知らず知らずのうちに母親の怒りを買ってしまった浩介。
彼を討つために立ち上がる一人の魔導師。
急ぐんだ、健!
君が止めないと世界が崩壊するから!
魔王とは、何時から魔王なのか。
そもそも魔王とは何者か。魔王軍を率いるから魔王なのか、それとも魔族の頂点だから魔王なのか。
いや違う、魔法を使い絶対的な強さを示すから魔王と呼ばれる。
別世界で彼女は『管理局の白い魔王』って呼ばれていた、かもしれない。悪魔かもしれない。きっと悪魔だ、いや待った。あの容赦ない攻撃で悪魔なんて優しい呼ばれ方しない。
結論、高町・なのはという少女は『白い魔王』って呼ばれるようだ。
きっと、そうだろう。
どうも、佐藤・浩介です。
「いたわね!!」
学校が終わって帰ろうとしたら、なんでかプレシアさんに捕まりました。
「あれ~~どうしたんですか?」
「どうしたんですか、じゃないわよ! 貴方、解っていてやったのね?」
「え?」
何の話だろう、意味が解りません。解っていてやったなんて、そんなことないと思いたいけど。
僕はそんなにひどい人間じゃない!
『ギル! ギルガメッシュ! 戻って来い! おまえが死んだら!』とか、古城さんがうるさいな。
ギルさんもなんで魂が抜けたような顔しているんだろう。魂だけ、それって楽しいのかな、王様流のお遊戯だったりして。
「いいから来なさい!」
あれ、プレシアさんに手を引っ張られて、連れて行かれます。
「こーすけ君! その人は誰なの?!」
「なのはちゃん、プレシアさんだよ」
「誰なの?! アリサちゃん、すずかちゃん、非常事態なの!」
あれ、なのはちゃんが携帯で連絡しているけど。
「な、なんでプレシアが? あれ、ジュエル・シードの時にフェイトがいなかったような」
「健ぅ~~ちょっと行ってくるね」
「待て! おまえ何した?!」
ええ、健まで僕が何かしたって思っているなんて。そんなことないよ、僕が何かしたなんてそんなこと。
というわけで、プレシアさんに引っ張られて公園に連れ込まれました。
「あの、プレシアさん」
え、なんでか睨まれた。僕は何かしたのかな、フェイトちゃんに何かした覚えはないし。
あれ、ギルさん達が固まっている。なんでだろう、僕的には何もしてないのに、どうして『信じられない』って顔して固まっているのかな。
「まずは私の病気を治してくれてありがとう、お礼を言うわ」
「はいお礼を貰いました」
「それとアリシアのこともありがとう。なんてお礼したらいいか」
「大丈夫です、家族仲良く過ごしてくれたら十分です」
うん、本当に家族なら仲良く過ごしてほしいな。フェイトちゃんの家はお父さんがいないみたいだけど、お母さんのプレシアさんはいるからさ。
僕の家みたいに両親が亡くなって、子供一人で生きていくなんて。
あれ、でも僕はラキシスさん達がいるから、一人で生きていくわけじゃないよね。あれ、ひょっとして僕はかなり幸運なのかな。
たぶんそうだよね。
天国のお父さん、お母さん、浩介は幸せに生きています。
「でもね」
あ、プレシアさんが怒っている。え、ここから何かあったの、もしかして時空管理局が何かしたとか、アリシアの病気が治りきらなかったとか。
おかしいな、きちんと『目』で見て病気だけ『殺した』はずなんだけどなぁ。使ったことない能力だから、上手く出来なかったとか。
「見たでしょ?」
「え?」
「だから!! 娘の裸を見たでしょう?!」
え、誰の裸、なのはちゃんとアリサちゃんとすずかちゃんなら、この前にお風呂に突撃されて見たことあるけど、あれはふかこうりょく? って奴なので大丈夫だって言われたから。
ラキシスさん達に!
