盲目のヒーローアカデミア   作:酸度

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職場体験

 僕はミルコに小脇にかかえられ、高速で移動していた。

「み、ミルコ! ヴィラン達が車に乗って逃走します! 音からおそらく電気系の個性!」

「おう! 聞こえてる! だが個性まで分かるか! 耳いいな!」

「お、おろしてください! 走れます!」

「良し! 体育祭のスピード見せてみろ! 行くぞ!」

 そう言うと、ミルコは僕を放り投げる。

 僕はフルカウルを使用し、ミルコに並走する。

 射程に入った。車だ!

「脱兎のごとく! 追いついた! 私が一人で行く! よく見てろよ!」

「は、はい!」

 そう叫ぶとミルコはさらに速度を上げ、ヴィランの運転する車に近づくと、思いっきり踏みつけた。

 車がたわみ、強制的に止まる。

「ぶっ凹ました! 緑谷は避難誘導! そういやヒーロー名なんだ!?」

「デアデビルです! すいません! 皆さん! 離れてください!」

 車から、ヴィランが4人出てくるが、ミルコは一瞬にして三人を蹴飛ばした。

「ミルコ! そいつ電気を纏ってる!」

「気づいてるよ! 蹴ってねえだろ!」

「……くそ! よりにもよってミルコかよ! だが! 俺に肉弾戦は」

「ふん!」

 ミルコは気合を入れると、車から扉を引っこ抜く。

 そして、ヴィランに思いっきり投げつけた。

「へぶ!」

「良し、被害なし! 終わり!」

 一瞬通りを静寂が満たし、大歓声が切り裂く。

「すげええ! 一瞬で4人仕留めた! 流石ナンバー7!」

「事件発生からどんだけだよ! つうか何でこの街に!」

「それに隣の学生! もしかして雄英体育祭一年優勝者の緑谷じゃねえか!? 何だあのアイテム!」

 僕たちはあっと言う間にファンに囲まれる。

「ばか! まだ警察きてねえから邪魔だ! 下がってろ!」

 そう一喝し、混乱になりそうな空気を一瞬で締める。

「あとで答えてやる! 大人しくしてろ!」

「「「「は、はい」」」」

 僕は警察がくるまでの間、今までの行為を反芻する。

 最初は驚いたけど、事件に気づいてから現場に到着、解決までのスピード、とんでもなかった。

 これが、オールマイトをして、格闘戦なら自分を除いて日本一と称するヒーロー。

 確かに、身体能力、判断力、格闘技術、文句なしのトップヒーローだ。

 

「デアデビル! 早速だが、私は後輩の指導なんざしたことがねえ! だから基本お前は私の後ろを今みたいについてこい! いいな!」

「は、はい!」

 ……へ、ないの?

「じゃあまずは事件後の対応だ!」

 丁度パトカーが来た。

「ヴィランを退治するとしばらくして他のヒーローやら警察やらが来る! 基本警察の言う通りにしとけばいい! 権限はあっちが上だ!」

「成程!」

 そう言ってミルコは警察官に近づく。

「ヒーローミルコ! ご苦労様です!」

「おう! とりあえず蹴っ飛ばしておいた! 拘束してくれ!」

「はい!」

「あれは移動牢! あれに入れるまではどんな個性を使ってくるかわかんねえ! それまで油断すんな! その耳で警戒しろ!」

 成程、柔道場でも徹底的にしこまれた。残心というやつだ。

「その後は調書をとる。まあ正確に答えておけばいい」

「それで事件解決の経緯は」

「私ら、駅前で事件の音を聞く、走ってくる、蹴っ飛ばす、以上」

 そんなざっくりでいいの? 

「この車、盗難車ですね。どうしてここまでバキバキに」

「蹴っ飛ばした!」

 正直!

