転生特典が使い辛い件について『完結』   作:サルスベリ

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 前回のお話!

 浩介、時空管理局から呼び出しを受ける。呼び出しを受けたって話をラキシス達にしてしまう。

 行ってきますの挨拶と同時の衝撃で、ラキシス達は全軍を動かした。

 そんな話でした。








どうしてそんなことしたのさ、ラキシスさん?

 

 

 

 

 

 

 こんにちは! 佐藤・浩介です!

 

 だんだか健がりんでぃって人が呼んでいるって言われて、付いてきたわけなんですけど。

 

 魔法って、こんなに不便なのかな。さっきから術式? ってのを展開して目標地点? に飛ぼうとしているんだけど。

 

「なあ、浩介。それ切ってくれ」

 

「それってどれのこと?」

 

「アクセラレータ」

 

 何それ、加速装置って意味だっけ? あれ、アクセラレータってあれかな、ベクトル操作って奴だよね。

 

 え、切れるの。

 

「健! 大変だ!」

 

「なんだよ、浩介」

 

「僕には切り方が解んない!」

 

 あれぇ、健が凄い顔しているけど、どうしたのかな。

 

「え、待った、待てよおまえ、それって転生特典だよな? おまえが貰った能力だよな?」

 

「女神様がくれた能力だよ。でも、まだ修行してもらってないから」

 

 うんうん、基本的に僕の能力ってギルさん達が訓練してくれて、使えるようになるからね。

 

 アクセラレータはまだ訓練してないから。

 

「テレポートは?」

 

「え、何となく」

 

「じゃ何となくで、出来るんじゃないか?」

 

「ええ、そんなことないって。健も変なこと言うなぁ」

 

「お・ま・え・が・い・う・な」

 

 あれぇ~~なんで僕は健に首を絞められてるのかな。そんなに怒るようなこと言った覚えないけど。

 

「ちょっと待て。なんで俺はおまえに触れられるんだよ。アクセラレータがあるなら俺は触れられないだろう。でも、転位魔法が弾かれるから」

 

「あ、そっちは能力のキャンセルだと思う」

 

「ああ、そうかそうか。じゃ切れよ?!」

 

「え、切るの。転移を妨害しないといけないんじゃないの?」 

 

「転移しないと相手に会いに行けないだろうが!」

 

 そうなんだ。でもさ、会いたいっていうなら向こうから来るのが筋じゃないかなって思うんだよね。

 

 会いたいから来いって、傲慢な考えじゃないかなって思うわけだよ。 

 

 『貴様も少しは解ってきたようだな。王への謁見に、『来い』などとは』ってギルさんが凄い笑顔で笑っている。

 

 あれ、来いってことは、あれかな。罠とか張ってるとかじゃないよね。

 

 よっしここは乖離剣を出して、と。

 

 『は?』ってギルさん、どうしたの。

 

「浩介、何を出しているんだ?」

 

 もう一本は流刃若火を。

 

「え? 待て待て待て!」

 

 『無双か』っておじいちゃん、そんなに危ないことしないよ。

 

「健、僕は思うんだけどさ。会いたいなら、向こうから来るべきじゃないかな?」

 

「い、いや、ほらあっちは組織の人だし。待った、そうだよな」

 

「だから完全装備で!」

 

 鎧展開、マント着用。よっし、『王の財宝』は訓練したから使えるし、眷獣もレグルスならすぐに出てきてくれるから。他は呼び出せば、暴れてくれるだろうし。

 

 『おまえ、そんな危ない考えでいたのかよ』って古城さんが、なんか引いているけど、レグルス以外は訓練してないので使えるか解らないから。

 

 『次は俺も本気で鍛えよう』って古城さんが気合を入れてる。次の訓練が楽しみだなぁ。

 

「準備できたよ健!」

 

 さあ、いざだ!

 

「俺、やり方を間違えたかもしれない」

 

 どうしたのさ、健。さあ、行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リンディ・ハラオウンは、冷や汗を流していた。

 

「囲まれています! 転位できません!」

 

「動力炉を抑え込まれました!」

 

「ハッキングです! 艦の制御を奪われました!」

 

 次々に上がってくる報告に、小さく息を吐いて気持ちを整える。

 

「艦長」

 

 後ろからの声に小さく視線を向ければ、息子のクロノが決意した顔で立っていた。

 

「僕が出ます、その間に」

 

「無理よ。転送ポートは抑え込まれている。ハッチさえ開かないのよ」

 

「魔法なら」

 

「そうね、魔法が使えるなら」

 

 拳を握りしめ、声を絞り出す。

 

 魔法が使えたなら、こんなに追い込まれることはないかもしれない。けれど、今の自分達には魔法が使えない。

 

 デバイスを起動しようにも、デバイスのコアが封じられている。インテリジェンス・デバイスなら、人格があるから抑え込まれても仕方がないかもしれないが、あらゆるデバイスが制御不能となって使用できずにいる。

 

