盲目のヒーローアカデミア   作:酸度

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I・アイランドへ

 僕は日課のトレーニングに加えて、ワンフォーオールの訓練も行った。

 正直言って、ワンフォーオールの使い方についてオールマイトは感覚で使えていたらしく、あまり参考にならなかった。

 今のところ、ワンフォーオールの出力は体感30%程度で慣らしている。

 今はワンフォーオールを使いながら海浜公園の清掃をしている所だ。

 

「しかし、こうして見ると、君を全盲だとは思えないな」

 

「はは、よく言われます。あと、全盲の人が皆僕みたいだと思うのは違うのであしからず」

 

「いや、そりゃそうだよ。君普通に動けてるじゃん」

 

 レーダーセンス、異常発達した聴覚で僕は入り組んだ地形でも問題なく歩くことができる。

 小学校の頃には密集した森林程度なら問題なく踏破できるほどに発達させることができた。

 まあ、もともとボランティアでしてきたこと。

 

「最近の若い者には、派手なヒーロー活動にばかり目を向ける輩が多いが、ヒーローの基本は奉仕活動。

 君は分かっているようだがな」

 

「……そんな高尚なものじゃないですよ」

 

「HAHAHA! 謙遜せずとも、君は立派な超人だよ」

 

「……周りに恵まれただけですよ」

 

「HAHAHA! ナンセンス! 自分に自信を持っていかなければならないぞ」

 

「ナンセンス」

 

 そういいながら、僕は、トラックにゴミを置いていく。

 盲人用の杖を使って音を鳴らし、全体を()渡す。

 進行状況としては半分位といった所か、このペースなら後2か月程度、夏までには終わるだろう。

 

「そうそう、ナンセンスな君に提案がある。夏休みにご両親に許可を取って、あるところに来てもらいたい」

 

「? あるところとは?」

 

「I・アイランドさ!」

 

 

 学校では、僕の個性のことで大騒ぎだった。

 

「緑谷! お前個性が発現したんだって!?」

 

「どんな個性だよ!?」

 

「うん、超パワーって言ってね。ただ、発現したてだからケガするかもしれないから、使用は控えてるんだけどね」

 

 そういいながら、右腕にワンフォーオールを纏わせると、紫電が纏われるような感覚がする。

 それにクラスメイトは歓声を上げる。

 

「お、おお、かっけえ!」

 

「こりゃマジで雄英に二人合格あるぜ」

 

「け」

 

 かっちゃんが席を立ち、教室を出ようとする。

 

「おいカツキ、緑谷の幼馴染だろ? なんかないの」

 

「ああ、何もねえよ。デクに個性があろうがなかろうが関係ねえ。

 俺は俺で上に行く。そんだけだ」

 

 その言葉を聞き、僕も覚悟を決める。

 みんなを助けるヒーローになる。

 そのために。できることをすべてやる。

 

 

 そして何より大変なのはお母さんだった。

 何せ、個性がいきなり発現したのだから。

 最初に知らせた時は驚いて泡を吹いて気絶してしまった。

 

「ええ。イズク。良かったねえ」

 

 今思えば母さんにも苦労をかけた。

 母さんは、ずっと僕を支えてくれたから。

 それこそ食事に習い事に、勉強に色々と助けてくれた。

 

「その、母さんに紹介したい人がいるんだ。僕を鍛えてくれるって」

 

「あ、あなたまだ鍛えるつもりなの?」

 

母さんは驚いて心臓を跳ねさせる。でもこれは必要なことだ。

 

「僕はまだ発現させたばかりだから、怪我とかしかねないしコントロールも利かないから、ヒーローになるには必要なんだ」

 

「そう、本当は危ないことなんてして欲しくないけど、ずっと夢だったものね、けれど怪我だけはしないでね」

 

 そう言って母さんは笑って送り出してくれた。

 母さんの瞳が少し潤んでいることに、気づかないフリをした。

 そしてオールマイトと母さんを会わせる。

 

「あのヘドロ事件で見せたガッツと機転、そして勇気溢れる行動に感銘を受けました。是非サポートさせていただきたい」

 

「あのオールマイトに!? イズクすごいじゃない!?」

 

「つきましては、夏休みの外出許可をいただきたいのです。I・アイランドで出久君の日常生活をサポートするアイテムを送らせてください」

 

「そんな、なぜそこまで」

 

「私が彼に惚れ込んだからですよ。ただしこのことはくれぐれも内密にお願いします。出久くんにも迷惑がかかってしまうのでね」

 

 そういった所で、おかあさんとの話し合いは終わった。

 

 

 海浜公園の掃除を終え、世間が夏休みに入ったころのこと。

 太平洋沖に浮かぶ人工島、I・アイランド、そこでは日夜ヒーローのサポートアイテムを作っている。

 そこに、僕はオールマイトとともに向かっていた。

 

「それでオールマイト、何故I・アイランドなんです? サポートアイテムなら日本でも十分なのでは」

 

「HAHAHA!! 実はI・アイランドには親友がいてね、君の紹介をしようと思ったのさ。

 その親友の名はデヴィット・シールド!」

 

「デヴィット・シールド! ノーベル個性賞を受賞した天才科学者じゃないですか!」

 

 思わぬビッグネームに僕の声も思わず上ずる。

 

「そういえば、オールマイトは若いころデヴィット博士とコンビを組んでアメリカで活躍していたとか。

 それで、僕のコスチュームを?」

 

「ああ! この機会だし、私の弟子ということで、頼むよ。ただし、ワンフォーオールのことは内緒にしてくれよな!」

 

「へ? そうなんですか?」

 

 僕は意外に思ったが、オールマイトはこう続ける。

 

「私達の力は知っての通り特殊なものだ。知る人には危険がついてまわる。彼を守るためにも、頼む」

 

「……そういうことなら、わかりました!」 

 

 

 そうして降り立った空港は、雑踏の密度が凄く大都会といった感じだった。

 なれない土地でも反響音により周囲の様子を探る。

 すると、人々の話し声が聞こえる。

 その会話の中に節々にあるオールマイトという単語。

 そして遠くから聞こえてくる地鳴りのような人の突撃音。

 

「オールマイト! 人が押し寄せてきます!」

 

「ム! そうか、逃げよう!」

 

 オールマイトは異国の地でも人気なんだなあと思った。

 そうして逃げ込んだ公園で、僕達は息を整える。

 

「さて、この辺で待ち合わせなんだが……」

 

「マイトおじさまー!!」

 

 その声に思わず振り向いてしまう。

 そこには、ホッピングのようなものでこちらに近づいてくる女性がいた。

 背は僕と同じくらいだろうか、匂いから白人の女性。

 背中まで伸ばしたメガネをかけたロングヘアーの女性だ。

 

「メリッサ! 迎えに来てくれたのか!」

 

「マイトおじさま! お久しぶりです!」

 

 声からでもわかる可憐な女性だ。

 その女性は僕に近づいてくる。

 

「あなたがマイトおじさまの弟子ね? 私はメリッサ・シールド。よろしく」

 

「こんにちは、僕の名前は緑谷出久っていいます。よろしくお願いします」

 

そうして、僕とメリッサさんは握手をした。

 

 彼女と、今後浅からぬ関係になるとは、この時は思っても見なかった。




ヒロイン候補その1登場

みんなも二人の英雄見ような。チームアップミッションも買おうな。

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