盲目のヒーローアカデミア   作:酸度

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これはA組ではなくB組だったらというIFです。
あんまり大した内容ではないですが、一応ハーレムです。
スルーしていただいて結構ですので、ご了承ください。


30万UA達成記念 もしB組だったなら

 入学試験の結果を見ながらのクラス編成。

 そこで、イレイザーヘッドは緑谷と爆豪を自分に任せて欲しいと進言した。

 そこに待ったをかけたのがもう一方のヒーロー科担任ブラドキングである。

「待て待てイレイザー、後期はクラス対抗での訓練もある。あまり戦力を偏らせるのはどうかと思うんだが」

「ブラド、そうは言ってもこいつらはライバル同士、一緒にした方が相乗効果が認められるだろう」

「確かにそうだ。だが、こいつらをクラスに分け、それぞれ中心となって引っ張り合うことにより、一年ヒーロー科40人の底上げをする。こいつらの力はそうするに足るほどだと思う。俺はこいつらは分けた方がいいと思う」

 ブラドキングの弁に、イレイザーヘッドも少し考えて頷く。

「確かに、そうした方が合理的かもな」

 そこで、校長が手を叩く。

「では、緑谷くんの方をブラド君に、爆豪くんの方を相澤くんに任せようかな。爆豪くんの方が直情傾向にありそうだから、相澤くんが上手く誘導してくれ、緑谷くんの方は、個性を持て余してそうだから、ブラドくんの実戦訓練でより繊細なコントロールを学ばせて欲しい」

「任されました」

「わかりました」

 そうして、緑谷出久はB組に在籍することになる。

 

 

 sideブラドキング

 

 最初の顔合わせの時、目立っていたのは緑谷だった。

 何せ、盲目というハンディキャップ。それにも関わらず入試主席という優秀さ。

 まるで見えているのではないかというほどに、常人と変わらぬ知覚能力。

 何より、その人当たりの良さで、皆の心を掴んでいた。

 最初の個性把握テストでは圧倒的な一位を獲得し、皆にとっておおいに刺激になった。

 

 何故か、塩崎茨が当初から緑谷にべったりだったことを除けば、概ねクラスのカンフル剤になっていたといえる。

 

 最初の戦闘訓練では緑谷と小大ペア、物間と鉄哲ペアと戦い、緑谷が投擲したものを小大が大きくするという連携攻撃で圧倒。

 他にも皆の個性を見て、色々な活用法を考え付いたりとブレーンとしても活躍。

 そのまま副委員長に就任。

 総合的にみて、非の打ち所がないほどに優等生だった。

 

 だが、USJでの襲撃事件で、私はどうやらこいつの課題、というよりも問題を見つけてしまった。

 それは、余りにも自己犠牲がすぎるというものだ。

 

 緑谷は衝撃波で黒霧と呼ばれていたヴィランを倒すと、脳無と呼ばれた改造人間と戦闘。対オールマイト用と相手が喧伝したに相応しい性能に、緑谷はヤツの言う許容上限を超えた100%の力で対抗。辛くも撃退する。そして、危うくブルズアイと名乗るヴィランに殺されそうになったところをオールマイトの救援が辛くも間に合い、助かった。