「娘のよ!! アリシアの!!」
「・・・・・・ああ!」
「思い出したようね! 貴方は!」
「培養液と光の加減で見えませんでした!」
「・・・・・・・へ?」
「だから大丈夫だと思います! きちんと『目』を使って内臓しか見てないから!」
あれ、プレシアさんが固まった。
どうしたのかな?
「離して! 離してぇぇぇ!!」
「何してんですか女神様! どうして服を脱ごうとしているんですか?!」
「浩介君が! 浩介君が汚されるの! 黙って見てられないじゃない!」
「だからってあんたが服を脱いでどうするんだよ?!」
「私の素晴らしい裸体で浩介君を浄化しないと!」
「浄化ってなんだよ浄化って! そんなことしたら人間の世界が、ハルマゲドンでしょうが!」
「え!? わ、私の裸ってそんなに危険物扱いなの?」
「いやそうじゃなくてですね、女神様」
「私ってそんなに醜いの?」
女神様、ガチ泣き入りました。
「はいはい、綺麗で素晴らしい黄金比率ですよ」
「うう、本当?」
「はいはい、でも女神様」
「ふぇ?」
「貴方達の服って抑制装置も兼ねているから、それを脱いで人間の世界にいったら、一瞬で文明が滅びるって忘れてません?」
「あ」
天使の呆れた顔に、女神様は固まった。
セーフ! 最終戦争回避!
「こーすけ君?」
「ヒ?!」
あれ、なのはちゃんだ。アリサちゃんとすずかちゃんもいる。あれ、なんでバリア・ジャケット装備?
プレシアさんも、変な声出して僕の後ろに隠れるし。
「今のお話、何かなぁ?」
「お話? プレシアさんの娘さんを助けたって話?」
「そこじゃなくてよ!」
どうして、アリサちゃんは怒っているのかな。手に持った剣で、今にも僕を刺しそうになっているんだけど。
『おい、眷獣が反応してるぞ、抑えろ』って古城さんが言うけど、これってアリサちゃんに反応しているんじゃないような。
「フフフフ」
なんか、すずかちゃんが真っ黒な影を背負っています。はっきり言って、なのはちゃんとアリサちゃんより、今のすずかちゃんのほうが怖いです。
『聖杯の泥か。最近の雑種は、それが標準装備なのか?』なんて、ギルさんが頭を抑えています。なんだろう、背中が微妙にすすけているような気がします。
すすけているって解らないけど。
「こーすけ君! なのはというものがありながら他の女の子の裸を見たって、どういうことなの?!」
「え、そんなことないよ」
「嘘つかないで! さっきのお話を聞いていたの!」
さっきのお話って、プレシアさんの娘さんの裸がどうのこうのうってお話だよね。あれって勘違いで終わっているはずなんだけど。
「勘違いだよ」
「勘違いでお母さんが怒らないの!」
「そうよ! コースケ! あんた私達の裸を見たのにどういうこと?!」
「浮気は駄目だよこーすけ君!」
アリサちゃん、裸を見たって。あれは見せたって言うんじゃないかな。
すずかちゃんも、浮気って何にさ。
「誤解です!」
でも怒っているみたいだから、先に誤解って言っておかないと。
「五階も六階もないの!」
「なのはちゃん! 階のことじゃないから! 間違いって意味だよ!」
「そんなのは知っているの?!」
「知っているならなんでそう返したの?!」
「こーすけ君が意地悪だからなの!」
「なんで僕が意地悪なのさ?!」
意味が解らないよ、なんでなのはちゃん達に怒られているのさ、僕が何をしたっていうんだ。
「何時も何時もなのはが言っているのに聞いてくれないし!」
「聞いているよちゃんと!」
「聞いていないの! 私は何度も言っているのに!」
「だから何を?!」
まったくなのはちゃんは、何を何度も言っているって言うんだろう。
同じことを繰り返すことなんて、なのはちゃんはしてない気がするけど。
「もういいの! こーすけ君! 大好きです愛してます!」
「なのはちゃんの嘘つき!! そんなこと言っても騙されないからね!」
またそんなバカなこと言って!
