盲目のヒーローアカデミア   作:酸度

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ちょっと長くなったが切のいい所まで


期末試験終わり、そして遭遇

 簡単な話だった。

 あまりに出力の大きい力は、僕自身のレーダーセンスを乱してしまう。

 だから、手加減していた。

 

 リミッターを外す、ボクシングに限らず、格闘技をするものが真っ先に行うことだ。

 ワンフォーオールの出力は上がっていても、相手を気遣っていた僕の攻撃ではハエも殺せないものとなる。

 ワンフォーオールの出力を上げて、おっかなびっくり動いている。それが体育祭までの僕。

 

 だから、最適な出力を。

 

 相手を必要以上に痛めつけず、周りに被害も出さないギリギリの出力。

 およそ20%。

 その出力で、思いっきり動くこと。

 それがおそらく最も強く、速い。

 

 相手が増強系だったり硬度を上げる個性だった場合、目安は40%。

 おそらく僕自身の身体能力も加味し、その辺りがギリギリ許容できる範囲。

 これでも、足元がひび割れたり、ガラスが割れたりする被害が出ると思われる。

 

 強敵と出会った時、許容できるのは60%まで。

 これは方向や衝撃を考えないと自分自身で町を破壊してしまう。

 運用するときは全身ではなく体の一部分にするなどの工夫が必要。

 

 オールマイト相手なら、フルカウル40%。

 そして、攻撃の瞬間だけ60%

 

 これで十分対抗できる。

 

「緑谷少年、正解だ。動きに遠慮がなくなった」

「恐縮です、オールマイト」

 僕とオールマイトは攻撃をぶつけ合う。

 ラッシュの威力はともかく、回転率で追随していく。

「あと、相手は僕だけじゃない」

 かっちゃんが爆撃をオールマイトに当てる。

 かっちゃんは空中を高速旋回しながら、オールマイトに支援爆撃を行う。

 ダメージはある。

「GUNUNU! 甘くはないな、二人の連携は!」

 オールマイトがかっちゃんに狙いをつけるが、それはさせぬように僕は追い込んでいく。

 攻め続け、隙を作らせない。

 そして、ゲート近くまで追い込んでいく。

 

 もうすぐ、到着する。

「このままゲートまで行く気か? そりゃあ希望的観測すぎるぜ!」

「そうですね、ここまででいい」

 そう、オールマイトが出した被害地、そこに重ねるようにすれば、被害を気にすることなく戦える。

 

「行きますよ! 80%!!」

 

 これが今出せる全力。

 それを出し切った時、起こったのは移動するだけで吹き荒れる暴風だった。

 

 これがオールマイトの持つ、80%。

 確かに、これは、自分でセーブしてしまうのも分かる。

 だが、オールマイトもそれは一緒のはずだ。

 確かにまだオールマイトには敵わない。

 100%を自在に振るえるものの8割程度の力と、全力全開の80%。

 それには大きな差があるのだろう。

 そこは、食らいつく。

「オーバーセンス」

 オールマイトの未来を予測しろ。

 鼓動を聞け、心理を読め。

 僕は盲目のヒーロー、デアデビル。

 見えないものを見るものだ。

 

「はやい」

 オールマイトの方が速度で勝る。

 では、僕は拮抗できないか。

 否。

 速度で劣るなら技量で、経験で劣るなら能力で。

 とにかくそうすれば。

『轟・八百万チーム。条件達成』

 その放送に、オールマイトの意識が削がれる。

「……やられたな」

 オールマイトの動きが止まる。

 僕もまた、ワンフォーオールを収める。

「完敗だよ、緑谷少年、爆豪少年。合格だ」

 その右手には確かに、ハンドカフスが嵌められていた。

 

『緑谷・爆豪チーム! 条件達成!』

 

「ケ。デクが抑えてたから勝てただけだ。褒められてる気がしねえよ」

「ふ、そんなことはないさ爆豪少年。君の支援爆撃がなければまだやりようがあった」

「そうだね、それに一瞬動きを止めた隙によく接敵できたよ」

 僕が褒めると、かっちゃんが距離を取る。

「褒めんな気色悪い」

「ひどいなあ」

「……さ、早く戻りなさい。他のチームの試合を見ることも、また勉強のウチだ」

 そうか、オールマイト、活動限界か。

「じゃあ、行こうか」

「ケ! オールマイト! 今度はサシだからな」

 そう言い残して、かっちゃんは歩く。

 そうだね。一対一で圧倒できるようになれば、そうしたら、貴方の運命も、きっと覆せる。

 

