色々とカオスになってきたようですが、アリシアの直接的な行動でいっきに火がついたような。
このまま女同士の浩介獲得レースになるのか。
いや待って、愉悦王がこのままなんて、そんなことないでしょう。
というお話です。
現世が色々と大混乱の中、天界も色々と大混乱中でした。
「離してぇぇぇぇ!!」
「天使は全員総動員! 他の女神も呼んで来い!」
「落ち着いてください! 本当に何しようとしてんですか?!」
「あの女狐に天罰を!」
「だからって最終戦争発動ってなんですかそれ?!」
「ご乱心! 第一級女神がご乱心です!」
「誰でもいいから何とかして!」
もう阿鼻叫喚の大騒ぎ、ひょっとしてここが地獄じゃないかと、誰もが疑うような光景が広がっていました。
「フォフォッフォッフォ」
「創造神様?!」
「復活したのじじぃ!」
「口が悪くなったのう、女神よ。さて、面白いことになっとるのう」
「まさか?! 貴方がまた浩介君に何かしたの?!」
「フ」
ニヤリと笑う創造神、その笑みはまさに魔王のようで。
誰もが『やったなこいつ』と思っていると。
創造神、両手両膝をついて倒れたのでした。
「ううううう、まさかのう。本当にまさかじゃった」
「え? え?」
「まさか厳重に封印しておったあれを持って行かれるとは」
「はい?」
「しかしじゃ! 見てみたい気持ちもある! リアル・ハーレム主人公を見てみたい気持ちもあるのじゃ!」
「・・・・・・誰か、こいつ殺していいわよ」
「いやですよ、女神様」
「くぅぅぅぅ!! 小学生にしてハーレム王! しかし妬ましい! 見ていて嫉妬の炎が燃えそうなのじゃ!」
そんなことを大声で叫びながら泣く創造神に、誰もがゴミ虫を見るような眼を向けるのでした。
「さすがじゃ浩介! この創造神を嫉妬の炎に包むとは!」
驚愕と称賛を向ける馬鹿がここにいましたとさ。
天界は今日もやっぱり平和でしたとさ。
フワフワって漂っています。あれ、僕はどうしたのかな。
こんにちは、佐藤・浩介です。
なんで僕はここにいるのか、何かあったような、なかったような。思い出せないので、気にしたら負けって気持ちになりました。
『雑種よ、起きるがよい』
「ギルさんがいるってことは、ここは夢の中なんだね?!」
『貴様、今までのは夢だと思っていたのか?』
「え? 違うの?」
寝ると来れるから、夢なのかなぁって思っていたら、ギルさんから違うって言われてしまった。
違うんだったら、ここは何処なんだろ?
『ここは精神と時空の挟間じゃ。貴様の中に溢れる能力が作りだした、一種の異空間といったところじゃな』
おじいさんが言っていることが、僕にはよく解りません。でもきっと、おじいさんが言ってくれるなら、覚えろってことなんだと思います。
大人って、こんなことをも覚えないといけないって大変です。
『いや大人になっても覚える奴はいないからな』
「古城さん! なら僕をここに連れて来てどうするんですか!?」
『やけに俺に対してあたりが強くないか?!』
そんなことないです!
『戯言はそこまでにしておくがよい、雑種。いや、浩介よ。今より王からの助言を授けよう』
「じょげん?」
それってなんだろ? あれ、習ったのかな。習ってないよね。意味が解らないので、ギルさんの前で腕組みしてみた。
ギルさんが何時もやっているからかっこいいので真似してみます。
「解りません!」
『・・・・・・・・』
『ギル! 頑張れギル! おまえならやれる! 英雄王だろう!!』
『儂と第四真祖では出来ん、英雄王たる貴様になら可能なことじゃ』
なんだろ、なんでかギルさんが凄い落ち込んでいるんだけど、どうしたのかな。
あれ、僕の中の知識? 経験? が英雄王の前で腕組みしたら殺されるって言っているけど、僕は何ともないから。
きっとギルさんが優しい王様だからだ!