 艦の制御、デバイスの制御、機械関係のすべてを抑え込まれた現在、こちらからうてる手段はほとんどない。

 

「お話をうかがってもいいかしら?」

 

『私達の要求は一つです。とてもシンプルなものです』

 

 画面に映る栗色の髪の女性は、リンディを見下すように見つめていた。

 

『貴方達の地球からの撤退。以後の干渉しないことを』

 

「それだけでいいの?」

 

『ええ、時空管理局にそれ以上は望みません』

 

 こちらの所属を知っている。相手は管理外世界なのに。まさか、こちらの世界の誰かが流れついて、時空管理局についての情報を流したのか、それとも子孫か何かで対応を計画していたか。

 

 いずれにしても、数年単位で出来ることではない。

 

「艦長、相手の総数、十万を超えました」

 

 報告を受けてリンディの中で、疑いだったものが確信に変わる。

 

 相手は確実に時空管理局へ対抗しようとしている。魔法技術はもちろん、それ以外の何かも。

 

 艦の周囲を映した画像には、見知らぬ生物の姿もある。科学以外にもこんな生物を飼いならすなんて、相手の技術力の高さに寒気がしてきた。

 

 解りました、と答えるしかない。

 

 彼女が決意して口を開こうとした瞬間。

 

「ほらできたよ」

 

「なんでおまえはそれが普通にできるんだよ?! あれか!? それもどっから持ってきたやつだ?!」 

 

「え、テレポート」

 

「魔法でさえないってことかよ?!」

 

 いきなり背後がうるさくなって振り返ると、ジュエル・シードを持っていた少年がいた。

 

 そしてもう一人。見ただけで寒気が来るような気配、身に纏う鎧の神秘に『ロストロギア』以上の何かだと推察できる。

 

 けれど、見た目は何処にでもいる普通の少年。

 

「貴方は?」

 

「初めまして! 佐藤・浩介です! 健から呼ばれているって言われてきました!」

 

 元気よく片手をあげて挨拶する仕草は、普通の小学生のもの。何処からどう見てもそうなのに、纏っている気配が人間じゃないような。

 

『マスター?!』

 

「あれ、ラキシスさん、どうしてここに? あれぇ~僕はきちんと行ってきますって言ったよ」

 

『そ、それは、ですね』

 

 毅然とした態度でいた相手が崩れた。チャンスか、とリンディは考えて口を開きかけた時、事態は予想外の方向へ飛んで行った。

 

「・・・・・は?! これがラスボスなんだね?!」

 

「浩介! 落ち着け! そんなことしなくていいからな!」

 

『マスター、速やかに退避を。彼女達は時空管理局と言って』

 

「大丈夫だから! 浩介には触れさせないから大丈夫だからさ!」

 

『え、あの、いくらマスターの友人の言葉とはいえ、それを信じられるほど』

 

「お願いしますから! 穏便に行きましょうよ!」

 

 何故だろう、必死に頭を下げる小学生と、それに困惑して周囲を見回す、先ほどまで冷徹な顔をした女性、それらを交互に見つめた後、浩介と名乗った少年は軽く手を打った。

 

「あ! ラキシスさん、ジュエル・シードってどうやって集めたのか、健に教えてげて。それでリンディさんに教えれば解決だよね」

 

『えっと、その・・・あのですね!』

 

 チャンスか。リンディがそう考えて、動こうとして時間が止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ、どうしたのかな、皆、固まったけど。

 

「このたびはどうも」

 

「どうもです」

 

 あ、女神様が土下座して登場した。

 

「どうしたんですか?」

 

「え、あの、ですね」

 

 女神様、なんだか慌てているような、どうしたのかな。ひょっとして僕が危ないようだったから、助けに来てくれたのかな。

 

 まっさかぁ。

 

「その通りです! 浩介君、私が来たから大船に乗ったつもりでいてくださいね! 女神ですから、誰がどんなことしてきても、何とかしますから」

 

「ありがとうございます! でも僕も立派な男として! 自分の危機は自分で何とかしますから!」

 

「ええ?! そんな、せっかく、浩介君の前でかっこよく決めて好きになってもらう計画が」

 

 なんだろ、女神様が何か言ったけど、よく聞こえなかった。あ、もしかしてでも心配だからって意味かな。

 

「大丈夫です女神様! 解ってますから!」

 

「解ってる?! そ、そんな、私の気持ちに気づいてたんですね」

 

「はいもちろんです!」

 

 心配してくれるなんて、優しい女神様だな。でも、ここで甘えてしまったら、僕は立派な大人になれないから。

 

「で、では!」

 

「でも今は駄目です! 僕はもっと立派な男にならないといけないので!」

 

 ジョーカー星団なんてものを貰ったからには、もっと凄い人物にならないとだめだと思う。ギルさん達に教えてもらったから、色々な特典を貰ったから、その特典を持っていた人たちのことを考えたら、僕はまだまだ弱くて小さいから。

 

 

 だからもっと頑張って、もっと努力して。

 

 立派なラスボスにならないと!