 

 

 

 

 

 

 全く、大した少年達だ。

 ハンデありとはいえ、私は全力で戦った。

 それを乗り切ったのは、偏に彼らの才能と努力。 

 彼らの明るい未来のために、私はこれからも立たねばなるまい。

 喀血を拭い、私は立ち上がった。

 

 

 

 

「クソが! 行くぞ! 芦戸!」

「うおおおおおおおおおおおおお! 林間合宿ー!!」

 上鳴くんと芦戸さんが裂帛の気合で、最後のゲートに間に合った。

「ありゃりゃ。勝ち筋をまんまと……。うーん努力賞ってとこかな」

 校長先生のつぶやきをマイクが拾う。

 かっちゃんはため息を吐く。

「ギリギリ合格ってところだろうな。お情け合格だ」

「厳しいなあ、結構難しい試験だと思うけど」

「立ち回りがアホすぎるわあの二人」

「うーん」

 厳しい。

「そういや、お前も」

「僕も?」

「体育祭までのお前は筋肉ムキムキで女の子投げしていたようなもんか、クソダセエ」

「あああああああああああああああ!!!」

 かっちゃんって本当才能マンやだこの人!

「そりゃ増強系でもねえオッサンに苦戦するわな」

「あああああああああああああああ!!!」

「しかも自分の耳壊すのがおっかなくて動くのビビるとか6歳の頃のお前じゃねえか」

「もうやめてええええええええええ!!!」

「うるさいよアンタたち」

 僕はその後もかっちゃんの口撃にさらされた。

 もうやめて……。

 

 

 瀬呂くんと峰田くんは遠距離から瀬呂くんのテープと峰田くんのもぎもぎを合わせた即席フレイルでミッドナイト先生を捕らえた。

 切島くんと砂藤くんは、強化した砂籐くんが切島くんを投げるという荒業でセメントス先生の包囲を打ち破った。

 

 そんなこんなで。

 

 B組の実技試験日を挟んでの結果発表。

「赤点はなし。というわけで、林間合宿は全員で行きます」

「「「「しゃーおらー!!」」」」

 僕らの歓声が辺りに響き渡る。

「ただし麗日青山芦戸上鳴。お前ら赤点30点として35点位だ。油断すんなよ」

「むっちゃ水差す!」

「ギリギリや……」

「当たり前だ丸顔。お前13号先生が本物のヴィランだったら殺されておわりだぞ」

「う、返す言葉もない」

「心外☆」

「B組も赤点はなしだった。まあ、補習者なしで林間合宿できんのは俺も嬉しいよ。

 ああ、遺書は書いとけよ」

「「「「何やらされるんですか!!」」」」

 僕らの慄きに相澤先生は笑って返す。

「じゃ、合宿のしおり配っていくから、後ろに回していけ」

「こええよ」

 僕らはおっかなびっくりしおりに目を通す。

 大丈夫だよね、網走とかじゃないよね?

 

「まあ何はともあれ、全員でいけて良かったね」

「一週間の林間合宿か、荷物もいるな」

「水着とか買わねえとな」

「暗視ゴーグル」

 また峰田くんには僕の語りが必要かな?

 そう思うと峰田くんは距離をとる。勘がいい。

「あ、じゃあさ! 明日休みだし。皆で買い物にいこうよ!」

 葉隠さんの提案に僕らも盛り上がる。

「いいね、そういうの初だし!」

「爆豪、お前も行こうぜ」

「行ってたまるかかったりい」

「ええ、行こうよかっちゃん」

「そうそう」

 切島くんと僕でかっちゃんを挟む。

「だああ!! 挟むな気持ちわりい! 行きゃいいんだろいきゃあ!」

「「ヨシ」」

「ケ!」

「轟くんはどうする?」

「休日は見舞いだ」

 家族じゃしゃあない。

「何だこの差はゴラア!」

 孤独死しそうかしないかの差かなあ。

「あんま調子にのんなよ女の子投げがあ!!」

「それやめてよ!! 傷ついてんだから!!」

「何だ女の子投げって」

「こいつ体育祭の頃はよ」

「やめてえ!!」

 僕らはギャアギャアと騒ぎ出す。

 

 

 そして、当日。

 

 

