盲目のヒーローアカデミア   作:酸度

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お待たせしました。林間合宿です。
ちょっとこれまでの更新頻度を維持できないと思いますが、何とか完結目指して頑張ります。


林間合宿
林間合宿 始まりと出会い


 I・アイランドから戻ってすぐの、林間合宿当日。

 僕らは早朝からバスに乗り込もうとしていた。

「やあ! A組。体育祭では色々あったけどよろしく!」

「取蔭さん、その節はどうも」

 隣では轟くんと鉄哲くんが仲良さげに話している。

 僕は塩崎さんに手を振ると彼女も嬉しそうに手を振った。

「よりどりみどりじゃねえか……」

「お前駄目だぞそろそろ」

「さあ、皆、早く席に着くんだ!」

 飯田君張り切ってるなあ。

 

 バスの中で、僕は飯田くんと話をする。

「I・アイランドでは残念だったな。エキスポが中止になって」

「うん、でも仕方ないよ」

 そう返しながら、僕はメリッサさんの唇の感触を思い出す。

「ん? どうした? 顔が赤いが。体調でも悪いのか?」

「う、ううん何でもない!」

 僕の煩悶は、騒がしい車内が流してくれた。

 かに見えた。

「緑谷、もしかしてメリッサさんと何かあったんじゃねえだろうな」

 峰田くんがゆらりと僕に近づく。こわ! 何でわかんの!?

「な、ないない! 何言ってるの!」

「嘘つけー!! 絶対あった反応だろ!」

「峰田くん! 移動中のバスで席を立つんじゃない!」

 飯田くん、もっと言ってやって。

「なあ爆豪。お前も一緒に行ったんだろ? 何かあったのか?」

 上鳴くんがかっちゃんに尋ねる。

「知るかよ。発明女とデクがどうなろうが勝手だろ。んなデリカシーねえから彼女もできんのだわ」

 かっちゃんありがとう。

「ぐ、ひでえ。だがそうかもしれん」

「だからってそりゃあねえよ。何で緑谷だけこんなにモテるんじゃあ」

 峰田くんがよよいよよいと泣きながら席に戻る。

 確実に何かあった体で納得されている。

 僕隠し事が下手なのかな。

 

 そうこうしているうちに、休憩場所についた。

 見知った気配がする。

「つうか何ここ、パーキングじゃなくね?」

「……なんの目的もなくでは効果が薄いからな」

「よーうイレイザー。緑谷くんも久しぶり」

 この人たちはまさか!

「煌めく眼でロックオン!」

「キュートにキャットにスティンガー!」

「ワイルドワイルドプッシーキャッツ!」

「ワイプシだー!!」

 僕のテンションが上がる。

「デクくんは本当にワイプシ好きなんなあ」

「正直厳しい」

 こらこら峰田くん殺されるぞ。

「ここら一帯は私らの所有地なんだけど。君らの宿泊施設はあの山のふもとね」

「遠い!」

 すっごい嫌な予感がする。

「いや、あのほら、バスに戻ろうぜ皆」

 流石に皆も察しているようだ。

「今が9:30。到着まで12時前後ってところかしらん」

 ピクシーボブがしゃがみ個性を発動。

 僕は近くにいた麗日さんを掴み飛び上がる。

 麗日さんが個性を発動し浮き上がる。

「うわあ、土流すごいー」

 何とか着地、見るとかっちゃんと轟くんも回避していた。

「ふふ、避けるとはやるねえ」

「無駄な抵抗は止めて早くいけ、ちゃんと全員で来いよ」

 やっぱ無駄な抵抗だったか。

「行けって言われりゃ行くんだよ俺らは。いきなり襲われたら避けるだろうが普通よお」

「そりゃ悪かった。早く行け」

 かっちゃんは舌打ちしながら降りていく。僕らもそれに続いた。

「お前らずるいぞ自分だけ避けて!」

「避けれねえほうが悪い」

 止めて総意みたいに言わないで。

 僕はとりあえず森の中を探る。

 んー?

