盲目のヒーローアカデミア   作:酸度

10 / 47
お気に入り2500件突破ありがとうございます。


戦闘訓練

 第1種目、50メートル走。

 

「爆速!」

 スタートダッシュからかっちゃんが爆発しそうだったので、耳朶を指を使わず動かし、塞ぐ。

「フルカウル、65%!」

 僕はワンフォーオールを全身、特に下半身と背中に重点的に纏わせる。

 僅かにかっちゃんに競り負けた。

 緑谷 2.58秒

 爆豪 2.52秒

 

 他にも握力はワンフォーオールで700kgを出した。

「流石だな緑谷、この種目には自信があったのだが」

「障子君、いや、流石に僕は単純な増強系だからね、こういうので負けたら立つ瀬がない」

 

 立ち幅跳びはかっちゃんが無限をたたき出した。一方僕は30メートル。

 反復横跳びは僕の勝ち。長座体前屈は格闘技の訓練分、カエルの個性の子よりは下のクラス2位。

 

 そんなこんなで僕とかっちゃんが競いあいながら競技を終えた。

「ちなみに除籍は嘘な。君たちの全力を引き出すための合理的虚偽」

 周りが大声を出すが、僕は相澤先生の心音を探る。

(嘘だな)

 見込みがあったということだろうか。

 20位だったらしい峰田君が泣き出していた。

 僕の順位はいくつだったんだろう?

 そう思っていたら一人の女の子が近づいてきた。

 僕より少し背が高い、確か出席番号最後の。

 持久走でバイクを出してた人だな。

「一位おめでとうございます。緑谷さん」

「あ、僕一位だったんだ。見えなかったからわからなかった」

 先生も読み上げてくれればいいのに。

「君は持久走でバイク出してたよね、あれは焦ったよ」

「ええ、ですが、トータルの成績では抜かされてしまいました」

 ちなみに2位がこの人、八百万さんで、三位がかっちゃん、四位が轟君という氷を出していた生徒だった。

「クソが! おいデク! ポニテ女! いい気になるなよ! いざ戦うとなれば俺が勝つ!」

 かっちゃんが爆速で近づいてくる。

「ま! 私には八百万百という名前があるのですわ。かっちゃんさん」

 この女の子も大物だな。

「かっちゃんさんじゃねえ! 爆豪勝己だボケが!」

「かっちゃん初対面の人にもぐいぐいいくね」

「お前はすましてんじゃねえデク!」

 その時、冷たい視線を感じて、僕はそちらを向く。

「ええと、轟君、だよね、何か?」

 その心音は氷のように冷たい。

「緑谷だったか……お前には負けねえ」

 そう言い残して、彼は去っていく。

 うーん、何か知らないけど、みんな初日から元気がいいなあ。

「宣戦布告の相手間違ってんじゃねえぞクソが!」

 かっちゃんは手のひらを爆発させるが、それが不自然に止まる。

「おい、いつまで騒いでる」

 相澤先生が止めたのか? 

 個性の影響か髪の毛が逆立ってる。

「何だ個性が、使えねえだと!?」

 かっちゃんは焦ったように言う。

「そう個性を使わせるな、俺はドライアイなんだ」

(((個性凄いのにもったいない)))

 僕は個性を消すという言葉に反応する。

 ひょっとして。

「あのう、先生ってもしかして、イレイザーヘッドですか?」

「……そうだが」

「イレイザーヘッドって」

「アングラ系ヒーローだよ。確か個性を消す個性だって」

 本人から確証を得て、僕は先生に近づく。

「うわあ、イレイザーヘッド! 僕ファンなんです!

 実は最近まで個性が発現しなかったんですけど! イレイザーヘッドみたいに個性を使わなくても強いヒーローになれるよう体を鍛えていて」

「そうか、早く着替えろ」

 塩対応、く~っ想像通り。

「ファンにその対応!?」

「何言ってんの瀬呂君! そういうドライさがイレイザーヘッドのいい所じゃないか?あ、サインをください」

「やらん、早く着替えろ」

「うわー! イメージ通りだ!」

「緑谷君って、入試一位、テスト一位の割に結構ヘンだね」

 まるで楊貴妃とフランシスコザビエルを足して2で割ったような美貌の少女に言われる。

 失敬な。

 

 その後は、僕は飯田君、麗日さんと一緒に帰る。

「しかし相澤先生にはやられたよ、教師が嘘で鼓舞するとは、僕はこれが最高峰かと思ってしまった」

「うーん、でもびっくりしたよねえ、デクくん」

「ああ、うーん。麗日さん、デクっていうのは木偶の坊からとってて……」

「蔑称か」

「うん、まあかっちゃんがいまさらイズクとか緑谷とか言い出したら逆に怖いから訂正しないけど」

「ばっさりいくなあ……でもデクって私頑張れって感じで好きだな」

「デクです」

 なんてうららかなんだ。

「緑谷君! 浅いぞ! 蔑称なんだろ!?」

「まあ、麗日さんの物言いはバカにした感じではないから……」

 そういいつつ、顔が赤くなるのを感じ、僕は手で扇いだ。

 そうして、僕は入学初日から、何人も友達ができたのだった。

 