 僕らは木椰区ショッピングモールに来ていた。

 そこで、僕らは何人かに別れて買い物をすることに。

「何で休みの日にまでクソデクと一緒なんだよ」

「ええやん、仲良し」

「仲良しー!」

「誰がだゴルァ!」

 僕、かっちゃん、麗日さん、葉隠さんは4人で服を買いにきていた。

 そして、僕は笑いながらも、気づく。

 何か、気配がする。

 僕は、かっちゃんに耳打ちする。

「警察呼んでかっちゃん」

「ア?」

「いや、そいつは悪手だな」

 

 いきなり、危機に接した人間は、あまりのパニックにより、逆に異常事態に際しても平常通りの行動をしてしまう。

 所謂正常性バイアスというもので、これは的確な訓練をされていないとどうしても陥ってしまう。

 この場合、麗日さんと葉隠さんがそれに辺り、彼女らはポカンとしてしまった。

「今日は話をしにきただけだ。うちの大将がな」

 だが、それが正解だったのだろう。

 こいつにとっても僕らにとっても。

「……なんのようだ? ブルズアイ」

 僕の怒気を、こいつは笑って受け流す。

「おいおい、俺はおまけかよ、悲しいぜ」

 その男は、USJであったきりだ。

 だから、正直よくわからなかった。

「死柄木……だったか?」

「ああ、よろしくな緑谷出久、いやデアデビル。あと爆豪勝己、女の子が二人」

「俺らはおまけか。舐めてやがるな」

 かっちゃんが臨戦態勢をとるが、僕が止める。

「かっちゃん、流石に、場所が悪すぎる」

「冷静で助かる。そうだな、お前と戦うなら、俺がトランプをばら巻く。死ぬのは何十人になるだろうな」

 ブルズアイの言い方に、かっちゃんは盛大に舌打ちする。

「クソのセリフだな」

「ふふ、的を射ている。俺が言うと洒落てるな」

 ブルズアイは楽し気に言う。

「マジで話をしにきただけだ。腰を落ち着かせて喋るのが最善だ。分かるよな。そっちの女の子二人もさ」

 死柄木の問いに、僕らは睨みつけながらも頷く。

 

 ひとまず、僕らはベンチで腰を落ち着けた。

 死柄木も座り、ブルズアイもまた、座りながら取り出した小瓶でウイスキーを飲む。

「さて、何から話したもんか。今話したいのはあれだ、ヒーロー殺し。

 あいつのおかげで図らずも勢力は拡大しているわけだが、ムカつくんだよなあ」

 ……やはり、ナイトアイとグラントリノの見立て通り、ヒーロー殺しの動画に当てられたヴィランが敵連合に与する状況になっているのか。

「仲間じゃ、ないん?」

 麗日さんが問いかける。

「世間はそう言ってるが、俺はそうはおもっちゃいないな。

 問題はそこだ、ほとんどの人間がヒーロー殺しに目がいっている」

 死柄木はそこで苛立たし気に首をかきむしる。

「雄英襲撃も保須襲撃も、……全部ヤツに食われた。

 あいつも俺も、気に入らないものを壊していただけだろう。何が違うってんだ?」

 その問いに、僕は、思っていたことを言う。

「僕はヒーロー殺しは……キライだ。相容れない。救われといてこう言うのも何だけどね」

「……へえ」

「だけど、言わんとしていることは分かった。やろうとしている目標も、理解はできる。やり方は絶望的に間違っているけど。

 世界をよりよくしたい。そう思っていたんだろう」

 ヒーロー殺しの思想、英雄回帰。

 その実現性はともかくとして、そう思うことは納得いく。

「だが、お前はただ壊したいだけだろう。

 逆に聞くが、何を理解して欲しい?

 君の悲しさか? 憤りか? 同情して欲しいのか?

