盲目のヒーローアカデミア   作:酸度

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職場体験 接敵

「む」

「お」

「あ」

「ケ」

「ん」

 

 エンデヴァーとミルコ、僕、かっちゃん、轟くんの五人は偶然保須市の交差点で顔を合わせる。

 エンデヴァーも保須市に来ていたのか。

「おう、エンデヴァー! 久しぶり!」

「……ミルコか。貴様はいつも元気だな」

「相変わらずむっつりしてるな。そして爆豪はそんなあんたに取られちまったと」

 ミルコは残念そうに言う。

 かっちゃんはなぜかメンチを切ってた。何で?

「見てんじゃねえようさ耳女」

 やめなさいプロヒーローにメンチを切るのは。

 

「そういう貴様は何故指名を? 独りで自由にやるのが性にあってるんじゃなかったのか?」

「あの体育祭決勝を見てたまにはって思ったんだよ。あんたこそ自慢の息子以外にも指名するとは意外だぜ」

 ……口調自体は喧嘩腰だが、相性自体は悪くなさそうだ。

「ふん、俺も思うところがあったまでだ。それで、貴様の狙いもヒーロー殺しか?」

「ああ、当然だろ? なかなか蹴っ飛ばしがいのありそうなヤツだ。本当は血狂いマスキュラ―を追ってたんだが、情報が途切れちまってな」

「そうか、そうなると、俺達は同じ獲物を取り合う仲か」

「当然早いもの勝ちだ。無論いざとなれば協力はしあおうぜ」

「それも当然だ。あくまで確保が優先だからな」

「……決まりだな。じゃあな」

「あの」

 ナンバー2とナンバー7の間に入るのは勇気がいるが、それでも僕は言いたかった。

「実はインゲニウムの弟さんが、保須市にいるんです」

「「……復讐か?」」

 二人は重なるように言い、顔を見合わせる。が、すぐに離した。

「ケ! 雄英は何してんだよ!? 普通止めねえか!?」

「ああ、全くだ。監督不行といっても過言ではない。……どこの事務所だ」

「マニュアルヒーロー事務所だって言ってました」

「……誰そいつ?」

「確かランキング230位程だったか、中々優秀な男とのうわさだ」

 ミルコの反応は想像通りだが、流石ナンバー2。下の人にも詳しい。

「……事務所に連絡してそれとなく懸念を伝えておこう。まあ、かち合う可能性は低いだろうが、用心に越したことはない」

「……ありがとうございます」

「別に君だけのためではない。4月の件に引き続き、職場体験中の学生が危険な目に合えばさらに雄英への批判は高まる。それはヒーロー社会全体の信用に繋がりかねん」

 エンデヴァーはそう言うと電話を始めた。

「ま、とにかくヒーロー殺しの件をおさめることだ。お前の索敵、頼りにしてるぜデアデビル」

 そう言って、ミルコは肩を組んでくる、僕の気も引き締まる。

「ケ! デク! てめえとこれ以上差をつけるわけにはいかねえからな。ヒーロー殺しを捕らえるのは、俺だ!」

「俺達だろ。俺も負けねえ、もっと速くならねえと」

 君ら交戦できないってこと忘れてないだろうな?

 だが、今それを言うのは野暮か。

「いや、僕が必ず救けを求める音を聞く。そういうヒーローを目指しているからね」

「お前ら三人仲いいな」

 ミルコはうんうんと頷いて言う。

 僕と轟くんは頷くが、かっちゃんは納得いかなそうだった。

 