「その後はファンサだ! マスコミいたら取材に答える! キリがないから程ほどにな!」

「ミルコ! なんでここに!」

「移動中だ!」

「事件解決の秘訣は!」

「ウサギの聴力!」

「何で雄英の緑谷と!?」

「職場体験だ! 指名した!」

 テンポいいな。

「緑谷くん! 何故ミルコの事務所を!」

「え! 僕!?」

 僕は戸惑いながらミルコの方を向く。ミルコも頷く。

「え、ええと。僕とミルコは聴覚が優れている点と、近接戦闘主体という点で噛み合っています。それに若い女性の身でナンバー7に登り詰めたノウハウを……」

「長い! 短く纏めろ!」

 ペチン!

「「ええ!?」」

 髪の毛ではたかれた……。地味に痛いけど何かいい匂いがした。

「悪いが今から移動する! また今度なファンども! 悪いことすんなよ!」

 ミルコはそう言うと僕を小脇にかかえ、ビルの壁面を駆け上がっていく。

 下ろしてえ!

 

「何で爆豪は来なかった!? お前とセットで見たかったのに!」

 僕らはビルの上を駆けながら、会話する。

 あの後、僕はコスチュームに着替えさせられた。

 なので今はヒーロースーツ同士だ。

「かっちゃんはエンデヴァーのところに……」

「クソ! やっぱりランクか! くやしいぜ! 折角今年は指名してみようと思ったのによ!」

「あの、何で僕らに指名を? やはり機動力でしょうか?」

「それもある! 最低限の機動力がねえと私の足を引っ張るからな! だから指名したのに、クソ!」

 少し気になる言い回しだ。

「も、とは」

「お前らがいい奴だからだ!」

 ミルコは単純に言う。

「自分を傷つけたヤツを許すお前も! そんなことがあってもヒーローを目指すあいつも! いいやつだ!

 いいやつじゃないとヒーローは務まんねえ!」

 そうあっけらかんと言われ、僕は言葉に詰まる。

「……ありがとうございます。ミルコ」

「あ、何が?」

「いえ……ちょっと待ってください。妙な音が」

 そう言って僕はビリー・クラブを地面と耳に当て、聴覚を鋭くする。

「そこの雑居ビルの3階、女性のくぐもった悲鳴が聞こえます」

「すぐ行くぞ! 脱兎のごとく!」

「はい!」

 やっぱり速い。

 僕は急いでついていった。

 

 僕はレーダーセンスで詳しく視ると、大男が半裸の女性を組み伏せている。

「ミルコ!」

「お前は入ってくるな。警察呼べ。私一人でやる」

 真剣な、怒気を抑えた声でそう言って、ミルコは飛び込んでいった。

「ヘイジャービス。警察呼んで」

『了解しました。イズク様』

「昼間からさかってんじゃねえ! クズ野郎!」

「な、何でミルコが……へぶ!」

「大丈夫か? お嬢さん!」

 女性の安堵の声が聞こえた。僕はホッとすると同時に、やはり男の僕が入るべきではないと思い、そこで警察を待った。

 

「あの、女の人が無事で良かったですね」

「ああ、しかしあの女終始顔が赤かったな。心配だ」

 それは確かに心配だ。

「しかし、お前の聴覚はすげえな! ウサギの耳以上だ!」

「いえ、そんな。恐縮です」

「恐縮すんな! お前のおかげであの女の人は助かった。お前はいいヒーローになるぜ!」

「はい! 僕は助けを求める声を全て聞き届けるヒーローになります!」

「デカい目標だ! 気張れよ! デアデビル!」

「はい!」

 そうして打ち解けた所で、僕は疑問を口にする。

「あの、ところで僕らはどこに向かってるんです? パトロールにしては一直線ですし」

「あ、言ってなかったか。保須だよ。今からヒーロー殺しを蹴っ飛ばす!」

 ミルコさんの宣言に僕の心臓がドキリと跳ねる。

「え、あの。そう言えば疑問だったんですけど。ミルコさんて広島が拠点ですよね。どうして?」

「ああ、私は事務所を構えねえで、全国の手ごわそうなヴィランや組織の情報を聞いたらそれを叩く方針なのよ!」

「成程、だからその若さでナンバー7……」

「そういうこった。丁度今血狂いマスキュラーってのを追ってたんだが情報が途切れちまってな。その時にヒーロー殺しのニュースを見て、そう言えば雄英は関東近くにあるし、丁度いいなって」

