僕は、その問いに呆気に取られてしまった。
「後継って、どういうことですか?」
「私の個性、世間では超パワーやブーストなどで通っている。
週刊誌に問われれば爆笑ジョークでお茶を濁してきた。
私の本当の個性は“個性を譲渡する個性”、ワンフォーオール。」
僕はオールマイトの言葉を復唱する。
「……ひとりは、みなの、ために?」
「……そう。かつて、巨悪と対峙した者が次代から次代へと受け継いできた義勇の結晶」
「それがオールマイトの個性。確かに、たった一人の身体機能ってだけでは考えられない力ですからね」
「はは、物分かりがいい。どうだろう」
僕はあまりの急な展開に言葉も出ない。ただ、解決しなければならない疑問が一つ。
「なぜ、僕なんです。プロヒーローや、それこそあのかっちゃんだって、僕以上に向いている人は大勢いるでしょう」
「そうだな。当然の疑問だ。強さだけならね」
オールマイトはそこで僕をじっと見る。
「例え無個性でも、光を失っても、前に進み続ける気高い意志。
命の危険があっても友の窮地に乗り込む勇気。
何よりも助けを求める声を取りこぼさないそのやさしさに私は可能性を見出した。
君はあの場の誰よりもヒーローだった」
僕は、枯れたはずの涙腺が熱くなるのを感じる。
今まで、努力を重ねてきた。
時に吐くほど食事をし、時には筋肉痛と稽古の痛みで眠れない夜もあった。
それでも無個性であること、盲目であることは確かなハンデで、時折どうしても不安になった。
それが今、認められた。
幼いころ憧れたグレイテストヒーローに。
だが、そこで僕の脳裏に一人のことが頭を過る。
「すいません、ありがたい話ですが、一日、一日だけ待ってくれないでしょうか?
どうしても、けじめをつけなきゃならないことがあるんです」
翌日、学校では昨日の騒ぎで持ち切りだった。
かっちゃんは、クラスのみんなから賞賛された。
僕も、クラスメイトに囲まれていた。
「緑谷ー。お前無個性の癖に無茶するよなあ」
「危うく死ぬ所だったぞ」
「私ニュース見たとき怖かった」
「はは、面目ない」
笑いながら、僕はかっちゃんの方を探る。
ああ、相当不機嫌だな、これは。
でも、聞かなきゃならない。
「個性がもし、貰えたら~?」
「うん、かっちゃんならどうする?」
僕らは久しぶりに、それこそ中学になってから初めてという位に二人で帰った。
まあ、僕が誘ったんだけど。
「なんかネットの噂であったな。個性を奪って与える力を持つヴィランの話」
「ああ、僕もそれ見て、ちょっとね」
「お前そんな話がしたくて誘ったんか」
かっちゃんの問いに僕は苦笑で返す。
「……俺は貰わねえ」
「……なんでか聞いてもいい?」
「俺は俺一人の力で、ヒーローになるからだ。得体の知れねえ個性なんていらんわクソが」
僕はその答えに思わず感心してしまう。
かっちゃんらしいな。
「……お前は貰っとけばいいんじゃねえんか」
「え、何で?」
「……お前は誰かを助けるヒーローになるんだろうが。
なら、やれること全部やらんと話にならんだろ」
「それでもし、誰かが死んだら、お前責任とれんのかよ」
僕はその言葉にハッとする。
確かに今までは、ただ、ヒーローになれればよかった。
そう思ってたけど。
もしあの時、かっちゃんが助かってなかったら、
もし死んでたら。
「ありがと、かっちゃん」
「あ、何がだ死ね」
「超辛辣」
思わず笑ってしまうほどだ
でも、迷いは晴れた。
その日、海浜公園にて僕は再びオールマイトにあっていた。
「僕、引き継ぎたいと思います」
「……理由を聞いてもいいかね」
「はい。僕は、いままで、ただヒーローになれればいいと思ってました。
けど、そうじゃないんです。僕は、誰かを助けるヒーローになりたいんです。
そのためには、何事にも全力で取り組まないとダメなんです。
だから、目の前のチャンスを取り逃して、いつか出会う誰かの手を取れないなんてことはしたくないんです」
「僕はあなたみたいに、たくさんの人を助けたいから」
オールマイトは僕の言葉にハッとしたように息を呑み、笑った。
「ならば少年、これから私が君をナンバーワンヒーローに育て上げる。
ついてきたまえ!」
「はい!」
そう僕が勢いよく返事をすると、オールマイトは髪を一房抜いた。
「では、食え」
「へぁ」
いや、変な声出ちゃったよ。
「いや、DNAが取り込めるなら何でもいいんだけどね」
「……あ、シャンプーLadyHairですね。うちのとおんなじだ」
「味覚も凄いの!?」
オールマイトが驚いたような声を出した。
一日後。
オールマイトからワンフォーオールを継承した僕は、すぐさま、使いこなすための特訓を開始した。
まずは、オールマイトの説明から入る。
「君の体つきから結構使えるとは思うけど、ひとまず海に向かって撃ってみようか」
「え、いきなりですか」
「そ、車でもまずはトップギアから入れていくもんさ」
(そうだっけ?)
僕は疑問に思いながらも、とりあえず。海に向かいなおる。
「さ、自由に打ってみなさい」
「じゃあ、ストレートから」
そう言って僕はボクシングでも得意技である右ストレートを撃ってみる。
すると、まるで体に電流が流れたような感覚に陥る。
「これは、すごい」
「ケツに力を込めて、こう叫ぶんだ。スマッシュ!!」
「す、スマーッシュ!」
その時、海が割れた。
ザバンという音が、僕の耳朶を叩く。
レーダーセンスが意味を成さぬほど、荒れ狂う風の奔流。
「い、いたい」
僕は激痛に顔を顰める。右腕がしびれたような感覚。
骨に異常はない、肉離れ程度だろう。
確かに、これは、すごい力だ。
けれど。
「どうした少年? 泣いているのか」
「すいません、オールマイト。……うれしくて。
ずっと無個性で、あきらめかけていたから」
そういって言葉を飲み込む。
だからこそ自制しろ。
この力を人のために使うんだ。
「ああ、デイヴか、実は会わせたい子がいてね、一度会ってくれないか」
凄まじい力を見せた少年を見て、私もまた笑顔になる。
少年が本気なら、私も本気でサポートせねばなるまい。
そう、彼が次代の平和の象徴となるまで。
かっちゃんがヒロイン力高すぎて困ります。
展開に影響与えすぎなんだよなあ。
この出久君は7〜8年間鍛えてるのでこんなものです。