「デクくんどうしたん?」

「いや、生き物の気配はそんなにないんだけど、何かが蠢いている? 何だこれ?」

「え? コワ」

 僕らが警戒していると、峰田くんがダッシュで森に近づく。おしっこ我慢してたのか。

 すると、蠢くものの正体が分かる。

「マジュウだー!」

 いや、臭いから土でできた塊だ。

 これなら。

 僕とかっちゃんが真っ先に近づき、土くれを破壊する。

「さて、どんどん行こうか! ごはん食べたいし!」

「デクお前腹減ってんのか」

 ごはんごはん。

 

 結局到着したのは3時前後だった。頑張ったんだけどなあ。

 

「何が12時前後ですか」

「腹減った。死ぬ」

「はちみつとガムシロップ舐める?」

「いや、いいわ」

 いいのか。

「悪いね、あれ私らならって意味」

「実力差自慢のためか」

「ねこねこねこ。でも結構早かったね。特にそこの6人。躊躇のなさは経験値によるものかしら」

 そう言って僕、飯田くん、かっちゃん、轟くん、麗日さん、葉隠さんを指さす。

「特に男子四人! 3年後が楽しみ! 唾つけとこー!」

 そう言って物理的に唾をつけてきた。うわあ。

「マンダレイ。あの人あんなでしたっけ」

「彼女焦ってるの。適齢期的なあれで」

 現役プロヒーローならいくらでもありそうだけどなあ。

「適齢期といえば」

「いえばて」

 グローブによりもふうと音がする。これ欲しいな。

「そのお子さんは、どなたかの息子さんですか」

 そう言って僕は先ほどからこちらを睨んでいる子どもに目を向ける。

「いや、この子は私の従甥だよ。ほら洸汰。挨拶しな」

「ええと、僕は雄英ヒーロー科の緑谷出久。よろしく」

 するといきなり股間に攻撃してきたので、思わず手のひらで受け止める。

「うお、アブねえ!」

「こら! いきなり緑谷くんの陰嚢に攻撃するとは何事だ従甥ー!」

「ああ、飯田くんいいんだよ」

 洸汰くんはこちらを睨みながら、怒りを堪えた声で言う。

「ヒーローになりたいって連中とつるむ気はねえよ」

「つるむ、いくつだ君」

 洸汰くん、何かあったのかな。

「マセガキ」

「爆豪に似てねえか」

「似てねえわクソが!」

 どれどれ。

 僕は洸汰くんに近づき、反響音で注意深く探る。

「うわー。本当ちっちゃいころのかっちゃんだー」

「うるせえはクソが! 似てねえだろ!」

「いや、兄弟でしょもはや」

「調子乗んじゃねえクソが!」

 相澤先生が咳払いする。僕らは気をつけする。

「茶番はいい。まずは時間が中途半端だが夕食。その後は入浴後就寝だ。本格的なスタートは明日からだ。さあ早くしろ」

 

 

「いただきます!」

 僕らは食堂でごはんを食べる。

「魚も肉も野菜も! 贅沢だぜー!」

「あ、緑谷くん。あなたはこれ」

 僕が渡されたどんぶりは、僕の頭位の量の米が盛られていた。

「常人の10倍だっけ。流石にそんだけ食べられるとおかずがなくなっちゃうからねえ」

「おかわりお願いします」

「「「「「手品かよ!」」」」」

「……フフ、やるわね。燃えてきたわ。かかってらっしゃい!」

 僕とマンダレイの間に火花が散る。

「お前らは何と戦ってんだ」

 かっちゃんが聞く。なんだろうね。

「ま、色々と世話を焼くのは今日までだから、今のうちにたんと食いな」

「あ、洸汰。そこのお野菜運んでおいて」

 洸汰くんが不機嫌ながらも野菜の入った段ボールを運んでいく。

 僕はなんとなくその姿が気になっていた。

「おかわりください」

「こ、この子。できる」

 

 そして入浴。

「いや、メシとかはね、ぶっちゃけいいんすよ。求められてるのはこの壁の向こう側なんすよ

 おいらその辺よくわかってるんすよ」

「ダメだよ峰田くん。のぞきは」

 何となく意図を察し、僕は釘をさす。

「緑谷くんの言う通りだ! 君の行為は女性陣も自分も貶める行為だ!」

「やかましいんすよ。ていうか緑谷は何でそこまでおいらの邪魔をするんだよ」

 何でってこの人ホント凄いな。

「麗日さんも葉隠さんも、皆友達だから、そういう対象にするのは良くないっていうか。

 というか何で僕責められてるの?」

 僕の言い分に、峰田くんはため息をつきながら両手を上に向ける。何そのポーズ。

「はあ、緑谷。お前はそういうことか。一応言っておくがな、友情から愛情に変わるのが普通だし、友達と思ってた女の子にドキっとするなんて普通だろ? 何もおかしいことなんてねえんだぞ」