 三人と別れ、僕とミルコはビルの上に立っていた。

 そのまま二人で作戦会議する。

「ヒーロー殺しの個性は不明ですが、おそらく人を拘束する個性。決して一人にはならないようにしましょう」

「ちっしゃあねえ。見つけたら互いに連絡と増援要請な。後は、犯行場所は一目につかない路地裏が多いらしいな。多人数戦は不得意ですって言ってるようなもんだ」

 そう言って、ミルコは足を180度に開き股関節の柔軟を開始する。

 僕もそれにならい、同じように柔軟する。

 べたっと床に顔をつけながら、さらに話し込む。

「そう言えば、ミルコさんに足技を教えて貰いたかったんですけど」

「お、いいぜ! 見た所柔軟もバッチリだしな!」

 快くオーケーをもらい、僕はミルコと向かい合う。

「よし、まずは一発本気で蹴ってみろ! 個性も使っていい」

「え、では行きます!」

 そう言って僕が蹴ると、風圧がビルの上を吹く。

「うん! 完璧! 何も教えることねえわ!」

「え! ええ!?」

 ミルコはあっけらかんという。

「あとは実践で蹴っ飛ばしながら覚えろよ。大体私も我流だし」

「えー、あ、はい」

「あとはそうだな。私の動きからトレースすりゃいいんじゃねえの。つっても男女で骨格が違うからフォームも微妙に違うだろうけどよ」

 僕は釈然としないながらも、確かにミルコの動きをトレースするのはいいアイデアだと思った。

 僕は聴覚によるサーチを続けながらも、イメージトレーニングを行った。

 その日は何ごともなく終わった。だが、ヴィランは着々と準備を進めていた。

 

 

 

 

 

 ここはとあるバーの一室、ヒーロー殺しが死柄木を切り伏せていた。

「信念、はは、そんなもんないね。強いて言うなら、あんなゴミが祀り上げられている社会を、めちゃくちゃにぶっ潰したいなあとは、思っているよ」

 死柄木弔がナイフを破壊すると、ヒーロー殺しは距離を取る。

「……人は死線に本性を現す。お前には確かに、信念の芽がある。

 ……始末するのは、それからでも遅くないのかもな」

「始末するのかよ、こんなパーティーキャラ嫌だね」

 その時、ガチャリと扉が開く。

「I'm HOME ……どなた?」

「ハァ、まだ仲間がいたか」

「そいつは出向組だ、正確には仲間じゃない」

「ああ、ええとそこのイカした侍チックな方は、お前らの新しい仲間か?」

 ステインは男を値踏みする。

 強いな、とてつもなく。

「俺はステイン……。貴様は」

「ブルズアイ。ま、よろしくな。そんな深い付き合いをするつもりはないが」

「そうか、お前を殺すとなれば、俺も色々と覚悟を決めねばなるまい」

「……なんで仲間になってすぐに殺害宣言されるんだ?」

 ブルズアイはとりあえず、黒霧にウイスキーを頼んだ。

 黒霧は怪我をしていたが、ブルズアイに特に心配する様子はなかった。

 

 

 

 

 そして職場体験3日目、僕は飯田くんと昼ご飯を食べていた。

 何でかというと、ミルコが気を利かせてくれたからだ。

『別にこそこそしなくても、復讐止めさせればよくね?』

 うーん、ミルコもグラントリノと同じタイプの人だな?