 それで、誰かに共感して欲しいって、虫がよすぎないか?」

 僕の問いに、死柄木は少し考えて、クスクスと笑い出した。

「そうだな。そうだな。そうだな。ああ、わかったよ。俺が何をしたいのか」

 死柄木の心音が、落ち着いてくる。

 まずいことを言ったかもしれない。

「お前の言う通りだ。俺は誰かに共鳴してもらいたかったんじゃない。理解してもらいたかったんじゃない」

 死柄木は笑って言う。

 

「オールマイトが、あのゴミが救えなかった人間などいないようにヘラヘラ笑っているこの世界を俺は壊す。

 俺はただ、壊したかったんだ何もかも全部。それだけだったんだな」

 

 そう言うと、死柄木の殺気が膨れあがる。

 かっちゃんが戦闘態勢を取る。

「いや、ここではやらないさ」

 そう言うと嗅ぎ覚えのある臭いがする。

 黒霧、だったか。

「約束通り、ここではやらない。次会う時は、仲良く皆壊してやる。

 俺は全てを壊す。今日からそれを信念と呼ぶ」

 死柄木の背中に、僕は叫ぶ。

「なら言わせてもらおう。お前は何も壊せない! 必ずだ! オールマイトとともに、必ずお前を捕らえる!」

 僕の叫びを、笑って受け流す。

「やってみろよ」

「……俺からもいいか?」

「どうぞ、ブルズアイ」

 ブルズアイは僕を濃密な殺気でねめつける。

「俺の本分は暗殺だ。次会う時は不得意な戦闘じゃねえ、本気の手管、見せてやるよ」

 そう言うと、ブルズアイはトランプを投げつける。

 僕がつかみ取ると、奴らは消えていた。

 

 

 その後、僕はオールマイト、そして塚内警部と顔を合わせる。

「この警部さんが、話にあった。よろしくお願いします」

「いや、こちらこそ。君達四人が冷静だったから被害者0で乗り切ることができた。

 警察を代表して礼を言うよ」

「いえ、何もできなかっただけです」

 僕らは何もできなかった。

 資格がないとかももちろんあるけど、被害を出さずに相手を止める強さがなかった。

 だから、逃げられた。

「しかし、話を聞くに、奴らも一枚岩ではないようだな」

「そうだね。友達も来たようだ」

 三人が僕に近づく。

「……なんもできへんかったね」

「ケ、だせえ」

「まあしょうがないじゃん、個性の無断使用は犯罪だし」

 葉隠さんの正論にかっちゃんはイライラを隠さない。

「それでもやるのがヒーローだろうが」

「いや、あれで正解だ」

 塚内さんが僕らに言う。

「あの、オールマイト。オールマイトも誰かを救えなかったこと、あるんですか?」

 僕はオールマイトに尋ねる。

「確かに、死柄木もそう言ってたね」

「……あるさ、当然今でもこの世界のどこかで誰かが傷つき倒れている。

 手の届かないところにいる人間は救えない。

 だが、だからこそ私は笑って立つ。

 正義の象徴が、人々の心を常にともせるようにね」

 オールマイトの答えに僕は、奴の言った言葉に疑問に思う。

「……結局逆恨みなんじゃねえのか?」

 かっちゃんの言葉に、僕も頷く。

 だとしても、いやだからこそ、厄介だな。

 

 そうして、濃密だった前期も終わり、夏休みに入る。

 林間合宿は場所を変えて行われる運びとなる。

 その開催の前に、あるイベントがある。

 I・アイランドで行われるI・エキスポ。

 そこに、僕は体育祭優勝者ということでチケットをもらった。

 4人つづりのチケットで、僕はデヴィットさんとメリッサさんに別口で誘われたので丸々と余る。

 そこで、僕は塩崎さん、麗日さん、葉隠さん、そしてかっちゃんを誘いI・アイランドへ向かった。

 

「何でこのメンツで俺を誘うんだクソデク」

「結局来てくれるんじゃん」

「俺はおばさんに頼まれたんだ! クソが!」

「しょうがないでしょ。かっちゃんと麗日さん葉隠さんは敵連合と接敵したんだから、逆に日本に留まる方が危険じゃん」

「俺を気遣うな!」

 塩崎さんの淑やかな笑い声が飛行機内を満たす。

「お二人の仲が良くてなによりです」

「良くねえわ茨女! 舐めとんのか!」

 いや、仲良いとおもうけどな。

「三人とも、見えてきたよ!」

 葉隠さんの元気な声が響く。

 2回目のI・アイランドだ。

 

 そこで、僕達は大事件に遭遇することになる。




いやあ、普通にスペック考えたらハンデありオールマイトに二人掛りならそんな苦戦しないよね、ってことで。

という訳で駆け足ですが二人の英雄編へ。
少し出るキャラ絞ろうと思います。まあぶっちゃけデアデビル一人で事足りそうですが。
そんなに映画と変わるところないかなと思いますが、ちょっとした間違い探しを楽しんでいただければ。

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