 午前は普通授業、これは点字のテキストがあるし、先生方も気遣ってくれるから問題なし。

 ランチはクックヒーローランチラッシュの昼食。

「かつ丼大盛」

「デク君くうねえ」

「それがごはんでおかずは……」

「へ?」

「コロッケにサンマに焼きそばにホイコーロー」

「ええええええええ?」

「あとミソ汁の代わりにラーメン。あと牛乳」

「ええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 僕らは席に着き食べ進む。

 僕の食いっぷりに、麗日さんは茫然と言葉を紡ぐ。

「デク君、見た目によらず大食いなんやねえ」

「脳を酷使するからね」

 僕の一日の消費カロリーは現在約2万キロカロリー。

 それほどまでに肉体を、特に脳をフルスロットルで維持している。

「さてと」

 僕はものの10分で食べ切った。そして、一息つく。

「さて……弁当食べるか」

 食堂全体がずっこけた。

 

 そして、午後。

「私が、普通にドアから来た!」

「オールマイトだ! 本当に先生やってるんだ!」

「画風違いすぎて鳥肌が……」

「今から行うのはヒーロー基礎学! ヒーローの下地を作るための訓練を行う課目だ!

 それに伴ってこちら、入学前に送ってもらった個性届と要望に沿って作られた、コスチューム!」

「「「「「「おお!」」」」」

「恰好から入るのも大事だぜ少年少女。自覚するのだ今日から君らは、ヒーローなのだと」

 

「わあ、デク君、オールマイトみたい」

 僕のコスチュームはメリッサさん謹製のスーツだ。

 多分ベースカラーは緑で、オールマイトのコスチュームに使われたギミックが搭載されている。

 それにいざという時のガントレットと、何よりビリー・クラブ。

「はは、ちょっと意識してるね。一応衝撃吸収機構がついてるハズだけど。あと、個性使って弾けるってことはないと思う」

「そうなんやあ、ウチはパツパツスーツになった。はずかしい」

「ははは、そんなことないよ。格好いいよ! 飯田君は甲冑だね。君も格好いい」

 そう話しながら演習場に着いた時、僕は、耳を閉じた。

 

 

 

 何で、何で、全裸の女子がいるんだろう?

 

「ん? どうしたんデク君」

 何でみんな普通にしてるの、僕がおかしいの?

「おお、緑谷君! 格好いいね」

 全裸の女の子が普通に近づいてくる。

 個性把握テストで、声をかけてきた女の子だ。

 何で? 僕がおかしいの?

「ええと、葉隠さん。だっけ? その格好は?」

「ふふーん、これはね、透明化の個性を存分に活かせるコスチュームなのだー」

「コスチュームって、全裸じゃん」

 そう! 個性か耳からコードの様な物が伸びてる女の子が言うとおり。全裸なんだよ!

「あの、葉隠さん! せめてマントかなんか羽織って!」

 真っ赤になった僕の顔を、不審そうな顔でみんなが見る。

「そういや、緑谷って結局どういう個性なの? 超パワーは個性で感覚は自前って前言ってたけど」

「……僕の聴覚は個性じゃないんだ。音の反射で物体の輪郭が認識できるんだよ」

 そこまで言って、葉隠さんの心臓が跳ねる。

「……もしかして、私の輪郭も」

「……バッチリです」

 そのビンタは甘んじて受け入れた。

 

 八百万さんが透明のマントを作ってくれた。

 万能個性、ありがたい。

 

「ええ、では今回の訓練。戦闘訓練の概要説明に移るが、緑谷少年は何故正座を?」

「触れないで下さい」

 僕はその後、女子から一通り非難された。 

 だか、麗日さんの取りなしにより何とか正座で許してくれた。

「葉隠少女は何か部屋の隅っこにうずくまっているし」

「別にー。何でもないでーす」

 むくれている。

「ま、いいや。今回の戦闘訓練は屋内で2vs2による戦闘を行う」

「基礎訓練も無しに?!」

「その基礎を知るための訓練さ。ヒーローチームとヴィランチームに分かれる。

 設定としてはヴィランが核ミサイルを奪い、それをヒーロー側が奪取しようとしているって所かな」

 

 その後は、くじ引きでヴィランチームとヒーローチームに分かれる。

 僕のペアは。

「何番ですか?」

「緑谷少年は、葉隠少女とのペアだな」

 あーもう何でこーなるの。

 そして相手は。

「第一戦は葉隠少女、緑谷少年ペアのヴィランチームと、轟少年、爆豪少年ペアのヒーローチームだ」

 さて、最初からクライマックスだぞこれは。




ヒロイン候補その3、葉隠さん登場。(その2は麗日)
能力の相性は間違いなくいいぞ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。