「緑谷くん、心配をかけているな」

「えーと、分かっちゃう?」

「それはな。すまない。マニュアルさんにも言われたよ。私怨で動くのはやめた方がいいと」

 そう言う、飯田くんの声色は、それでも固い。

「そうだな、わかってはいるんだ。ヒーローが私怨で動くべきではないと、そんなことはヴィランと変わらない。

 けれども、悔しいんだ、悲しいんだ。どうすればいいのかな」

 そう言う飯田くんの心音は泣いていた。僕はそれでも、伝えたいことを言う。

「……飯田くん、恨んでもいいんだよ。僕はその気持ちをとめたいんじゃないんだ」

 僕は、飯田くんに言う。こんな時光がないのが悲しい。人のことをちゃんとみつめられないから。

「例えば僕だって目の前にまたブルズアイが現れたら冷静じゃいられない。大事なのは、一人で行かないことだ」

「緑谷くん」

「この街には今ミルコがいて、エンデヴァーがいて、マニュアルさんがいて、かっちゃんがいて轟くんがいて僕がいる。

 だから、きっとヒーロー殺しを捕まえられる。

 だから、皆でぼこぼこにしちゃおう」

 僕の物言いに、飯田くんが思わずという感じで呟く。

「君は、薄々わかっていたが、意外とえげつないな……」

「武道家なんてえげつないもんだよ」

「だが、そうか、よってたかってぼこぼこにすればいいのか……。しかしヒーローとしてそれでいいんだろうか」

「ミルコもエンデヴァーも、言ってたよ、まずは確保が優先だって。

 確かに正々堂々と戦って勝つのが一番だけど、それでも誰かが傷つく結果になることを一番避けねばならない。だろう?」

「そうか……そうだな」

 それっきり、飯田くんは黙ってしまう。

 何とか伝わっただろうか。

 こんな時、オールマイトならどうするだろうか?

 

 

 そして夕方、僕の耳が爆音を捉える。何だ?

 僕は飛び出そうとするミルコさんを制し、ビリー・クラブにより、音を注意深く聞く。

 西に1キロ。人々の悲鳴。これは新幹線か。

 北に1キロ。地理的に駅前か複数のヒーローの叫び声。

 そして、その時ジャービスからの人工音声が響く。

『江向通り4-2-10。飯田様からの位置情報です』

「飯田くんがここに! おそらくヒーロー殺しです!」

「わかった! とっとと行くぞ! 他の襲撃点はヒーローに任せる!」

「はい! 北の襲撃点はエンデヴァー達がいます! 任せて大丈夫かと!」

「よし! すぐに向かう……伏せろ!」

 ミルコを攫う、飛ぶ人型、これは脳無!

「ミルコ!!」

「すぐ追う! ダチの所へ急げ! 緊急事態だ個性の使用も許す!」

 そう言って、ミルコは宙がえりしながら脳無に蹴りかかる。

 

 

 side飯田

「まずは、逃げの一手か、悪くない判断だ」

 マニュアルさんとはぐれ、ヒーロー殺しを見つけてしまった僕は、それでも緑谷くんたちとマニュアルさんに位置情報を送信し、機を窺った。

 だが、ヒーローに留めを刺そうとしたため、レシプロで奇襲。その後、ヒーローを抱えて逃げ出そうとしたが、何故か体が動かなくなってしまった。

「ふむ、ヒーロースーツを着た、子ども? にしては、良い判断だ。お前はいい。生かす価値がある」

「……生かす価値だと?」

「ああ、ヒーローの名を汚す贋者とは違う。正しい社会を構成する真のヒーロー足りえる」

 その言葉に、僕の思考が沸騰する。

 

「……黙れ犯罪者! 僕なんかがいいヒーローなものか! お前の目は節穴だ!」

「……何?」

「お前にやられた僕の兄さんは! 僕なんかよりずっと立派なヒーローだった! 緑谷くんと話すまで私怨にまみれてた僕なんかより! よっぽど立派なヒーローだった!」

 

「お前のやってることは! 見当違いの価値観と審美眼で人を傷つけるだけの! ただの快楽殺人にすぎない! そんな曇った眼で見ておいて何が正しい社会だ! ふざけるな!」

「……そこまでの恨みを持ちながら、それでもなお人命を優先した。やはりいい」

 そう言うと、ヒーロー殺しは、僕が抱えたヒーローに狙いを定める。

「ふざけるな! やめろ!」

 そう叫んだ僕の上を、何かが通過する。

「ぐ! があああ!」

 ヒーロー殺しの右肩口に、見覚えのある杖が刺さる。

「く!」

 ヒーロー殺しは、刺さった杖を抜く。

「ああ、すいませんね。ちょっと何、弱いものいじめみたいで、ムカついちゃって」

 緑谷くんは笑って言った。

 まるで怒気を必死で覆い隠すように。

「だから、あなたを捕らえようと思います。ヒーロー殺し」

 緑谷くん。君は……。

「ぼくの友達に、手を出さないで貰えますか?」

 怒ると意外と怖いのだな。

 

 




次回戦闘パート。
強化緑谷は本気ステインにどう立ち回るのか

オールマイト限界オタクVSオールマイト限界オタク
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