 その頃私は相手の首魁、死柄木と戦闘していたが、生徒達に怪我人が出なかったのは、偏に緑谷の獅子奮迅の活躍があってのもの。

 しかし、その代償として、緑谷は1週間の入院を余儀なくされた。

「ブラド先生、ごめんなさい。ご迷惑をおかけします」

「いいんだ緑谷。礼を言うなら俺の方だ。お前のお陰で、生徒たちに人的被害はなかった」

「そんな、僕のせいで、ブルズアイは……」

「事情はオールマイトからきいた。ただの逆恨みだ。気に病むな」

 そう言いつつ、俺は常々抱えていた疑問を口にする。

「なあ緑谷。何を焦っている? お前はまだ入学して一ヶ月もたっていない。その割には随分と生き急いでいるように見える」

 緑谷は少し逡巡したようだがやがて観念したように話し始めた。

「時間が、残ってないんです。僕にではなく、僕の大切な人に。その人に安心してもらうためにも、僕は一刻も早くヒーローにならないといけないんです」

 そう言う緑谷の表情には、焦燥、悲哀と言った感情が見られ、俺は言葉をなくす。

 だからこそ、俺は緑谷の頭をくしゃくしゃと撫でた。

「わ、ブラド先生」

「ならば、笑え緑谷。そんな顔で誰が安心する?」

 俺の言葉にハッとしたような緑谷に俺は笑う。

 ああ、こいつは優秀なように見えて、まだまだ子どもなのだな。

「一人でヒーローになった者はいない。何故なら、ヒーローには助けを求めてくれる人が必要だからだ。

 俺だってそうだ、多くの同輩、支えてくれるものがいる。

 そのものたちを安心させるためにも、笑え」

 無理させるなというのは簡単だ。

 だがそれではこの男は止まらんだろう。

 こいつに必要なのは隣に立ち、あるいは背中を押す友だ。

 そして、それはすでに持っている。

「ほら、皆来たぞ」

 ドタバタと騒がしい声が聞こえる。

「緑谷さん無事でしたか?」

「緑谷! あんた無茶して! 心配だったんだよ?」

 雪崩れ込んでくるB組の一同に驚いた表情をする緑谷。

「緑谷! お前は本当に凄いやつだ! お前と戦えたこと! 誇りに思うぜ!」

「全く一人で突っ込まないでくれるかな。冷や冷やさせるよ全く」

「そんなこと言って、物間のやつ、無茶苦茶心配してたんだよ」

「やめてくれないか取蔭!」

「ヴィランはウラメシかったけど、緑谷のお陰で安心できたわ、本当にありがとう」

「ん!」

 クラスの皆からの激励に、緑谷は堪え切れないように俯く。

 これから張り切って緑谷を、いや、この可愛い生徒達を導かねばなるまい。

 

 その後も緑谷は体育祭で優勝。期末では取蔭と組んでオールマイト相手に完勝するなど、八面六臂の活躍を見せる。

 何も問題がないと見せて、しかしその実、ある問題点が見えてきた。

 思わず頭を抱えたくなる。

 