「ギルさん、かっこいい!」
『いや待て。何故、そんなことを言った?』
「え、優しい王様ってかっこいいなぁって」
『我はこいつの思考がどうなっているか、読めぬ時がある』
真顔で考えるギルさんもかっこいいな、きっと立派な大人ってこういう人のことなんだ。よし、将来は僕はラスボスになるけど、ラスボスの時はギルさんみたいな顔を目指そう。
『いや英雄王みたいなラスボスって』
『ふむ、容赦の欠片もなく勇者を粉砕しそうじゃの』
『待て貴様ら! 我のことをどう見ている?! いや今は浩介のことだ。落ち着くのだギルガメッシュ、おまえは王の中の王。この程度のことで動揺しては』
「立派なラスボス英雄王になればいいんだ!!」
『いや待て』
「よぉぉぉし! なら今からギルさんの宝物庫を訓練しないと」
『待てと言っている!!』
「まずは正確に狙って当てることから!」
『待てと言っているのだぞ浩介ぇぇぇ!!!!』
あれ、後ろでギルさんの絶叫がしたけど、どうしたんだろ。
止めないでギルさん、僕はラスボス系英雄王になるために頑張るんだから! ギルさんの能力を貰ったんだから、最初から目指していて当然だと思う。
きっとそうだ!
『第四真祖は、ラスボスじゃないな』
『死神もラスボスではないな』
『貴様ら! 何を他人ごとみたいに楽観している?! このままでは』
『いや、俺達はギルに任せたからな』
『大義である』
『ク・・・・いや待て、そうかそうか。ならば我に任せたこと後悔することなきようにな』
あれ、ギルさんの笑顔が何時もと違うような。あれって確か、怪しい笑顔だ。うん、前に呼んだ本に悪役がする笑顔って書いてあったから、間違いない。
きっとあれがラスボスの笑顔なんだ!
『そうだ。浩介よ、よく聞くがいい』
「はいギルさん!」
『ラスボスとはすべてを司る存在。多くの民を従えることなく導き、多くの苦難を乗り越える者のことを言う』
なるほど、難しいことをだけど、ギルさんが真顔で言ってくれるから、きっと本当のことなんだ。
『前に、健が言っていたこともあったが、あれがすべてではない。世界を見よ、浩介。嘆く人たちがいるな? 悲しむ人たちがいるな?』
「はい!」
『では、そのすべてを救い支え、敬い。そして』
「はい!」
『そのすべてを手に入れるがいい!』
「はい! え?」
あれ、なんだろ、話がまったく違ってきたような。
『ラスボスとはすべてを束ね支配し手に入れる者! 云わば王のことよ!』
「え?」
『世界中の財を集め! 世界中の楽しみを手に入れ! 世界中の悲しみを前に笑う! つまり支配せよ!』
「・・・・・おおお!」
『待てギル! おまえ何を教えてるんだよ?!』
『英雄王! 貴様!』
『フハハハハ! 貴様らが我に任せた結果よ! よいな浩介! 世界中の王の話を読み! そのすべてを手に入れるがいい!』
「解りました!」
『では貴様がまず最初にするべきことは・・・・・・』
ギルさんがニヤリって笑いました。
あれ、僕の第六感が『やるな』って言っている気がするけど、ギルさんが今まで言ったことで間違いはないから。
僕はラスボスのためにギルさんの言うことに従う!
これが正解なんだ!
『まずは美女を集めるがいい! ハーレムとはラスボスの必須能力よ!』
「何それ?!」
『現実に戻った時、最初にアリシアに告げるがいい。『解った、俺についてこい』と』
「・・・・・・・あ」
思い出した! アリシアちゃんにキスされたんだ! そっかそっか、僕はそれで気を失って。
え、戻ってついてこいって言えばいいの。
『ギル待て! おまえ待て!』
『貴様、世界をどうするつもりじゃ?』
『どうもこうも』
ニヤリと笑ったギルさんが、なんだか悲しい顔で古城さんとおじいちゃんに言いました。
『こいつを止めるストッパーがいないと、本当に世界が詰む』
『・・・・・・女か、そうだよな、男は女に逆らえないよな』
『さすが英雄王、そこまで見通しているとは』
『悲しいが、もはやそれしか思いつかん。我も耄碌したということか』
なんだろ、何故かギルさんの背中が霞んでいるような。
あれ、意識が。
『ではな、浩介よ。貴様が見事、『王』になるところ、この英雄王が見ていてやろう』
「はいギルさん! ラスボス王になります!」
『・・・・・・・しまった!』
あ、最後にギルさんが手を伸ばしたような。
あれぇ、僕の言っていること違うのかな?
