイト二人の裸を見た男になってしまった。ヤバいな、ヒーローに程遠いぞ。
結局、耳郎にはちょっとプラグで刺された。これでチャラ、とのことだ。いや、だから何でお前が怒ってるんだよ……。