僕の純情を裏切るつもりなんだ、何時だってなのはちゃんはそんなことを言うけど、そんな態度なんてしたことないじゃないか。
幼馴染をその気にさせて、『勘違いしないで』なんていうつもりなんでしょうけどう、僕には通じないからね。
「本気なの! こーすけ君が好きなの! 愛してるの!」
「絶対に騙されないよ! なのはちゃんは自分が可愛いからって、男にそう言えば解ったって言うと思っているんだから」
まったくそんなことは絶対にないから。
あれ、なのはちゃんが蹲っているけど、何かあったかな。
「コースケあんた」
アリサちゃん、その顔は何さ。
「こーすけ君、私だってこーすけ君のこと好きだからね」
「すずかちゃんまでなのはちゃんと同じことで、男を騙そうとするんだね。でも、ダメだからね。すずかちゃんみたいな可愛い子が僕のことを好きなんて、そんなこと絶対にないからね」
あれ、今度はすずかちゃんが蹲った。
「コースケ!! ちょっとこっち来なさい!」
なんでだろう、アリサちゃんが剣を振り回して、炎が出たよ。
「危ないじゃないか! 肌が綺麗なんだからそんなやけどすることしないの! 自分が可愛い自覚があるのアリサちゃん?!」
「ク、これは凄まじい威力ね」
なにそれ、まだ何もしてないんだけど。
「貴方、その年でスケコマ師なのね」
「プレシアさん、何を言っているか解らないけど、僕を馬鹿にしているのは解りました」
まったく、女の人は魔性だって本当だね。
場所は変わって、フロート・テンプル。
「そういえば、マスターってなんであんなに異性からの感情に鈍感なの?」
騎士団の再編成中のリーナは、ふと思い出したようにラキシスに訪ねた。
「そうですね、原因は」
ラキシス、映像端末を操作してモニターを起動させる。そこに映っていたのは三歳か四歳くらいの浩介と、高町・なのは。
『こーすけ君、大好き。愛しているの』
『え、そうなんだ』
『うん!』
笑顔全開で告白するなのはと、ちょっと照れてそうな浩介。初々しい映像が流れた後、リーナは口を開く。
「へぇ~~こんな時代があったんだ。あれ、でもあの二人って付き合ってないわよね?」
「はい」
何故か、ラキシスはちょっと顔色が悪い。
「昔のマスターの映像ですか?」
「何かあった?」
そこへ深雪とイオナが合流し、映像は次々に流れる。
最初は微笑ましく見ていた全員だったが、次第に呆れた顔になり、やがて誰もが俯いてしまう。
「何の映像ですか、これ?」
深雪が絞り出すように告げると、ラキシスが盛大に溜息をついた。
「好きって言葉を知っている子供だけど、付き合うってことを解ってない子供だったから、挨拶のように『好き』を重ねるのがいいって思ったんでしょうね」
苦笑しているラキシスの隣、リーナは盛大に溜息をついた。
「それにしても、限度があるでしょうが」
会うたびに、すれ違うたびに、高町・なのはが佐藤・浩介に好きと伝え続けていた。
恥ずかしそうに、毎回毎回、とても初々しい様子で伝える愛の言葉は、幼い子供ながらに真剣なものだったかもしれない。
最初は冷やかしていた友達も、次第にその回数が重なっていくと赤面したり、ちょっと困った顔になって。
小学校に入った時にはすでに周りが、『おまえ大丈夫か』というほどになってしまっていた。
「ああ、だからマスターはなのはの告白にああ返すのね」
「不可解だったけど、理解した。マスター、不憫」
リーナが納得したように溜息をこぼし、イオナはそっとハンカチを取り出すも、涙は流れない。ポーズのみとか器用なことをする。
つまり、佐藤・浩介が異性の好意に鈍感なのは、幼い頃からずっとそんな教育を、本人は意図していなくともずっと続けていた彼女が原因。