そして現実に戻った浩介は、目の前にいる怒った顔で赤い顔のアリシアに対して。
「解った! 俺のついてこい!」
「・・・・はぅ!」
男らしく言ってのけたのでした。
「・・・・・浩介君! なのはもなのはもいるの!」
「なのはちゃんは嘘つきだからダメ!」
「でもでも!!」
「そうやって僕の気を引いて」
フンと怒った顔で告げる浩介に、なのはがちょっと悲しい顔になって、その後に顔を挙げて決意を込めたのですが。
「ダメだからね!」
「・・・・ふぇぇぇぇぇ!」
頑として拒否する浩介に、彼女はガチで泣きだしましたとさ。
「え?」
「浩介君! 本気なの! 本気で好きなの! ウソじゃないの! 違うの!」
「え?」
「大好きなの! 最初に会った時から大好きなの! 一人でいた時に探してくれたのが嬉しかったから! 何処にいても見つけてくれるから!」
大泣きしながらも自分の恋心を語る彼女に、浩介は固まってしまう。今まで嘘だと思っていた、冗談だと。気を引いて、振り向いたら笑うような、そういった類の話だと。
彼は思っていたことが、まったく違うことに気がついて。
「はぁ、まったくもう! ほら旦那様!」
「ええ? アリシアちゃん、それって何?! なんで背中を叩いたの?!」
戸惑って振り返る浩介に、アリシアはビシッと指をさした。
「女の子が本気で告白しているんだから! 男ならビシッと決めなさい!」
「え、はい」
キスされて早速、尻に敷かれる浩介。将来の夢はラスボスな少年は、戸惑いながらもゆっくりとなのはに近づいていき。
「本当に?」
「うん、大好きだよ。本当に」
「そっか、そうなんだ」
浩介は泣いているなのはから目を反らし、空を見上げた。
何処までも高い青空に、何故か親指を立てて笑顔を浮かべるギルガメッシュの幻影が浮かんだとか。
『待て貴様! 我はそんなことは!』とか、浩介の中のギルガメッシュが言っているが、彼は聞いてないし見てない。
「解った、なのはちゃん!!」
「は、はい!!」
泣いている彼女の両肩に手を置く浩介。
いきなり肩を掴まれ、びっくりして涙が止まるなのは。
二人は少しの間、見つめ合った後。
「俺のついてこい、なのは!!」
「・・・・・・・はい! 一生、付いていくの!」
男らしい浩介の一言に、笑顔で答えるなのはだった。
「待って浩介君! 私も!」
すずか、いきなり割り込む。
昔ならば浩介はここで嘘だとか、冗談だって断ったかもいれない、しかし今の彼の中にはギルガメッシュの言葉がある。
『待てと言っている!』とか、ギルガメッシュが叫んでいるが浩介には届かない。
「解った! ずずかも俺についてこい!」
「はい!」
「ちょっと待ちなさい!」
そんな甘ったるい空間に、アリサの一喝が入る。
どう考えてもおかしい、小学生が告白して、それが結婚するように聞こえるのはおかしくないか。
「一夫多妻なんて日本じゃおかしいわよ!」
「アリサも俺についてくる?」
「・・・・・・・あんたたちだけだと、何かしそうだから仕方ないわね」
言い訳を口にするツンデレがそこにいた。
こうして彼は無自覚にハーレムを作ったのでした。
こうして、中にいる英雄王、第四真祖、死神の総隊長はもちろん、世界を巻き込んだ、ラスボス系無自覚主人公の物語の幕開けでした。
『はぁ』
『ギル、今日は飲もうぜ。存分に飲もう』
『特別な酒を出そう』
『ああ、苦労を分かち合う、これが友だな。エルキドゥよ、我は新しい友を得たぞ』
そして彼の、巻き込まれ系ラスボスになっちゃった主人公は、ここから始まったのでした。
短編としていながら、ここまではプロローグ、序章なんて言ったら、誰が信じられますでしょうか。
浩介自身に罪はない、なんてことはないけど。
彼の周りに集まった女性たちが繰り広げる、かなり大迷惑な大騒動に、彼は中心いるので巻き込まれていく。
そんな話になっていけばなぁ、なんて考えています。
というのは、嘘で。
実はここが最終話でした。
転生特典が色々とついていって、神様がミスばかりして、主人公が子供なので転生特典が使えずに、
書き手にとって、転生特典が使い辛い、という意味でのタイトルになっています。
多数なスキルって魅力的だけど、いざ作品にすると難しくなるよね、なんて話です。
ではでは、というところで失礼を。
ご要望あれば、続編、行きます。なんて、言ってみたりして。
では、この作品が皆様の日常の小さな楽しみになれば、サルスベリにとっては幸いです。
それでは、失礼いたします。