 

「だから女神様! ここは退いてください。後で必ず行きますから!」

 

 立派な僕になってどうですかって示すために!

 

「行きます?! そ、それはお嫁にしてくれるっていう。そうですか、そうなんですね。解りました浩介君! 待ってますから!」

 

「はい!」

 

「お願いしますね!」

 

 そして女神様は帰りました。

 

 あれ、なんだろ、勘違いされているような気がするけど、大丈夫だよね。

 

 よっし、じゃあ時間停止解除、っと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フンフンフンフゥン」

 

「ご機嫌ですね、女神様」

 

「ええ! 浩介君がお嫁にしてくれるって」

 

「・・・・・・・え?」

 

「ああもう! こんなにうれしいことなんですね!」

 

「あの女神様、知らないってことないですよね?」

 

「はい?」

 

「いや人間と女神って結婚できませんよ」

 

「え?」

 

「いやだって存在自体が違うじゃないですか。普通の恋愛とかならいいですけど、結婚って無理でしょう」 

 

「な、何とかなりますよね?!」

 

「いや女神様、戸籍ないでしょう? どうするんですか?」

 

「・・・・・・・・」

 

「女神様?! 誰か医療系の女神様を呼んできて?!」

 

「そんな単純なことも気づかないなんて、本当に浩介君関連だとポンコツだなぁ」

 

「・・・・・その浩介君なんだけど、『時間操作能力』持っているんだけど。転生特典じゃなく女神様と同じ能力の」

 

「本当にうちの女神様、ポンコツだなぁ」

 

 神様の世界は、今日はほのぼのと溜息に満ちていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 というわけです。

 

「ジュエル・シードは私たちが危ないので集めたので」  

 

 場所はアースラ? ってリンディさんの御船の中の艦長室に移りました。

 

 それで、ラキシスさんが説明中です。

 

「ありがとうございます。おかげで世界が救われました」

 

「いいえ。ここは私達の世界なので」

 

 キリっとしたラキシスさん、かっこいいなぁ。大人ってこういうのを言うんだろうな。

 

「マスタ~~」

 

 あれふにゃってなった。うん、何時ものラキシスさんだ。

 

「ところで、そちらの浩介君が貴方達の?」

 

「はい、私達の主です」

 

「そう。ねえ、貴方、時空管理局に」

 

「ごめんなさい」

 

 それは無理だなぁ。

 

「即答だったわね。どうしてか教えてもらっていいかしら?」

 

「僕が一組織に所属すると、世界の調和などが崩れるか、その組織の上層部が勘違いして権力闘争が起きますので」 

 

 危ないからダメって、ギルさん達に止められているし。

 

 所属することになったら、暴れてでも逃げろとも言われているからね。

 

 『いや、貴様が組織に所属したら、その組織を乗っ取りそうでな』とかギルさん、失礼な。僕はそんなに節操なしじゃないです。

 

 『おまえ、今までの自分を振り返ってもそんなことがいえるか』なんて、古城さんは失礼じゃないですか。ところで、節操ってなんだろ?

 

 『ほっほっほ、一件落着・・・としておこうかの』っておじいさんは気楽だなぁ。

 

「貴方は子供なのに、そこまで考えているのね、偉いわ」

 

「ラスボスを目指しているので!」

 

 あれ、リンディさんは固まった。あのクロノ? って人も固まっている。健まで呆れた顔で頭を抱えているし。

 

 そっか、今の僕じゃ『身の丈に合わない』って奴だね。よぉぉし、今日からギルさん達に頼んで、訓練をもっときつくしてもらおうっと。

 

 頑張って。

 

 『フ、その意気だけは認めてやろう』、『ほどほどにな』、『よかろう』ってギルさん、古城さん、おじいさんは言ってくれました。

 

 右手に『エア』、左手に『流刃若火』、レグルスを纏ってって姿が出来るようにならないと!

 

 あれ、ギルさん達が崩れ落ちたよ、どうして?

 

 その後、リンディさん達とは『基本的に不干渉、でも危ない時は相談しようね』ってことになりました。

 

「じゃ戻りますねぇ~~」

 

 よっし、テレポート。あれ、なんだか引っ張られるような、そっちに行かないといけないような。

 

「え?」

 

「な?!」

 

「あ、どうもこんにちは! 僕は佐藤・浩介です!」

 

 そんなわけでテレポートしてみたら、目の前に金髪の女の子と女の人がいました。

 

 あ、尻尾ある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 佐藤・浩介、『目』の作用によりテレポート先を変更。

 

 フェイト・テスタロッサとアルフへの遭遇。

 

 エンカウント。

 

 

 

 

 

 

 









 最後、無理やりだったような。

 でも英雄王の『目』があれば、こういったことあってもいいような。拡大解釈かもしれないけど。

 さて、次回は本格的にラスボス・浩介の、テスタロッサ家の遭遇。

 そんなことになればいいかなぁと。








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