 本当フットワーク軽いなこの人。

「ついででもいいんだよ! 凶悪で強いヴィランをヒーローがほっといてどうするってんだ!」

 そう言う彼女の口調は、確かに悪いが、それでもヒーローだ。

「成程、確かに、おっしゃる通りです!」

「だから保須についたら、そこで腰を落ち着けてパトロールだ。その時に色々説明はまとめてしてやる。それまで、お前は誰かの悲鳴を聞き洩らさないようにしてろ!」

「はい……。言ってるそばから! 強盗です!」

「良し! 急行するぞ! 蹴っ飛ばす!」

『今の君が学ぶべきことも知っているだろう』

 オールマイトの言葉がフラッシュバックする。

 

 オールマイト、あなたの言う通り、僕には足りないものが一杯です。

 でも、この人のもとで、それを少しでも埋めれば、あなたの助けになるでしょうか。

 

 結局、保須についたのは夜になってからだった。

「いやあ、結局あのあと3件も事件に会うとはな。にしては早かったんじゃないか」

「そ、そうですね」

 フルカウルの30%を1日中維持し続けた。その結果大分体が痛んでいる。

 というか走りっぱなしだったのに、何でこの人は息が上がってないんだ?

「しかし、お前気になってたんだが、そのパーセントってのは、個性の出力か?」

「は、はい。今は限界が75%で、100%を出すと体が壊れてしまいます」

「そっか、じゃあ体鍛えねえとな。丁度保須にもあそこがある。」

 まだやるの?

 

「ここはシルバーマンズジム。全国展開しているスポーツジムで、ヒーローやアスリート御用達だ」

「成程、噂には」

「じゃあとりあえず個性なしで、お前の体格なら……ベンチブレス100キロとりあえず上げてみるか」

「こ、個性なしですか?」

「おう、筋肉つけるには高負荷低回数。基本だろ?」

「確かにそうですが、何故筋肉?」

 僕の言葉に、ミルコさんはキョトンとする。

「あ? お前の個性見た感じ筋肉の量が増えればパワーの上限も上がるだろ? 細いロープより太いロープの方が千切れにくいしな」

 その言葉に、僕の心臓がドクンと跳ねる。

「た、確かに。シンプルすぎて逆に気づかなかった。確かに鍛えていたけど、冷静に考えたらボクシングも柔道も階級のあるスポーツで体重を増やすっていうシンプルな帰結にいかなかった。というかオールマイトもマッチョなのになぜいままで」

「おい何だブツブツと、怖いしキモイぞ」

 ミルコさんがばっさりと切る。

「キモっ!? すいません、時折出るクセで……」

 ちょっとショックだ。

「まあとりあえずやってみようぜ! 筋肉はあって困るもんじゃねえし! フォームは分かるか?」

「はい! 一応は」

「じゃあやってみろ! 今回はお前の限界値を探るからな」

 そう言ってミルコさんはどんどんバーベルのウェイトを持ってくる。

 

 

 その後は、何とか130キロまで上げることができた。

 他にもミルコさんから効率のいい筋肉の付け方を教えてもらった。

 その後、ステーキハウスでごはんを食べ、僕の食欲に呆気に取られていたが、なぜか気に入られ、全部奢ってくれた。

 そんなこんなで、職場体験初日は過ぎていった。

 




ミルコ師匠とコミュ回。
ちょっとキャラが掴めてませんが、こんな感じかなと触りさわり。
いや、キャラ云々で言えばそもそも職場体験受け入れないっぽいよなこの人……(今更)

このイズク君は、ウェイトトレーニングはそんなやってなかったです。
やってたのは格闘技の訓練や自重トレが主体で。
あとは海浜公園の掃除位。
それであんだけ食いまくって体脂肪率5%ってヤバイなこいつ。
そしてウェイト初体験で初期大田原位上げるという盛りっぷり。

まあこいつはキングピンと対峙しなきゃいけないからこんくらいはね
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