「……そういうもの?」

 峰田くんは壁によりかかり、僕の方を見つめる。

「そうそう、塩崎ちゃんやメリッサさんのことでもそうだけど。緑谷は恋愛を難しく考えすぎなんだよな。別に今まで尊敬してたり慕ってたりした感情が恋愛に移行するなんて普通じゃん」

 ……そっか。じゃあ、僕の気持ちの変化も。

「じゃ、そういうことで」

 そう言ってもぎもぎを壁に取り付ける峰田くんの肩を抑える。

「いや、駄目だよ」

「んだよ! こちとらこれのために期末頑張って来たんだよ行かせてくれよイキたいんだよオイラは!」

 そう言って暴れる峰田くんを押さえていると、僕の腰に巻き付けていたタオルが落ちる。

 瞬間、空気が凍る。

「ん、峰田くん?」

「な、なんじゃこりゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

「うるさ!」

 僕のレーダーセンスが乱れるほどの声量が峰田くんから飛び出す。まさか峰田くん、声撃を?

「ふ、ふざけんなよ緑谷! 臨戦態勢でなくてそのサイズってなんだよ! メリッサさんや塩崎さん裂けちまうよこんなん!」

「うるさいよ峰田くん! 女子に聞こえるから!」

 多分手遅れだろうけど。

「ええ、そんな。普通じゃないの?」

「普通なわけねえだろ! 何を根拠に! ……まさか」

 峰田くんがかっちゃんの方を向く。

「あ、なんだ玉」

 峰田くんは露天風呂の横で座るかっちゃんに近づき、タオルをはぎ取る。

「な、なんじゃこりゃああああああああああああああ!! そっちでも才能マンかよ! ふざけんなよ折寺中学は化け物」

「死ね玉!!」

 かっちゃんが右ストレートを見舞う。

 峰田くんがバウンドした。

「いや、すげえわ。何だよ幼馴染コンビ、すげえよ」

「ああすげえ」

「何がすげえだ! 気持ちわりいんだよクソが!」

 本当かっちゃんに同意する。

 峰田くんはよろよろと壁に近づくと、隙をついて上り始めた。

「あんなんみたら覗くしかねえ! 行ったらあ!」

「どういう論理的帰結!?」

 すると、影が境の中から飛び出した。

「人としてのアレコレから学びなおせ」

「クソガキいいいいい!」

 洸汰君ナイス。

 すると、洸汰くんが何故か落ちてきた。まずい!

 僕はフルカウルで飛び出し洸汰くんをキャッチする。

 失神している。どうしたんだろうか?

「ちょっと行ってくる!」

 僕はタオルを巻きなおし、走っていった。

「てめえせめて下着くらい履いてけや!」

 

「落下の恐怖で失神しただけだね」

 マンダレイが洸汰くんを寝かせながら僕に言う。

「なんともなくて良かったです」

「よっぽど慌ててくれたんだね」

 確かに下着姿だしなあ。

「おめえ下着履いてけとは言ったがパン一はねえだろ変態野郎」

 かっちゃんが僕をからかうように言う。

「な」

「確かにねえ」

 マンダレイに笑われ僕は赤面する。気を取り直して、僕は洸汰くんを見て言う。

「洸汰くんは、ヒーローに否定的なんですね。この年頃の子どもでそういうの珍しいっていうか」

「……そうね。当然世間はヒーローに否定的な人も大勢いるけど、普通に育ってればこの子もヒーローに憧れてたんじゃないかな」

「普通」

「洸汰の両親。ヒーローだったんだけど、殉職しちゃったの」

 ピクシーボブの言葉に、僕は言葉に詰まる。

「二年前、敵から市民を庇ってね、ヒーローとしてはこの上なく立派な最期だったけど、子どもにはわかんないわね」

「両親は自分を置いていったのに、世間は褒め讃えたわけか。そりゃあ歪むわな」

 かっちゃんの言葉にマンダレイも頷く。

「私らのことも良く思ってないみたいだけど、他に身よりもないから仕方なく従ってる感じ。

 洸汰にとって、ヒーローってのは理解しがたい気持ち悪い人種なんだよ」

 

 確かに、理解できないかもしれない。

 けれど、それでも僕は人を助けたいって思った。

 それで、残された人はどう思うか。

 洸汰くんの姿に僕は何故か母さんの姿を重ねて、何も言えなくなった。




いやほら大きい方がR-18編とか書くとき楽しいじゃないですか(最低)
まあ大きけりゃ喜ぶとか童貞の発想らしいですけど。

そして林間編ではかっちゃんに頑張ってもらいたいので色々フラグ立てておきます。

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