「何だブラド。ため息などらしくない。それに、生徒にそんな姿を見られるのは合理的じゃないな」

「イレイザーか……。緑谷のことで一つ問題があってな……」

「? ……優秀な生徒だと思うが、何か問題でも?」

「いや、大した程ではないんだが」

 俺は眼下の中庭で、木陰ですやすやと昼寝する緑谷を見下す。

「昼寝か、適度な睡眠は集中力を向上させるからな」

「ああ、別にそこではない」

「一緒にいるのは塩崎か。命の恩人だというからな。仲が良くても不思議ではないな」

 勿論、俺とて生徒の恋愛事情に目くじらを立てるほど狭量ではない。

 雄英は生徒間の恋愛に対しても自主性に任せているし、まああの二人ならお似合いだろう。

「それだけなら良いのだかなあ」

 見ていると、またぞろ始まったようだ。

 眠る緑谷に、慈母のような表情で側にいる塩崎、その二人に忍び寄る影に俺はため息を吐く。

「あれは、小大か?」

 小大唯、その美貌からすでにファンクラブなどもできていると聞く。

 ミステリアスかつマイペースな雰囲気ながら、成績自体も優秀な生徒だ。

 その小大が、眠っている緑谷に近づくと、ごろりと寝転がり、膝に頭を乗せた。

 その瞬間塩崎の眉がピクリと動く。

 しばし、気まずい空気が流れる。

「……あれは?」

「まあ、最近ああいう光景が目に余るというか」

 塩崎の方は、緑谷が誰を選ぼうが自由と公言していることもあり、実害が出るほどではないが、困ったものだ。

「三角関係か。まあ、だからといって教師が口を出すのも野暮か」

「まあそうだな、三角で済むならな」

 そこで、緑谷の隣にさらに別の女生徒の姿が見られる。

 柳レイ子、ポルターガイストという強個性。

 だが、USJ襲撃事件では緑谷に危うい所を助けてもらったと聞く。

 その柳がするりと近づいたと思うとその肩に頭を乗せ始めた。

「……何か空気歪んでないか?」

「本当最近はこんな感じで、クラスの男連中も嫉妬すると言うより怯え始めたんだ」

「よくやるな……」

 確かに緑谷は大したやつだが、まさかここまでモテるとはな。

 最近はさらに、もう一人。

 すすすとどこからか手が飛んできたとおもうと、緑谷の手を握った。

 あれは取蔭の個性だな。全く。

「ああ、なるほどなー」

「まああんな感じで、男どもも賭けをし始めた位だ」

 その後、目を覚ました緑谷は、自分が女子に囲まれているという状況に赤面しだした。

 俺はため息をつきつつも、緑谷が後悔しない選択をすることを祈るしかできなかった。

 

 

 side拳藤

 私は教室の窓から、中庭の光景をため息をつきながら見る。

 後ろでは物間を主導にしてトトカルチョが行われていた。

「物間やめな。趣味悪いよ」

「ええでも拳藤、娯楽の少ないことだしいいじゃないか」

 物間は肩をすくめながらも、トトカルチョを続けていく。

「ちなみに一番人気はメリッサさん、2番手塩崎って所かな」

「……結局、B組からではないと?」

「まあ、足を引っ張り合って自滅するというのがおおよその見方かな」

 確かにそれはありそうかなと、私自身も思う。

「あと、何で私はいってんの?」

「あれ? 違った?」

「違うわ!」

 しかも結構票入ってるし。

「三番人気だぜ、マジで狙ったら?」

「ないよ、私は。ただ副委員長やってもらってるだけで」

 そう言いつつ、女子に囲まれ、困り顔をしている緑谷を見て、私はため息を吐く。

 思い出すのは、USJで戦い抜いた緑谷。

 そこで、雄々しく戦い抜いたあいつを見て、私の胸に宿ったのは、憧れだった。

 

 ただ、戦い抜く。

 持ちうるもの全てを使って、人を守ろうとする。

 それが確かに美しいんだろう。

 それでも、私はこれは恋愛じゃない、と思う。

 

「私は、尊敬してんだ。緑谷のこと。あんたもそうだろ?」

「……まあね」

 茶化しながらも、それでも緑谷を見守ってるのは、結局はみんな緑谷のことが好きなんだろう。

 私はそう思いながら、窓から声をかける。

「授業始まるよ! 戻ってきな!」

 さて、緑谷は結局どうするのかね。

 

「ワタシケンドーさんに一票デス!」

「ワタシもノコ!」

「お、拳藤二番手に」

 とりあえず物間に手刀を叩き込んだ。

「何で僕だけ?」

 

 

side緑谷

 

「という訳でどうしたらいいのか」

「それは自慢かデク?」

「……になるよねえ」

 僕はかっちゃんとの帰り道、ため息がでる。

「んなもん適当に一人選んどけばいいだろう」

「適当には選べないよ」

 かっちゃんは息を一つ吐く。

「とにかく一人を選べ。半端な同情は傷つけるだけだろ」

「……そうだねえ」

 とにかく、僕は、どうしたいのやら。

「全員平等に愛するなんて甲斐性お前にゃねえからな」

「いや、しないよ、下種野郎じゃん」

「わかってんじゃねえか」

 そりゃあ、嬉しい気持ちはある。

 皆真っすぐに好意をぶつけてくるから。

 だから、甘えちゃいけないんだろう。

 

 僕は強くなった日差しに胸をはせる。

 

 僕の心に巣食っているのは、結局は。

 




何かブラド先生でいいんじゃないかな?

結局足の引っ張り合いして相対的にメリッサの位置が良くなる皮肉。
何かUSJ詰まない? と思ったのでデアデビルはA組ルートより強化されてます。

次回からは二人の英雄編です。乞うご期待!

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