つまり、『高町・なのはが悪い』ということか。
「あれ待って。それって振られているのよね?」
リーナが思いついたことを口にして。
「どっちがどちらを、ということになりますが、そうではないですか?」
深雪も同じことを思いついて、リーナに追従した。
「・・・・・・高町・なのはの中では『好きと告白した、通ったのに』ってことになっているようです」
ラキシス、とても苦い顔で答えた。
「はぁ?!」
「え、そうなんですか?」
「あり得ない」
リーナ、深雪、イオナ驚愕。
あんなに拒絶されていても、まだ諦めていないのは、彼女がそうだと思ってないから。
思い込んだら一直線、絶対に振り返らない、諦めるなんて言葉は彼女の中に存在しない。不屈の魂を持った魔法少女は、相手に拒絶されても止まることなくずっと挨拶のように『好き』を繰り返していた。
それが却って相手にマイナス・イメージを与えていると気づかず。
「ま、周りは教えないの?」
信じられないとリーナが顔に張りつかせて映像を指差す。そこにはすずかとアリサが映っていた。
「今日も愛の告白一直線だなぁって」
「見護るものではないでしょうに」
ラキシスの嘆息の答えに、深雪も呆れたように告げた。
「それってドツボ?」
「はい」
イオナが首を傾げながら思いついたことに、ラキシスは頷いた。
何度も繰り返されたことに、何度も返している間に、浩介の異性の好意に鈍感は深みと厚みを増していき。
結果、こうなってしまった、と。
つまり、やはり『高町・なのは』が悪い。
「あれ、でもそんなマスターってひょっとして直球の直球に弱いんじゃないの?」
リーナが思いついたように告げると、誰もが疑問を浮かべていた。
「例えば」
彼女が口にしたことは、全員が否定したのですけれど。
世の中って何があるか解らないから、楽しいって言いませんかね。
もうなのはちゃんは!
昔っからそうやって人を騙そうとするのに、本気だよとか言うから。
「もうきかないからね!」
「こーすけ君!」
まったく、今日はそんなことに付き合ってられないから。
「プレシアさん、もういいですか?」
「ええ、そうね。ごめんなさいね」
「大丈夫です」
よっし、帰って今日は。
「サトー・コースケ!!」
あれ、誰か転移してきた。一人はフェイトちゃんだけど、もう一人は。
え?
「私の裸を見たなら責任を取って!」
「はい?」
あれ、アリシアちゃんだ。なにそれ、そのフワフワの白いドレスってどうしたの?
『いやあれはウェディング・ドレスじゃないか』、古城さん物知りだ。
あれ、それって。
「お嫁さんにしてもらうからね!」
「え?」
いきなりそんなこと言ってきたアリシアちゃんが、僕に突撃してきて。
チュ。
「・・・・・・ああああああああ!!!!」
「えええええ?!」
「ふぇぇぇぇぇぇぇ?!」
「何してるのアリシア?!」
「ちょっとアリシア!!」
あれぇ~~なんだろ、何か柔らかないものが触れたような、触れなかったような。
アリシアちゃんが、突撃してきて。で、僕の目の前にいて真っ赤な顔していて。
「ふつつかものですが、よろしくしてあげるからね」
ウィンクしているアリシアちゃんに、僕は。
『雑種! 意識を失うではないわ!』。
『待て待ておまえ! 気絶するな! 逃げるな!』。
『最近の娘っ子は過激じゃのう』。
あ、キスされたのか、そっか。
「間に合わなかったぁぁぁ!!」
健の声がする、じゃあ後は任せて大丈夫だ!
というわけで、どうして浩介はなのはの好意に鈍感で拒否をするのか、という理由でございました。
昔っからあんなに好きって言われたら、そりゃこうなるかな、なんて。
さて次はどうなる事やら。
最終戦争、かなぁっというところです。